KIT航空宇宙ニュース2022WK39

SkyDriveが発表した量産タイプの「空飛ぶクルマ」SD-5機
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK39

海外のニュース

1. エア・カナダ、ハイブリッド電動機30機導入 28年就航30人乗り、開発社に投資

エア・カナダは、スウェーデンのベンチャー企業Heart Aerospace(ハート・エアロスペース)が開発中の電気ハイブリッド航空機「ES-30」について、30機分の購入契約をこのほど発表した。バッテリーと航空燃料で駆動するリージョナル機で、2028年の就航を予定する。また今回の契約にはハート社への株式投資も盛り込まれ、エア・カナダはハート社の500万米ドル(約7億2300万円)分の株式を取得した。ES-30は30人乗りの4発プロペラ機で、機内にはギャレー(厨房設備)とラバトリー(化粧室)も備える。リチウムイオン電池で駆動し、航続距離はすべて電動の場合200キロ、バッテリーと航空燃料を組み合わせた場合は400キロ。また旅客数が25人以下であれば、ハイブリッドで800キロ飛行できる。充電完了時間は30-50分を見込むほか、代替燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」も使用できる。エア・カナダは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げており、ES-30の導入により目標の達成を前進させる。ハート社は19人乗りの電動旅客機「ES-19」の開発も進めており、ユナイテッド航空と100機導入する契約を条件付きで締結。ユナイテッド航空が求める安全性などをクリアした場合、2026年までに就航させる見通し。【Aviation Wire New】

【Aviation Wire提供:エアカナダが導入予定のHeart Aerospace社製電動航空機「ES-30」】

2.ZeroAviaは、燃料電池パワートレインのターゲットにCessna Grand Caravanを選定

高度なパワートレインを開発者中のZeroAviaは、2025 年を目標に認証を取得し、ZA600水素燃料電池推進システムの立ち上げプラットフォームとしてCessna Grand Caravanを選択した。ZeroAvia と Cessna の親会社であるTextron Aviationは、 「非独占的」開発契約の対象となっている、600kW ZA600パワートレインをGrand Caravanに搭載するために協力する。ZeroAviaによると、同社のソリューションは、既存のGrand Caravan顧客向けに改修キットとして提供可能であり、675shp (503 kW)のPratt & Whitney Canada PT6エンジンを、ZA600 パワートレインに置き換えることは、追加型式証明 (STC) で対応する。気体水素用のタンクは、Grand Caravanの翼の下に配置され、「オペレーターが座席数や貨物スペースを維持できるようにする」とZeroAviaは述べている。ただし、燃料電池および関連システムの搭載場所の詳細は明らかにされていない。【Flightglobal News】

【ZeroAvia社提供:水素燃料電池推進セスナGrand Caravan機想像図】

3.EUが、クリーン航空機の研究開発に7億ユーロを割り当て

カーボンニュートラルな航空機を開発するためのEUの官民パートナーシップは、20の先端技術研究開発プロジェクトに対して 7億ユーロを超える資金を承認した。Clean Aviation Joint Undertakingは、持続可能で気候中立的な未来に向けて航空を変革するための、欧州連合の主要な研究および革新プログラムです。ロールス・ロイスは、以下に概説する 3つの研究およびイノベーションプロジェクトのリード コーディネーターを含む6つのプログラムのパートナーとなっている。このコンソーシアムはロールス・ロイスが主導し、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、英国の主要な学術、研究、産業パートナーが参加している。このプロジェクトは、将来の民間航空の機会に向けてスケーラブルなUltraFanアーキテクチャと一連の技術を大幅に開発し、水素技術とハイブリッド電気技術を民間航空宇宙ポートフォリオに適切に組み込むためのプラットフォームを提供する。HE-ARTはリージョナル航空機向けのハイブリッド電気推進システムで、多様な産業、研究、学術チームで構成されるこのコンソーシアムは、ロールスロイスが率い、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スペイン、英国のパートナーと共に運営される。HE-ARTは、将来のリージョナル航空機向けに最適化されたハイブリッド推進システムに向けた重要なステップを踏みながら、電動ハイブリッドターボプロップ (e-TP) の地上デモンストレーションによってハイブリッド化を実現する技術の実証に焦点を当てる。CAVENDISHは、航空エンジンのデモンストレーションと水素による航空機統合戦略のためのコンソーシアムで、ロールス・ロイスが主導するこのコンソーシアムには、ブラジル、フランス、ドイツ、オランダ、ポルトガル、スペイン、英国の重要な学術、研究、産業パートナーが参加する。CAVENDISH は、液体水素システムを地上試験用の最新のエンジンに搭載する。このプロジェクトでは、二元燃料燃焼システム、低温圧縮タンクシステムの形で代替燃料の実現技術を探り、飛行実証に向けた要件を定義する。

