KIT航空宇宙ニュース2021WK37

九州域内地域航空会社3社(AMX、ORC、JAC)とJAL/ANAが会社の枠組みを超え協力して九州地域の魅力をアッピール
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK37
海外のニュース
1.米ロケット企業「ファイアフライ」、初のロケット打ち上げ試験に挑むも失敗 
米国のロケット開発スタートアップの「ファイアフライ・エアロスペース」は2021年9月3日(日本時間)、自社開発した「アルファ」ロケットの初の打ち上げ試験に挑んだ。しかし、打ち上げ直後に4基ある第1段エンジンのうち1基が停止。打ち上げから約2分半後に飛行中断が決定され、指令破壊された。アルファ(Alpha)はファイアフライ・エアロスペースが開発したロケットで、全長29m、最大直径2.0m。2段式を基本とし、推進剤は1段目、2段目ともに液体酸素とケロシンを使う。機体全体には炭素繊維複合材が用いられており、とくにタンクはライナー(内殻)レスとなっている。1段目には「リーヴァー1(Reaver 1)」エンジンを4基、2段目には「ライトニング1(Lightning 1)」エンジンを1基装備。両エンジンは設計や部品が最大限共通化され、低コスト化が図られている。打ち上げ能力は、高度200kmの地球低軌道に1000kg、高度500kmの太陽同期軌道に630kg。小型・超小型衛星の打ち上げを目的とした超小型ロケット(Micro Launcher)のひとつである。打ち上げ価格は、ロケット1機を専有した場合(Dedicated launch)は1500万ドルとしている。また、月2回の打ち上げが可能だという。これまでエンジンの地上燃焼試験や、発射台に立てての試験などが繰り返されてきており、今回がアルファにとって初の打ち上げ、またファイアフライにとっても初めてのロケット打上げだった。【マイナビニュース】

【Firefly提供:「アルファ」ロケット打上げの瞬間】

2.新進気鋭のロケット企業「アストラ」、ロケット打ち上げに失敗
米国のロケット開発スタートアップの「アストラ・スペース(Astra Space)」は2021年8月29日(日本時間)、「LV0006」ロケットの試験打上げを実施した。ロケットは横滑りしたあと、ゆっくりと上昇。不完全な状態で飛行したあと、最終的に地上からのコマンドで飛行を中止。打ち上げは失敗に終わった。ロケットはすぐには上昇せず、ホバリングしつつやや傾いて横移動し、約20秒後にようやく上昇。打ち上げから約2分半後、第1段の燃焼が終了したあたりで、地上の安全監理チームが全エンジンを停止させるコマンドを送信し、飛行を中止。機体はその後、慣性で高度約50kmまで上昇したのち、太平洋に落下した。人的被害はなかったという。アストラによると、離昇直後、5基のメイン・エンジン「デルフィン」のうち1基が、トラブルにより停止したという。エンジンが停止した原因は現時点で不明で、「連邦航空局(FAA)と密接に連携して事故調査を進める」としている。同社の「ロケット」(ロケットという名前のロケット)は全長約13.1m、直径1.3m。推進剤に液体酸素とケロシンを使う2段式ロケットで、地球低軌道に最大630kg、高度500kmの太陽同期軌道に335kgの打ち上げ能力をもつ。同社のロケットは、「世界一シンプルで製造しやすいロケット」であることを特徴とする。たとえばロケットの機体にはアルミニウムを使用、エンジンの構造も可能な限り簡素化しており、いま流行りのカーボン素材や3Dプリンターなどは使っていない。機体の寸法も標準的な輸送コンテナに収まるように設計されており、輸送コストの削減にも配慮。競合他社が挑みつつある1段目の回収、再使用もしない。また、「100%の信頼性は求めない」とし、それと引き換えに大幅なコスト削減を図っている。たとえばエンジンのターボ・ポンプに電動モーターのポンプを使い、最初から完全な完成品を目指して開発するのではなく、設計・実装・試験の工程を何度も繰り返して、完成度や質を徐々に高めていく反復型開発という開発手法を採用したりなど、最近の技術革新やトレンドは押さえている。とくに、反復型開発を採用したことで、徐々に打ち上げ能力などの性能を向上させつつ、コストを下げていくような発展が可能だという。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:Astra社「ロケット」打上げの瞬間】

3.米国新興企業Archer AviationがeVTOL機のFAA認証の初期段階を完了
Archer Aviation社は、開発中のエアタクシー用eVTOL機のFAA認証を取得するための初期のマイルストーンを完了した。但し、FAAが同社の垂直離着陸機のコンセプトをクリアするまでには未だ多くの作業が残っている。FAAによると、このマイルストーンは、認証を受けるための航空機が満たさなければならない耐空性と環境基準。カリフォルニア州パロアルトを拠点とする同社は、eVTOL機やその他の電気航空機の開発に取り組んでいる企業の1つ。同社は4人乗りのeVTOL機の認証を2024年までに取得することを目指している。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:Archer Aviationが開発中のeVTOL機】

