KIT航空宇宙ニュース2023WK11

ソニー小型衛星に搭載された水噴射ロケット【想像図】
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK11

海外のニュース

1. ボーイング、787の納入再開へ FAAが承認

FAA(米国連邦航空局)は、ボーイングが787型機の納入を現地時間3月13日の週に再開することを承認した。FAAは787の納入を一時停止するよう2月23日に命じていた。ロイター通信などの報道によると、今回問題となったサプライヤーによる前方圧力隔壁のデータ分析ミスについて、FAAはボーイングがこれらの懸念に対処したとの声明を10日に発表した。ボーイングは納入を停止した際の声明で、運航中の機体については「ただちに飛行の安全に関する懸念はない」とコメントしている。日本航空が傘下の中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア)向けに発注している787-8も、この影響を受けているとみられる。同機はZIPAIR初の新造機で、今年度内(3月末まで)の受領を計画している。【Aviation Wire News】

2.  ヴァージン・オービットが事業停止

英ヴァージン・グループ傘下で航空機による人工衛星の打ち上げを手掛ける米ヴァージン・オービット(カリフォルニア州)が経営難に陥り、事業を停止した。複数の現地報道によると、現地時間3月16日に事業を停止し、従業員の大半がレイオフされた。ヴァージン・オービットはANAホールディングスとともに、日本国内での航空機を利用した人工衛星打ち上げ事業展開を計画。ヴァージンが「宇宙港」として提携する大分空港で、同社が保有するボーイング747-400型機を使った打ち上げを目指していた。航空機を利用すると、地上からの打ち上げと異なり天候による打ち上げ時期の調整が減少し、地上から垂直に打ち上げるよりもロケットに必要な燃料が少なくなるという。ヴァージン・オービットは21日時点で声明を出していないが、事業売却などの選択肢も検討しているとみられる。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:Virgin Orbit社の747型機からのロケット打ち上げの様子】

3.  欧州「ヴェガC」ロケット打ち上げ失敗の原因

欧州宇宙機関(ESA)などは2023年3月3日、昨年12月に発生した、小型固体ロケット「ヴェガC」の打ち上げ失敗について、原因の調査結果を発表した。問題が起きたのは第2段モーターのノズルにあるスロート・インサートという部品で、材料の品質に問題があり破損したとしている。また、もともとの要求仕様も間違っていたという。この部品はウクライナ製で、今後は欧州製に切り替えることで対応するとしている。一方、ウクライナ側は「結論を出すのまだ早く、我が国の宇宙産業の評判に悪影響が及ぶ」と非難する声明を出すなど、混乱も起こっている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:打ち上げに失敗した欧州宇宙機関の小型固体燃料ロケット「ヴェガC」】

4.eVTOL規制やインフラストラクチャのハードルの中で、従来型の電気航空機を開発するベータ

電気航空機会社のBeta Technologiesは、電動垂直離着陸(eVTOL)エアタクシーの開発も続ける中、従来の固定翼電気航空機の認証も追求する方向に移行した。eVTOLプログラムの一環として、従来の固定翼電気航空機の飛行試験を何年も行ってきた。現在、Beta社はそのプロトタイプを使用して、CX300 と呼ばれる航空機を開発および認証取得を目指している。この航空機はエアタクシー機に似ているが、プロペラで機体を持ち上げるのではなく、翼で持ち上げ飛行する。多くの業界アナリストが最近、固定翼の電動航空機の開発と運用は、eVTOLの開発と運用よりもはるかに可能性があると述べている。従来の航空機は、その動力源に関係なく、既存の空港から運用でき、既存の航空管制システムを使用できると専門家は指摘している。Beta社の最高経営責任者であるカイル・クラーク氏は、既知の認証と運用経路により、この航空機を、電気航空機を市場に投入し、顧客の手にできるだけ早く届けたいと述べている。Beta社は、CX300の認証を取得し、2025 年に出荷を開始することを望んでいる。

