KIT航空宇宙ニュース2021WK46

航空機リース会社ACIA社がHydrogen社の水素エネルギー推進ターボプロップへの換装キットをATR機用に仮発注(これはHydrogen社の水素エネルギー推進ターボプロップ機用のモーターの実験装置)
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1.エンブラエル、再エネ航空機コンセプト「エネルギア」を発表

エンブラエルは、再生可能エネルギー推進技術を用いた4つの新しい航空機コンセプト「エネルギア・ファミリー(Energia Family)」を現地時間11月8日に発表した。2050年までにCO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロにする航空業界の目標達成に向けた取り組みの一環で、ハイブリッドと電気、水素燃料電池、ガスタービンの4種類で、2030年から2040年にかけての実現を視野に入れている。4機種ともプロペラが機体後部にある姿が特徴になっている。ハイブリッド電気推進の「エネルギア・ハイブリッド(E9-HE)」は座席数が9席で、CO2排出量を最大90%削減。エンジンは双発で機体後部にマウントし、2030年に技術的な準備を終えることを目標に掲げる。完全な電気推進の「エネルギア・エレクトリック(E9-FE)」も座席数は9席で、CO2排出量はゼロ。2035年を想定し、後方対向回転プロペラを1基備える。水素電気推進の「エネルギア・H2燃料電池(E19-H2FC)」は座席数が19席で、CO2排出量はゼロ。2035年には技術的な準備が整う想定で、リアマウント型電気エンジンが2基となる。水素またはSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)/JetA燃料を用いる「エネルギア・H2ガスタービン(E50-H2GT)」は、座席数がもっとも多い35-50席で2基のエンジンを機体後部にマウント。CO2排出量を最大100%削減し、2040年を想定している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:エンブラエル社が発表した再生エネルギー航空機コンセプト】

2.航空機リース会社ACIAは、ユニバーサル社の水素ターボプロップ変換キットを使用する意向を示す

11月13日ACIA社は、Universal Hydrogen社との間で、ターボプロップ航空機用の水素エネルギー推進ターボプロップ変換キットを最大30基使用するというLOIに署名した。ACIA社は、ドバイエアショーでのブリーフィングで、ATR社の各種ターボプロップ機用の変換キットを20基の追加購入権付きで10基の確定注文を行う予定であると述べた。Universal Hydrogen社は、既存のリージョナル航空機を既存のターボプロップエンジンに代わる水素エネルギー推進ターボプロップに改造するための変換キットを開発している。、また、この改造にはUniversal Hydrogen社のグリーン水素製造サイトから空港に輸送された水素を、既存の貨物ネットワークと供給機器を使用して航空機に直接積み込むことができる独自の軽量モジュール式水素カプセルを胴体の後部に取付けることも含まれている。 同社は、ターボプロップ機の改造を2025年までに行うことを目指している。【Flightglobal News】

【Universal Hydrogen社提供:開発中の水素エネルギー駆動モーター実験装置】

3.シリー諸島蒸気船グループ(ISSG)、クランフィールド大学航空宇宙ソリューション(CAeS)、およびブリテン・ノーマンの3社がゼロエミッション航空機を開発

今週、英国グラスゴーで開催された国連COP26気候変動会議に先立ち、3社が共同でレターオブインテント(LOI)に署名し、水素を動力源とするフライトを島にもたらすというコミットメントを強化し、ゼロカーボンビジョンを発表した。シリー諸島蒸気船グループ(ISSG)、クランフィールド大学航空宇宙ソリューション(CAeS)、およびそのパートナーであるブリテンノーマンは、ビジョンを実現するために協力することを約した。CAeSは、世界で最も低コストのSTOL短距離離着陸機のメーカーであるブリテン・ノーマン社の専門知識を活用して、水素燃料電池技術をアイランダーに統合することを目的として、プロジェクト「Fresson」の下での開発を主導している。アイランダーを長年運営してきたISSG社は、その航空機の1機をCAeSに売却して改造を行った。ISSGは、自社の運用から得られた専門知識とインフラストラクチャ要件を提供することにより、プロジェクト「Fresson」をサポートしている。【Flightglobal News】

