KIT航空宇宙ニュース2022WK12

尾部が大きく損傷し失われた状態で墜落していく中国東方航空737₋800型機の写真
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK12

海外のニュース

1. 中国東方航空のボーイング737₋800型機が3月21日墜落

中国東方航空旅客機墜落事故の国家緊急処置指揮部は23日夜、21日に雲南省昆明から広東省広州に向う途中で墜落した東方航空MU5735便の飛行事故調査に関する最新の進展について発表した。それによると、事故現場で23日午後4時30分ごろ、事故機に搭載されていたフライトレコーダー(ブラックボックス)2台のうちの1台が発見された。現場の調査員が回収されたブラックボックスを検査した結果、外部の損傷が激しいものの、メモリーユニットの外観は比較的良好で、コックピットボイスレコーダーであると暫定的に判定した。ブラックボックスは解読のため北京市内にある民間航空専門機関に移送された。調査員はもう1台のフライトデータレコーダーの捜索に全力を挙げている。事故機には、機長、副操縦士、オブザーバーを務めるもう一人の副操縦士の3人が搭乗していた。事故現場からは旅客機の残骸や人体の一部も見つかっている。偶然撮影されていた写真からは、墜落機の尾部が大きく損傷し失われていることが分かる。なお、現在東方航空は737₋800型機の全ての飛行を停止している。【Yahooニュース】

【Togetter提供:尾部が損傷し墜落する東邦航空機の737₋800型機の写真】

2.EASAは、都市型エアモビリティビークル用Vertiportの垂直設計ガイダンスを作成

アーバンエアモビリティビークルの離着陸帯であるVertiport(バーティポート)の設計に関する最初の詳細なガイダンスを、ヨーロッパの航空安全規制当局が作成した。eVTOLおよび同様の航空機のインフラストラクチャ要件は、業界および都市計画者が安全な垂直設計を作成するのに役立つ、と欧州連合航空安全機関(EASA)は述べている。ガイダンスは、寸法と視覚補助、アプローチと離陸エリア、ダウンウォッシュ保護、タクシールート、保護された側斜面、および緊急時の手順などの側面をカバーしている。EASAは、設計仕様に加えて運用上および規制上の監視に関する考慮事項を含む、ルール作成手順の下で、より完全な一連の規制要件を作成している。【Flightglobal News】

【EASA提供:漏斗状の障害物のない、全方向性アプローチ、飛行禁止セクターを備えたVertiportのイメージ図】

3.ロシア製MC-21、Tu-204、Superjet 各機はEASA証明書の一時停止の影響を受ける

いくつかのロシアのMC-21、Tu-204、Superjet等の航空機タイプは、ロシアの航空産業に対する制裁のパッケージの一部として、欧州連合航空安全機関(EASA)によって正式に型式証明が一時停止された。EASAは、ハネウェルのアビオニクスを備えた双発機のロールスロイスRB211搭載バージョンであるツポレフTu-204-120CEの証明書を一時停止した。【Flightglobal News】

日本のニュース

1. JAL、電動トーイングトラクターでCO2削減

日本航空は3月23日、羽田空港に電動トーイングトラクターを導入すると発表した。貨物コンテナなどを牽引する車両で、7月以降に豊田自動織機製3TE25を2台導入する。トーイングトラクターは、貨物コンテナを乗せた「ドーリー」と呼ばれる台車などを空港内で牽引する車両。今回導入する3TE25は、エンジン車と同等のけん引能力、登坂能力を持ち、左右それぞれ独立した高出力、高効率な2つの密閉型高効率AC駆動モーターを採用している。既存のエンジン式のものと比べ、1台当たりのCO2(二酸化炭素)排出量を年間約6トン削減する効果があるという。JALは中期経営計画でCO2削減を掲げており、2050年に実質ゼロを目指す。取り組みの一環として、空港の制限区域内で使用する特殊車両の電動化などに取り組む。今回の2台は2月に発注した。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:豊田自動織機製電動トラクター「3TE25」】

2.ユーグレナ、代替燃料SAF「サステオ」遊覧飛行や航空測量で使用

ユーグレナが製造する自社製代替燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」を使った遊覧飛行などが3月に入り行われた。原料に使用済み食用油とミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)由来の油脂を使ったバイオ燃料「サステオ」をSAFとして使用した。鈴与グループのフジドリームエアラインズは、定期便を運航する航空会社では初めてサステオを使ったチャーターフライトのJH8100便(エンブラエル175型機、登録記号JA08FJ)を3月16日に運航。静岡空港から県営名古屋空港まで77人の乗客を乗せて約1時間飛行した。バイオ燃料のサステオは、SAFや次世代バイオディーゼル燃料として利用できる。翌17日には、航空測量を手掛けるアジア航測(新宿区)が自社で保有・運航するターボプロップ機テキストロン・アビエーションC90GTi(JA81AJ)にサステオをSAFとして使用。大阪の八尾空港発着で小豆島上空を周回する約1時間のフライトとなった。ユーグレナによると、航空測量業界でのSAF利用は日本初だという。FDAのフライトでは、使用する燃料の10%に当たる1000リットル、アジア航測のフライトは5%に当たる193リットルを使用した。【Aviation Wire News】