【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:電動ハイブリッドリージョナル航空機の想像図】

4.FAA がアドバンスト・エア・モビリティ航空機のVertiport設計基準を発表

連邦航空局 (FAA) は、アドバンスト・エア・モビリティ (AAM) 航空機をサポートするインフラストラクチャであるバーティポートの新しい設計ガイドラインを発表した。設計基準は、空港の所有者、運営者、およびインフラ開発者が、電動で垂直に離着陸するAAM航空機の運用をサポートする施設の開発を開始するための重要な情報を提供する最初のステップです。 垂直離着陸 (VTOL) は、地方、都市、および郊外地域の低高度で乗客または貨物を輸送するため、設計基準には、安全な離陸と着陸を可能にするために設計者と建築業者が従わなければならない重要な情報が含まれている。それらのいくつかは次のとおり。 安全性上重要な設計要素として、バーティポートのタッチダウンとリフトオフ領域の寸法、進入経路と出発経路に必要な追加の空域、および耐荷重能力。将来的には、FAA は多くのバーティポートの効率的運用を予想している。また、照明、マーキング、および視覚補助に関しては、施設をバーチポートとして識別するマーキング、照明、および視覚補助に関するガイドラインを定めている。FAAは、下の図に示すように、Vertiport識別記号を推奨している。

【FAA提供】

5.Eviationの全電動Alice航空機が初飛行に成功

米国ワシントン州に本拠を置くEviation Aircraft社は、9月 27日にゼロエミッションのAlice航空機の初飛行に成功した。Aliceの初飛行は、ワシントン州モーゼスレイクのグラント郡国際空港 (MWH) で早朝に行われた。航空機は、テストパイロットのスティーブ・クレーンによって現地時間の午前 7時 10分に離陸し、高度3,500フィートに到達し、8分間飛行し、最大速度147ノットでMWH に安全に着陸した。この画期的な飛行は、Aliceが高速タキシングテストを完了してからわずか9日後に行われた。Aliceは、地域の旅行および貨物市場向けに設計されており、就航時には 150 マイルから 250 マイルの範囲のフライトを運航することが期待されています。最大動作速度が260ノットのこの航空機には、この規模で飛行実績のある唯一の電気推進システムである2つのmagniX magni650電気推進ユニットが搭載されている。【Flighglobal News】

【Eviation提供:初飛行を終えモーゼスレイク空港に着陸する電動航空機「Alice」】

6.Verticakl Aerospace社の VX4 eVTOL航空機プロトタイプが初のホバー飛行に成功

Vertical Aerospace社は、VX4 eVTOLプロトタイプ航空機で最初のテザー離陸を達成した。同社は月曜日に、飛行が土曜日に行われたと報告した。英国を拠点とする同社は、主任テストパイロットのジャスティン・ペインズ氏が操縦していたことと、機体が地上約1メートルで10分間ホバリングしていたことを確認した以外は、飛行に関する詳細をほとんど提供していない。飛行はパイロットにより行われたので、英国民間航空局が発行する「飛行許可」が必要でした。Vertical Aerospaceによると、新しい航空機が飛行試験をしたのは 20年以上ぶり。ブリストルに本拠を置く当該メーカーは、飛行は英国西部のケンブル空港の格納庫内で行われた。9月26日の声明で、4 人乗りの eVTOL航空機が 2025年に型式認証を取得することが期待されていると述べた。認定プログラム- 2025年に最初の納入と就航を達成することを目指す同社は以前、英国とEASAの型式認定が2024年に完了することを示していた。【Flightglobal News】

【Vertical Aerospace社提供:格納庫内で行われたeVTOL機「VX4」のホバリングテスト】

日本のニュース

1. JAL/ANA九州連合、航空券当たるキャンペーン 系列越えコードシェア10月開始

九州の地域航空会社3社と全日本空輸、日本航空の5社が出資する地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)は9月30日、冬ダイヤ初日の10月30日に始める大手2社の系列を超えたコードシェア(共同運航)の利用促進キャンペーンを始めると発表した。ANAとJALのマイル会員がコードシェア便を利用すると、地域航空3社の往復航空券や特産品などが当たる。EAS LLPを構成する九州の地域航空会社は、天草エアライン、オリエンタルエアブリッジ、日本エアコミューターの3社。冬ダイヤ初日に始めるコードシェアでは、ANAが天草エアとJAC運航便の座席を、JALがORC便をそれぞれ販売可能になる。今回のキャンペーンで対象となるのは、ANAのマイル会員制度「ANAマイレージクラブ(AMC)」会員がANA便名の天草エアとJAC運航便、JALのマイルサービス「JALマイレージバンク(JMB)」会員がJAL便名のORC便を利用すると、3社の往復航空券やオリジナルグッズ、天草と鹿児島、長崎離島の名産品を抽選でプレゼントする。EAS LLPは2019年10月25日設立。天草エアとORC、JACの九州3社と大手2社の5社が出資し、経営環境が厳しい地域航空会社が存続できるよう、ANAとJALの系列の垣根を越えた取り組みを進めている。今回のキャンペーンを通じ地域航空の利用促進を図るほか、地域活性化や離島生活路線の維持に取り組む。【Aviation Wire New】

