KIT航空宇宙ニュース2022WK42

トヨタが出資し、ANAも協力している、Jobby Aviation社は、日本の航空局(JCAB)に対し、同社が開発中の「空飛ぶクルマ」の、型式証明承認申請を提出。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK42

海外のニュース

1. アマゾン、A330貨物機10機導入 ハワイアン航空が運航受託

通販世界最大手アマゾンは現地時間10月21日、エアバスA330-300P2F貨物機を10機リース導入すると発表した。初号機の受領は2023年後半を予定しており、自社貨物便「Amazon Air」で最大の貨物機としてハワイアン航空が運航する。A330-300P2F(Passenger-to-Freighter、貨物転用型)は、中型旅客機A330-300を貨物機へ転用したもの。独EFWが旅客機から貨物機に改修する。最大ペイロード(有償搭載量)は62トン、最大離陸重量(MTOW)は233トンで、最大航続距離は3660海里(約6780キロ)となる。アマゾンの10機は、航空機リースファイナンスを手掛けるAltavairからリース導入する。アマゾンは最大ペイロードが50トンクラスとなるボーイング767型機の貨物機を2016年から導入。Amazon Airの767には、機体前方に「Prime Air」と大きく描かれており、同年8月に初号機がお披露目された。Amazon Air最大の貨物機となるA330-300P2Fも、類似のデザインになる。【Aviation Wire New】

【Aviation Wire提供:AmazonがリースするA330P2F型機】

2. Magnixは、パワートレイン製品に燃料電池を追加予定

電気モーターメーカーのMagnixは、完全なパワートレイン・プションの範囲を拡大するため、バッテリーまたはハイブリッド電気ソリューションに加えて、水素燃料電池を提供することに関心があることを明らかにした。10月19日のNBAAビジネス・アビエーション・ショーで、ワシントン州企業の販売およびマーケティング担当上級副社長であるサイモン・ローズ氏は、水素燃料電池の追加が製品範囲を広げる鍵であると述べた。同氏は、「これを進める緊急性がある」ため、同社は燃料電池プロバイダーとのデューデリジェンス・プロセスをすでに開始していると述べている。一方、連邦航空局による640kW定格のMagni650電気推進ユニット (EPU) の承認に向けて開発を続けており、2024 年末の承認取得目標に向けて取り組んでいる。Magnixモーターは、すでにいくつかのプラットフォーム、特にEviation社の「Alice」で飛行しており、Cessna CaravanとBeaver航空機の改造も実施している。【Flightglobal News】

【Magnix社提供:Magnix EPUへ改造されたセス・キャラバン機】

3.EUとシンガポールがアーバン・エア・モビリティ(UAM)協力協定を締結

シンガポール民間航空局 (CAAS) と欧州連合航空保安会社 (EASA) は、都市の航空モビリティの改善に共同で取り組む覚書に署名した。この合意により、EASAとCAASは、都市の空間移動の問題に関連するさまざまな活動や会議に加えて、セキュリティおよび規制要件、出張調査などの分野で協力することになる。欧州の eVTOLメーカーである Volocopter社は、シンガポールの中央企業地区で航空機の試験飛行を実施しており、シンガポール内で大きな存在感を示している。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:UAMに関する合意文書に署名したCAASとEASA】

日本のニュース

1. スカイマーク、ANA系MROジャパンで重整備

スカイマークは10月21日、那覇空港にある整備会社MRO Japan(MROジャパン)に委託している機体整備について、委託初号機(ボーイング737-800型機が整備を終えた。スカイマークはこれまで、自動車の車検にあたるCチェック(重整備)をはじめとした整備作業を海外企業へ委託していたが、今後は国内での整備も並行して検討する。両社は9月22日に整備作業の基本契約を締結し、10月9日から整備作業を開始。21日には委託初号機の整備後、格納庫から搬出する「ドックアウト」を迎えた。MRO Japanは2週間近くかけて整備後、機体を水洗いし、ピカピカの状態でスカイマークへ引き渡した。スカイマークはこれまで、台北・桃園空港に隣接するエバー航空(EVA/BR)系の整備会社EGAT(エバーグリーンアビエイションテクノロジーズ)へ整備作業を委託していた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大後は、台湾入国時に人員の隔離などが必要となるなど整備委託に制限を受けたことから、国内企業への整備作業も開始した。Cチェック自体は概ね2週間程度で終了し、日数は海外へ委託した場合と変わらないものの、隔離期間で必要だった部分が短縮となる。今回の整備基本契約により、保有する29機の737-800すべてを委託するのではないという。初号機の仕上がり具合などの状況に合わせ、MRO Japanへの委託を検討する。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供】

