KIT航空宇宙ニュース2022WK25

KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK25

海外のニュース

1.IATA、航空業界の損失97億ドル

IATA(国際航空運送協会)は現地時間6月20日、今年の航空業界の損失は97億ドル(約1兆3096億円)になるとの見通しを示した。2021年10月発表の116億ドルの損失予想から19億ドル上方修正した。北米では88億ドルの黒字が見込まれており、2023年の業界全体の黒字化は手の届くところにあるとした。2020年の損失1377億ドル、2021年の421億ドルから大きく改善する見通しで、世界の航空会社は人件費と燃油価格の上昇にもかかわらず、効率化と利回り向上で損失幅を縮小できる見込み。航空業界の収益は、2019年の93.3%にあたる7820億ドル(21年比54.5%増)に達すると予想。今年の運航便数は3380万便となり、2019年の水準(3890万便)の86.9%となる見込み。旅客収入は、航空業界収入のうち4980億ドルを占め、2021年の2390億ドルの2倍以上になると予想。予定旅客数は38億人に達し、RPK(有償旅客キロ)は2021年比97.6%増、2019年の82.4%に達すると予想した。貨物収入は、業界収入のうち1910億ドルを占めると予想。2021年に記録した2040億ドルからは若干減少するものの、2019年に達成した1000億ドルのほぼ2倍となる見込み。今年の業界全体の貨物輸送量は6800万トンを超え、過去最高を記録すると予測した。【Aviation Wire News】

2.EUがゼロエミッション航空への移行を導くためのヨーロッパ同盟結成

航空産業の脱炭素化へ向け、欧州委員会のイニシアチブの下で、新しい自主的な協力、ゼロエミッション航空のための同盟を結成した。同委員会は、航空機製造、航空会社、空港、エネルギー部門の代表者に、規制当局や認証機関、さらには利害関係者グループが参加して、ゼロエミッション航空機の開発と導入を円滑にするためのロードマップを作成するよう求めている。同盟メンバーは、これらのハードルに対処するための推奨事項と手順を確立し、投資プログラムを促進し、相互に相乗効果と勢いを生み出すことを目的としている。特に、ゼロエミッション航空機(電気および水素を動力源とするモデルの両方)の空港の燃料供給とインフラストラクチャの要件、および航空交通管制に関連する問題を検討する。【Flightglobal News】

【DLR(ドイツ航空研究所)提供:検討中のゼロエミッション航空機】

3.ロールスロイスは、新しいハイブリッドターボジェネレータを開発

ロールスロイスは、ハイブリッド電気アプリケーション向けに設計された新しい小型エンジンを含むタービン発電機技術の開発を正式に発表した。このシステムは、スケーラブルな電力を提供する車載電源となり、ロールスロイス電気推進ポートフォリオを補完し、持続可能な航空燃料の範囲を拡大し、将来水素燃料燃焼によっても利用可能となる。テストする最初のハイブリッド電気システムは、800kWの出力を提供するサイズになると述べている。【Flightglobal News】

【Rolls Royce提供:開発する800kw出力可能なハイブリット小型タービンエンジン】

4.英国の航空機メーカーGKN社は燃料電池による96席の航空機開発に自信

GKN Aerospace社は、英国が資金提供するH2GEARプログラムの下で開発している水素燃料電池パワートレインの予備設計を完了し、システムに組み込まれている効率の向上により、96席の航空機に電力を供給するように拡張できると確信した。H2GEARは、GKN Aerospaceが主導する画期的な英国のコラボレーションプログラムであり、より大型の航空機にスケールアップできるサブリージョナル航空機用の液体水素推進システムの開発を目的としている。液体水素は、燃料電池システム内で電気に変換される。2030年代後半までにリージョナルクラスの航空機を飛ばすことを目的としている。【Flightglobal News】

