KIT航空宇宙ニュース2023WK13

トキエアが航空局より航空運送事業免許を取得。6月30日新潟ー丘珠路線就航を予定。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK13

海外のニュース

1. Spirit と Skyworks Aeronautics が Vertijet VTOL 航空機で提携

Spirit AeroSystems は、Vertijet VTOL 航空機を含む、英国および EUでの商用および防衛プラットフォームの開発で、米国に本拠を置くジャイロプレーン企業 Skyworks Aeronautics と提携。スピリットの北アイルランドとスコットランドのユニットは、Skyworks VertiJet (垂直離着陸 (VTOL)、高速ジャイロダイン) をサポートするための詳細な設計作業に取り組む。Vertijet は、最大時速 400 マイル (644 km/h) の速度を予定している。これは、現在稼働しているヘリコプターの 2~3倍の速さであり、航続距離は最大 1,000マイル (1600 km) です。米国シカゴに本拠を置くSkyworks Aeronauticsは、英国とブラジルにも拠点を持ち、以前はGroen Brothers Aviationと呼ばれ、1986 年に設立された。同社は、商業用および防衛用のジャイロプレーンの開発に重点を置いてきた。Vertijet の設計は、もともと DARPA のために開発されたが、プロジェクトは2008年に終了した。このコンセプトでは、ホバー、VTOL、低速飛行用にローターを使用し、巡航用に 2つのターボファン・エンジンを使用している。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:Skyworks社の「Vertijet」】

2.  ZeroAvia社Do228テストベッド機が水素燃料電池のみで飛行試験に成功

英国と米国のゼロエミッション航空技術会社であるZeroAvia社は、同社の19席のDornier Do 228テストベッド機が、同社の水素電力パワー・トレインのみを使用して飛行したことを発表した。試験飛行はイギリスのコッツウォルズ空港で行われた。ZeroAviaのDo 228 は、同社の2つの Honeywell TPE-331 ターボプロップエンジンの1つをZA-600 と呼ばれる同社の 600 kW水素電力ユニットに置き換えることで改造されている。従来のエンジンは航空機の右翼 (右翼) にあり、ZA-600 は左翼 (左翼) にある。ZeroAviaによると、Do 228はZA-600がコストウォルド空港を周回する際にテストベッドの航空機に完全に動力を供給したため、従来のタービン・エンジンからゼロ推力で飛行した。乗務員はテストを実施して、ゼロスラストをシミュレートするためにタービンを絞って、航空機が水素電力で飛行できることを確認することができたと述べている。ZA-600パワートレインは、2つの燃料電池スタックとリチウムイオン・バッテリー・パックで構成されている (離陸時のピーク電力需要をサポートし、安全なテストのための冗長性を高めるため)。パワートレインの燃料は、プログラムのパートナーである欧州海洋エネルギーセンターが空港に設置して運用している水素空港燃料補給エコシステムを通じて提供される圧縮ガス状水素。テストベッド機のDo 228では、燃料電池と水素タンクがキャビン内に取り付けられている。商用航空機に使用される量産型では、それらは機体の外部に取り付けられる。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:水素燃料電池の出力だけで水平飛行したZeroAvia社のテストベッド機】

日本のニュース

1. トキエア、新潟-丘珠6/30就航へ 国交省からAOC取得

新潟空港を拠点に就航を目指す「TOKI AIR(トキエア)」は3月31日、国土交通省東京航空局(TCAB)からAOC(航空運送事業の許可)を取得したと発表した。1路線目は新潟-札幌(丘珠)線で、6月30日の開設を予定している。機材は仏ATR製ATR72-600型機で1クラス72席。新潟-丘珠線は週4日間のみの運航で、運航する日は1日2往復設定する。航空会社として事業を行うためには、国交省からAOCを取得する必要がある。トキエアは2022年11月30日にTCABへ申請し、安全性や持続的な運航が可能かを規定や訓練体制などを基に審査が進められた。トキエアの計画路線は丘珠線のほか、新潟-仙台、中部、神戸の計4路線。年内の就航を計画しており、2路線目は仙台、その後に中部や神戸への就航を目指す。3月31日と4月1日は新潟空港で、4月3日からは新潟-仙台間での飛行訓練も予定している。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:藤田航空局長(左)から航空運送事業許可証を受領する長谷川社長】