【Beta Technology社提供:固定翼付き従来型電動航空機「CX300」】

日本のニュース

1. 2022年旅客数、3年ぶり前年超え 国際線4倍超、国内線81.0%増=国交省統計

国土交通省が発表した2022年暦年(1-12月)の航空輸送統計の概況によると、国内線の旅客数は前年比81.0%増の7951万人、国際線は4.87倍の679万2735人で、いずれも3年ぶりに前年超えとなった。また、貨物重量は国内線が16.2%増の53万6996トン、国際線が12.3%減の155万835トンだった。国内旅客数の内訳は、羽田-新千歳(札幌)線などの幹線が前年比77.2%増の3465万人、ローカル線が84.0%増の4486万人だった。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:年度別国内線旅客数推移】

2.トキエア2号機が新潟空港へ到着

新潟空港を拠点に就航を目指す「TOKI AIR(トキエア)」の仏ATR製ATR72-600型機の2号機が3月17日午後、日本に到着して以来駐機していた那覇空港から新潟空港へフェリーされた。同機が新潟空港に姿を見せるのは初めて。2号機は室前方を貨物室に変更できるオプション「カーゴフレックス(Cargo Flex)」をトキエアで初採用した機体で、現地時間今年1月14日にフランスのトゥールーズを出発し、那覇には18日に到着した。同社の説明では新潟の天候を考慮したもので、通関手続きと機体登録の日本国籍への変更は、那覇で実施した。国土交通省の航空機登録によると、所有は1月13日、登録は同月23日となっており、当初は1月に新潟へフェリーする計画だった。トキエアが航空会社として事業を行うためには、国交省からAOC(航空運送事業の許可)を取得する必要があり、安全性や持続的な運航が可能かを規定や訓練体制などを基に審査される。同社は2022年11月30日に国交省の東京航空局(TCAB)へ申請した。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:新潟空港に到着したトキエアのATR72-600 型機2号機】¥

3. IHIとノースロップ・グラマン、小型・高機動人工衛星で協業

IHIとノースロップ・グラマンは3月15日、幕張メッセで同日開幕した防衛・セキュリティ総合展示会「DSEI Japan」で日本の宇宙領域把握(SDA)などのミッションを担う小型・高機動衛星の開発協力のための覚書を締結した。静止軌道には気象衛星や準天頂衛星、放送・通信衛星など、現在の経済・社会活動に欠かせない衛星が多数運用されており、社会基盤の一部となっている。両社によると、軌道上に挙動不審な衛星も増えているといい、2022年12月に制定された国の「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」にも持続的な経済活動と安全保障の双方の観点から、宇宙領域把握の体制強化や、宇宙状況監視衛星の必要性が明記されていることから、小型・高機動衛星の共同開発に合意した。ノースロップ・グラマンは、宇宙空間にある物体の探知・識別・判定を支援する地上設備や衛星などを提供しており、IHIグループのIHIエアロスペースは、ノースロップ・グラマンが製造する人工衛星や宇宙船に対して推進装置を提供している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供】

4.ドローン配送実現へ 国交省が初の型式認証

国土交通省航空局(JCAB)は、ACSL製のドローン「PF2-CAT3」に対して第一種型式認証を行った。レベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)に対応した無人航空機に対する同認証は国内では初めて。型式認証を取得したPF2-CAT3は、外径が1174×1068ミリ、高さ601ミリで、最大離陸重量は9.8キロ、最大積載重量は1.0キロ、最大飛行速度は時速36キロ、最大航続距離は11.4キロ。レベル4飛行に対応することで、ドローンによる配送サービスなどの実現につなげる。レベル4飛行では、住宅地など運航者とは関係のない第三者がいる上空を、ドローンの飛行状況を監視する補助者なしに飛行できる。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:JCAB型式証明を日本で始めて取得したACSL社のドローン】

