KIT航空宇宙ニュース2023WK12

クラーク記念国際高等学校の高校生が開発した小型人工衛星「Clark sat-1」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK12

海外のニュース

1. 米レラティビティが世界初の3Dプリンタ製ロケットを打ち上げ – 技術実証に成功

米国の宇宙ベンチャー、レラティビティ・スペースは2023年3月23日、世界初となる3Dプリンタ製ロケット「テラン1」の初打ち上げに挑んだ。第2段の故障により軌道には到達できなかったものの、目標としていた、機体に最も負荷がかかる「マックスQ」の通過には成功。3Dプリンタ製のロケットの技術実証は達成できたとした。同社は2号機の準備を進めるとともに、より大型の次世代ロケットの開発も進める。レラティビティ・スペース(Relativity Space)は2015年に設立された宇宙ベンチャーで、米国カリフォルニア州に拠点を置く。同社の最大の特徴は、3Dプリンタを使ってロケットを製造するところにある。従来、宇宙分野での3Dプリンタの使用は一部の部品のみに限られていたが、同社は巨大な3Dプリンタを使い、ロケットの構造(乾燥)質量の実に約85%(将来的には95%)を造形。これにより、部品数は従来のロケットの約100分の1となり、製造にかかる人員や手間、時間を大幅に削減。低コスト化、品質向上などを図っている。もうひとつの特徴が、ロケットエンジンの燃料に液化天然ガス(メタン)を使っているところにある。メタンは安価なうえに入手性も高く、なにより高性能が期待できる。まだ世界的に開発途上の段階にあるが、ロケットに最適な未来の燃料と目されている。「テラン1(Terran 1)」は、こうした技術を使って造られた同社初のロケットである。全長35m、直径2.3mの2段式ロケットで、1段目にメタンと液体酸素を推進剤とするエアオン1(Aeon 1)エンジンを9基、2段目には同エンジンを真空向けに改修したものを1基装備する。高度185kmの地球低軌道に1200kg、高度500kmの太陽同期軌道に900kgの打ち上げ能力をもつ。打ち上げコストは約1200万ドルで、競合する他のロケットに比べて半額以下というきわめて安い価格を提示している。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:レラティビティ・スペース社の3Dプリンター製ロケット「テラン1」】

2. eVTOLベンチャーArcher、2025年にシカゴの空港と市内を結ぶ空飛ぶタクシー

eVTOL(電動垂直離着陸機)を開発するベンチャー企業の米Archer Aviationは3月23日、米航空大手United Airlinesと共同で初のeVTOLを使った“空飛ぶタクシー”を2025年にも開始する計画を明らかにした。シカゴ・オヘア国際空港とシカゴ市内にあるヘリポートVertiport Chicago間を、10分で運ぶという。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:Archer Aviation社のeVTOL量産機(想像図)】

3. Rolls-RoyceはUltraFan試運転の準備が完了

Rolls-Royce の UltraFan 技術デモンストレーター(推力約8万ポンド)の最初の地上試験は、同社の上級幹部によると「差し迫っている」とのことです。このマイルストーンは、 2022年後半にダービー・サイトにある同社のTest bed 80施設に移されていた。UltraFanは、Rolls-Royceが開発した高出力ギアボックス、Advance3 コア、ALECSys リーンバーン燃焼システム、140インチ (355cm) のカーボン・チタン・ファン、コンポジット・ケーシング、およびコアの高温セラミック・マトリックス複合材 (CMC) 材料を使用。Rolls-Royce は、第1世代のTrentエンジンよりも25%燃料効率が良く、A350のTrent XWBよりも 10%優れていると言い、NOx等の排出量も大幅に削減されている。UltraFan に組み込まれた技術の多くは、EUの以前のClean Sky 1および 2 プログラムを通じて開発されたものであり、このエンジンは、Clean Aviationの下でロールスロイスが主導するHeavenプロジェクトの基礎を形成すると述べている。UltraFan に組み込まれた技術の多くは、EU の以前の Clean Sky 1 および 2 プログラムを通じて開発されたものであり、Newby 氏は、このエンジンは、Clean Aviation の下でロールスロイスが主導する Heaven プロジェクトの基礎を形成すると述べている。【Flightglobal News】

