KIT航空宇宙ニュース2022WK11

タカラトミーとJAXAが共同開発した超小型月面ロボット「SORA-Q」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK11

海外のニュース

1.BA、機内のマスク着用緩和 英国入国は18日から検査不要

ブリティッシュ・エアウェイズは、機内でのマスク着用基準を現地時間3月16日から変更する。乗客の渡航先が機内でのマスク着用を必要としていないことが明確な場合は、着用を任意とする。一方で、周囲の乗客に配慮するよう呼びかけている。英国政府は18日午前4時から、英国へ海外から入国する際、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査や乗客名簿への記入が不要となる。ワクチン接種の有無にかかわらず適用する。一方、日本路線のロンドン-羽田線と関西線の2路線は現在運休している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供】

2.SMBCアビエーションキャピタル、ロシア航空会社のリース契約解除

アイルランドのダブリンに本社を置く大手航空機リース会社SMBCアビエーションキャピタルが、ロシアの航空会社に対してリース契約の解除を通告した。ロイター通信が3月15日に報じた。EU(欧州連合)の行政執行機関であるEC(欧州委員会)は対ロシア制裁の一環で、航空機リース会社に対してロシアの航空会社との契約を28日までに解除するよう指示している。SMBCアビエーションキャピタルは、アエロフロート・ロシア航空やS7航空、ウラル航空などロシアの航空会社に35機をリース。SMBCアビエーションキャピタルのウェブサイトによると、2021年12月31日時点で356機の航空機を保有しており、ロシアの航空会社にはエアバスA320neoなどをリースしている。ロシアの航空会社が運航している航空機は駐機中のものも含めて約1000機あり、英国のデータ分析会社シリウムによると、およそ半分の約500機がロシア国外からのリース機になっている。航空機リース世界最大手のエアキャップも、2月28日にロシアでの航空機リースを停止すると発表。150機以上の航空機をロシアの航空会社へリースしていた。ロシアのタス通信は現地時間14日、ロシアの航空会社が外国企業からリース契約している航空機に対し、プーチン大統領が使用権を与える大統領令に署名したと伝えた。欧米を中心としたロシア制裁への対抗措置で、自国の国内線の運航を認めている。【Aviation Wire News】

【ロイター提供:ロシア国営航空アエロフロートの航空機】

3.TextronがPipistrelを買収

スロベニアの電気航空機のパイオニアであるPipistrel(ピピストレル)は、ビーチクラフト、ベル、セスナの親会社である米国のコングロマリットであるテキストロンに買収される。買収価格の詳細は明らかにされていないが、規制当局の承認を条件として、取引は第2四半期に完了する予定であるとTextronは述べている。買収が成立すると、同社は新しい部門であるTextron eAviationを形成し、持続可能な航空機の開発に焦点を合わせることになる。Textronによると、この買収により、Pipistrelは「より多くのリソース、技術および規制の専門知識、グローバルな航空機販売およびサポートネットワークにアクセスできるようになり、電気およびハイブリッド電気航空機の開発と認証を加速できるようになります」とのこと。【Flightglobal News】

【Pipistrel提供:2020年EASAで型式証明を取得した全電動航空機「ヴェリスエレクトロ」】

4.GlobalXがEve社のエアタクシー機を200機購入し、南フロリダでの事業開始を計画

エンブラエルの子会社イブアーバンエアモビリティ(Eve)社は、マイアミを拠点とするグローバルクロッシングエアライングループと、2026年初頭から納入が予定されている200機の垂直離着陸機(eVTOL)を取得するという意向書(MoU)に署名した。Eveは3月16日に取引を開示し、現在、バックログに1,785のeVTOLがあると述べている。「私たちは、南フロリダのフォートローダーデール-ハリウッド国際空港にある新しいラインメンテナンス施設をベースにします」と、グローバルクロッシングの最高経営責任者であるエドワイゲルは述べている。また、「この航空機を使用して、クルーズの乗客をマイアミ国際空港とフォートローダーデール-ハリウッド国際空港のチャーター便に接続する予定です」と述べた。GlobalXは、マイアミ、ラスベガス、アトランティックシティに拠点を設置しており、今年はA321貨物船を改造した貨物部門を立ち上げる予定。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:Eve社のeVTOL機】

