KIT航空宇宙ニュース2021WK23

ユナイテッド航空が発注したBoom社の超音速旅客機「Overture」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK23
海外のニュース
1.ユナイテッド航空が超音速旅客機15機発注
ユナイテッド航空は米国Boom社が開発中の超音速旅客機オーバーチュア(Overture:英語の意味は「序曲」)を15機発注。航空会社の確定発注は今回が初めてで、35機のオプション付きの契約。Boom社には日本航空やヴァージン・グループが出資しており、JALは20機、ヴァージンは10機の優先発注権を持っているが、現時点では発注に至っていない。
オーバーチュアの全長は約62メートルで、コンコルドと略同じ。座席数はビジネスクラスタイプのものが65席から88席を想定。アフターバーナーなしのエンジンでスピードは現在の旅客機と比べ約2倍のマッハ1.7を計画。航続距離は7871キロ。Boom社は最初からオーバーチュアを生産するのではなく、まず、2人乗りの技術実証機「XB-1」で既存エンジンを使った超音速飛行の技術を検証し、オーバーチュアの開発につなげる予定。XB-1は、2020年10月7日にロールアウト(完成披露)。主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンはGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使ってマッハ2.2の実現を目指す。カリフォルニア州モハベ砂漠で飛行試験を実施し、同時に風洞実験も進める。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:United航空のOverture想像図】

2. ロールスロイスがメガワットレベルのハイブリッド発電機の地上試験開始
航空機エンジンメーカーであるRolls-Royce は、将来のリージョナル航空機への適用を意図したデモンストレーター プログラムのために、PGS1 として知られるハイブリッド発電システムのコンポーネント試験を、改装されたブリストルの施設で開始した。中止されたE-Fan Xプログラム(電動大型ファンエンジン開発)から生まれたPGS1には、2.5MWの電力レベルを供給するために必要な発電機が含まれ、3,000VのパワーエレクトロニクスシステムとAE2100ガスタービンが接続される。AE2100 エンジンは、以前はサーブ 2000 やロッキード マーティン C-130J などの民間および軍用航空機の動力として使用されてきた。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:メガワット級のPGS1ハイブリッド発電機】

3. eVTOL機メーカーEveがUAM市場参入を目指すHaloとパートナーシップ契約締結
ブラジルの航空機メーカーエンブラエル社からスピンオフしし、電動垂直離着陸機(eVTOL機)を開発中の米国Eve社が、都市空間移動サービス(Urban Air Mobility)市場への参入を目指す英国Halo社とパートナーシップ契約を結び、Halo社 がeVTOL 航空機のローンチカストマーとして 200機を発注したと発表。機体の引渡しは 2026年を予定。この注文はUAM 業界で最大の注文であり、Halo社 は米国と英国の両方の市場で Eve社 の販売パートナーとなる。Halo社 は、米国と英国の一流のヘリコプター旅行提供会社であり、Eve社と協力して、両国で新しい eVTOL機運航を計画している。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:Eveが開発中のeVTOL機「Eve」の想像図】

日本のニュース
1.ZIPAIR、787の抗菌コーティング完了 ホノルル再開前にコロナ対策
日本航空の100%子会社で中長距離国際線LCCのZIPAIR(ジップエア)は、2機運航しているボーイング787-8型機の機内に抗ウイルス・抗菌コーティングを実施した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の一環で、7月21日から成田-ホノルル線を約半年ぶりに再開させる前に、乗客が直接手を触れる部分を中心にコーティングし、乗客の安心につなげる。客室のシートやシートベルト、オーバーヘッドビン(手荷物収納棚)、窓枠、ラバトリー(化粧室)など、乗客が触れる部分を中心にコーティング。客室乗務員が機内サービスで使うギャレー(厨房設備)や、乗客が乗り降りするドアの操作部分などにも噴霧。作業はJALグループでグラハン業務を担うJALグランドサービス(JGS)のスタッフが担当。すでにJALの787には作業を実施しており、コーティング剤はJAL機と同様、中村・フクイヤ(愛知)の「ダイヤモンドマジィックD-V II」を使用。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JGSによる抗菌剤塗布作業】

2.川崎重工、水素航空機開発に参画
川崎重工業は、6月1日に開催したアナリスト向けのグループビジョン2030進捗報告会で、水素燃料を航空機分野へ展開し水素航空機の開発に参画する意向を示した。燃料タンクやエンジンなどの開発を主導し、2035年以降の市場投入を目指す。「液体水素燃料タンクや水素燃料供給システムなど、中核技術を主導する」と述べ、拡大が見込まれる水素分野を強化するとした。川崎重工は水素を使った航空機エンジンのほかオートバイや水素発電事業なども展開し、本社に水素戦略本部を立ちあげた。【Aviation Wire News】

【Airbus提供:Airbusが検討中の水素エネルギー推進航空機の想像図】

3.エアロセンスが損保向けに固定翼ドローンで広範囲水害調査実施
エアロセンス社は、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の2社と共同で、固定翼の飛行ロボット(ドローン)と人工知能(AI)を活用した水災時の損害調査を近く始める。短期間で広範囲の画像が撮れるドローンの利点を活用し、早期の保険金の支払いに
つなげる。エアロセンスのドローンは固定翼型で、飛行時間が約40分、飛行距離も50キロメートルとヘリコプター型の従来ドローンの数倍ある。この能力を生かし、1回の飛行で広範囲の画像を撮影して作業効率を高める。AI流体解析アルゴリズムを用いてデータ分析を行い、浸水高を測定。立ち会い調査をすることなく損害額を算出できる。【日刊工業新聞】

【日本経済新聞提供:エアロセンス社の固定翼型ドローン】

4.IST、改良版エンジン搭載の新生「ねじのロケット」の打ち上げを今夏に設定
インターステラテクノロジズ(IST)は6月1日、2020年に打ち上げを予定しつつ、エンジンの不着火問題などにより打ち上げを延期していた「MOMO7号機(ねじのロケット)」の新たな打ち上げ日を今夏に決定したと発表した。今回打ち上げを目指す「ねじのロケット」は、不具合の対策ならびにロケット打ち上げの信頼性向上を目的としたMOMO向け改良版エンジンを新たに搭載した新モデルへと変更。艤装の設計変更なども行うことで、製造工数や打ち上げ運用の削減を可能としたという。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:改良版エンジン搭載「ねじロケット」】