KIT航空宇宙ニュース2022WK03

ANAグループが就活イベントをWebで1月29日開催。申し込みは1月24日23時59分まで。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK03

海外のニュース

1.ロールス・ロイスの全電動航空機、世界最速認定

ロールス・ロイスは現地時間1月20日、全電動航空機「スピリット・オブ・イノベーション」が2つの世界新記録を樹立し、世界最速の全電動航空機に認定されたと発表した。世界の航空・宇宙記録を管理・認定するFAI(国際航空連盟)が認証した。同機は英国時間2021年11月16日午後3時45分に、英国防省ボスコムダウン基地の試験場で、3キロにわたり従来の最高速度記録を時速213.04キロ上回る時速555.9キロ(時速345.4マイル)で飛行。その後の飛行では15キロにわたって従来の記録を時速292.8キロ(時速182マイル)上回る時速532.1キロ(時速330マイル)を記録した。今回の飛行中に瞬間最高速度時速623キロ(時速387.4マイル)を達成し、世界最速の全電動航空機となった。スピリット・オブ・イノベーションは、500馬力以上(400KW)の電動パワートレインと航空機用では最も高密度のバッテリーパックを搭載。英国政府が支援する「ACCEL(Accelerating the Electrification of Flight:飛行の電動化を加速する)」プロジェクトの一環で、ロールス・ロイスのほか電気モーターと制御装置を製造するYASA、航空新興企業のElectroflightが主要パートナーとして参画している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:電動航空機世界最速を記録したロールスロイス社「スプリット・オブ・イノベーション」】

2.コリンズ、2025年から737の次世代ラバトリー供給

ボーイングは、レイセオン・テクノロジーズ傘下のコリンズ・エアロスペースを737ファミリー向け次世代ラバトリー(化粧室)の長期的なサプライヤーとして選定した。2025年から搭載を予定している。次世代ラバトリーは、モジュラーデザインを採用。トリム、仕上げ、照明をカスタマイズできるようにした。タッチレス機能や最新のマイクロLED照明などを取り入れている。ナローボディー機(狭胴機、単通路機)では一般的でない選択肢を可能にし、シンプルで効率的なカスタマイズを実現するという。モジュールは数時間で交換でき、アップグレードやリース会社などが特定の運航会社向けのニーズに応えることができる。タッチレス機能はセンサーと赤外線を利用しており、手を振るだけで作動する。タッチレスの蛇口が標準装備となり、トイレの洗浄やゴミ箱、ソープディスペンサー、便座やふたの開閉はオプションで提供する。また、タッチレス機器の制御やヘルスモニタリングなどはシステムで集中管理する。設置可能場所は機内12カ所で、車いす対応など数種類のラバトリーから選択できる。コリンズは737用ラバトリーを2013年から供給している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:コリンズ社の次世代型737型機向け化粧室】

3.FAAが5Gによる新しい787の着陸要件を規定

連邦航空局FAAは、新たに立ち上げられた5Gセルラーネットワークによって引き起こされる潜在的な干渉による航空機の運航を制限するボーイング787固有のADを発行した。当該ADは、滑走路が氷または雪の上に水で覆われている場合に、787が特定の空港に着陸することを禁止している。さらに、他のすべての滑走路条件下、滑走路が乾燥している場合でも、787オペレーターは、そのような空港で「最小必要着陸距離」の計算をする必要があるとしている。この動きは、1月14日の通知に続くもので、この通知では、新しい5Gワイヤレス伝送が原因で、787固有の運用の中断が警告された。携帯電話業界は同意していないが、これらの送信は航空機の電波高度計に干渉する可能性があるとしていたが、エアバスとボーイングのワイドボディとナローボディを含む米国の多くの航空機の電波高度計が干渉から安全であると、FAAはすでに決定している。しかし、787には独特の懸念を示している。当該ADは、787については、特定の滑走路に着陸するときに、システムが空中モードから地上モードに適切に移行しない可能性があり、その結果、減速性能が低下し、着陸距離が長くなる可能性があるとしている。【Flightglobal News】