【Britten-Norman社提供:開発中の水素動力人改造された航空機の想像図】

4.韓国はUAMの商業化を2025年に実現することを目指している

韓国は都市空間移動体(UAM)を制御するシステムを実証した。これは2025年に主要空港とソウルのダウンタウンの間のエアタクシーとして機能し、移動時間を3分の2に短縮することが期待されている。昨年、韓国は2025年までに商業用の都市の空の旅を開始するロードマップを発表した。韓国運輸省は、このようなサービスにより、車で1時間かかる30〜50 km(19〜31マイル)の距離の移動時間を、飛行機で20分に短縮できると推定している。ソウルの金浦空港でドイツのボロコプター社製の2人乗りモデルを操縦し、その制御を実証した。【ロイター】

【ロイター提供:金浦空港で行われたロボコプターによる実証実験】

日本のニュース

1. ANA、大阪で空飛ぶクルマ想定しヘリで実証実験

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは11月11日、オリックスとヒラタ学園(大阪・堺市)とともに「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸)機の実現に向け、ヘリコプターを使った実証実験を大阪市内にあるビル屋上のヘリポートで報道関係者に公開した。大阪府に採択された3者の事業に基づく実験で、2025年に開かれる大阪・関西万博での実用化を視野に検証を進める。11日は空飛ぶクルマを想定したヘリが関西空港を出発すると、12分ほどで到着した。今回の実験は10日と11日の2日間行われ、大阪市西区にあるオリックス本町ビル(地下3階、地上29階)屋上のヘリポートに、ヒラタ学園が運航する空飛ぶクルマを想定したヘリコプターを離着陸させ、屋上やビル内部、地上、近隣ホテルなどで騒音を測定した。ヘリはヒラタ学園が普段はドクターヘリとして運用している小型双発のエアバス・ヘリコプターズ製EC135型機を使用した。今後はヘリの音と、空飛ぶクルマのメーカーが提供する音の比較検証などを行い、今年度内に大阪府へ報告書を提出する。都市部で空飛ぶクルマを運航する場合、離着陸する場の確保が課題となっており、騒音や安全性をクリアした上でビル屋上のヘリポートを利活用できるかが実用化のカギを握る。11日のフライトによる騒音を本町ビルで測定したところ、18階屋内は通常時が44デシベル、ヘリが飛来した際は56デシベル、地上では通常66デシベルに対して飛来時は87デシベルだった。また、近隣ホテルの屋内での測定値は、通常35デシベルに対して46デシベルだった。ANAHDによると、空飛ぶクルマは電動航空機であるため、ヘリコプターよりも低騒音化が期待できるという。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:関空から大阪市内のビルの屋上に到着したヘリ】

2.JAL、ワクチン接種証明もアプリ登録可能に 日本初、米本土行きで「VeriFLY」導入

日本航空は11月8日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種証明書について、デジタル証明書アプリ「VeriFLY」での登録が可能となったと発表した。米国へ入国時にワクチン接種完了が必須となったことを受けたもので、米本土路線の利用時に登録できるようになる。ワクチン接種証明書をアプリで登録できるようになるのは、日本ではJALが初めて。VeriFLYは米Daon社が開発したスマートフォンアプリで、利用客は米国が認めるワクチンの接種証明書に加え、新型コロナの検査証明書を登録する。このほか、渡航先の入国要件に合わせた準備書類などを事前に参照・入力・管理できる。米本土路線の利用客は、出発時に空港のチェックインカウンターでアプリ上の渡航判定結果を提示し、搭乗手続きを進める。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:スマホに表示されたデジタル証明書アプリ「VeriFLY」】

3.イプシロン5号機が打ち上げ成功、搭載した9機の衛星の正常な分離を確認

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月9日、内之浦宇宙空間観測所より「革新的衛星技術実証2号機」を搭載したイプシロンロケット5号機を打ち上げた。9時55分16秒に点火されたロケットは計画通りに飛行、搭載した9機の衛星を全て正常に分離した。今回、3回の延期はあったものの、これでイプシロンの打ち上げ成功は5機連続となった。JAXAの「革新的衛星技術実証プログラム」は、大学・研究機関・企業の革新的な技術やアイデアを、宇宙空間で実証することを目的としたもの。今回はその2回目の軌道上実証となり、重さ110kgの小型衛星「小型実証衛星2号機」(RAISE-2)のほか、4機の超小型衛星と4機のキューブサットを搭載した。【マイナビニュース】

【JAXA提供:打上げに成功したイプシロンロケット5号機】