KIT航空宇宙ニュース2022WK19

ハワイアン航空が投資したRegent社が開発中の全電動シー・グライダー航空機「モナーク」:海面上を地面効果を利用して飛行
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK19

海外のニュース

1. STOL型ATR42-600S、初飛行成功

仏ATRは現地時間5月11日、ATR42-600S型機が初飛行に成功したと発表した。ターボプロップ機ATR42-600を改良し、短い滑走路でも離着陸できるSTOL(短距離離着陸)型で、フランカサル空港を11日午前10時に離陸し、2時間15分飛行した。年末には機体に新たな大型ラダーを追加して最終構成になり、2023年の型式証明取得フェーズに入る見通し。初飛行では、機体システムの性能測定などが行われた。今後は自動ブレーキやグランドスポイラー、テイクオフ・レイティング・システムなど、新機能のテストを実施していく。ATR42-600Sは、800-1000メートルの短い滑走路でも離着陸できる。母体となるATR42-600の標準座席数は1クラス48席で、800メートル級の滑走路を離着陸する場合は乗客数を約半分の22人に抑えなければならない。ATR42-600Sは定員48人のまま運航でき、運航コストを抑えられる。ATRによると、滑走路長が1000メートル以下の小規模空港は、佐渡空港など日本に10カ所あるといい、新潟で立上げを予定しているトキエアも導入を検討している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:初飛行に成功した短距離離着陸機ATR42-600S】

2.FAAの eVTOL機の安全性認証の変更は、パイロット訓練の要件に影響を与える可能性有

次世代の電気垂直離着陸(eVTOL)航空機メーカーは、連邦航空局(FAA)の認証要件の変更により、この2020年代後半に計画されているeVTOL機の商用運航に入ると、パイロット不足になる可能性を懸念している。FAAは、eVTOL機の安全認証方法を変えることの主な目的はパイロットト訓練に関するものであるという。つまり、潜在的なeVTOL機パイロットは、追加の評価と証明書を取得するためにより多くの時間、労力、およびお金を費やす必要があり、パイロット不足にさらに圧力をかける可能性がある。FAAは、現在の規制は従来の飛行機とヘリコプター向けに設計されており、ヘリコプターモードで離陸し、飛行のために飛行機モードに移行するパワードリフト(eVTOL機)を操作するために、パイロットを訓練する必要性を挙げ、パワードリフトを操作するパイロットの認証を可能にするため、規制アプローチを変更していると語った。【Flightglobal News】

3. オランダの新興企業Venturi Aviationは全電動44人乗り航空機の2030年就航を目指す

オランダの新興企業であるVenturi Aviationは、バッテリー技術によって航続距離が制限されているにもかかわらず、2030年までに44席の全電動リージョナル航空機Echelom 01を市場に投入できると確信している。Echelon01は、44席、長さ38メートル、幅36メートルの全電動航空機で、8つのプロペラを搭載。最大550kmまで飛行可能で、これは、ヨーロッパの全フライトの15%をゼロ・エミッションに置き換えるのに十分な航続距離です。到着地で交換可能なバッテリーを搭載し、新しくより効率的なバッテリーが導入されたときに迅速に更新が可能。同社はまた、ヨーロッパの空港に充電ステーションのネットワークを確立することを計画している。これにより、Echelon01は35分で完全に充電できるようになる。【Flightglobal News】

【Venturi Aviation提供:全電動44人乗りリージョナル航空機「Echelon01」想像図】

4.ハワイアン航空が新しい形態の全電動航空機を開発中のRegent社に投資

ハワイアン航空は、島から島へ乗客を輸送するための新しい形態の全電動シーグライダー航空機「モナーク」を開発しているRegent社へ投資した。小型航空機メーカーRegent社に投資することで、島間で乗客をシャトル輸送するために、全電動シーグライダー航空機「モナーク」を展開する可能性がある。新しい飛行機は、2028年までに商用サービスが利用可能になると予想されている。シーグライダーは温暖化ガス排出量がゼロで、従来の飛行機のように空中を数千フィート飛行するのではなく、水面上を飛行する。Regent社によれば、「モナーク」は航空機の速度で飛行するが、港湾の運用コストが追加されるとのこと。現在、同社のシーグライダーは、「次世代バッテリー」を使用して最大巡航速度180マイル/時で、最大500マイルの航続距離を達成することを目標にしている。【Flightglobal News】