2. 英VA社VX4、国交省に型式証明申請 大阪万博の“空飛ぶクルマ”4機種出そろう

国土交通省航空局(JCAB)は3月29日、英ブリストルに本社を置くバーティカルエアロスペース(Vertical Aerospace、VA)が開発を進める「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)について、同社からの型式証明(TC)申請を受理したと発表した。eVTOLの申請受理は4件目で、2025年に開催される大阪・関西万博で参画する運航事業4グループの機体が出そろった。VAが開発中のeVTOL「VX4」は主翼の前部に4つ、後部に4つ、計8つの電動推進ユニットを搭載。全長13メートル、全幅15メートル、全高4メートルで、乗客4人とパイロット1人の計5人まで搭乗できる。航続距離は約160キロ、巡航速度は時速240キロ。2025年の納入を目指し、開発を進めている。JCABは開発の進展に合わせ、英国のCAA(民間航空局)と連携し審査を進める。JCABがeVTOLのTC申請を受理するのは、今回が4件目。1件目は2021年10月29日付で、SkyDrive(スカイドライブ、愛知・豊田市)からの申請を受理した。2件目以降は海外社からの申請で、2022年10月18日に米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)から、今年2月21日に独Volocopter(ヴォロコプター)から、それぞれ受理している。VX4は、国内では丸紅(8002)が25機分の購入予約権を取得した。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JCABに型式証明申請を提出したVA社のeVTOL機「VX4」】

3. 東海大学学生ロケットプロジェクト 大樹町でロケット打ち上げ実験に成功

2023年3月4日、東海大学学生ロケットプロジェクトは、北海道の大樹町において、ハイブリットロケットの打ち上げの実験に成功した。東海大学の学生たちが打ち上げたハイブリットロケットは、「ハイブリットロケット57号機」。全長2.045m、直径154mm、ドライ重量10.725kgのロケットだ。燃料には固体のWax燃料(ロウ)、酸化剤には液化亜酸化窒素を使っているといい、ウェット重量では11kgになるようだ。機体素材は市販のGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)チューブを主体とし、アルミニウム合金のリングでモジュール間を接合している。これにより、660Nの推力を実現しているとする。東海大学の学生ロケットプロジェクトは、北海道の大樹町において行われてきている。実はこのプロジェクトは2004年から行われている。しかしコロナ禍の影響により中断を余儀なくされ、今回が5年ぶりの再開となったのだ。今回のチャレンジでは、機体の強度を高めたことでロケットは無事に打ち上げに成功し、将来の宇宙空間到達と超音速飛行に向けた技術実証にも成功したとする。また参加した学生は、ロケットの打ち上げに向けて貴重な経験を積み重ね、そして今回、本番ともいえるハイブリットロケットの打ち上げ実験に成功したのだ。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:打ち上げに成功した東海大学のハイブリッドロケット】

4. 千葉工大、ハイブリッドロケット用電動ターボポンプの地上燃焼試験に成功

千葉工業大学(千葉工大)は3月20日、2023年2月6日に千葉県夷隅郡御宿町の千葉工大 惑星探査研究センター 御宿ロケット実験場において、ハイブリッドロケットの推進剤を加圧する「電動ターボポンプ」を用いた地上燃焼試験を実施し、成功したことを発表した。同成果は、千葉工大 工学部 機械電子創成工学科の和田豊教授、同・佐藤宣夫教授、同・工学部 電気電子工学科の林真一郎助教、同・大学 惑星探査研究センターの庄山直芳客員研究員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、黒磯製作所(山口県下松市)、宇部興機(山口県宇部市)、やまぐち産業振興財団の共同研究チームによるもの。宇宙産業は世界的に急成長しており、世界の市場規模は現在の約40兆円から、2040年には約120兆円~160兆円になるという試算もある。中でも人工衛星を使ったサービスの需要が大きく伸びており、それに伴い、日本においても小型衛星の打ち上げ需要が急増している。ところが現在、日本国内では衛星を打ち上げるためのロケットが不足しており、国内の小型衛星のほとんどが海外製のロケットによって打ち上げられている。現在の日本の宇宙開発においては、この打ち上げ能力不足が大きな課題となっている。この課題を解決して日本の宇宙産業を一大産業にするため、千葉工大が研究開発を進めているのが、ロケットを気球で成層圏まで放球し、そこからロケットの空中発射を行う「ロックーン方式」での衛星軌道投入だ。同方式での高頻度・低価格での打ち上げを実現するべく、研究開発が進められていて、直近では2022年12月10日に、AstroXなどと共同で、山口県宇部市の宇部協立産業敷地内で打ち上げ試験を行い、空中発射を成功させている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:千葉工大でのハイブリッドロケット用電動ターボポンプの地上燃焼試験】