5.EHangはAerotreeとの新しいパートナーシップを構築し60機のeVTOL機の購入を予約

中国の新興企業EHangは、マレーシアの航空会社Aerotreeと契約を結び、トレーニング、保守、修理、オーバーホールサービスなど、国内で都市航空モビリティ(UAM)事業を展開することを確認した。この契約には、EH216シリーズからの50機とVT-30eVTOL機の10機の事前注文も含まれている。Aerotreeは既にEHangからEH216-Sを1台購入しているが、これはマレーシアでのEHang最大の予約注文である。なお、同社は今年初めにAirXとの契約を締結しており、また、日本のヘリコプター航空ネットワーク会社からも50機のEH216eVTOL機の予約注文がある。【Flightglobal News】

【EHang社提供:VT-30eVTOL機】

日本のニュース

1.国交省、PWエンジン777の運航停止解除 国内はANAのみ、4-6月期の再投入目指す

国土交通省航空局(JCAB)は3月18日、米プラット&ホイットニー製エンジン「PW4000」を搭載するボーイング777型機の商業運航再開を認めると発表した。国内で唯一保有する全日本空輸が運航できるようになるほか、海外からの乗り入れ停止も解除する。同機の商業運航再開は、2021年2月の運航停止以来1年1カ月ぶりとなる(JALは全機退役済み)。JCABは同型機の運航再開について、再発防止策を設定。エンジン内にあるファンブレードの非破壊検査の強化や、インレット・カウルの強化、火災防止向けの改修などを条件に、防止策を施した機体の運航再開を認める。2021年2月に米国で発生した米ユナイテッド航空の777-200のエンジントラブルを受け、JCABは同じエンジンを搭載する777の運航停止を、ANAと当時保有していた日本航空に指示。海外の航空各社にも同型機での乗り入れ停止を指示していた。同エンジンを搭載する777は国内では現在ANAのみが15機保有しており、すべて国内線で運航していた。内訳は777-200が2機と航続距離延長型の777-200ERが8機、長胴型の777-300が5機。ANAによると今後改修を進め、2022年4-6月期(第1四半期)での再投入開始を目指しているという。ANAとJALが国際線に投入している777-300ERや、JALが国内線に転用した777-200ERは米GE製エンジンGE90を採用しており、運航停止の対象外となっている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ユナイテッド航空の777-200型機の右側エンジン・トラブル写真】

2.JAL系ZIPAIR、CAを100人採用 8月以降入社

日本航空が100%出資する中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア)は3月18日、客室乗務員の採用を始めた。入社は今年8月以降の会社が指定する時期となる。採用予定数は100人程度で、応募資格は専門学校、高専、短大、4年制大学、大学院を今年3月末時点で卒業または修了していることなど。客室乗務員として乗務するほか、サービス企画業務などに携わる場合もあるとしている。雇用形態は訓練期間中が契約社員、訓練合格後は正社員。勤務地は成田空港または会社が指定する場所となる。オンラインの会社説明会を3月31日から4月2日まで3日間開催。エントリー後に申し込める。選考は書類・動画選考、一次選考、最終選考で、一次選考は4月29日から5月5日にかけての実施日の内いずれか1日、最終選考は5月13日から15日のいずれかに実施する。【Aviation Wire News】

