KIT航空宇宙ニュース2022WK32

KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK32

海外のニュース

1.ボーイング、787納入再開 アメリカン航空に引き渡し

ボーイングは現地時間8月10日(日本時間11日)、FAA(米国連邦航空局)から製造時の品質問題を指摘されていた787型機の納入を再開し、アメリカン航空へ最初の機体となる787-8を引き渡した。ボーイングの納入記録によると、2021年7月から先月まで13カ月連続で納入ゼロが続き、何度か納入再開の可能性が報じられたものの、引き渡しが1年以上途絶えていた。アメリカン航空への787納入は、2021年5月以来15カ月(1年3カ月)ぶりとなった。787は、2020年に胴体接合部の不具合が発覚。その後も品質問題が指摘され、2021年10月には過去3年間に使われたチタン製部品の中に、本来の強度に満たないものがあることがわかった。FAAはボーイングに対して品質改善を求め、ボーイングは今年4月に認証計画をFAAに提出した。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:引き渡しが再開されたアメリカン航空の787-800型機】

2.中国が2年ぶりに「再使用型試験宇宙機」を打ち上げ、小型のスペースシャトルか?

中国の宇宙機関、中国国家航天局は2022年8月5日、「再使用型試験宇宙機」の打ち上げに成功したと発表した。宇宙機は軌道上に一定期間とどまり、軌道上サービスを行ったのち地上に着陸。宇宙機の再使用に関する技術実証を行うとしている。ただ、機体の姿かたち、運用期間などは明らかにされておらず、多くのことが謎に包まれている。航天局によると、再使用型試験宇宙機は甘粛省北西部にある酒泉衛星発射センターから、「長征二号F」ロケットを使って打ち上げたとしている。打ち上げ時刻も不明だが、日本時間16時ごろだと推察される。米軍の観測により、軌道上になんらかの物体が投入されたことが確認されており、打ち上げ成功が裏付けられている。軌道は高度346 × 593km、軌道傾斜角50.0度の地球低軌道とされる。打ち上げ後、航天局は短いプレスリリースを発表。「再使用型試験宇宙機は軌道上で一定期間運用したあと、中国内の着陸予定地に帰還する。その間、再使用や軌道上サービスの技術検証を行う。宇宙の平和利用のための技術的サポートの提供が目的である」と述べている。再使用型の宇宙機をめぐっては、米空軍と宇宙軍が2006年から「X-37B」という機体を運用している。小型・有翼の宇宙往還機で、これまでに同型機が2機製造され、5回の宇宙飛行ミッションに成功。2020年5月には6回目のミッションに飛び立ち、2年以上経ったいまなお軌道上に滞在し続けている。中国の再使用型試験宇宙機もまた、X-37Bに似た機体である可能性は高い。とくに、NASAのスペースシャトルなどと異なり、ロケットの先端に搭載され、なおかつ衛星フェアリングの中に収められた状態で打ち上げられるという点は同じである。それゆえに、機体の形状なども近い可能性が高い。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:再使用型試験宇宙機の打ち上げ「長征二号Fロケットの同型機」】

3.Archer Aviationが開発中のPilot操縦のeVTOL機「Midnight」の概要を発表

Silicon Valleyに本拠地を置くElectric vertical take off and landing (eVTOL) aircraft developer Archer Aviation社は、Pilot操縦機である 4人乗りeVTOL機名称 「Midnight」のpreliminary design review (PDR)を完了し、その概要を発表した。同型機は、V字型尾翼と片翼前後6個のウィング装着ローター(計12個)を持ち、航続距離;100Mile, 10分間の充電時間で、1000ポンド以上の有償重量を20Mile運送することが可能であり、2025 年のEntry Into Serviceを目指している。先般、United Air Linesが、(200)機発注分の頭金としてUS$10Mill を支払ったことを明らかにした。【Flightglobal News】