【Aviation Wire提供:EAS LLP5社の客室乗務員】

2.各地で空の日イベント3年ぶり開催 羽田空港も賑わ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で開催が見送られてきた「空の日」のイベントが、今年は各地で開催されている。国土交通省や航空会社などで構成する羽田空港「空の日」実行委員会は、2019年以来3年ぶりに「空の日フェスティバル」を9月17日に開き、多くの人でにぎわった。羽田へ乗り入れる国内線を運航する日本航空や全日本空輸など6社は、国交省東京空港事務所や羽田のターミナルを運営する日本空港ビルデングと合同で見送りを実施。ターミナルでは、航空会社の仕事の体験教室や紙飛行機教室、グッズ販売、社員や職員による演奏会などが開かれた。地元の大田区も羽田イノベーションシティ(HICity)で区内の観光情報の発信や和太鼓の演奏などを行い、近接する都市計画公園予定地では、電動バイクなどを体験できるモビリティイベント「Sunday E park(サンデー・イー・パーク)」を開催した。首都圏では、成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)などが10日からイベントを開催。伊丹など関西3空港を運営する関西エアポート(KAP)も、「空の日エアポートフェスティバル」を10月15日に開催する。空の日の起源は、政府が1940(昭和15)年に制定した「航空日」にあり、第1回は同年9月28日、翌1941(昭和16)年に航空関係省庁間協議で9月20日となった。民間航空再開40周年にあたる1992(平成4)年に、より親しみやすいネーミングとして現在の「空の日」に改められた。この時に9月20日から30日までを「空の旬間」と定め、前後に各地で航空関連のイベントが開かれている。【Aviation Wire New】

3.SkyDrive、空飛ぶクルマの商用機「SD-05」のデザインを公開

SkyDrive(スカイドライブ)は9月26日、2025年の大阪・関西万博開催時に、大阪ベイエリアでのエアタクシーサービス開始を目指して、現在、設計開発中のエアモビリティの商用機「SkyDrive式SD-05型(SD-05)」のデザインを発表した。SD-05は、eVTOL(電動垂直離着陸機)と呼ばれる、パイロット1名とパッセンジャー1名の2名で登場できるコンパクトな航空機として開発されている。いわば、人が2人乗れるドローンである。パイロットが操縦するが、コンピュータ制御によるアシストにより、飛行を安定させる仕組みだ。最大航続距離は約10km、最高巡航速度は時速100kmとして開発中だという。これまで、SkyDriveでは1人乗りの有人機「SD-03」を試作しており、同機と同様に、新ジャンルの移動手段にふさわしい「プログレッシブ」(先駆性・先進性)をキーワードに、デザインを進めたという。SD-05を上から眺めたときには、高い飛行能力を有し小型で俊敏に空を飛ぶ、パールホワイトのツバメの姿が浮かび上がるようになっている。またメインボディをサイドから見ると、空へ飛び立つ一対のプロペラのような、S字型のシルエットが表現されている。そして、鳥や動物のストリームラインを研究し設計した先進的な空力形状も採用されており、飛行をより安定させるために水平と垂直の尾翼が設置されている。機体の上部には、12基のモータとプロペラが配置されており、SkyDriveがこれまでの機体開発プロセスで行った、1000回以上の飛行テストにより培った制御技術により、安定した飛行が実現されているとした。SD-05は、複数の企業との連携により開発が進められている。航空機用内装メーカーのジャムコ、高度な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)用品を提供する東レ・カーボンマジック、電動航空機向けの高出力かつ認証可能なパワートレインなどを開発するバッテリーシステムメーカーのElectric Power Systemsなどが、SD-05の開発に携わっているという。またSkyDriveは、SD-05で日本初となる国土交通省による空飛ぶクルマの型式証明取得を目指しているという。事業開始の皮切りとしては、2025年の大阪・関西万博における飛行実現を目指していることは発表済みだが、今回のデザインや仕様は、今後の設計開発の進捗により変更される可能性もあるとしている。【マイナビニュース】

【SkyDrive提供:開発中の空飛ぶクルマ「SD-5」を上から見たイメージ図】