5.JAL、航空大学校にシミュレーター寄贈 仙台飛ぶバロン再現

日本航空は3月13日、仙台空港に隣接する国の航空大学校(航大)の仙台分校に「FTD(Flight Training Device)」と呼ばれる飛行訓練装置を寄贈した。JALが寄贈したFTDは、航大が仙台空港での飛行訓練に使用している双発プロペラ機ビーチクラフトG58「バロン」のコックピットを再現したもので、米TRU製。今回の寄贈で仙台分校のFTDは4台になった。13日に仙台分校で開かれた贈呈式で、JAL執行役員の立花宗和運航本部長は「世界的に航空業界で働く人が徐々に減少していく中、需要は旺盛なのでどうやって支えていくかが課題。エアラインとしてお手伝いできることはないかと航大の方とお話したところ、FTDの寄贈に至った」とあいさつした。FTDであれば、実機ではできない緊急事態の訓練や、天候に左右されずに訓練を進めることができる。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:航空大学校へシミュレーターを寄贈するJAL立花運航本部長(左)】

6. Pale Blueの水推進機が地球低軌道上でのエンジン噴射・推力生成に成功

Pale Blueは3月13日、現在地球低軌道を周回しているソニーの超小型人工衛星「EYE」に搭載された水蒸気式推進機(水蒸気エンジン)について、軌道上でのエンジン噴射に成功したことを発表した。Pale Blueの水推進機を搭載したEYEは、ソニーが2023年のサービス開始を予定する宇宙撮影体験サービス「STAR SPHERE」プロジェクトで利用される超小型人工衛星。同機は2023年1月3日、SpaceXのロケット「Falcon9」によって打ち上げられた。なお水推進機は、STAR SPHEREのサービス開始前の軌道投入に際して使用される予定だという。そして3月3日、初めて水推進機によるエンジン噴射が行われた。今回は約2分間の作動を実施し、取得したデータから推力の生成を確認したとしている。【マイナビニュース】

【Sony提供:ソニーの超小型人工衛星「EYE」に搭載された水蒸気式推進機(水蒸気エンジン)】

7. 新型のドローンを使い、河川の巡視や災害現場の状況確認を行う実証実験を九州で実施

従来のドローンは数キロを調査するごとに機体を回収し、バッテリーを入れ替える必要がありましたが、この新型ドローンは最大で約50キロの距離を飛行することが可能。長距離を移動する時は飛行機の形となり、最高時速は100キロに。離着陸や調査をする時はヘリコプターの形となって空中で静止したり、垂直方向に移動したりできる。実証で使ったVTOL機はエアロセンス社製で、大きさは長さ約1・2メートル、幅約2・1メートル。前方と下向きの空撮カメラを搭載し、重さは約10キロ。最高時速約100キロで飛行できる。固定翼と機尾のプロペラを備え低燃費で長距離飛行でき、両翼の前後にそれぞれプロペラを備え従来のドローンと同じ垂直飛行などを行える。通常は通信に携帯電話回線を使用するが、緊急時の遠隔操作を遅延なく行えるよう、実証ではより安定した通信環境を構築できる河川管理用の光ファイバーネットワークに接続した自営通信網「K-PASS」を活用した。同日は午前10時30分に中津市の耶馬溪ダムを離陸し、約30分間の自動航行を経て山国川河川事務所付近の福岡県上毛町の堤防に着陸した。少し雨が降りカメラに水滴が付着するトラブルもあったが、河川上空の鮮明な空撮データの取得に成功した。同事務所では職員がモニターを使い、遠隔で飛行状況を確認した。2023年度内に実用化へ九州地方整備局はこのドローンを使って、目視では確認が難しい橋などのインフラ点検や災害現場の状況把握などを行っていく方針。【RKB毎日放送】

【RKB毎日放送提供:エアロセンス社製新型固定翼ドローン「エアロボウイング」】