KIT 航空宇宙ニュース2023WK01

JAL787型機による2023年初日の出フライト
KIT航空宇宙ニュース

新年明けましておめでとうございます。今年も毎週最新の航空宇宙関連ニュースを皆さんへお届けしたいと思います。毎週閲覧し、少しでも航空宇宙に関心を持っていただければ幸いです。交通機械 小林

KIT航空宇宙ニュース2023WK01

海外のニュース

1.eVTOL機設計の複雑さにより、EASAは型式証明サポートのためモデリング手法を検討

欧州の安全規制当局は、設計の幅広いバリエーションにより飛行試験のみによる評価が非現実的であることを考慮して、将来の eVTOL航空機の認証をサポートするためにモデリングとシミュレーションの活用を拡大することを検討している。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:ロールスロイス社が検討しているeVTOL機】

2.ボーイング747の燃料タンクの爆発を防ぐため、FAAはADを発行

ボーイングによる検査について、連邦航空局 (FAA) が受け取ったレポートに基づき、FAAは、水平尾翼燃料タンクが作動している特定のボーイング 747-400型機および747-8型機に対して耐空性改善通報 (AD) を発行した。 当該航空機を運航する航空会社は、「ポンプ入口逆止弁と入口アダプターの間の接触によって引き起こされた、水平尾翼燃料タンク用移送ポンプのモーター インペラー入口アダプターの磨耗」を報告することを義務付けるAD を発行した。これは、現在米国で登録されている28 機の航空機に影響を与える。インレットアダプターの摩耗が深刻な場合、スチールとスチールの接触により、燃料タンク内で熱源および/または火花が発生する可能性がある。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:ATLAS航空所有の747-8型貨物機】

日本のニュース

1.年末年始、国際線旅客6倍超 水際緩和で回復傾向に

全日本空輸や日本航空、スカイマークなど航空11社は1月6日、年末年始の利用実績を発表した。対象期間は2022年12月28日から1月5日までの9日間。国際線は新型コロナウイルス前を大幅に割り込んだものの、半数近くまで回復。水際対策の緩和に伴い復便傾向にあることや、LCC各社も再開するなどで旅客数が前年同期を大幅に上回った。特にANAとJALの大手2社は昨年のゴールデンウイークと夏休みに引き続き、ハワイ方面が好調だった。11社の発表値を合計すると、旅客数は国際線が前年同期比6.21倍の32万9601人、国内線は10.1%増の291万4627人。提供座席数は国際線が2.42倍の41万4670席で、国内線は8.7%増の378万3093席となった。11社平均のロードファクター(座席利用率、L/F)は国際線が48.5ポイント上昇し79.5%、国内線は0.9ポイント上昇し77.0%だった。【Aviation Wire News】

2.JALの退役777、NASAで余生へ ”空飛ぶ実験室”DC-8後継

現地報道によると、NASA(米国航空宇宙局)はアームストロング飛行研究センターで飛行実験室として運用しているダグラス(現ボーイング)DC-8-72型機を、日本航空が運航していたボーイング777-200ER型機(JA704J→N774LG)に置き換えを計画している。DC-8の後継となるN774LGは、保管場所の米カリフォルニア州ビクタービルから、客室改修を行うとみられるバージニア州ハンプトンのラングレー空軍基地へ、現地時間2022年12月15日に移動している。JALの777-200ERでは最初の退役機で、2020年7月1日に羽田からビクタービルへ向かった。JALの退役機は通常、機体のロゴなどを消した白一色の塗装“白塗り”で日本を離れるが、JA704Jは鶴丸塗装のまま羽田を離陸した。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:NASA実験機として米国ラングレー空港へ向け出発するJAL777】

3.JAL赤坂社長「SAFは日本が鍵」24年に国産化視野、ワンワールドで共同調達

日本航空の赤坂祐二社長は1月1日、代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」の調達について、加盟する航空連合ワンワールド・アライアンスを通じた共同調達を強化していく考えを示した。また、JALはSAFの国産化を目指す有志団体「ACT FOR SKY(アクトフォースカイ)」を全日本空輸などと共同で設立しており、2024年ごろの国産SAF実用化が視野に入りつつあるという。SAFは、CO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル達成の鍵を握るが、供給量が限られており、調達コストも高止まりしているのが課題。JALを含むワンワールド加盟6社で、非食用トウモロコシを原料とするSAFを2027年から共同調達すると2022年3月に発表している。赤坂社長は今後のSAF調達について、「できるだけワンワールドの共同調達を使い、グローバルにまんべんなくSAFを調達できるようにしていきたい」と、共同調達によりコストを抑えて安定的な確保を目指すという。国産SAFについては、ACT FOR SKYの取り組みが、想像以上にスピーディーに進んでいる。「SAFは日本が鍵になる。ワンワールドでも期待されており、我々も国産SAFを共同調達できればいいと思う」と、国産SAFを航空会社として後押ししていく姿勢を示した。JALは恒例の「初日の出・初富士フライト」で、今年は初めてSAFを使用。SAFとカーボンオフセットにより、CO2排出量のネットゼロ(実質ゼロ)を実現した。機材は羽田発着がエアバスA350-900型機(登録記号JA02XJ)、成田発着はボーイング787-8型機(JA840J)で、いずれも省燃費機材を投入した。羽田と成田とも、SAFはフィンランドのネステが製造した動物油脂由来のものを混合率約40%で使用した。JALグループは2025年度に全燃料搭載量の1%、2030年度に10%をSAF使用量の目標としている。【Aviation Wire News】

