KIT航空宇宙ニュース2022WK04

NTTドコモ子会社の「ドコモgacco」が航空業界の仕事を紹介する無料の「JALオンライン講座」を2月17日から開始
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK04

海外のニュース

1.エアアジアグループ、キャピタルAに社名変更

エアアジアを中核とするマレーシアのエアアジア・グループは現地時間1月28日、グループ持株会社の社名を「キャピタルA(CAPITAL A)」に変更したと発表した。マレーシア当局から新社名の正式な認可を取得した。エアアジア・グループはフライトや旅行の予約以外にも使える「スーパーアプリ」をはじめとするデジタル事業を強化しており、食事の宅配など非航空系事業の強化を急いでいる。持株会社の社名は変更するが、航空会社は従来通り「エアアジア」ブランドを使用する。2026年までの目標として、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10億人以上の人々を結ぶグループ航空会社になること、エンジニアリング部門(ADE)が東南アジアのMRO(整備・修理・分解点検)サービス業界のリーダーとなること、スーパーアプリ「airasia Super App」がASEANで選ばれるものになることなどを挙げた。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:社名変更を発表するエアアジアグループ】

2.JAL出資のブーム、グリーンズボロに超音速機の製造施設 24年生産開始

米ブーム・テクノロジー(Boom Technology、本社デンバー)は現地時間1月26日、開発中の超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」の製造施設「オーバーチュア・スーパーファクトリー」の建設地をノースカロライナ州グリーンズボロのピードモント・トライアド国際空港に決定したと発表した。ブームにとって初の本格的な製造拠点となる。年末にも着工し、2024年の生産開始を目指す。スーパーファクトリーは20年間で少なくとも323億ドル(約3兆7000億円)の経済効果が見込めるとしている。また、次世代の超音速専門家を育成するため、地元の学生向けにインターンシップを立ち上げる。オーバーチュアの座席数はビジネスクラスタイプのもので65席から88席を想定。燃料はSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を使用する計画で、就航時からネットゼロ(実質ゼロ)・カーボン達成を目指す。最初の機体は2025年にロールアウト(完成披露)し、2026年の初飛行を経て2029年までの就航を予定している。全長は205フィート(約62メートル)で、コンコルドと略同じ。パイロットは2人、客室乗務員は最大4人を想定しており、スピードは現在の旅客機と比べて約2倍のマッハ1.7、航続距離は4250海里(7871キロ)を計画している。アフターバーナーを使わずに3基のエンジンでマッハ1.7の実現を目指す。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:Boom社超音速旅客機「Overture」の想像図】

3.ボーイング、3年連続最終赤字

ボーイングが現地時間1月26日に発表した2021年通期決算は、純損益が42億9000万ドル(約4912億円)の赤字(20年通期は119億4100万ドルの赤字)で、3年連続での通期赤字となった。単通路機737 MAXの納入再開により赤字幅は縮小したものの、主力中型機の787型機が製造時の品質問題により納入停止が続いていることなどが影響した。売上高は7%増の622億8600万ドル、営業損益は29億200万ドルの赤字(同127億6700万ドルの赤字)、年金や退職金給付の経費を除外した中核営業損益は40億7500万ドルの赤字(同141億5000万ドルの赤字)だった。民間航空機部門は、売上高が21%増の194億9300万ドルで、営業損益は64億7500万ドルの赤字(前年同期は138億4700万ドルの赤字)だった。納入を再開した小型機737 MAXが好調だった一方、787が7月以降は納入ゼロが続いていることが響いた。キャンセル分を差し引いた純受注機数は535機、受注残は4200機以上で、金額ベースでは2970億ドルとなった。737 MAXは2020年12月に引き渡しを再開し、2021年に245機を納入。総納入数の72%が737 MAXとなった。1月24日時点で30万回以上を飛行し、合計の飛行時間は80万時間を越えているという。737の現在の生産レートは月産およそ26機で、今年初頭には月産31機への引き上げを見込んでいる。【Aviation Wire News】