4. Vertical Aerospace社が固定翼VA-X4eVTOL機プロトタイプの初飛行を準備中
Vertical Aerospace社が今年後半に本格的な固定翼VA-X4eVTOLプロトタイプの初飛行の準備をしている。エンジニアリング作業が激化しており、英国を拠点とする同社は4つの型式証明プロセスを準備している。旅客タイプは2024年に商用サービスに参入することを計画。当該eVTOL機は、アメリカン航空やバージンアトランティック航空などのローンチ・カストマーとともに、中国の航空機リース会社のアボロン(Avolon)も早期注文を約束するなど、より多くのオペレーターが続くと予想されている。6月、これら3社は、eVTOLセクターのこれまでで最大の取引で最大1,000機の航空機を購入することに合意した。アメリカン航空とアボロンは、ハネウェル、ロールスロイス、マイクロソフトなどの他の投資家と協力して、特別買収会社ブロードストーンとの合併による同社の新規株式公開の計画を支援している。初飛行の準備作業には、機体の重量、空気力学、騒音、バードストライクの許容範囲などの要素を最適化して、さまざまなローター構成を評価するための複数の地上リグテストが含まれている。同社は最近、エアバス風洞のサブスケールモデルでテストを完了した。【Future Flight Nwews】

【Vertical Aerospace社提供:VA-X4eVTOL機】

5.Wright(ライト)社は2メガワットの電動航空機用電動モーターをテスト
自動車産業と同じように、航空宇宙でも電気を使うことを目指しているが、バッテリー駆動のモーターで飛行することは難しい。ライト社は、小型航空機を超えた規模での電動飛行を可能にすることを目指している新興企業の1つです。その開発中の2メガワットのモーターは、大型旅客機に推力を供給することが可能。現時点で、大型旅客機が飛行するために必要なバッテリーの重量では飛行は不可能です。この難問を回避するために改善すべき点は、効率です。つまり、電力1ワットあたりにどれだけの推力を生成できるかです。電気モーターは一般に、燃料を動力源とするエンジンよりも軽量で、シンプルで信頼性がありますが、飛行を実現するには、高い効率を達成する必要があります。したがって、同じ量の蓄積エネルギーからより多くの推力を生み出すことができるモーターを開発することです。ライト社のモーターは2メガワットで、2,700馬力に相当し、1キログラムあたり約10キロワットの効率です。「これは、電気航空宇宙産業向けに2倍に設計された最も強力なモーターであり、他のどのモーターよりも大幅に軽量です」とライト社のEngler氏は述べている。【Flightglobal News】

【Wright社提供:開発中の2メガワットのモーター】

日本のニュース
1.ANA/JALと九州3社、世界遺産など地域の魅力発信
九州の地域航空会社3社と全日本空輸、日本航空の5社が出資する地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)は9月8日、コロナ後に向けて就航地域の魅力を訴求し、離島生活路線などの共同プロモーションを始めると発表。2022年3月31日まで実施する。EAS LLPは2019年10月25日設立。天草エアラインとオリエンタルエアブリッジ、日本エアコミューターの九州3社と大手2社の5社が出資し、経営環境が厳しい地域航空会社が存続できるよう、ANAとJALの系列の垣根を越えた取り組みを4年間の予定で進めている。今回の取り組みでは、加盟5社が就航する地域の自然景観や生活文化、伝統的歴史といった観光資源や魅力を紹介し、商品やサービスの紹介などの情報を発信していくという。第1弾として、世界遺産をテーマに地域の魅力を各社のSNSや自社媒体で取り上げる。鹿児島県の屋久島(93年登録)や明治日本の産業革命遺産(15年登録)、長崎・天草の潜伏キリシタン関連遺産(18年登録)、7月に世界自然遺産に登録が決定した鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄島北部と西表島に関する情報を発信する。第2弾は食の魅力など離島の特色を生かしたテーマを設定するという。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供】

2. 国交省10月からドローン飛行許可などの申請先を変更
国土交通省は、ドローン(無人航空機)の飛行許可をはじめとする航空法に基づく運航許可などの申請先を、10月1日から東日本は東京空港事務所、西日本は関西空港事務所に変更する。現在は空港により各空港事務所で扱っているところがあるが、変更後は新潟県、長野県、静岡県から東の区域が東京空港事務所、富山県、岐阜県、愛知県から西の区域は関西空港事務所が申請・届出先となる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供】