KIT航空宇宙ニュース2022WK23

小惑星「リュウグウ」から持ち帰った岩石から23種のアミノ酸を検出とJAXAが発表。小惑星「リュウグウ」誕生と進化の過程を探る。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK23

海外のニュース

1.エアバスA321XLR、初飛行は6/15に 世界最長11時間飛べる単通路機

エアバスは現地時間6月10日、開発が進む小型機A321XLRの初飛行を15日に独ハンブルクで実施する方針を示した。単通路機では世界最長となる最大11時間飛行でき、就航は2024年となる見込み。10日時点の天気予報では、初飛行を計画している15日は晴天に恵まれる見通しで、好天ではない場合は初飛行を延期する可能性がある。A321XLRは、A321neoの航続距離を延長した超長距離型で2019年6月にローンチ。XLR(Xtra Long Range)は「超長距離」を意味し、燃料タンクを増設することで単通路機では世界最長の航続距離4700海里(約8704キロ)を実現し、最大11時間飛行できる。エアバスによると、東京を起点とした場合、シドニーやデリーなどへ直行便を運航できるという。最大離陸重量(MTOW)は101トン。メーカー標準座席数は2クラス180-220席、1クラスの場合は最大244席設定できる。座席当たりの燃費は、旧世代機と比べて30%改善される。最初の機体は5月にロールアウトした。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ハンブルグ工場でロールアウトしたA321XLR型機】

2.ボンバルディア、世界最速ビジネスジェット「グローバル8000」25年就航

カナダのボンバルディアは、最新ビジネスジェット機「グローバル8000(Global 8000)」をこのほど発表した。ビジネスジェット世界最速となるマッハ0.94を実現し、航続距離は8000海里(1万4816キロ)。2025年の就航を計画している。グローバル8000は全長33.8メートル、翼幅31.7メートル、高さ8.2メートルで、客室は長さ16.59メートル、幅2.44メートル、高さ1.88メートル、定員は最大19人。ボンバルディアのビジネスジェットでこれまで最新だったグローバル7500と機体サイズは同じだが、最高速度がマッハ0.015上がり、航続距離が556キロ延びた。エンジンはグローバル7500と同じGE製パスポート(Passport)で、推力も同じ1万8920ポンド。シンガポール-ロサンゼルス、ロンドン-パース、ドバイ-ヒューストンなど長距離を飛行できる。客室は4区画で、フルサイズのベッドやシャワー、指向性オーディオシステム、4Kモニター、時差ぼけを解消する照明システム「ソレイユ」、世界初の無重力を実現した「ヌアージュ」シートなどを装備できる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:世界最速ビジネスジェット機「グローバル8000」イメージ図】

3.エアタクシーの認証時期が非現実的である可能性:米国政府の報告

米国政府の報告によると、電動エアタクシーの認証には、まだ克服されていない難しいハードルを挙げ、一部のメーカーが約束している認証取得時期よりも時間がかかる可能性がある。政府説明によると、電気垂直離着陸(eVTOL)航空機を1〜5年以内に認証するという業界の目標は非現実的である可能性がある。FAAは、「これらの航空機を認証する方法について明確な基準を持っていない可能性があり、明確な基準の開発は、この期間をはるかに超えて延長される可能性がある」と、6月9日にリリースされたレポートは述べている。報告書は、エアタクシー技術は「eVTOL航空機の認証に困難をもたらす可能性がある」と述べ、「エアタクシーの商用サービスのためにeVTOL航空機を認証するために多くの作業が残っている」と付け加えている。【Flightglobal News】