【Archer Aviation提供:PDRを完了しデザイン概要を発表したeVTOL「Midnight」機】

日本のニュース

1.JAL赤坂社長「御巣鷹山の教訓引き出すことが重要」日航機事故37年追悼式

日本航空123便墜落事故で乗客乗員520人が亡くなり、37年が経った8月12日夜、墜落現場となった群馬県多野郡上野村の追悼施設「慰霊の園」で、37周年追悼慰霊式が開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、遺族の参列が2020年から3年連続で見送られ、規模を縮小して行われた。日本航空の赤坂祐二社長ら関係者が献花後、慰霊の園には犠牲者の数と同じ520本のろうそくに火がともされた。羽田発伊丹行きJL123便(ボーイング747SR-100型機、登録記号JA8119)が墜落した午後6時56分を迎えると、参列者が黙祷(もくとう)をささげた。1962年生まれの赤坂社長は、事故後の1987年4月に技術系総合職(現在の業務企画職技術系)としてJALに入社し、今年で60歳を迎えた。事故当時を知る現役社員も、あと数年で定年退職する。赤坂社長は「事故を反省し、教訓を後世まで残していく。事故の教訓はどんな時代でも役立つもので、その時々に御巣鷹山に立ち戻って教訓を引き出すことは非常に重要だ。現地・現物・現認(の三現主義)で、御巣鷹山という現地が残っており、我々の安全啓発センターにJA8119の残骸が現物としてある。事故の悲惨さを感じてもらい、新たな脅威に対して御巣鷹の教訓を引き出していくことは、後世の我々の後輩の大きな宿題にしたい」と語った。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:慰霊の園で献花するJALの赤坂社長】

2.JALEC、技能五輪で新人整備士育成「チームワークは大事」

3年ぶりに行動制限のない夏休みを迎えた日本。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で航空会社は大きな痛手を被ったが、コロナ後を見据えると新人の採用を続ける必要があった職種がパイロットと整備士だ。ともに一人前になるには10年以上かかると言われ、将来的な人手不足を避けるためには過度に大きな採用の山と谷ができることを避けたいのが、航空会社の本音と言える。日本航空が100%出資する整備子会社JALエンジニアリング(JALEC)も、厳しい経営環境の中で新人整備士の採用を続けている。JALECは、JAL本体の整備部門とJAL系整備会社を統合する形で2009年10月1日発足。2013年からは、整備の基礎技術を競う「技能五輪」を開き、技術やコミュニケーション能力の向上を進めてきた。これまではベテランも参加していた技能五輪だが、今年は60人の新人だけで開催。今年度に入社した新人の教育と訓練の場として7月27日と28日の2日間にわたり開かれ、JALECから46人、鹿児島空港を拠点とするグループの日本エアコミューターから8人、天草エアラインから1人が参加したほか、地上研修で整備部門に配属されたJALのパイロット訓練生5人も技能五輪に挑んだ。「セイフティーワイヤーがけ」「15種類のフルード当て」「ツールチェック」「間違い探し」など、5種類の競技に1チーム6人、5チーム対抗で挑み、団体に加えて個人でも競った。廃棄品を活用した教育用エンジン部品を使ったセイフティーワイヤー(安全線)がけでは、本番を想定して安全や品質を意識して作業できるかなどが評価のポイントになり、潤滑油や作動油、除氷液など15種類の液体名を当てたり、素早く正確にツールボックス(道具箱)を確認できるか、教育用に用意している実際の部品や整備書類のサンプルに仕込まれた間違いなどを指摘できるかなどを競った。JALECによると、一人前の整備士になるまでには、15年近くかかるケースが多いという。仲間と安全に作業することを新人時代から体感してもらうことが、整備のスキルを高めていく上で重要だと言えるだろう。【Aviation Wire News】

【JALEC提供:技能五輪の「セイフティーワイヤーがけ」に挑むJALECの整備士たち】

3.ORC、CA募集 福岡勤務で12月入社

オリエンタルエアブリッジは8月9日、客室乗務員の募集を始めた。入社日は12月1日を予定している。同社が指定するサイトから8月31日までにエントリーする。勤務地は福岡空港で、将来は長崎空港配属になる可能性もあるとしており、人数は若干名。短大卒業以上と同等の学力、矯正視力1.0以上などが応募条件となる。1年更新の契約社員として採用。訓練期間中は訓練生として契約し、訓練合格後に客室乗務員として契約する。1回目の契約満了後、正社員として採用する制度もある。選考スケジュールは、Webエントリー選考が9月1日、1次選考のオンライン個人面接などが9月17日または18日、最終選考の健康診断と個人面接は10月3日を予定。エントリー選考の通過者のみ、9月8日までに1次選考の案内を電子メールで送付する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ORCのボンバルディア社製DHC-Q200型機】