【ボーイング社提供:ボーイング787型機】

4.中国のeVTOLメーカーAuto Flight社が2025年EASAの型式証明取得を目指す

上海を拠点とする同社は、すでに3機の無人貨物ドローンを開発しているが、「Prosperity I」が最初の有人エアタクシー機になる。全電動機は、250キロメートルの速度で、4人の乗員を輸送できる。設計チームは、シンプルな「リフトアンドクルーズ」設計を採用。アニメーション画像では、垂直方向の動き用に5つまたは6つの電気モーターがあり、水平方向の飛行用に1つのテールモーターがある。Auto Flight社は、昨年10月に初飛行を行ったV1500M自動運転機を開発することにより、有人eVTOLの経験を積んでいる。Auto Flight社は、国際市場でのチャンスを増やすために、国際認証を取得する必要があり、そのため、ヨーロッパで数少ない(テスト)場所の最初の場所として、アウグスブルクに飛行制御研究センターを設立した。Auto Flight社は、eVTOL市場で活躍している唯一の中国企業ではない。EHang社は2014年から販売しており、2017年から2人乗りモデルを開発している。XPeng HTAero社は2013年にスタートし、昨年7月にX2 2シーターを発表し、2024年に展開する予定です。Geely Groupは米国を拠点とするTerrafugiaを買収し、2017年には、Aerofugiaブランドで2台の有人機を開発している。自動車メーカーの吉利社はまた、ダイムラーが部分的に所有しているドイツの新興企業ボロコプターにも投資している。COMACもeVTOL市場に参入しているが、初期段階にある。他の中国のプレーヤーは、TCab、Volant Aerotech、MuYu Aero、およびPantoです。【Flightglobal News】

【Auto Flight社提供:Auto Flight社が開発中のeVTOL機「Prosperity I」想像図】

5.Electric Aviation Groupは、航空セクターの脱炭素化を加速するためにメガワットスタック燃料電池システム開発事業を開始

Electric Aviation Group(EAG)は、世界初のTrue Zero、つまりゼロカーボンおよびNOx排出量ゼロをターゲットとする90人乗りの水素ハイブリッド電気リージョナル航空機(H 2 ERA)の開発を目指している。これを可能にするために、EAGの当面の焦点は、将来のグリーン航空機プラットフォームを提供する適切なサイズと規模での主要な実現技術の開発にある。そこで、EAGはSmartメガワット・スタック(SMS)Fuel Cell Systems Ltdを創設した。この会社は航空宇宙および非航空宇宙アプリケーション向けのメガワットクラスの燃料電池スタックシステムを開発および商品化するスピンオフ会社で、大型航空機アプリケーション向けのスマートメガワットスケール(SMS)燃料電池スタックシステムを開発する。このメガワット規模の燃料電池スタックシステムは、HGV、海運、鉄道などの他のセクターでも使用でき、技術の浸透の可能性が非常に高く、輸送セクターの脱炭素化をさらに可能にする。【Flightglobal News】

【EAG提供:90人乗りの水素ハイブリッド電気リージョナル航空機「H 2 ERA」想像図】

日本のニュース

1. LCCで飛ばすヤマトとJAL貨物機事業

ヤマトホールディングスと日本航空が1月21日、貨物専用機を2024年4月から運航すると発表した。ヤマトが貨物機を導入するのは初めてで、機材はエアバスA321ceo P2F型貨物機を選定した。日本の航空会社がA321P2Fを運航するのは初となり、JALグループで小型旅客機のエアバスA320型機を運航するジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が運航を担う。昼間は成田から新千歳と北九州、那覇、夜は羽田から3空港へ乗り入れ、長距離の宅急便を空輸する計画だ。今回のA321P2FはA321ceoを改修するもので、エアバスは2015年6月にP2Fプログラムを発表。P2Fは「Passenger-to-Freighter;貨物転用型」の略で、A320とA321を旅客機から貨物機に転用する。A321P2Fは10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載可能。航続距離は最長3800キロ(2040海里)、最大離陸重量は93.5トンで、客室だったメインデッキには、AAYコンテナを14台、旅客機でも貨物室として使用していた床下のロワーデッキには、AKH(LD3-45W)コンテナを10台搭載できる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ヤマト運輸の貨物事業機A321P2F想像図】