4.FlyZeroが燃料電池を動力源とするリージョナル航空機のコンセプトを発表

英国政府が資金提供した研究プロジェクトFlyZeroは、最大800nm(1,480km)の航続距離で最大75人の乗客を運ぶことができるゼロエミッションリージョナル航空機の初期コンセプトを発表した。6つの電気モーターの電力は、燃料電池システムによって生成され、必要な液体水素を後部胴体の極低温タンクに貯蔵する。モーターは、燃料電池熱管理システム用のパワーエレクトロニクスおよび熱交換器と並んで、ナセルに収容されている。FlyZeroによると、巡航速度は約325kt(600km / h)。ゼロエミッションの単通路および中型航空機の設計とともに、コンセプトの最終バージョンを3月に発表する予定。英国政府はドライウィング、燃料電池、水素ガスタービンを英国産業の重要な分野と見なし、既存機を使い開発を進めている。【Flightglobal News】

【FlyZero提供:燃料電池によるリージョナル航空機の想像図】

5.Elroy Air社が完全自律型eVTOL機「ChaparralC1」を発表

米国サンフランシスコベイエリアに本拠を置くElroy Air社は、完全自律型eVTOL機「ChaparralC1」を発表した。これは、最大300マイルの距離で300〜500ポンドのペイロードを運搬することができる無人の自律型ハイブリッド電気垂直離着陸(eVTOL)機。同社は当該機を「リフトプラスクルーズVTOL機」と表現している。つまり、パイロットの助けを借りずに、垂直に離陸し、翼を搭載し揚力で巡航し、垂直飛行に戻って着陸することができる。新しいモデルは、垂直離着陸時は、機体を持ち上げることができる8つのファンに依存し、巡航中は4つの前方推進機を使用して翼ベースのリフトに移行する。試作段階では、トヨタプリウスなどの車両に動力を供給するのと同じ技術であるハイブリッド電気駆動列が装備されている。ハイブリッド電気モデルは、バッテリー駆動モデルよりも航続距離が長いだけでなく、充電ステーションに頼る必要がない。【Flightglobal News】

【Elroy Air提供:無人完全自律型ハイブリッドeVTOL機「Chaparral C1」】

6.空飛ぶ車が耐空証明を取得

100mph(160kmh)を超える速度と8,000ft(2,500m)を超える高度を飛行できる空飛ぶ車が、スロバキア運輸局から耐空証明を取得した。ハイブリッド自動車で航空機でもあるAirCarは、BMWエンジンを搭載し、通常のガソリン燃料で駆動し、自動車から航空機に変わるのに2分15秒かかる。耐空証明の認定は70時間の飛行試験と200回以上の離陸と着陸に続いて行われたとKlein Vision社は述べた。「AirCar認証は、非常に効率的な空飛ぶ車の大量生産への扉を開く」と、その設計者であるStefan Klein教授は述べている。【BBCニュース】

【Klein Vision社提供:スロバキアの運輸局から耐空証明を取得したFlying Car】

日本のニュース

1.京都府とANA、連携協定締結

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは1月28日、京都府と包括連携協定を締結すると発表した。両者の資源を有効活用し、持続性の高い地域づくりや観光振興などを進めていく。地域や文化・スポーツ振興のほか、交流人口の拡大や人材育成などで連携する。観光・府産品や地域振興では、国内線の機内チャンネルや訪日客向けのウェブサイトなどを通じ、京都府の魅力を発信。国内の観光客のほか、コロナ後を見すえ訪日客の誘客を促進する。また、府域の文化工芸やスポーツ観光などのPR活動も展開する。高校生対象とした地域探究学習プログラム「イノ旅」を府内で展開し、産学官連携で地域密着型の人材交流を提案するほか、傘下のANA NEOが始めるメタバース事業「SKY WHALE」などの先端技術を積極展開する。京都府は1月24日付で日本航空とも地域活性化包括連携協定を締結している。【Aviation Wire News】

2.JAL、ジェットエンジンを泡洗浄

日本航空は1月27日、グループで地方路線を担うジェイエアが運航するエンブラエル170(E170)型機のエンジン洗浄方法に、泡洗浄を導入したと発表した。日本の航空会社では初めてで、E170が搭載する米GE製CF34に対しては世界初導入だという。JALはCO2(二酸化炭素)排出量削減のため、定期的に航空機のエンジンを洗浄して燃費を改善。通常は水で洗浄するが、新たに導入した泡洗浄「GE 360 フォームウォッシュ」は加熱した特殊な泡状の洗浄剤をエンジン内部に注入することで、飛行中に吸い込んだちりやほこりの粒子を化学的に除去できる。泡洗浄の導入により、燃料削減量を年間最大約8万2000リットル上乗せでき、CO2排出量約285トンに相当。泡による洗浄のため、水洗浄よりも水の使用量を削減できる。カート一体型のシステムで、格納庫の内外どちらでも使用でき、ボーイング777型機向けGE90や787向けGEnx、767向けCF6といったCF34以外のGE製エンジンにもライセンスを取得すれば使用できる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:泡洗浄中のCF34型エンジン】

