KIT 航空宇宙ニュース2021WK48

お知らせ

KIT航空宇宙ニュース2021WK48

海外のニュース

1.ロシアが衛星攻撃兵器の試験を実施、宇宙ごみが大量発生

ロシア国防省は2021年11月16日、衛星攻撃兵器システムによる衛星の迎撃試験を実施したと発表した。ミサイルは同国の老朽化した衛星に命中。試験は成功したという。米軍や米国航空宇宙局(NASA)なども試験が行われたことを確認している。衛星の破壊にともない、多数の宇宙ごみ(スペース・デブリ)が発生。今後数十年にわたり、他の衛星に衝突するなどの危険性が高まる重大な事態となった。ロシアは今回の試験について、実施日時などの詳細は明らかにしていない。米国の宇宙コマンドによると、試験が実施されたのはモスクワ標準時の2021年11月15日で、「direct-ascent anti-satellite missile」と呼ばれる地上発射型の対衛星ミサイルが使われたという。ミサイルの発射場所についても明らかになっていないが、直前にロシアから出されたNOTAMから、ロシア北西部のアルハーンゲリスク州にあるプレセーツク宇宙基地から発射されたものとみられている。発射されたミサイルは、軌道を周回していた衛星「コスモス1408(Kosmos-1408)」に命中した。迎撃された時点で、コスモス1408は近地点高度645km、遠地点高度679km、軌道傾斜角82.50°の極軌道を周回していた。コスモス1408は1982年に当時のソヴィエト連邦が打ち上げた衛星で、電子情報偵察(ELINT)を目的とした「ツィリナーD(Tselina-D)」と呼ばれる衛星の1機とされる。打ち上げから39年が経過していることから、すでに運用は終わっていたものとみられる。この衛星を標的としたということは、ロシアが公式に明らかにした数少ない詳細のひとつでもある。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:地球を周回する宇宙ゴミ想像図】

2.DLRはMTUと一緒に燃料電池変換用のDo228を準備

ドイツ航空宇宙研究センターDLRは、水素燃料電池のデモンストレーターに変換するために改装されたドルニエ228ツインターボプロップエンジンを受領した。DLRとパートナーのMTU Aero Enginesは、Do228の左側HoneywellTPE331エンジンを600kWの燃料電池駆動の電気モーターに置き換える予定。液体水素ベースの推進システム開発が進行中で、Do 228での飛行試験のために5年以内に開発するとDLRは述べている。燃料電池は、水素貯蔵タンクの横の胴体に配置される。プロジェクトの鍵は、燃料電池の効果的な冷却システムを開発することだとDLRは言っている。【Flightglobal News】

【DLR提供:水素燃料電池推進システムに換装されるDo228型機】

3.南極にエアバスA340型機が着陸史上初

エアバスA340型機が史上初めて南極の大地に降り立った。運航を担ったのはハイフライ航空。同社は機体だけでなく乗組員や保険、メンテナンスなどもまとめて手配して貸し出す「ウェットリース」を専門としている。ハイフライ航空801便は南アフリカのケープタウンを11月2日に出発。復路は同802便としてケープタウンに戻った。片道5~5時間半の旅となり、2500カイリ(約4630キロ)の距離を飛んだ。チームの南極滞在時間は3時間以下だった。この便は富裕層向け南極旅行を手がけるホワイトデザート社の新プロジェクト「ウルフズファング」からの委託を受けて運航された。同プロジェクトは南極に冒険キャンプを新たに設置する企画で、今回の便で同リゾートに必要な資材を運搬した。南極での着陸地点となったウルフズファングの滑走路はCレベルの飛行場とされているが、厳密には飛行場ではない。困難な条件を伴うため、高度な専門技術のある乗組員だけが同地へ飛行できる。南極への初飛行として記録が残っているのは1928年で、オーストラリア軍のパイロットで探検家のジョージ・ヒューバート・ウィルキンスが単葉機「ロッキード・ベガ1」でサウス・シェトランド諸島のデセプション島から飛んだ。今日まで南極には空港は存在せず、50の仮設のものを含む滑走路があるのみ。南極を訪れる人の大半は船で到達している。【CNN】

【ロイター提供:南極大陸へ初めて着陸に成功したHifly社のA340型機】

日本のニュース

1.ANA系avatarin、ドバイ万博で海外初アバターを日本館に設置

ANAホールディングスが出資するavatarin(アバターイン)は、遠隔操作ロボットを使った瞬間移動サービス「avatarin(アバターイン)」をドバイ万博で活用すると発表した。日本政府が出展し、ANAHDが協賛する日本館に遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」を設置し、館内を歩き回る。newmeを海外に設置するのは初めての試みで、今後の海外展開につなげたい考え。現地時間12月9日から15日まで、ドバイ万博日本館Scene3にnewmeを設置。日本館Scene3ではミニチュア作品作家の田中達也氏が制作した128点を展示し、newmeを通してナビゲーターと話をしながら動き回り、展示物を見学できる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ドバイ万博の日本館に展示される田中達也氏のミニチュア作品】

2.JAXAが新千歳空港で滑走路の雪氷”見える化”22年度まで実証実験

JAXA(宇宙航空研究開発機構)と北海道エアポート(HAP)は、航空安全技術の研究開発を促進するため連携協定をこのほど締結した。雪や氷、火山灰などが航空機の運航に与える気象影響防御技術の研究「WEATHER-Eye」の研究テーマの一つである、滑走路上の雪や氷の状況をリアルタイムに検知する「雪氷モニタリングシステム」の研究を共同で進めていく。新千歳空港で今年度冬季から2022年度にかけて実証実験を実施する予定。雪氷状況をリアルタイムに検知する世界初のセンサー技術や状況の「見える化」により、オーバーランやスタックが起きないよう安全性を向上させる。【Aviation Wire News】

【JAXA提供:千歳空港での雪氷モニタリングセンサーの実証実験模式図】

3.ANAとセブンイレブンがドローン配送実験を西多摩郡で実施

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスとコンビニ大手のセブン-イレブン・ジャパン、ドローンを開発するACSLの3社は、ドローンを活用した配送の実用化に向けた実証実験を東京都西多摩郡の日の出町で11月29日から12月19日まで実施する。セブンイレブンの「ネットコンビニ」で注文された商品を町内の店舗から公園などの配送先へドローンで運ぶ。政府が2022年度に「レベル4」と呼ばれるドローンの有人地帯での目視外飛行の実現を目指していることから、人口が集中する地域を含む郊外での配送実験を行う。利用者がネットコンビニで注文すると、セブンイレブン日の出大久野店の駐車場に設けた発着場から商品を積んだドローンが出発し、町内4カ所の発着場(ポート)のうち、利用者が指定した場所へ向かう。今回は配送料110円(税込)を設定し、日の出大久野店で扱う商品のうち、ドローンで運べるものが配送対象になる。実証実験は29日から始めるが、サービス提供は12月3日からを予定しており、注文は午前9時から午後4時まで受け付ける予定で、日の出町の住民を中心にサービスを提供する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ドローンによる荷物配送実証実験】