KIT航空宇宙ニュース2021WK45

スターフライヤーが久留米工業大学と提携し、保有するフライトシミュレーターを使って、航空人材育成に協力
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK45
海外のニュース
1.A319neoが100%代替燃料「SAF」で飛行調査 単通路機初、トゥールーズで3時間
エアバスはこのほど、単通路機では初となるSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を100%使用した飛行調査を開始した。エアバスのほかサフランとダッソー・アビエーション、仏国立航空宇宙研究所(ONERA)と仏運輸省が参画し、SAFが排出ガスに与える影響や機器の適合性などを検証する。今後はSAFの大規模な導入と利用を進め、単通路機とビジネスジェット機でSAFの100%使用の認証取得を目指す。A319neoの飛行試験機で、現地時間10月28日に試験した。同機に搭載するCFMインターナショナル社製LEAP-1Aエンジン2基のうち、1基にSAFを100%使用。トタルが提供したSAFを使用し、仏トゥールーズ付近を約3時間飛行した。試験結果の公表は2022年を予定する。A319neoは、3機種あるA320neoファミリーのうち、もっとも小さい機種。SAFは従来「バイオ燃料」と呼ばれていたもの。これまでの植物油などに加え、さまざまな原料から製造されるようになり、IATA(国際航空運送協会)が呼称を改めた。【Aviation Wire News】

【Airbus提供:Airbus社のA319 neo試験機】

2.米民間企業ら、商業用の宇宙ステーション「オービタル・リーフ」計画を発表
米国の宇宙企業ブルー・オリジンやシエラ・スペースなどは2021年10月26日、商業用の有人宇宙ステーション「オービタル・リーフ」を建造する計画を発表した。「宇宙に浮かぶ複合型ビジネス・パーク」と銘打ち、世界中の顧客から研究や産業、観光目的での利用を受け付けるとともに、人員や物資の輸送、運用などを商業サービスとして提供するとしている。運用開始は2020年代後半の予定で、国際宇宙ステーション(ISS)と入れ替わりに、地球低軌道での有人活動の主導権を握ることを目指す。オービタル・リーフ(Orbital Reef)の旗振り役を務めるのは、実業家ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジン(Blue Origin)と、米宇宙企業のシエラ・スペース(Sierra Space)。このほか、ボーイングやアリゾナ州立大学など複数の企業や大学も参画する。オービタル・リーフは「宇宙に浮かぶ複合型ビジネス・パーク」として、完全な商業目的の宇宙ステーションとして建造、運用され、科学的な宇宙実験から新技術の宇宙での実証、宇宙旅行まで、宇宙に新たな市場を開拓することを目的とするという。世界中のあらゆる企業や大学、研究機関などを対象に、費用さえ払えば自由に利用できるようにするとしている。オービタル・リーフが周回するのは高度500km、軌道傾斜角約45度の軌道で、内部は国際宇宙ステーション(ISS)とほぼ同じ約830立方mの広さをもつ。また、科学ゾーンと居住ゾーンに分かれており、最大10人が滞在できる。さらにモジュールや「エネルギー・マスト」と呼ばれる太陽電池パドルを追加することで、より大きく拡張することもできるという。ブルー・オリジンは、オービタル・リーフのコア・モジュールや生命維持システムなどの開発を担当。また、開発中の大型ロケット「ニュー・グレン」を使い、モジュールの打ち上げも担当する。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:民間宇宙ステーションオービタル・リーフの想像図】

3.Reaction Engines社がアンモニア燃焼ジェットエンジン開発を発表
英国を拠点とするReaction Engines社は、熱交換器システムを使用して通常のジェットエンジンがアンモニアを燃焼できるようにする新技術(炭素排出量ゼロ)が10年以内にサービスを開始できると発表。同社はまた、触媒の専門家である科学技術施設研究会議とベンチャーキャピタル会社のIP Groupで構成される合弁会社を設立し、軽量でコンパクトなアンモニア分解リアクターを開発した。当該リアクターは、SABREエンジンプログラムの熱交換器技術を使用している。アンモニアは通常のジェット燃料よりもエネルギー密度が高いが、非常に不活性で、通常のガスタービンで使用するには、水素と窒素に分解する必要がある。分化して得られた水素を残りのアンモニアと混合し、わずかな変更を加えるだけでジェットエンジンに使用できる可燃性燃料を作成することができる。ただし、この技術を商業的に展開するには、燃料タンクの変更とともに、分解リアクター・システムをエンジンポッドに取り付けることができるように主翼を改造する必要がある。また、アンモニアは水素よりも体積エネルギー密度が高く、貯蔵が容易で、液体水素の場合は-253°Cであるのに対し、-33°Cで貯蔵が可能なことから、航空機構造の複雑さが軽減される。Reactions社の戦略的株主には、ボーイングとロールスロイスが含まれている。【Flightglobal News】