4.国交省、NCAを厳重注意 747-8Fで不適切整備

国土交通省航空局(JCAB)は、日本貨物航空を厳重注意した。今年9月にNCAのボーイング747-8F貨物機で、第4エンジンの逆推力装置操作レバーが最大出力(フルリバース)位置にならない不具合が発生したためで、2023年1月16日までに再発防止策の報告を求めている。NCAは2018年に国交省から事業改善命令を受けている。JCABによると、9月23日にNCAのパイロットが不具合を会社に報告し、社内で不具合を調べたところ、第4エンジンの推力操作レバーにカバーを取り付けるネジのうち1本が、基準に基づかない部品番号が異なるネジだったことが判明。取り付けられたネジは本来使うものより長く、先端が逆推力装置操作レバーの内部機構と接触し、最大出力位置まで引き上げられないことがわかった。NCAは発覚から5日後の同月28日に、調査結果をJCABに報告した。また、その後の調査で発生1カ月前の今年8月30日に、機体のノーズギア(前脚)格納庫内にある照明固定用ネジを交換するために用意したネジを、問題となった推力操作レバーのカバー装着時に使用していたことや、この照明固定用ネジ交換作業が実際は行われておらず、実態のない整備記録を作成していたことが追加で判明したという。JCABは「一連の行為は、安全運航の確保にかかわる基本的な認識が不十分なものであり、誠に遺憾」としている。NCAでは、2016年にエンジン整備の記録不備で厳重注意、2018年には不適切な整備が問題となり、事業改善命令を受けている。JCABは「社内安全管理体制が不十分であったと言わざるを得ない」として、今回12月23日付の厳重注意に至った。【Aviation Wire News】

5.新明和工業が「無人飛行機」大型化へ ヤマハ発動機と共同開発 富士山麓で試験飛行

航空機事業を展開する新明和工業(兵庫県宝塚市)が、新たな挑戦を進めている。固定翼の無人航空機などの開発に力を注ぐ。今秋には、機体のさらなる大型化を見据え、ヤマハ発動機(静岡県磐田市)と共同開発した航空機の試験フライトに着手した。10月、富士山を臨む静岡市清水区の富士川滑空場。2人乗りの小型機が、滑走路上で木製のプロペラを勢いよく回した。機体は「XU-L」と言う。金属やカーボン、ポリエステル樹脂などでできた米国製の組み立て式機を新明和が改良。ヤマハの旧型スノーモービル用エンジン(499cc、2気筒)を、回転数が飛行機に合うように調整し、搭載した小型機だ。販売は想定しておらず、試験によって、エンジンの耐久性や冷却系統の動きなど膨大なデータを蓄積。有人機並みの大きさや性能を持った無人機の自律飛行システムを確立することが目的だ。【神戸新聞 NEXT】

【神戸新聞提供】富士山麓近くを飛行する無人航空機開発用に改造した「XU-L」機】

6.ソニーの超小型人工衛星「EYE」が打ち上げ、軌道上での通信確立も成功

ソニーグループは1月3日(米国時間)、宇宙空間から地上を撮影することが可能な超小型人工衛星「EYE(アイ)」を、米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍施設より打ち上げを実施したことを発表した。EYEは、高度524kmの軌道上にてスペースXのFalcon 9から放出された後、地上局との間で正常にSバンドを利用したコマンドの送信およびテレメトリデータの受信に成功。受信したデータを解析したところ、太陽電池パドルの展開にも成功し、電力が正常に確保されていることが確認されたという。EYEはソニー製カメラと、専用のシミュレータを組み合わせることで、地上から遠隔操作し、宇宙空間から撮影された静止画や動画を宇宙飛行士さながらのリアリティある視点で人々に届けることを可能とした超小型衛星。宇宙からの撮影体験は、一般向けサービスとして「宇宙撮影ツアー」と「宇宙撮影プレミアム」を2023年春ごろに展開する予定で、いずれもシミュレータを活用することで人工衛星の操作体験を通じて宇宙とつながるサービスとなる見込みだという。また、今回の打ち上げ成功に併せてソニーグループでは、EYEを安全に運用するための管制室をソニーグループ本社ビル内に新規に設置。実際の衛星運用には、ソニーとソニーワイヤレスコミュニケーションズに加え、東京大学の中須賀船瀬研究室およびアークエッジスペースが参画する共同運用体制で行うという。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:ソニーがJAXAの協力のもと、東京大学とともに開発した超小型衛星「EYE」】