日本のニュース

1. エアバスと関西エアポート、航空機の水素利用で連携

エアバスと関西エアポート(KAP)は6月10日、関西と伊丹、神戸の関西3空港で水素の利活用検討に関する連携の覚書を締結した。水素を動力とする航空機の運航実現に向け、政策提言や課題に取り組むロードマップづくりなどを共同で取り組み、航空分野での水素利用のインフラ整備を進める。エアバスは、航空機の特性や航空機のエネルギー使用量、水素燃料航空機の地上作業に関する情報を提供。3空港を運営するKAPは、空港で必要とされるインフラ整備に向けた検討に取り組む。エアバスは今年4月に、川崎重工業と日本での水素利用に向けた調査を共同で実施すると発表。エアバスが日本の空港運営会社と水素分野で提携するのはKAPが初めて。2020年9月には、水素燃料航空機を2035年に実現する目標を打ち出している。関空では、民営化前の2012年に無料連絡バスの一部に水素燃料電池バスを投入するなど、空港内での水素利用を進めている。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:連携の覚書を交わすエアバス社ジヌー北アジア地区代表(左)と関西エアポートのリュロ副社長】

2.ATR、日本市場で100機目指す ORCは今秋以降に納入へ

仏ATRは6月8日、日本市場について今後100機のATR機が運航されるとの見通しを示した。長崎県に本社を置くオリエンタルエアブリッジ(ORC)や、今年度内の就航を目指している新潟県の地域航空会社「TOKI AIR(トキエア)」がATR機の運航会社として加わる方向であることから、2025年に初納入を目指すSTOL(短距離離着陸)型のATR42-600Sなどの新機種を含めて日本市場での規模拡大を目指す。現在天草エアライン(AHX)、日本エアコミューター(JAC)、北海道エアシステム(HAC)の3社が15機のATR機を運航している。「ATR機の多くは経年機を置き換えるもので、日本の離島や遠隔地と主要都市を結ぶことが出来る」と2年ぶりに来日したステファノ・ボルトリCEO(最高経営責任者)は語った。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JACのATR42-600型機】

3.北大とJALが連携協定締結

国立大学法人北海道大学と日本航空は6月7日、連携協定を締結した。「サステナブルな社会創り」をテーマとし、北海道での各種社会課題の解決に両者で取り組む。航空機で海洋・森林のデータを収集し温暖化対策の共同研究に生かす取り組みや、北大で生産した農産品を利用した商品開発やブランド化、道産ワイン振興・販路拡大、北海道での新しい観光資源の開発や観光に携わる人財の育成など、地域活性化を進める。このほか、JALの海外支店での短期海外実習や、JAL社員が北大に出向するなどの人的交流も進める。【Aviation Wire News】

【北海道大学提供:連携協定を締結した北海道大学寶金総長(左)とJAL赤坂社長】

4.はやぶさ2が採取した試料から23種のアミノ酸を確認、初期分析にて判明

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月10日、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星「リュウグウ」の試料の初期分析を行うPhase-2キュレーション機関の1つである岡山大学のチームの研究成果をまとめた論文が日本学士院紀要に2022年6月10日付で掲載されたことを発表した。今回の研究対象となったのは、リュウグウから回収された試料のうち16粒子(1回目のタッチダウンから7粒子、2回目のタッチダウンから9粒子、総量55mg)。研究チームでは、地球惑星物質総合解析システム(CASTEM)を駆使した総合分析を実施。その結果、リュウグウ物質に生命を構成するのに不可欠な、水素が0.69~1.30wt%(主に含水鉱物相として存在)、炭素が2.79~5.39wt%(そのうち有機物分は1.77~4.00wt%)含まれていることを確認したほか、23種(異性体を含む)のアミノ酸を検出することに成功(隕石から検出されるアミノ酸の1種は、今回の試料からは検出されなかったともしている)。小惑星「リュウグウ」は、星間物質や太陽系前駆物質などを起源として、太陽系外縁部で誕生した氷微惑星は、その内部の広範な水質変質の後に破砕され、彗星様小惑星として地球近傍軌道に至り、氷の昇華を伴いながら、瓦礫集積体様の小惑星へと進化したと考えられる【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:小惑星リュウグウの起源と進化】