KIT航空宇宙ニュース2022WK36

カナダのボンバルディア社が研究中のBlended Wing Bodyビジネスジェット機のデモンストレータ「Eco Jet」のイメージ図
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK36

海外のニュース

1.6月の航空需要、中国ロックダウン解除で回復傾向に

IATA(国際航空運送協会)の2022年6月世界旅客輸送実績によると、国際線と国内線の合計のロードファクター(座席利用率、L/F)は12.9ポイント上昇(2.0ポイント低下)の82.4%だった。中国国内のロックダウン(都市封鎖)が解除され旅行需要が徐々に戻ってきたことから、世界的な回復傾向が続いている。対象は日本を含むアジア太平洋と、欧州、北米、中東、中南米、アフリカの6地域で、航空会社の国籍を基準に調査。国際線と国内線の合計を地域別で見ると、アジア太平洋地域のL/Fは8.1ポイント上昇の72.9%だった。L/Fは6地域すべてで上回った。欧州は19.9ポイント上昇の86.0%、北米が8.2ポイント上昇の89.1%、中東が31.1ポイント上昇の77.2%、中南米が3.2ポイント上昇の81.7%、アフリカが13.2ポイント上昇の74.3%だった。【Aviation Wire News】

2.コリンズ社が、ハイブリッド・プロジェクトの進行に合わせ、PWC社 に 1MW モーターを出荷

Collins Aerospace は今月、1MW の電気モーターを Pratt & Whitney Canada (PWC) に出荷する予定で、ハイブリッド電気に改造された De Havilland Canada Dash 8 を実証するプロジェクトを進めている。コリンズは 1MW モーターから 98% の効率を絞り出した。つまり、20kW が熱に失われ、980kW がエンジンのシャフトを駆動していることになる。Raytheon Technologies の両部門であるCollins社とPWC社 は、ハイブリッド・パワープラントの開発をリードしており、De Havilland と協力してDash 8-100にシステムを装備する。彼らはこのプロジェクトをカナダのハイブリッド電気デモンストレーターと呼んでいる。両社はハイブリッド・システムの統合とテストに約2年を費やし、2024 年にDash 8-100の初飛行を実施予定。試験はモントリオール郊外のセントヒューバートで行われ、カナダの飛行試験および研究会社であるCert Center Canadaの支援を受けて行われる。ハイブリッド・システムは、1MW燃料燃焼エンジンに結合された1MWモーターで構成され、合計2MW の電力が得られる。これは「パラレル・ハイブリッド」技術であるため、モーターとエンジンがそれぞれプロペラを回転させることができる。【Flightglobal News】

【Raytheon Technologies社提供: ハイブリッド電動パワートレインを搭載したDash8-100想像図】

3.ユナイテッド航空がイブ社のeVTOL機オプション機数を増加

ユナイテッド航空は、新しい電動垂直離着陸 (eVTOL) 技術への 2回目の大規模な投資を発表した。Archer Aviationへの最近の保証金の支払いを受けて、航空会社はEve Air Mobility に 1,500万ドルを投資し、eVTOL機の条件付き購入契約を締結した。購入契約は、合計200機の4 人乗りの電気航空機をカバーし、さらに200機のオプションが含まれている。ユナイテッド航空は、2026年にEve航空機の最初の納入を予定しており、この契約には、Eve航空機の開発、使用、応用、およびアーバン・エア・モビリティ (UAM)エコシステムに関する研究を含む、共同パートナーシップの要素も含まれている。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:ユナイテッド航空のEve社製eVTOL機の想像図】

4.ボンバルディアがBlended Wing Bodyビジネスジェットの研究を始めた

ボンバルディア社は、胴体と翼が統合された混合翼胴体 (BWB)ジェットの研究を深めるビデオをリリースし、より大きなデモンストレーターによるテストの第2段階に移行しEcoJetと呼ばれるこのプロジェクトは、軍事用途で最もよく知られている「全翼機」の概念を民生用途にミックスしたビジネスジェットの提案です。このタイプのコンセプトでは、翼と胴体が統合されている。カナダの飛行機メーカーであるボンバルディア社は、このプロジェクトがビジネス ジェット市場に革命をもたらし、新しいデザインが提供する持続可能性と経済性と相まって、乗客に新しい体験をもたらすことができると述べている。EcoJet は 5月に発表されたが、デモンストレーターのサイズは約1.5メートルで、まだ初期段階にあった。フライトグローバルとのインタビューで、ボンバルディアの研究および技術担当ディレクターであるブノワ・ブロー氏は、翼幅6メートルのデモンストレーター・ドローンのテストはすでに合格しており、研究を進める上での障害は見つからなかったと述べた。ブノワ・ブロー氏によると、EcoJetの設計により、翼を小さくすることができ、重量と抗力が減少し、必要な燃料が少なくなる。コンセプトイメージには従来のターボファン・エンジン2基が付いているが、ボンバルディアは新しい推進システムも評価している。【Flightglobal News】