2. 9月の訪日客、2年7カ月ぶり20万人突破

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、9月の訪日客数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前となる2019年同月比90.9%減の20万6500人で、コロナ流行直前の2020年2月以来2年7カ月ぶりに20万人を突破した。出国した日本人は81.8%減の31万9200人で、2カ月連続で30万人台となった。JNTOが重点市場としているのは22カ国・地域。月間の訪日客数は各市場とも大幅な例年割れが続いているが、1000人を割り込んだのはメキシコのみとなった。政府は9月7日から水際対策を緩和。日本への入国時に必要としている陰性証明書について、3回目のワクチン接種を済ませていることを条件に免除した。また入国者数の上限も5万人に引き上げ、添乗員なしのツアー客の入国も再開した。また10月11日からはさらに緩和し、1日あたりの入国者数の上限を撤廃。個人旅行の解禁と短期訪日時のビザ免除を始めた。コロナの症状がなければ入国時の検査はないが、入国時に3回目のワクチン接種証明書か、滞在先を出発前72時間以内の陰性証明書のいずれかの提示は継続する。

【Aviation Wire News】

3.  ホンダジェット用エンジン、100%SAFの試験成功 GEホンダHF120

本田技研工業(7267)と米GEの折半出資子会社GEホンダ エアロ エンジンズは、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」用エンジンHF120に代替航空燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」を100%使用した試験に成功したと発表した。今回の試験では、航空燃料としてSAFを100%使用した場合、HF120の性能への影響を既存のジェット燃料と比較して評価。現在もっとも普及しているSAF「HEFA-SPK」を使用し、地上でのエンジン試験を米オハイオ州ピーブルズにあるGEの施設で数日間実施した。HEFA-SPKは動植物由来の油を水素化処理して合成される航空燃料で、既存の石油精製設備で製造できる。試験の結果、従来のジェット燃料を使用した場合と同等の性能が確認されたという。ホンダの米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は現地時間10月17日、ホンダジェットの最新型で、航続距離を延ばして操縦の自動化を進めた「HondaJet Elite II(ホンダジェット・エリートII)」を発表。100% SAFによるHF120の試験成功もGEホンダが同日発表した。GEとホンダは、SAFの安全性を評価し規格化の支援を行う国際団体「FAA/OEM Review Panel」へ今年6月に加入。SAFの安全性検証や普及に向けて活動している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:100%SAF燃料で運転に成功したHF120型エンジン】

4.  トヨタ出資Joby Aviationの”空飛ぶクルマ”、国交省に型式証明申請 海外eVTOL初

国土交通省航空局(JCAB)は10月18日、米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)が開発を進める「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)について、同社からの型式証明申請を受理したと発表した。外国製のeVTOLとしては初の申請と受理で、今後は開発の進展に合わせ審査を進める。ジョビーが開発中のeVTOLは主翼に4つ、機体後部に2つの電動推進ユニットを搭載。胴体長は7.3メートル、翼幅は10.7メートルで、乗客4人とパイロット1人の計5人まで搭乗できる。航続距離は約150マイル(240キロメートル)で、都市圏の移動用に開発を進めている。現在はFAA(米国連邦航空局)とJCABのほか、英CAA(民間航空局)でも型式証明取得の審査が進められ、2024年のサービス開始を見込む。ジョビーは2009年に設立。本社は米カリフォルニア州サンタクルーズで、eVTOLの開発や設計、製造を手掛けるほか、米国内では旅客輸送サービスの提供も計画している。同社にはトヨタが出資しているほか、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスともパートナーシップを締結している。ジョビーは経済産業省と国交省が主催する「空の移動革命に向けた官民協議会」にも参画しており、今回の型式証明申請により日本国内でのサービス提供を目指し準備を進める。JCABは、SkyDrive(スカイドライブ、愛知・豊田市)が申請した国産eVTOLの型式証明について、2021年10月29日付で受理している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:Jobby Aviationが開発中のeVTOL機】

