KIT航空宇宙ニュース2021WK42

JAXAがNASAとBoeingが開発中の超音速旅客機「X-59」のソニックブーム低減技術で協力
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KIT航空宇宙ニュース2021WK42
海外のニュース
1.ボーイング、787に新たな製造問題「直ちに安全上の問題ない」
ボーイング787型機に新たな製造上の問題が発生していると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが現地時間10月14日に報じた。ボーイングによると、787で使われているチタン製部品の一部が不適切に製造されているとメーカーから連絡があったという。ボーイングは本紙の取材に対し、運航中の機体に対して直ちに安全上の問題はないと回答した。FAA(米国連邦航空局)も同社の判断を了承している。ウォール・ストリート・ジャーナルは関係者の証言として、過去3年間に製造された787に使われたチタン製部品に、本来の強度に満たないものがあると報じた。納入待ちの787に対し、ボーイングは必要な対策を航空会社などへの引き渡し前に講じていると説明。このところ787の製造工程にさまざまな問題が見つかっていることから、品質改善に取り組んでるという。「問題が提起されるということは、これらの取り組みが功を奏しているということだ」と、今回のチタン部品問題の発覚も一連の取り組みの成果だと述べた。日本国内で787を運航する全日本空輸と日本航空によると、現時点でボーイングからはこの問題に対する追加の整備作業などの要請はないという。【Aviation Wire News】

【航空新聞社提供:製造ラインのボーイング787型機】

2.長期無着陸飛行が可能な電動無人航空機ゼファーが実運用に向けて前進
エアバスは、太陽電池発電で長期無着陸飛行が可能なZephyr S無人電動航空機による高高度飛行の世界記録(高度7万6100フィート:約2万3200メーター)を達成、テストキャンペーンを完了し、「成層圏内を長期飛行する実運用が現実となるための一歩を踏み出した」と述べた。同社は、活動中に4回の低高度のテスト飛行と、それぞれ約18日間続く2回の成層圏飛行を実施した。ゼファープログラムによる総飛行時間が2,400時間以上となったと付け加えた。英国国防省の戦略司令部のロブ・アンダートン・ブラウン少将は、ゼファーによるテストは「軍事作戦を可能にする新しい概念と方法の開発に情報を提供している」と述べていて、軍事利用にも活用されることが期待されている。エアバスは現在、ゼファーを高高度疑似衛星として使用するのではなく、高高度プラットフォームシステムとして多目的使用を目指していると説明している。同社は、「一度に数か月間」民間航空交通の妨げることなく民間航空路の上空を飛行し、情報収集、監視と偵察、通信中継、災害対応任務などの任務を遂行できると考えている。【Flightglobal News】

【エアバス提供:試験飛行を完了し米国アリゾナの試験基地へ着陸するゼファー機】

3.ボロコプター社VoloDroneの最初のパブリックフライトが成功
ボロコプター社の電動貨物輸送ドローンVoloDrone が初の公開飛行を実施。国際的な運送会社であるDBシェンカー社はボロコプター社とともに、アーバンエアモビリティ(UAM)のパイオニアであり、VoloDroneのデモ飛行を行った。ドローンを活用したエンドツーエンドの貨物輸送によるロジスティクスサプライチェーンへの統合が狙いです。DBシェンカー社は2020年初頭にボロコプター社の戦略的投資家になっている。3分間のテスト飛行はハンブルグのhome PORTで行われ、最高高度22メートルに達した。この配送シミュレーションでは、着陸装置の間にロードボックスが装備され、VoloDroneの下のボックスにユーロパレットサイズの荷物を固定して行われた。VoloDroneは、無人の完全電動ユーティリティドローンで、ISO標準パレットサイズで、最大200キログラムの荷物を40キロの距離まで搬送可能【共同通信】

【Volocopter社提供:デモ飛行中のVoloDrone】

日本のニュース
1. A380とA320のパイロットが混乗可能
エアバスは10月14日、総2階建ての超大型機A380型機と小型機A320ファミリーの混合乗務について、国土交通省航空局(JCAB)から承認を受けたと発表した。日本で2機種を保有するのは全日本空輸のみで、パイロットは移行期間なしで両機種を運航できるようになる。エアバスによると、A380とA320の混乗は世界初だという。混乗制度「MFF」(Mixed Fleet Flying)は、パイロットが複数機種の機材を並行して定期的に運航できるようにするもの。通常は一度に乗務できる機種が限定されており、別の機種に乗務するには一定期間の機種移行訓練が必要となることから、より柔軟な運航が可能となる。日本で両機種を保有するのはANAのみ。A380は成田-ホノルル線で運航し、A320ファミリーは国内線や近距離国際線に投入している。A380は現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により定期便運航を休止しており、おもに国内のチャーター便に投入している。JCABは2019年4月に、ボーイング787型機と777の混乗を認めている。これを受け、日本航空が同年からトライアルを開始している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:上がA320型機で下がA380型機】