【Reaction Engine社提供:アンモニア燃焼ジェットエンジン装備航空機の想像図】

4.Wright Electric社がBAe146の全電動の派生機を開発
米国の航空宇宙企業であるWright Electric社は、ブリティッシュエアロスペースの146リージョナルジェットをベースにした「ゼロエミッション」の電動旅客機の開発を開始した。計画では、新しいモーター、インバーター、および推進ファンの開発が2022年末までに完了する予定であり、2023年に既存のターボファンの1つを置き換える完全な電気推進ユニット(EPU)に改造された146が飛行する予定。Wright社のチームは、2026年の型式認証の準備として、2024年までに4つのEPUを備えた技術デモンストレーターを飛行させることを目指してる。同社は9月、ライト1と呼ばれる800マイルの航続距離を持つ186人乗りの旅客機を開発する計画の一環として2MWの電気モーターのテストを開始したと述べた。【Flightglobal News】

【Wright Electric社提供:全電動航空機に改造されるBae146型機】

日本のニュース
1.ANAとヴァージン・オービット社が大分空港で747からの衛星打ち上げを計画
ANAホールディングスは11月5日、航空機による人工衛星の打ち上げを手掛ける米ヴァージン・オービット(カリフォルニア州)と、日本国内での航空機を利用した人工衛星打ち上げ事業の展開に向けて基本合意書を締結したと発表した。ヴァージンが提携する大分空港を視野に、2022年以降の打ち上げを目指す。基本合意は10月20日付で、人工衛星の打ち上げ用に改修したボーイング747-400型機を使い、高度約10kmでロケットを航空機から切り離して打ち上げる。両社は2019年6月に提携を発表しており、日本国内での事業化に向けて具体的な協議を進めるという。地上からの打ち上げと異なり天候による打ち上げ時期の調整が減少し、地上から垂直に打ち上げるよりもロケットに必要な燃料が少なくなるという。ANAHDは、事業展開に必要な国内での許認可取得やロケットの衛星搭載スペースの販売、宇宙港で使う地上支援機材の手配や輸送、ファイナンスの組成などを担う。衛星搭載スペースの販売は国内独占販売権を取得し、傘下の全日空商事と協業する。日本からの打ち上げは、大分空港を宇宙港として活用を検討。ヴァージン・オービットは同空港と提携しており、2022年以降10年間で20回の打ち上げを目指す。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:ヴァージン社747₋400型機からの空中でのロケット切り放し】

2.スターフライヤー、久留米工大と連携 シミュレーターで人材育成
スターフライヤーと私立久留米工業大学(福岡・久留米市)は、航空人材の育成で連携する。スターフライヤーが所有するフルフライトシミュレーターなどを活用し、学生に課外授業を展開する。特別授業は、11月20日と12月4日、2022年1月22日の3日間を予定。久留米工大の交通機械工学科航空宇宙システム工学コースの学生に対し実施する。年度内の特別授業は、北九州空港に隣接するスターフライヤーの格納庫と、客室乗務員などが訓練で使用するエアバスA320型機のモックアップ、フルフライトシミュレーターの見学を予定する。モックアップでは、客室乗務員の機内サービスなど接遇教育のほか、緊急避難訓練施設を見学。フルフライトシミュレータ―の操作も体験できるようにする。両者は2022年度以降も特別授業を継続。スターフライヤーの社員による出張講座なども検討する。スターフライヤーは今年3月から、一般向けのフルフライトシミュレーター体験をスタート。初回なったと3月21日と26日、28日の3日間には、6人の募集枠に対し600人以上が応募し、倍率は100倍以上となった。その後は5月と9月、10月に開催し、11月と12月にも予定するなど、人気企画になっている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:スターフライヤー所有のA320型機フライトシミュレーター】

3.JAL、22年3月期最終赤字1460億円
日本航空が11月2日に発表した2021年4-9月期(22年3月期第2四半期)連結決算(IFRS)の最終損益は1049億7600万円の赤字(前年同期は1612億2600万円の赤字)だった。これまで未定としていた2022年3月期通期の連結業績予想は、最終損益が1460億円の赤字(前期は2866億9300万円の赤字)を見込む。JALは前期(21年3月期)からIFRS(国際財務報告基準)を適用。以前の日本会計基準を含めると、通期の最終赤字は2012年9月19日の再上場以来初となった前期から2期連続となる。旅客需要は、国内線が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響前の2019年同期比で第1四半期の平均が29.2%、第2四半期が34.0%、第3四半期が約65%で、第4四半期は約90%まで回復すると見込む。国際線は第1四半期平均が6.2%、第2四半期が8.1%、第3四半期が約10%で、第4四半期は約20%に回復する見通し。また、非航空系事業強化の一環として、JALUX(ジャルックス、2729)の連結子会社化を同時に発表した。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:決算発表するJAL財務・経理本部長の菊山専務】