【ロールス・ロイス提供:ロールス・ロイスのダービーにあるTest Bed 80へ搬入されたUltra Fan】

日本のニュース

1. JAL、737MAXを26年から導入 18年ぶりボーイング機発注

日本航空は3月23日、ボーイング737 MAXを2026年から導入すると発表した。現行機737-800(2クラス165席)の後継機で、標準型の737-8(737 MAX 8)を21機導入する。国内の航空会社で737 MAXを導入するのはANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸、スカイマークに続き3社目となる。JALがボーイングの新機材を発注するのは18年ぶり。JALが運航する737-800は2007年3月1日就航。これまでに50機導入し、現在は43機を運航している。23日に都内で会見した赤坂祐二社長は、初期導入した機材から更新すると説明した。737 MAXは燃費とCO2(二酸化炭素)排出量をエンジンで12%、翼端のウイングレットで2%、胴体後部の形状見直しで1%改善し、合計約15%削減する。50機導入した737-800のうち、今回の置き換え対象にならない分については、A320neoも含めさまざまな機材を対象に検討するという。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:737MAX-8の導入を発表するJAL赤坂社長】

2.  三式戦闘機「飛燕」重要航空遺産に

一般財団法人日本航空協会は3月20日、川崎重工業の三式戦闘機「飛燕」を25日付で重要航空遺産に認定すると発表した。実機は航空自衛隊岐阜基地に隣接する「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」(空宙博、そらはく)に展示されており、航空機として完全な姿を保っているのは展示中の1機のみであることから、文化財的価値が高いと判断した。空宙博に展示中の機体は飛燕2型6117号機で、同協会によると、1944年7月に川崎航空機工業(現・川重)岐阜工場で製造されたと推測されるという。飛燕は1941年に初飛行し、1943年から終戦までの2年間で約3000機が生産されたが、航空機として完全な姿で展示されているのは1機のみ。当該機は1945年9月に米軍に接収されたが、1953年に同協会に譲渡。同年に主翼が切断されるなど失われた部品もあるものの、2015年から2018年にかけて調査したところ、多くの部位でオリジナルの状態を保持していることが確認されたため、文化財的価値が高いことから認定した。日本航空協会は2007年に、重要航空遺産認定制度を設立。歴史的文化的に価値の高い航空遺産を周知し、後世に遺す取り組みで、国立科学博物館が所有する日本航空機製造(日航製)YS-11型機の量産初号機(JA8610)と、埼玉県が所有する「九一式戦闘機」の2件を2008年3月28日認定した。これまでに11件を重要航空遺産に認定している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」に展示されている「飛燕」】

3. 高校生が開発した人工衛星が完成! 「宇宙教育プロジェクト」最初の結実

クラーク記念国際高等学校(クラーク国際)、東京大学(東大)、Space BDの3者は、高校生を対象として未来のリーダー人材育成を目指し共同で運用する「宇宙教育プロジェクト」を通じて、人工衛星「Clark sat-1」が完成したことを発表。3月17日には、合同記者発表会を開催され、同衛星の模型が公開された。3者が共同で運用する宇宙教育プロジェクトは、人工衛星開発の追体験、生徒主体での運用・ミッション実行をベースとして、高校生が宇宙に関心を持つ機会の創出、さらに、宇宙視点でさまざまな課題解決を考え実行できる未来のリーダー人材育成につなげる教育プログラムの開発を目的としたもの。同プロジェクトは2021年7月に始動し、高校生による人工衛星の開発、および、宇宙をテーマにした独自の探求学習プログラム「宇宙探求学」の開発・実施を具体的な目標として掲げている。衛星開発においては、東大大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授が指導を、Space BDが支援を行った。また、同プログラムのアンバサダーには元宇宙飛行士の山崎直子氏が就任している。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:クラーク記念国際高等学校が開発した小型衛星「Clark sat-1」】