2.ホンダジェット、米大陸横断できるライト機 最大11人乗り、コンセプト出展
本田技研工業の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は、小型ビジネスジェットのコンセプト機「HondaJet(ホンダジェット)2600 Concept」を参考展示したと発表した。従来機の「HondaJet」よりも1つ上の「ライトジェット機」クラスに相当する機体で、同クラスとしては初めて米大陸の横断が可能となる。HondaJet 2600 Conceptは、航続距離2625海里(約4862キロ)、巡航速度450ノット(時速約833キロ)。最大11人の乗客乗員が搭乗できる。HACIによると、ライトジェットクラスとしては最大の座席間スペースと室内の高さで、座席レイアウトは目的別に合わせ3種類提供するという。従来機同様、パイロット1人でも運航できる。同コンセプトでは新たにオートスロットルやオートブレーキなどを導入。パイロットの負荷を軽減するほか、安全性向上にもつながる。燃費は通常のライトジェット機より20%、最大離陸重量が2万ポンド以上、3万5000ポンド以下の双発エンジンを搭載する「中型ジェット機」より40%以上の向上を目指す。同コンセプトは、米ラスベガスで開催中のビジネスジェット展示会「NBAA(ナショナル・ビジネス・アビエーション・アソシエーション・コンベンション・アンド・エキシビション)」で発表した。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:NBAA展示会で新型機を発表するホンダ・ジェット藤野社長】

3.ピーチが国内全線乗り放題パス発売 先着150枚、「ワーケーション」活用見込む
ピーチ・アビエーションは10月12日、国内線全線が1カ月間乗り放題になるパスを発売すると発表した。運賃は1万9800円からで、19日正午から先着150枚用意する。乗り放題プランの提供により、観光需要のほか、旅行先などで休暇の合間に勤務時間を設ける「ワーケーション」などへの活用を見込む。定額制サービス「Peachホーダイパス」は、11月1日から30日までの1カ月間、国内33路線が乗り放題となる。適用除外日は設けず、土日や祝日も利用できる。運賃タイプは、航空運賃のみの「ライト」と、座席指定料金などのオプションを含む「スタンダード」の2種類。合計で150枚用意し、先着30枚はライトを1万9800円、スタンダードを2万9800円で販売する。残りの120枚はライトが2万9800円、スタンダードが3万9800円となる。【Aviation Wire News】

【ピーチ・アビエーション提供】

4.JAXAがNASAおよびボーイングと低ソニックブーム実験機「X-59」の研究を開始
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月14日、米国航空宇宙局(NASA)およびボーイングと共に、NASAが開発を進める低ソニックブーム実験機「X-59 QueSST(Quiet Super Sonic Technology)」の低ソニックブーム設計を検証する共同研究を開始したことを発表した。超音速機は、超音速飛行時に発生する衝撃波に起因してソニックブームが生じるため、実際に超音速で飛行可能な区域は海上のみに限定されている。ソニックブームは、地上の人には瞬間的な爆音として聞こえるだけでなく、急激な大気の圧力変動が激しすぎる場合、窓ガラスが割れるなど、物理的な被害が生じる可能性の懸念される場合がある。そのため、かつての超音速旅客機コンコルドも大西洋上を飛行する欧州~米国間という限られた空路にしか就航できず、また、その特殊な形状から乗客定員数も一般的なジェット旅客機と比べると少なく、採算がとれないといった問題などから引退することとなり、2021年現在、超音速旅客機は就航していない。国際民間航空機関では、2000年代初頭より陸地上空における超音速飛行を可能とするためにソニックブームの基準策定を進めており、JAXAは研究開発成果を通じてその活動を支援してきた経緯がある。今回の3者の取り組みは、それぞれが培ってきた技術、知見を融合、深化させることで、今後のソニックブームの国際基準策定への貢献につながるものだという。【マイナビニュース】

【NASA提供:NASAが開発中の超音速旅客機「X-59」】