KIT航空宇宙ニュース2022WK31

KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1.ボーイング出資”空飛ぶクルマ”Wisk「ウーバー並み料金目指す」

ボーイングは8月2日、eVTOL(電動垂直離着陸機)の合弁会社ウィスクエアロ(Wisk Aero)の事業説明会を開いた。Wiskは4人乗りのeVTOLを開発中で、将来は配車サービス「Uber(ウーバー)」並みの1マイル当たり3ドル(1.6キロ当たり約395円)程度で利用できるサービスの実現を目指す。Wiskは、ボーイングとeVTOLを手掛ける米キティホークがカリフォルニア州に設立した合弁会社。2017年に米国で初めて旅客用に設計された自律飛行型のeVTOLの飛行に成功した。ボーイングのバイス・プレジデント兼チーフ・エンジニアのブライアン・ユトゥコ博士によると、現時点で第5世代機まで開発して飛行試験を進めており、FAA(米国連邦航空局)の型式証明を取得して実用化し、販売する第6世代機に関する情報を秋ごろ明らかにするという。Wiskが開発しているeVTOLはバッテリー駆動。第6世代機の航続距離は明らかにしていないが、一般論として「バッテリー駆動の電動航空機は、500キロ以下の較的短い距離に限られるだろう」との見解を示した。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:記者会見するBoeing社VP兼Chief Engineerブライアン・ユトゥコ氏】

日本のニュース

1.スカイマーク定時性5年連続1位

国土交通省航空局(JCAB)は、日本航空や全日本空輸、LCC 3社など、特定本邦航空運送事業者10社に関する「航空輸送サービスに係る情報公開」の2021年度(21年4月から22年3月)分を公表した。2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で運休や減便が相次ぎ、空港や空域が混雑していないことにより、各社とも定時運航率が大きく改善したものの、2021年度は緊急事態宣言が全面解除となったことで10月以降に復便傾向にあったことから、一部のLCCでは新型コロナ前の80%台に戻るところもみられた。定時運航率は、スカイマーク(SKY/BC)が5年連続で1位となった。通年の欠航率が最も低かったのもスカイマークだった。10社全体の定時運航率は前年度と比べ1.61ポイント低下し94.59%、遅延率は1.61ポイント悪化し5.41%、欠航率は0.02ポイント悪化し1.67%だった。遅延の原因は「機材繰り」が目立ち、欠航は各社とも「天候」が1位となった。定時運航率は、スカイマークが98.44%で、5年連続で1位を獲得。2位はスターフライヤーで98.15%だった。3位はソラシドエアで97.66%だった。【Aviation Wire News】

2.ANA、会社説明会をオンライン開催

全日本空輸を中核とするANAグループは8月5日、オンライン会社説明会「ANA GROUP SUMMER OPEN COMPANY」の募集を始めた。27日と9月3日に開催する。対象は高校、航空専門学校、高専、専門学校、短大、大学、大学院の在籍者で、会社紹介や社員の対談を実施。2日間のうちいずれかに申し込める。参加予定社は27日がANA、e.TEAM ANA(ANAグループ整備部門)、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)の整備職、ANAエアポートサービス、ANA中部空港、ANA大阪空港、ANAエアサービス松山、全日空商事、ANAフーズ、ANA Cargo、OCS。3日はANA、ANAウイングス(AKX/EH)、ANA新千歳空港、ANA成田エアポートサービス、ANA関西空港、ANA福岡空港、ANAあきんど、ANAテレマート、ANAケータリングサービス、ANAシステムズ、ANAビジネスソリューション。8月19日まで応募を受け付け、応募多数の場合は抽選となる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供】

3.三菱地所、JAL・兼松と空飛ぶクルマ実証実験 都の検証参画、24年度運航実証へ

三菱地所と日本航空、兼松の3社は8月4日、東京都が公募した「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)の社会実装を目指すプロジェクトに参画すると発表した。年度内に実装への課題整理を進め、2024年度の運航実証を目指す。今回のプロジェクトでは、都内でeVTOLを活用したビジネスモデルを検討する。ヘリコプターによる運航実証を経て、eVTOLによる運航や離着陸場の運用を実証し、課題や収益性などを検証する。都内でのeVTOLのビジネスモデル検討は年度内に進め、都心の主要拠点を結ぶ都市内アクセスや、空港からの二次交通、離島での移動サービスや遊覧飛行など、実装に向けた課題を洗い出す。2023年度にはヘリによる運航実証を開始し、三菱地所が保有・運営する施設を中心として、ヘリポートを2カ所設置して検証する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:eVTOL社会実装検証概念図】

4.JAL、パイロットのインターン募集 オンライン開催

日本航空は8月4日、パイロットのインターンシップの募集を開始した。日程は最大2日間で、9月から順次オンラインで開催する。自社養成パイロットの業務体験を通じて、パイロットの仕事や航空業界に関する理解を深めてもらう。対象は4年制大学または大学院、高等専門学校(専攻科)の在籍者で、パイロットの仕事やフライトオペレーションを題材として取り上げる。詳細はエントリー後に確認でき、説明会を8月5日と9日、11日にオンラインで開く。実施期間は、9月5日から16日と、10月17日から11月2日、12月16日から2023年1月19日の3コースを用意。内容はすべて同じで、複数のコースには参加できない。エントリー期間は実施時期ごとに設定。学部1、2年生と3年生以上は一部異なる内容で実施し、学部1、2年生は9月開始と10月開始のコースのみ参加できる。エントリーはJALのインターンシップサイトから。今回のイベントは、今後の採用とは関係ないという。【Aviation Wire News】