【Regent社提供:全電動シーグライダー「モナーク」想像図】

5.航空機内の空気を「パーソナライズ」する米国のキャビンシステムがFAAの承認間近

米国企業のPexco Aerospace社は、乗客間の共有空気を減らすことを目的としたキャビン・システムの認証を7月までに、FAAから取得する予定。シアトルを拠点とするデザイン会社Teague社から空気遮断技術を取得したPexco社は、今後フェイスマスクの義務が段階的に廃止されるため、「仮想ソーシャル・ディスタンス」を提供すると述べている。同社は、このシステムは乗客に「プレミアムでパーソナライズされた」空気を提供すると述べている。このシステムは、航空機内の通気口の上部に設置され、HEPAフィルターと連携して機能する。Pexco社によると、空気遮断方法は、浄化された空気を乗客の周りや乗客の間でリダイレクトして、「保護エアバリア」を確立している。「これらはキャビン全体に均一な空気の流れを作り出し、乗客間の呼気の共有を最小限に抑え、使用済みの空気が除去される速度を高めます」と述べている。エアバスA320とボーイング737に搭載された計算流体力学の分析とテストにより、この開発により空中浮遊粒子の拡散が減少し、隣接する乗客間で共有される空気粒子の量が76%削減されることが示された。テストでは、機内が満席で、乗客の誰もマスクを着用していないことを前提とした。Pexco社はまた、このシステムは、粒子がキャビンから排出され、新たに精製された空気に置き換わる速度を2倍にすると述べている。このシステムは、通気口からの空気の流れを「再形成」するが、キャビンの温度や供給される空気の量を変更することはないとしている。【Flightglobal News】

【Flightghlobal提供:Pexco社が開発した航空機内の「パーソナライズド・エアー」システム】

日本のニュース

1. ANA、キッザニア福岡にパビリオン出展 子供向けパイロット・CA仕事体験

全日本空輸は、7月31日にオープンする子供向け仕事体験施設「キッザニア福岡」(福岡・博多区)へ飛行機パビリオンを出展する。キッザニア東京(江東区豊洲)と、キッザニア甲子園(兵庫・西宮)に続く出展で、子供たちに仕事体験を通じ接客の楽しさをなど提供する。飛行機パビリオンでは東京と甲子園同様、パイロットと客室乗務員(CA)の仕事体験を提供。パイロットはフライトシミュレーターの操作、CAは機内アナウンスや機内食の提供などを体験できる。キッザニアは1999年9月に、メキシコ・サンタフェで開業した子ども向け職業体験施設で、日本では2006年10月5日にキッザニア東京、2009年3月27日にキッザニア甲子園を開業している。ANAは、東京と甲子園のオープン当初からパビリオンを出展。仕事体験を通じ、子供たちが航空業界への関心が高まるのを目指している。7月31日にオープンするキッザニア福岡は、ANAを含む60のパビリオンで構成。およそ100種類の仕事やサービスを体験できる。航空関連では福岡空港の警備会社「にしけい」が「空港警備センター」を出展し、空港保安検査員の仕事体験を提供する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:キッザニア東京のANAパビリオン】

2.ANA、成田-ホノルル7/1再開 A380で週2往復

全日本空輸は5月10日、成田-ホノルル線を7月1日に再開すると正式発表した。再開後は週2往復で、総2階建ての超大型機エアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」を投入する。運航中の羽田-ホノルル線も増便し、7月からの東京(羽田・成田)-ホノルル間は1日1往復運航となる。成田-ホノルル線は通常1日2往復で、1便目のNH184/183便を再開し、金曜と土曜の週末のみ運航する。機材はA380(4クラス520席:ファースト8席、ビジネス56席、プレミアムエコノミー73席、エコノミー383席)を投入する。ANAはA380を3機保有しているが、就航していないオレンジ色の3号機(登録記号JA383A)を除き、当面は青い初号機(JA381A)とエメラルドグリーンの2号機(JA382A)の2機体制で運航する見込み。定期便への導入は1年4カ月ぶり。羽田-ホノルル線は現在週3往復で、5月28日からは週4往復に増便。土曜を追加し、月曜と金曜、日曜と合わせ週4往復運航する。さらに7月1日からは週5往復に増便し、運航日を月曜と火曜、水曜、木曜、日曜に変更する。機材はボーイング787-9型機(3クラス246席:ビジネス40席、プレミアムエコノミー14席、エコノミー192席)を投入する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:成田~ホノルル線再開で使用されるANAのA380型機】

3. アストロスケールの技術実証衛星、デブリ摸擬衛星へのランデブーに成功

日本の新興企業で、宇宙ゴミの回収事業を進めているアストロスケールは、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」(エルサディー)の捕獲用の「サービサー衛星」が、8つのスラスタのうち4つが故障している中、遠距離からの物体の観測および追跡、非制御物体への誘導接近(ランデブー)、絶対航法から相対航法への切替えなども含め、デブリを摸擬した「クライアント衛星」へのランデブーの実証に成功したと発表した。ELSA-dは、軌道から安全にデブリを除去するための捕獲機構を備えたサービサー(~175kg)と、デブリを模したクライアント(~17kg)で構成された衛星。サービサーにはランデブーシステムと磁力による捕獲機構が、そしてクライアントにはドッキングを可能にする磁性体のドッキングプレートが搭載されているのが特徴。なおELSA-dはデブリ除去(デブリの捕獲)に関わる一連のコア技術の実証を目的とした世界初の商業ミッションであり、2021年3月にカザフスタンのバイコヌール基地より打ち上げられて以降、複数の実証を進めてきた。【マイナビニュース】

【アストロスケール提供:左の大きな衛星が捕獲用のサービサー。右の小さな衛星がデブリを模したクライアント(軌道上のイメージ図)】