【ユーグレナ社提供:ミドリムシから作られた持続可能な航空燃料SAF「サステオ」】

3.JAL、トウモロコシ原料のSAF導入へ 27年から米西海岸発、ワンワールド各社と追加調達

日本航空などが加盟する航空連合ワンワールド・アライアンスは現地時間3月21日、ロサンゼルスなど米西海岸発の定期便にSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)を追加導入する意向を発表した。2027年から、JALを含めた加盟6社が共同で導入する。導入するのは米Gevo(ジーボ、コロラド州)製のSAFで、非食用のトウモロコシを原料とするもの。JALのほかアラスカ航空とアメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、フィンエアー、カタール航空の各社が導入し、2027年からの5年間で6社合計約75万キロリットルを調達する。米西海岸のカリフォルニア州発便で使用する。対象となるのはサンディエゴとサンフランシスコ、サンノゼ、ロサンゼルスの各空港で、JALはサンノゼを除く3空港発便で導入する。ワンワールドは2020年9月に、2050年までにCO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラルの達成」を共通目標として掲げている。2021年11月には航空連合として初のSAF導入となる、廃食油を原料とする米Aemetis(アメティス、カリフォルニア州)製のSAFを調達する意向を示しており、追加導入によりSAFのさらなる開発や製造の促進につなげたい考え。JALは2050年のCO2総排出量実質ゼロに向け、燃料のSAFへの置き換えを進めている。2021-25年度のグループ中期経営計画によると、2025年に全燃料搭載量の1%、2030年に10%をSAFに置き換えるという。また、日本航空、全日本空輸や日揮ホールディングスら16社でSAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を3月2日に設立。国産SAFの商用化や普及、拡大に取り組んでいる。【Aviation Wire News】

4.2025年の大阪・関西万博に向け、空飛ぶクルマの大阪版ロードマップを策定

SkyDriveは、3月23日に開催された「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル(大阪ラウンドテーブル)」の全体会議にて、同社の2025年の大阪・関西万博時における「空飛ぶクルマ」の実装と2026年以降の大阪での実装についての計画の一部を発表した。大阪ラウンドテーブルは、空飛ぶクルマの実現に向けた取り組みを加速させる事を目的として、2020年11月に大阪府が事務局となり、関係者間で、空飛ぶクルマの実現に向けた協議や実証実験を行う中心として設立された。SkyDriveは設立当初より参画している。これまで大阪ラウンドテーブルでは、空飛ぶクルマの実現に向けた今後の取り組みの工程表となる「大阪版ロードマップ」の策定に向けて、「機体・運航サービス」、「離着陸場」、「管制・通信」、「社会受容性」の4つに関して、議論ならびに実証実験が行われてきたという。この議論と実証実験を基に策定した「大阪版ロードマップ」が3月23日に発表された。大阪版ロードマップは、「実証実験に向けた環境整備」「離着陸場の整備」「事業環境の整備」「社会受容性の確保に向けた取組の推進」「国との連携」「府内外の自治体との連携」「在阪・大阪RT Green / Orange Table参画事業者との連携」の7つのアクションプランが掲げられている。SkyDriveは、発表された大阪版ロードマップに沿って、社会受容性の向上と技術検証を重ね、2025年の大阪・関西万博時における空飛ぶクルマのエアタクシー事業をスタートに、2026年以降の事業拡大につなげていきたいとした。【マイナビニュース】

【Skydrive提供:2025年万博開催時における空飛ぶクルマ実装について】

5.三菱重工とシエラスペース、商用宇宙ステーションの開発で協業開始

三菱重工業と米シエラスペース(Sierra Space Corporation)は3月22日、国際宇宙ステーション(ISS)退役後の地球低軌道利用への参画を視野に、米国の民間企業などによる開発・所有・運用を目指す商用宇宙ステーション「オービタル・リーフ(Orbital Reef)」の開発に関する覚書(MOU)を締結し、両社の知見を活かした幅広い技術分野での実現性検討を実施していくことを発表した。ISSは、2024年から2030年まで運用が延長されたが、そのあと廃棄処分となり、大気圏再突入後、太平洋に安全に落下させる計画が検討されている。そこで、ISSがいなくなる高度約400kmの地球低軌道への投入が計画されているのが、オービタル・リーフである。シエラスペースは、往還型の無人宇宙輸送機「Dream Chaser」の開発で知られ、商業宇宙分野におけるリーディングカンパニーの1社であり、Amazonの創設者であるジェフ・ベゾスが設立したブルーオリジンと共同で、ボーイングやレッドワイヤースペース、ジェネシスエンジニアリングなどの協力も得てオービタル・リーフの開発を進めている。オービタルリーフは、宇宙の「多目的ビジネスパーク」として構想されており、研究、産業、国際および商業などにおいて、宇宙輸送とロジスティクス、宇宙居住、機器の収容、および運用を含む、コスト競争力のあるエンド・ツー・エンドのサービスを提供する計画だという。完成予定は、現時点では2035年とされている。【マイナビニュース】

【三菱重工提供:シエラスペース完成予想図】