5.JAL、パソコン・ペットボトル出さずに保安検査 羽田へ導入完了

日本航空は8月2日、羽田空港国内線第1ターミナルの保安検査場へ「JAL SMART SECURITY(JALスマートセキュリティ)」と名付けた新しい保安検査装置の導入を完了したと発表した。ノートパソコンやペットボトルなどの液体物をカバンなどから取り出さずに保安検査を受けられるもので、検査時間の短縮により混雑緩和を図る。JALは今年1月からスマートセキュリティを導入。第1ターミナルの南北計4カ所にある保安検査場の全12レーンへの導入を完了した。スマートセキュリティは、高度化されたX線によるCT検査装置と、追い越し可能なレーン(スマートレーン)、利用者が使う検査用トレーを殺菌するUV(紫外線)殺菌システムを組み合わせた。スマートレーンは3人の利用者が1つのレーンを同時に利用でき、待ち時間を短縮できる。スマートセキュリティは、第1ターミナルの保安検査場6カ所のうち、JALが使用している南ウイングのBとC、北ウイングのEとFの4カ所に導入。Bに4レーン、CとFに3レーンずつ、Eに2レーン設け、一部に従来レーンも残している。羽田空港では、全日本空輸などが利用する国内線第2ターミナルでもスマートレーンを導入。2019年10月から運用している。【Aviation Wire News】

【JAL提供:PCや液体物を出さずに手荷物検査ができるスマートレーン】

6.ANA、2050年度の脱炭素化へ移行戦略 エアバスと水素航空機研究

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは、2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けた移行戦略を8月1日に発表した。運航上の改善や代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」の活用、排出権取引、ネガティブエミッション技術の活用などを進める。また、これらの戦略実行を目的とした資金調達のため、、グリーンボンド・フレームワークを策定した。SAFは2030年に消費燃料の10%以上を置き換え、2050年にほぼ全量の低炭素化の実現を目指す。一方で、排出権取引制度については短中期的な一時的措置と位置づけ、2050年度までに同制度には依存せずに実質ゼロを目指す。また、エアバスとも先端技術の開発やインフラ整備に関する共同研究プロジェクトに関する基本合意書(MoU)を締結した。ANAは現時点では水素・電動航空機の導入は戦略に含んでいないが、機体メーカーと協力して情報を入手することで、環境目標達成に向けて選択肢を確保するという。ボーイング社とは、日本での持続可能な技術開発の協業に関するMoUを結んだ。また、グリーンボンド・フレームワークによる資金調達の使途は、SAFの購入、SAFの調達量拡大につながる出資・投資、ネガティブエミッション技術の活用のための出資・投資を想定。このフレームワークに基づくグリーンボンドの発行時期や発行額などは、今後決定するという。【Aviation Wire News】

7.ボーイング、日本に研究開発センター開設 経産省と連携拡大、SAFや電動・水素航空機

ボーイングは8月1日、日本国内に研究開発センターを開設したと発表した。代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」や航空機の電動化、水素利用、ロボティクス、自動化、バッテリー、炭素繊維複合材などの研究開発を進めるもので、名古屋を主要拠点とする形で開設し、エンジニアなどを日本で採用する。これに伴い、経済産業省と締結している航空機に関する技術協力の範囲を拡大した。 ボーイングは、2019年に経産省と航空機の技術協力で合意。1日は、SAFと電気・水素パワートレイン技術、気候への影響ゼロの航空を促進する将来の飛行コンセプトに焦点を当てることで新たに合意した。また、国産SAFの商用化などを目指す日揮や全日本空輸、日本航空などが設立した有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」への参画も表明した。ボーイングのチーフ・エンジニアで、エグゼクティブ・バイス・プレジデントのグレッグ・ハイスロップ氏は「SAFや先進的な製造業に注力するため、研究センターに人を集め始めている。非常に難しい問題を解決するために必要なのは、人材の活用だと考えている。まずは名古屋からスタートし、最終的には東京に拠点を移す予定だ」と語った。ボーイングによると、1日付で研究開発センターを組織として正式に立ち上げた。センター設立に向け、すでに名古屋で16人、東京でも数人のスタッフを採用しており、今後は50人程度の体制を目指すという。現在のセンターは、ボーイングが名古屋市内に置くオフィス内を主要拠点としているが、2023年後半から第4四半期(10-12月期)にかけて独立した施設を確保し、2023年内に移転することを検討していく。また、ANAを傘下に持つANAホールディングス、JALの2社とは、持続可能な航空技術の研究を推進していくことで、各社とボーイングが覚書を結んだ。航空機からのCO2(二酸化炭素)排出量を削減を目指し、電動・ハイブリッド・水素など新しい動力による推進システムの研究協力を進める。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:Boeing社とMOUを取り交わす萩生田経産大臣(右)】

8.東大発宇宙ベンチャーのPale Blue、宇宙で実証予定の水推進機を米国で展示

2020年に創業した東京大学発宇宙ベンチャーのPale Blueは、アメリカのユタ州立大学で2022年8月6日から11日(現地時間)まで開催される、小型衛星分野に特化したカンファレンス「Small Satellite Conference 2022」に出展する予定であることを発表した。展示ブースでは、今回が初披露となる同社の水推進機を搭載した100kg級衛星の模型を展示予定だ。また、JAXAが2022年度に打ち上げ予定の革新的衛星3号機に搭載され、宇宙空間での実証実験を予定している水統合式推進機や、小型衛星向け水蒸気式推進機についても、手に取れる形で展示するとのことだ。Pale Blueは併せて8月10日に、同カンファレンスにおいて、水統合式推進機における打ち上げ前の試験結果について、同社代表取締役の浅川純氏が技術発表を行うとしている。【マイナビニュース】

【Pale Blue提供:Pale Blueの水統合式推進機】