KIT航空宇宙ニュース2020WK52

KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2020WK52

今週号が2020年最後のKIT航空宇宙ニュースになります。今年の9月末より、この航空宇宙ニュースを投稿してまいりましたが、如何でしたでしょうか?少しでも最新の航空宇宙ニュースに触れることで、航空宇宙に興味を持って頂けたのであれば幸いです。

今年は新型コロナによって、皆さんは、不自由な学園生活を余儀なくされたことと思います。しかし、来年にはワクチンも完成し、きっと来年は良い年になると期待しています。皆さん、良いお年をお迎えください。そして、Merry Christmas!(編集者:小林)

海外のニュース

1.エアバス、6発プロペラの燃料電池旅客機を検討

エアバスは、6つの取り外し可能な燃料電池によるプロペラ推進システムの航空機構想を発表。2035年までのゼロエミッション飛行の実現に向けた取り組み「ZEROe」プログラムの一環で、水素燃料電池を用いた推進システムの検討を進めている。「ポッド」と呼ぶ水素燃料電池の推進システムは、1基あたり8枚のプロペラブレードで構成。主翼の下に左右3基ずつ計6基の6発機としている。ただし、現時点の技術では燃料電池で既存の旅客機並みの機体を飛ばすことはできないため、エアバスでは燃料電池による航空機の実現に向け、ポッドなどさまざまな技術を研究していくとしている。(Flightglobal News)

(Flightglobal News提供)

2.世界最大パリ航空ショー、2021年は中止

フランス航空宇宙工業会(GIFAS)の100%子会社SIAEは、2021年に開催予定だった世界最大規模の国際航空宇宙見本市「パリ航空ショー」の中止を決定した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるもので、来場者が30万人以上と非常に多くの人が集まるため中止とした。SIAEによると、パリ航空ショーが中止となるのは、二度の世界大戦の期間を除くと110年を超える歴史で初めて。パリ航空ショーは1909年に初開催され、現在は奇数年の6月にパリのル・ブルジェ空港で開かれている。(Aviation Today)

(SIAE提供)

3.ドイツのVolocopter社は今後3年以内にシンガポールでエアタクシー事業を開始予定

同社は、既に今年の初めにシンガポールオフィスを立ち上げ、1/2スケールモデルで、シンガポール市内のマリーナベイエリア上空を飛行、最初の有人試験飛行を行っている。当該飛行は、40メートルの高さで2分間の飛行で、約1.5kmの距離をカバー、1人のパイロットが搭乗。エアタクシー事業を開始するため、シンガポール民間航空局(CAAS)の承認を得る前に、さらなる試験、飛行試験、評価を実施予定。また、12月初旬に発表されたCAASと欧州連合航空安全庁(EASA)との間の相互協定の更新も視野に、より迅速な承認を得ることを目指している。(Flightglobal News)

(Volocopter提供:マリーナベイエリアを飛行する有人1/2モデル Volocopter)

 

4.英国Faradairが電気航空機プロジェクトのパートナーに米国MagniXを選択

米国の電気推進スペシャリストであるMagniXは、英国を拠点とするFaradair Aerospaceと協力して、2026年までに18席のBio Electric Hybrid Aircraft(BEHA)を提供。

この航空機は「トリプルボックスウィング」高揚力構成を備えており、300メートル未満の滑走路で離離着陸可能なSTOL(Short Take-Off and Landing)機能を有し、ベクトル推力制御を備えたツイン逆回転「プロップファン」は、推進効率を改善し、離陸時60dbaまで騒音を低減することが可能です。また、この航空機は乗客仕様から貨物仕様へ、15分で変更することも可能な設計にすると、同社は述べている。(Flightglobal News)

(Faradair提供)

 

日本のニュース

1.日本航空の国際線LCC、ZIPAirが成田-ホノルル線に就航

日本航空の100%子会社でボーイング787型機を使った、中長距離国際線LCCのZIPAIR(ジップエア)が12月19日、成田-ホノルル線を開設。初便は乗客26人(幼児なし)と乗員11人(パイロット3人、客室乗務員8人)、貨物14トンを乗せ、午後8時9分に成田空港を出発、同32分にA滑走路(RWY34L)から離陸した。当面は不定期の運航となるが、同社にとって初の「ETOPS運航」となり、目標とする米国西海岸就航へ弾みをつけた。(Aviation Wireニュース)

(Aviation Wire提供)

 

2.「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから採取したサンプル量は約5.4gと判明

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月18日、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウより持ち帰ったサンプル(砂)の量が約5.4gであったことを明らかにした。

実際にサンプルコンテナの蓋を開けて、サンプルそのものを確認したのはサンプルキャッチャーA室だけだが、今回導き出した質量は、サンプルを含むキャッチャーの重さを量り、打ち上げ前のサンプルキャッチャーの質量と比較。その結果から、サンプルキャッチャーの質量を除いた質量(A室、B室、C室内のサンプルの合計)を導き出したものだという。因みに、サンプルコンテナの底面に確認されたサンプル量は含まれていないため、総量はさらに増えるとみられる。(マイナビニュース)

(JAXA提供:サンプルキャッチャーA室内の小惑星リュウグウ由来の粒子)

 

3.日本の宇宙スタートアップSynspective、初の実証衛星の打ち上げに成功

日本の宇宙スタートアップ企業Synspective(シンスペクティブ)は2020年12月15日、同社初の実証衛星「StriX-α(ストリクス・アルファ)」の打ち上げに成功。

StriX-αには、夜間や雲があるときでも宇宙から地表を撮像できる合成開口レーダーを搭載。将来的に30機の商用衛星を打ち上げ、世界のどこでも3時間以内に観測できるようにし、都市計画やインフラ、金融・保険、防災などの分野での利用を目指す。Synspectiveは、2018年2月に設立された日本の宇宙スタートアップ企業で、合成開口レーダー(SAR)を搭載した小型衛星の開発、製造や、その観測データの販売、政府・企業向けのソリューションの提供を目指している。(マイナビニュース)

(Rocket Lab提供:「StriX-α」を搭載した米ロケット・ラボのエレクトロン・ロケットの打ち上げ)