3.ANA、MaaS活用の車いす移動支援

全日本空輸とJR東日本、東京モノレール、エムケイ(京都市)の4社は1月25日、車いす利用者向け移動支援サービス「一括サポート手配」の実証実験を始めると発表した。出発地から目的地まで、移動時に必要な介助をオンラインで一括手配できるサービスで、社会実装に向けANAが中心となり検証する。実証実験は2月3日から28日まで展開する。ANA便を使い、山手線沿線と京阪神エリア間を相互に移動する車いす利用者が対象で、航空券の予約時に登録した介助に必要な情報を各社のシステムと連携し共有する。都内を出発する場合、山手線巣鴨駅から浜松町駅を経由し羽田空港へ向かい、羽田-伊丹間はANA便を利用する。伊丹空港着後はエムケイのタクシーを使い、大阪・京都・神戸の各地へ移動する。一括サポート手配には、航空や鉄道、バス、タクシーなど、マイカー以外の異なる交通手段を1つの移動手段として捉える概念「MaaS(マース:Mobility as a Service)」を活用。ANAの経路検索サービス「空港アクセスナビ」を使い、予約時に車いす利用の有無などサポート情報を入力し、ルート検索後に地上交通のサポートも一括手配する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:「MaaS」を活用した車いす一括移動サービスのイメージ】

4.ドコモgacco、JALパイロットやCAが無料講座「航空業界で働く人々」

NTTドコモ傘下で無料講義を手掛けるドコモgacco(東京・港区)は1月25日、航空業界で働く人々をテーマにした無料オンライン講座の受講者募集を始めた。日本航空の現役パイロットや客室乗務員などが仕事を解説する。講座の公開期間は2月17日から6月30日まで。講義はパイロット編が2回、客室乗務員編と地上職編が各1回の計4回。パイロット編は仕事内容や訓練の紹介、採用担当へのインタビューなどを取り上げ、客室乗務員編では仕事内容に加えて第一印象の重要性など、コミュニケーションを取る際のポイントなどを紹介する。地上職編は本社勤務の社員がどのような仕事に携わっているかを地域事業本部の社員が説明する。受講料や登録費用は無料。gacco(ガッコ)のウェブサイトから登録する。1つの講座は10分程度の動画となる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JALオンライン講座】

5.ピーチ、整備士やスタッフ職も採用再開

ピーチ・アビエーションは1月25日、客室乗務員に加えて整備士とスタッフ職の採用を再開したと発表した。アフターコロナを見据えたもので、ピーチが採用を再開するのは約2年ぶり。整備部門は2023年度入社の新卒採用も再開を予定している。客室乗務員は24日から募集を開始し、整備士と整備・営業・システム各部門のスタッフ職は25日から始めた。客室乗務員は50人程度、整備士とスタッフ職は合わせて20人程度の採用を予定している。整備士は若干名募集。A320一等航空整備士または他機種一等航空整備士資格保有者、航空機部品、原動機整備経験者、航空機製造関連業務経験者のいずれかに該当する経験者が対象で、A320の型式を保持していない人は入社後に取得できる。勤務地は関西空港、雇用形態は正社員で、入社時期は今年4月以降応相談としている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供】

6.上智大学とJALが連携協定

上智大学などを運営する学校法人上智学院と日本航空は、連携協定を1月21日付で締結した。両者は「サステナブルな社会の実現」を共通の理念とし、JALのSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)達成に向けた実践例などを用いて、上智大学のサステナビリティ教育や次代を担う人材育成に協力する。また、両者の知見などを活用して持続可能な地域活性化に取り組む。。今後はJAL社員によるSDGsなどをテーマにした講義、環境保全と観光促進による持続可能な地域活性化をテーマとした共同研究、上智大学へのJAL社員出向などを予定している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:連携協定を締結した、上智大学曄道学長(左)とJAL赤坂社長(右)】