2.2021年訪日客、過去最低24.5万人 45年ぶり100万人割れ

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数2021年推計値によると、訪日客数は24万5900人で、JNTOが統計を取り始めた1964年以降で過去最低を記録した。過去最高だった2019年と比較すると99.2%減、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が1月下旬以降に流行した2020年比では94.0%減で、1976年以来45年ぶりに100万人を下回った。出国日本人数は2019年比97.4%減の51万2200人で、1971年以来50年ぶりに100万人割れ。一方で、訪日客数を2014年以来7年ぶりに上回った。【Aviation Wire News】

3.ANAグループ、就活生向けオンラインイベント開催

全日本空輸をはじめとするANAグループは、就活生向けのオンラインイベントを1月29日に開催する。グループ16社が参加し、各社の事業や今後の展望などをビデオ会議ツール「Zoom」を通じ紹介する。当日は羽田の空港業務を担うANAエアポートサービスのほか、顧客関連事業や旅行事業などを手掛けるANA Xなど、グループ16社が参加。またANAの人事部が、グループを取り巻く環境について講演する。イベントのエントリーは、ANAグループの採用ページで受け付ける。エントリー締切は1月24日午後11時59分。イベントと採用選考は関係ない。ANAグループは、グローバルスタッフ職(旧総合職)の2023年度入社の新卒採用を3年ぶりに再開。パイロットや障がい者の採用も実施する。ANA本体など「ANAブランド」の客室乗務員は採用を見送るが、今後はキャリア採用(中途採用)も強化していく。また、グループ約40社の従業員約3万8000人を対象に、働き方の選択肢を広げる制度の導入を検討しており、一部は新年度が始まる4月から開始する。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:ANAグループ就活オンラインイベント】

4.エアバスとNTTら、成層圏と地上通信の早期実用化へ 無人機活用、5G/6G網構築

エアバスと日本電信電話、NTTドコモ、スカパーJSATホールディングス傘下のスカパーJSATの4社は1月17日、高度約20キロメートルの成層圏を飛行する高高度滞空ソーラー型無人機(HAPS)の早期実用化に向けた覚書を14日に締結したと発表した。衛星とエアバスのHAPS「ゼファー(Zephyr)」を組み合わせ、大規模ネットワーク構想の実現を目指す。今回の覚書では、ゼファーと各社の通信ネットワークをつなげることで、HAPSの早期実用化に向けた研究開発を進める。ゼファーは成層圏を飛行する無人機で、太陽光を利用したソーラー発電で駆動する。天気や既存の航空交通に妨げられることのない高度を飛行できることから、人工衛星と無人機、有人機の能力のギャップを補い、静止衛星と同様のサービスを提供できるという。4社は、商業化が始まった通信規格「5G」のさらなる高度化や、次世代の「6G」に向けた取り組みとして、空・海などを含む各所に通信網を拡大する「カバレッジ拡張」の検討を進める。HAPSには基地局設備などを搭載し成層圏を飛行することから、静止軌道衛星(Geostationary Orbit Satellite、GEO)と低軌道衛星(Low Earth Orbit Satellite、LEO)を組み合わせた非地上ネットワーク(Non Terrestrial Network、NTN)技術への活用が期待されている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:エアバス社のHAPS「ゼファー」】

5.JAXA、次世代基幹ロケット「H3」試験1号機の打ち上げ再延期を決定

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月21日、次世代基幹ロケット「H3」試験機1号機の予定していた2021年度中の打ち上げを見合わせることを発表した。2020年に見つかった第1段メイン・エンジン「LE-9」の技術的課題から、すでに2020年度から2021年度へと打ち上げ計画の見直しを行っていたが、これまでに解決に向けた一定のめどを得たものの、別の配慮すべき事業の処置も併せて、確実な打ち上げの実現に向けた処置を踏まえた設計を確定する必要があると判断し、2021年度中の打ち上げを見合わせることとしたという。なお、JAXAでは、引き続き、LE-9エンジンの技術的課題への対応を確実に行うとともに、H3ロケットの打ち上げ成功を目指して総力を挙げて取り組んでいくとしている。【マイナビニュース】

【日本経済新聞提供:JAXAの次世代ロケットH3想像図】