4.小松基地、3年ぶり航空祭に有料観覧席

航空自衛隊小松基地は8月8日、3年ぶりに開催する航空祭の有料観覧席の料金や席数を発表した。応募締切は8月21日午前0時で、応募フォームから申し込む。有料観覧席の料金は、写真撮影用が1人1万円、一般用が5000円。座席数は写真撮影用を57席、一般用を18席設ける。応募資格は小学生以上で、小学生は必ず高校生以上の同行者と一緒に行動する必要があり、未就学児は有料観覧席を利用できない。応募多数の場合は抽選で、座席位置も抽選になるが、2人で応募した際は並び席で用意。当選者には8月26日までに電子メールで連絡する。小松基地の航空祭は、9月19日開催予定。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて2年連続で中止となり、今回は3年ぶり。基地所属のF-15やU-125A、UH-60Jのほか、ブルーインパルスも飛来する。時間は午前9時から午後1時まで。防衛省は、今年度から各地の航空祭で有料観覧席制度を試験的に実施。今後の財源確保の一環として、来年度以降の本格化を目指す。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供】

5.JAL、業務企画職のインターン募集 事務・技術系など3コース

日本航空は8月8日、業務企画職のインターンシップの募集を開始した。事務系と数理・IT系、技術系でコースが分かれ、全体で3コース用意する。日程は参加希望コースにより異なる。業務体験を通じ、航空業界への理解を深めてもらう。エントリー締め切りは23日。

◆事務系、数理・IT系

事務系と数理・IT系は、4年制大学か大学院に在籍中の人を対象とする。学年と文系・理系は問わない。コースは2種類で、JALが経営戦略の軸としているESG戦略や、マイルライフ事業・地域事業・教育事業などの航空以外の成長領域、データ分析やIT企画などの業務を対象とした「オープンコース」と、レベニューマネジメントやウェブ販売戦略などを対象とした「領域特化型集中コース」を用意する。オープンコースは業務企画職のうち事務系と数理・IT系を志望する人を対象としたコース。非航空領域の業務を中心とし、航空業界やJALの社風を体験できるという。9月14日から28日までの期間中に6日間開催する「サマーインターンシップ」はオンライン形式で、全体で300-400程度が参加できる。また今年12月から2023年1月ごろをめどに、実際の職場での業務体験など、実践編の「ウィンターインターンシップ」も実施を予定する。ウィンターへの参加は、今回のサマーへの参加が条件となる。領域特化型集中コースは業務企画職のうち地上職 数理・IT系を志望する人を対象としたコース。業務ごとにプログラムを用意し、データサイエンスやIT技術などの自身のスキルを踏まえたプログラムを選択できる。日程は9月26日から30日までのうち3-5日程度。10人程度が参加でき、東京・天王洲のJAL本社や羽田地区で実施する。このほか、12月から来年2月ごろをめどに、商品サービスや路線ネットワーク、貨物、運航管理など、航空領域の事業を対象としたインターンシップの実施も予定する。詳細は10月ごろに発表する。

◆技術系

技術系を対象とした「エアラインエンジニア基礎編コース」は、業務企画職のうち地上職 技術系を志望する人向けのコースで、4年制大学か大学院、高等専門学校専攻科に在籍中の人が参加できる。学年は問わないが、理系学部・学科の在籍者を対象とする。サマーインターンシップとなる今回の基礎編では、職場見学や社員との交流を予定する。日程は9月5日から29日までの期間中に12日間開催。全体で80-100人程度が参加でき、東京・天王洲のJAL本社や羽田地区で実施する。また12月から来年2月ごろをめどに、実践編の「ウィンターインターンシップ」も予定する。いずれもエントリーはJALのインターンシップサイトから。今回のイベントは、今後の採用とは関係ないという。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JAL事務系・技術系企画職のインターンシップ募集】