3.ANAとJAL、新型コロナ対策で国交大臣表彰 車いす客向けなど共同指標策定

全日本空輸と日本航空は3月17日、国土交通省がバリアフリー化の推進に貢献した団体を表彰する「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰」を共同受賞したと発表した。新型コロナウイルスの感染防止対策として、車いすなど手伝いが必要な利用客向けに両社で共同策定したガイドラインなどが評価された。同賞をANAとJALで共同受賞するのは初めて。両社は2020年10月に、車いすや視覚・聴覚障がい者など手伝いが必要な利用客へのガイドラインを、新型コロナ感染症対策を盛り込み策定。係員は聴覚障がい者との応対時に口元が見えるフェイスカバーを着用することや、視覚障がい者には誘導時に手袋の着用を求めるなどの対策を施している。【Aviation Wire News】

【JAL/ANAプレス・リリース提供:JAL/ANA2社共同お手伝いを必要とするお客様サービス】

4. ブルーインパルス、西武ライオンズ開幕戦で展示飛行

航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」は、3月25日にベルーナドーム(埼玉・所沢市)で開かれるプロ野球パシフィック・リーグ公式戦の西武ライオンズ開幕戦で展示飛行を実施する。西武ライオンズによると、ブルーインパルスの飛行は昨年4月に予定していたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で中止。今回改めて企画したという。近隣の空自入間基地で毎年11月3日に開かれている入間航空祭が2年連続で中止となる中、ブルーインパルスの展示飛行を楽しみにしている近隣住民やファンに向け、同じブルーをチームカラーとするライオンズがコロナ収束の願いを込め、夢、希望、感動、笑顔を届けたいとの思いから自衛隊の協力の下で実施が決まった。25日は対オリックス戦。ブルーインパルスの飛行ルートや時間などは、ライオンズの公式サイトなどで告知する。また、開幕イベントとして中部航空音楽隊によるコンサートも開く。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:東京五輪でのブルーインパルス飛行展示】

5.タカラトミーなどが開発した変形型月面ロボット、JAXAの小型月着陸実証機に搭載

タカラトミーは3月15日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同で開発した超小型変形型月面ロボットが、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」に搭載され月面でのデータ取得を行う計画であることを明らかにし、併せて自社公式Webサイトにて、実際に変形して走行する様子などを公開した。この変形型月面ロボット(Lunar Excursion Vehicle 2:LEV-2)の愛称は「SORA-Q(ソラキュー)」で、直径約80mm、質量約250gの球形の超小型ロボット。2016年よりタカラトミーとJAXAが共同開発を開始、2019年にソニーグループが、2021年に同志社大学が加わり、4者でSLIMへの搭載に向けて開発が進められてきた。月上空にてSLIM搭載機より分離され、月面着陸の後、球体から左右に広がる形で変形。外殻部分を車輪にして、左右の車輪を同じ高さで回転させて全身するバタフライ走行と、左右の車輪を別々の高さで回転させて前進するクロール走行の2種類の走行が可能。また、機体前後に2つのカメラを搭載しており、SLIMに搭載されるもう1つの月面探査機(Lunar Excursion Vehicle 1:LEV-1)とBluetoothで接続し、LEV-1経由で月表面の画像などを地球に送信することも計画されている。主なミッションとしては、以下の5つが掲げられている。

① 月面に到達すること

② SLIM探査機から分離して月面に着陸すること

③ 月面のレゴリス上を走行し、動作ログを取得、保存すること

④ 着陸機周辺を撮影し、画像を保存すること

⑤ 撮影した画像データ、走行ログ、ステータスをSLIM探査機とは独立した通信系で地上に送信すること

SLIMミッションは、2022年度に打ち上げられる予定のH-IIAロケットに相乗りの形で実施され、打ち上げ後数か月をかけて月を目指すこととなる。また、変形型月面ロボットは、 ispaceの月着陸機「HAKUTO-R」による月面輸送でも月に行く予定で、合計2回の月面探査が行われる予定となっている。【マイナビニュース】

【JAXA提供:タカラトミーとJAXAが共同開発した超小型月面ロボット「SORA-Q」】