【GKN社提供:水素燃料電池航空機「H2GEAR」】

日本のニュース

1.ホンダ、SAF評価の国際団体加入

本田技研工業は6月23日、代替燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」の安全性を評価し、規格化を支援する国際団体「FAA/OEM Review Panel」へ今月加入したと発表した。同団体への加入メーカーはアジア初だという。SAFはバイオマスや廃食油、排ガスなど化石由来ではない原料や持続可能な原料から生成。航空機や給油設備など既存インフラをそのまま活用しながら、現在使用している化石由来の航空燃料と比べてCO2(二酸化炭素)排出量を大幅に削減できる。AA/OEM Review PanelはFAA(米国連邦航空局)や機体メーカー、エンジンメーカーで構成。ホンダのほかボーイングやエアバス、エンブラエル、ダッソー、ボンバルディア、デ・ハビランド・カナダ、ベルヘリコプター、シコルスキー、GE、プラット&ホイットニー、ロールス・ロイス、ハネウェル、サフランが加盟しており、SAFの機体やエンジンへの影響を評価している。ホンダは同団体への加盟により、他の参加企業とともにSAFに関する各種試験データのレビューを通じて安全性を評価し、ASTM(米国材料試験協会)による規格化を支援する。ホンダは米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」を手掛けており、搭載エンジンのHF120も独自開発したHF118をベースにGEと共同開発している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:Honda Jet機】

2.ZIPAIR、食用コオロギ粉使った機内食

日本航空が100%出資する中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア)は6月22日、食用コオロギの粉を混ぜ込んだハンバーガーやパスタを使った機内食の販売を7月1日から始めると発表した。食用コオロギ関連事業を展開する徳島大学発のフードテックベンチャー、グリラス(徳島県鳴門市)と提携し、新メニューの「トマトチリバーガー」と「ペスカトーレ」を販売する。新メニューはグリラスが開発した「グリラスパウダー」を使用。国産食用フタホシコオロギを粉末化したもので、環境負荷の低い新たなタンパク源である食用コオロギの普及を目指す。トマトチリバーガーは、バンズとパティ、辛みスパイスを効かせたトマトソースにコオロギパウダーを混ぜ込んだハンバーガー。ペスカトーレは、コオロギパウダーを加えたトマトソースにソフトシェルシュリンプ、タコ、イカ、小柱が入ったパスタとなる。価格はいずれも1500円。販売路線は成田発着のバンコク線、シンガポール線と、成田発のホノルル行きとロサンゼルス行き。食用コオロギパウダーを使った料理は「サーキュラーフード」や「昆虫食」と呼ばれている。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:コウロギの粉を使ったハンバーガー機内食】

3.787の主翼廃材、掃除機にリサイクル 三菱重工と三菱電機、環境保護で再利用

三菱重工業と三菱電機は6月21日、三菱重工が製造を担うボーイング787型機の複合材主翼について、製造時に発生する廃材を家電部品に再利用する取り組みを始めると発表した。資源を有効活用し環境負荷の低減を目指し、地球環境を保護する。再利用するのは、複合材主翼の製造時に発生する炭素繊維複合材の廃材で、三菱電機のコードレス掃除機「iNSTICK ZUBAQ」シリーズのパイプとハンドルに活用する。炭素繊維廃材は今後、同シリーズの掃除機を始めとした家電製品のほか、さまざまな用途でのリサイクルを見込む。三菱重工はボーイングのTier1(1次請け)として、787の複合材主翼を製造している。炭素繊維複合材料は軽量で高強度な特性から、主翼などへの導入が進む一方、炭素繊維の製造時にエネルギー負荷がかかることから、多くのCO2(二酸化炭素)が排出される。また、廃棄処理時にかかる環境への負荷も大きな課題となっている。787は機体の構造部位のうち35%を日本企業が中部地域で製造している。三菱重工のほか、川崎重工業(7012)は前部胴体と主脚格納部、主翼固定後縁、SUBARU(7270)は中央翼を担っている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:787の主翼製造時の炭素繊維廃材を再使用した三菱電機掃除機】

4.直径8cmの月面ローバー「SORA-Q」が一般初公開

タカラトミーは6月16日~17日、東京ビッグサイトにて開催された「東京おもちゃショー」にて、野球ボールサイズの超小型月面探査ローバー「SORA-Q」(ソラキュー)を公開した。同展示会はビジネス関係者限定ではあるものの、SORA-Qの一般への公開はこれが初めて。また同時に、商品化の計画も明らかにされた。SORA-Qは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM」に搭載され、2022年度中に打ち上げられる予定。最大の特徴は、何と言っても変形することである。搭載時には直径わずか8cmほどの球形だが、月面に投下後、外殻が両側に開き、カメラと尻尾を展開。外殻の半球がそのまま車輪となり、月面を走行する。タカラトミーといえば、トランスフォーマーやゾイドなど、変形ロボットの玩具が思い浮かぶ。SORA-Qの開発には、これらの社内メンバーも関わっており、複雑に見える機構をいかにシンプルに実現するかなど、玩具メーカーならではのノウハウを投入したという。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:「SORA-Q」左が展開前、右が展開後の形状で、重量は約250g】