KIT航空宇宙ニュース2021WK25

英国のブリュターニュフェリー社が計画中の地面効果で飛行航行する「シーグライダー」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK25
海外のニュース
1.旅客数最大の737MAX -10が初飛行23年就航へ
ボーイングは現地時間6月18日、737MAXファミリーでは胴体長が最長となる737-10(737 MAX 10)が初飛行に成功したと発表した。2023年の就航を目指す。初飛行は、ワシントン州のレントン市営空港を離陸。約2時間飛行し、テストパイロットらが、飛行制御とシステムなどをテストした。737-10は、2017年6月に開かれたパリ航空ショーでローンチ。737-9の胴体を66インチ(約1.7メートル)延長して、定員増加によりドアを追加し、翼や圧力隔壁なども改良している。初飛行は当初2020年を計画していた。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:初飛行する737MAX-10 】

2.エンブラエル系Eve社が“空飛ぶクルマ”のアジアで導入目指しシンガポール社と提携
エンブラエルが立ち上げ、電動垂直離着陸(eVTOL)機など「空飛ぶクルマ(Urban Air Mobility、UAM)」の開発を進めているイブ・アーバン・エア・モビリティは、シンガポールのアセント(Ascent)との提携を発表した。アジア太平洋市場で、エアタクシーなどに特化したイブ社製eVTOLの導入を目指す。今回のパートナーシップでは、エアタクシーのほか、貨物や航空医療サービスに特化したeVTOLを、アジア太平洋地域への順次導入を目指す。アセントは現在、空飛ぶクルマの運航に特化した協力会社のデータベースをタイとフィリピンで保有しており、同地域での導入拡大を見込む。eVTOLなどの空飛ぶクルマは、次世代の移動手段として注目を集めている。エンブラエルは2017年に子会社「エンブラエルX」を立ち上げ、eVTOL機などの開発を進めている。イブは2020年10月に、エンブラエルXから独立した。日本では、兼松(8020)が英国のスカイポーツ(Skyports)と提携し、eVTOLが離着陸する「バーティポート」(Vertiport)インフラの国内構築を目指している。
【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:Eve社のeVTOL機想像図】

3.ブルターニュフェリー社が高速「シーグライダー」をフランスで飛ばす計画
ブルターニュフェリーの新しい計画では、英国プリマスからフランスまで電気水上飛行機で1時間以内に飛ぶことができる。海峡横断運航会社は、米国の技術系新興企業であるREGENT(Regional Electric Ground Effect Nautical Transport)と協力して、地面効果翼(WIG)の低高度、高速飛行の開発に取り組んでいる。 「シーグライダー」と呼ばれるpart-ship-part-planeは、低高度の空気のクッションに乗っているため、バッテリー電源のみで飛行/航行可能です。非常に効率的で環境への影響が少ないマシンは、最大180mphで飛行。プリマスからロスコフまでの移動時間を1時間未満に、またはポーツマスからチェルブールまでの移動時間を約40分で短縮。プリマスに英国本部を置くブルターニュフェリー社は、ボストンを拠点とするリージェントとの覚書に署名し、最初のシーグライダーは2028年に航路を航行/飛行する予定です。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:シーグライダー想像図】

4.持続可能な航空のための「オープンローター」エンジン
環境的に持続可能な航空を達成するという目標を達成するために、米国の航空機エンジンメーカーのGEアビエーション社とフランスの航空機メーカーのサフラン社の合弁企業で航空機エンジンメーカーであるCFMインターナショナル社は2030年代半ばに劇的に新しいガスタービンエンジン設計を提供することを計画。それはオープンローターであり、より大きなファンを回転させ、より多くの空気を流すことで大きな推力を得ることができる。さらに、CFMが開発する追加技術により、持続可能なバイオ燃料または水素燃料の使用を可能とし、ハイブリッド電動航空機に適応可能となる。GEアビエーション社のCEOであるスラッタリー氏は、計画されたエンジンによって燃料の燃焼が少なくとも20%削減され、航空機の脱炭素化に貢献できると述べた。この新たなガスタービンエンジンは、エアバス社が計画している水素を動力源とするゼロエミッション商用ジェット機を2035年までに開発可能とする。
【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:CFMが計画中のオープンローターエンジン】
日本のニュース
1.JALやANA国産SAF(持続可能航空燃料)で初フライト成功 木くずや藻が原料
木くずや微細藻類を原料とする国産のSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の技術開発に取り組むNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は6月18日、NEDOの事業で民間企業が製造したSAFを日本航空と全日本空輸が17日の国内線定期便に使用したと発表した。国産SAFの対象便は両社1便ずつで、いずれも通常のジェット燃料と混合して使用。JALが17日の羽田発札幌行きJL515便(エアバスA350-900型機)、ANAが同日の羽田発伊丹行きNH31便(ボーイング787-8型機)で、JL515便のSAFは木くずから製造されたものと微細藻類由来のものを混合し、NH31便のSAFは微細藻類から作られたもののみを使用した。JALの国産SAFを2種類同時に使用したフライトは日本初で、ANAのフライトはASTM D7566 Annex7規格に基づくSAFを搭載した世界初の商業フライトになったという。SAFは従来「バイオ燃料」と呼ばれていたもの。これまでの植物油などに加え、さまざまな原料から製造されるようになり、IATA(国際航空運送協会)が呼称をSAFと改めた。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:SAF混合燃料を給油するJALのA350機 】

2.JAXAが超音速機技術の実用化へ協議会設置 国際共同開発の参画視野
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、JADC(日本航空機開発協会)とSJAC(日本航空宇宙工業会)、三菱重工業、川崎重工業、SUBARU、IHIの7者で、2030年ごろに予想される超音速機の国際共同開発への参画を目指し、協力体制を実現するためのJSR(Japan Supersonic Research)協議会を設置したと発表した。実現には経済性や環境適合性などの観点でさまざまな技術的課題がある。JAXAでは、経済性の面で空気抵抗を下げて燃費を向上する技術の実証や、環境面で超音速飛行時に生じる「ソニックブーム」を低減する研究を進めてきた。燃費を改善する超音速機の機体形状を適用した小型超音速実験機「NEXST-1」を使い、2005年に豪州で飛行実験を実施。英仏が共同開発した「コンコルド」と比べ、空気抵抗を約13%低減できる技術を実証した。ソニックブームは「ドン、ドーン」と打ち上げ花火や落雷のような音を伴う衝撃波。JAXAはこれを低減させる機体形状の設計概念を適用した低ソニックブーム設計概念実証機「D-SEND#2」を用いて、2015年にスウェーデンで実施した飛行実験で、コンコルドと比べて半減できる技術を実証している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JAXAが構想している超音速旅客機想像図】

3.JAXAとホンダが「循環型再生エネルギーシステム」の実現性検討を開始
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と本田技研工業(ホンダ)は、人が長期間にわたって宇宙で滞在・活動するための環境構築を目指し、2020年11月から3年間(2020年度~2022年度)の予定で進めている酸素や水素、電気を有人拠点や月面ローバーに供給するための「循環型再生エネルギーシステム」の共同研究を踏まえ、同システムの実現性検討を開始すると発表した。2019年10月、日本は、米国提案による国際宇宙探査プロジェクトである「アルテミス計画」に参画することを政府として決定し、協力項目について調整を進めることとなった。この方針に則り、JAXAでは、火星なども視野に入れた月周回有人拠点「Gateway(ゲートウェイ)」への日本が得意とする技術・機器の提供、Gatewayへの新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」での物資補給を目指し、研究開発が進められている。【マイナビニュース】

【JAXA提供:宇宙における循環型再生エネルギーシステム】