【ボンバルディア社提供:Eco Jetのイメージ図】

日本のニュース

1.エアバス、ヒラタ学園と「空飛ぶクルマ」サービス開発 ヘリ活用、eVTOL検証

エアバスは9月7日、ヘリコプター事業を手がけるヒラタ学園(大阪・堺市)と、eVTOL(電動垂直離着陸)機など「空飛ぶクルマ(Urban Air Mobility、UAM)」のサービス開発で連携すると発表した。UAMは2025年に開催される大阪万博での実用化が期待され、関西圏での飛行ルートや運用構想などについて、ヘリを活用して検証する。今回の連携により、エアバスが開発するeVTOLのプロトタイプ「CityAirbus NextGen」(シティエアバス・ネクストジェン)の商業化に向け検証する。検証にはエアバス・ヘリコプターズの小型双発ヘリ「H135」を使用し、都市部での運航や通信技術の実証実験を展開。検証飛行は今年末に始める。今回のプロジェクトは、大阪府の「空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」対象事業に認定されたことによるもの。ヒラタ学園はH135を14機、中型双発ヘリコプター「H145」を2機保有。救急医療機器を搭載した「ドクターヘリ」(ドクヘリ)の運航や人員輸送などを担っている。エアバスは2021年9月に、CityAirbus NextGenを発表。UAMの実現に向けたもので、航続距離は80キロ、時速120キロで。都市部などで運用できるように開発した。日本国内ではeVTOLの社会実装に向けたプロジェクトが進んでおり、ヒラタ学園はANAホールディングスとオリックスの3社と共同でeVTOLの実現に向けた実証実験を展開。三菱地所と日本航空、兼松の3社は東京都が公募したプロジェクトに参画し、今年度内に実装への課題整理を進め、2024年度の運航実証を目指している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:エアバスが開発中のeVTOL機「City Airbus NextGen」】

2.入国時の陰性証明不要に、水際緩和スタート

厚生労働省は9月7日午前0時から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の水際対策を緩和した。日本への入国時に必要としている陰性証明書について、3回目のワクチン接種を済ませていることを条件に免除した。政府は個人旅行での入国は認めていないものの、同日から1日あたりの入国者数を5万人に引き上げるなど、コロナ前の“日常”を徐々に取り戻しつつある。日本航空によると、国際線の予約数は厚労省が緩和を発表した8月25日以降、全路線で順調に伸びているという。【Aviation Wire News】

3.ANA系avatarinとJAXA、東京から種子島宇宙科学技術館をリモート見学 

ANAホールディングスが出資するavatarin(アバターイン、東京・中央区)は9月4日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とスペースサービス(東京・千代田区)、公益財団法人日本宇宙少年団(YAC)とともに、avatarinの遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」の体験会を東京・日本橋で開いた。鹿児島県のJAXA種子島宇宙センター宇宙科学技術館に設置されたnewmeを、日本橋にいるYACの子供たちが操作し、館内を見学した。avatarinは、newmeを使った瞬間移動サービス「avatarin(アバターイン)」を展開。4日はYACの東京日本橋分団の結団式が開かれた後、団員の小中学生23人が体験会に参加した。日本橋の会場に設置されたノートパソコンからnewmeを遠隔操作し、種子島にある宇宙科学技術館のスタッフに案内されて動かすと、newmeのカメラがロケットの模型や説明パネルなどの展示物を、会場のモニターに映し出した。newmeで見学した女の子は、「東京から見られて『どこでもドア』みたいで素晴らしかった」「画面だから直接見られないけど見学できて良かった」と話していた。avatarinは、JAXAの新たな発想による宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みで、2021年7月から実証実験をスタート。今回の体験会もその一環で、学校の授業への活用など宇宙教育分野でのnewmeの活用を模索していく。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:種子島宇宙センターを「アバターイン」ロボットを遠隔操作し見学】