5. ホンダジェット「Elite II」発表 航続距離延長や自動化、新色も

本田技研工業の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニーは現地時間10月17日、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の最新型「HondaJet Elite II(ホンダジェット・エリートII)」を発表した。航続距離を延ばし、自動化を進めた。4人搭乗時の航続距離は、2021年に発表された「HondaJet Elite S(ホンダジェット・エリートS)」が1437海里(約2661km)だったのに対し、エリートIIは1547海里(約2865km)に延びた。燃料の搭載スペースを増やしたという。最大離陸重量は1万1100ポンドに増え、重量増加に伴い新型グランドスポイラーや、ガーミン製G3000をベースにカスタマイズしたアビオニクスなどを採用した。客室仕様をフルモデルチェンジし、新しい表面素材と色を採用したインテリアデザインを導入。「ノーズ・トゥ・テール」の音響処理により、静かな機内環境を実現したという。また、コックピットでは、パイロットシートのシープスキンカバーシートと、トラック延長により足元スペースを3インチ拡大するオプションを用意した。外観は黒を基調とした新色も選べる。また、2023年前半には、希望する飛行特性に基づいた出力管理の自動化によりパイロットの負荷を軽減し、機体からより正確で効率的なパフォーマンスを引き出すことができる「Autothrottle(オートスロットル)」が利用可能になる予定。2023年後半には、緊急時に人の介入なしに機体を自律的に制御して着陸させる「Emergency Autoland(エマージェンシー・オートランド)」の発売を予定している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:ホンダ「Elite II」】

6.JR西、JAXAと故障予測AIによる宇宙機の故障予測などの事業の共創を開始

西日本旅客鉄道(JR西日本)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月17日、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みのもと、2022年10月より故障予測AIを活用した宇宙機のヘルスマネジメント事業を創造する「事業コンセプト共創活動」を開始したことを発表した。J-SPARCは、宇宙ビジネスを目指す民間事業者などとJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証などを行い、新しい事業を創出するプログラムだ。2018年5月から始動し、これまでに30を超えるプロジェクト・活動が進められている。そしてJR西日本では現在、鉄道設備のメンテナンスにおける生産性向上の観点から、独自のデータアナリティクス組織がセンサやカメラから得られる多様なデータを分析し、AIなどを活用した設備の故障予測の技術開発を進めている最中とする。なおAIによる故障予測は、自動改札などの一部の業務においてすでに活用中だという。またJAXAは、人工衛星を運用する上で、人工衛星の健全性確認に必要な多様なテレメトリデータの取得を行っている。現在は地上に送られるそのデータ群を運用管制員がつぶさに観察することで、故障や異常を未然に防止し、健全な衛星の運用が実現されている。また、データ分析による宇宙システム解析検証技術の研究にも取り組み中だという。今回の共創活動においては、JR西日本はデータ分析によるAI開発技術およびその業務実装ノウハウを提供し、適切な課題設定およびその実装方法のデザインを行うとする。また、JAXAの持つ人工衛星からのテレメトリデータアセットおよび人工衛星に関する運用のノウハウの提供により、人工衛星における故障および異常兆候の検知AIの開発に関する知見を獲得し、人工衛星運用の品質の向上・効率化に活かしていくという。これらの両者の技術やノウハウを掛け合わせることで、人工衛星の故障および異常兆候の検知AIの開発を進め、人工衛星の予知保全に挑戦するとしている。【マイナビニュース】

【JAXA提供:今回の事業コンセプト共創活動の概要】

7.イプシロン6号機の姿勢異常は第2段RCSが原因と特定、JAXAが調査状況を報告

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月18日、宇宙開発利用部会の調査・安全小委員会にて、イプシロン6号機の打ち上げ失敗原因に関する調査状況を報告した。すでに、フライト中に姿勢の異常が起きていたことは分かっていたが、この1週間の調査によって、第2段のRCSの問題であったことが判明、その原因を3つにまで絞り込んだ。イプシロン6号機は12日に打ち上げたものの、第3段の分離前に、姿勢異常を検出。衛星を軌道に投入できないことが判明したため、指令破壊の信号を送り、打ち上げに失敗していた。今回報告された内容によれば、第2段の燃焼終了までは正常だったものの、その後、姿勢の誤差が約21°にまで拡大していたという。第2段は、燃焼中と、その前後で、姿勢制御の方式が異なる。燃焼中、その推力を利用して、ピッチ軸とヨー軸の制御を行うのがTVCだ。しかしTVCだけだとロール制御ができないため、そこはRCSが補助。燃焼前と燃焼後は推力が無く、当然、TVCによる2軸制御はできないので、このタイミングでは、RCSが3軸全ての制御を行っている。今回、問題が見つかったRCSは、第2段の後方に搭載されている。8基のスラスタを、下図の位置と向きで配置しており、2基のペアで噴射することで、3軸を制御することが可能だ。たとえば、ロール軸の場合、対角線上にある#1と#4、または#3と#6を噴射すれば、左右にロール回転させられるわけだ。このRCSは、+Y側と-Y側の2系統が用意されている。しかし、フライトデータを確認したところ、このうちの+Y側のRCSが機能していなかったことが分かった。そのため、第2段の燃焼終了後、RCSが3軸制御を開始したものの、1系統だけではバランスを崩し、誤差を拡大することになってしまった。【マイナビニュース】

【JAXA提供:イプシロンロケットの姿勢制御概要】