KIT航空宇宙ニュース2023WK17

国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」でのCM撮影案件をJAXAが募集
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK17

海外のニュース

1. ボーイング、3四半期連続赤字 737MAX増産、年内は400-450機納入=23年1-3月期

ボーイングが現地時間4月26日に発表した2023年1-3月期(第1四半期)決算は、純損益が4億2500万ドル(約567億4600万円)の赤字(前年同期は12億4200万ドルの赤字)で、3四半期連続の最終赤字となった。主力小型機の737型機は年内に400-450機の納入を見込み、今年後半には月産38機への増産を計画する。売上高は28%増の179億2100万ドル、営業損益は1億4900万ドルの赤字(同11億6200万ドルの赤字)、年金や退職金給付の経費を除外した中核営業損益は4億4000万ドルの赤字(同14億4500万ドルの赤字)だった。民間航空機部門は、売上高が60%増の67億400万ドルで、営業損益は6億1500万ドルの赤字(同8億9700万ドルの赤字)だった。1-3月期の納入機数は前年同期比37%増の130機で、2021年1-3月期から9四半期連続で前年同期を上回った。受注残は約4500機で、金額ベースでは3340億ドル相当となった。主力小型機の737 MAXは、サプライヤーの米スピリット・エアロシステムズから供給された部品の一部に問題があることが判明したことで納入を一部停止。後部胴体部分の結合時に標準外の製造工程を使用していると、スピリットから4月上旬に通知があったという。運航の安全性に影響はないものの、検査などが必要なことから当面の納品や生産に影響が出る可能性があるものの、年内に400-450機の納入を予定する。一方で生産面には変更はなく、今後は生産量の増加を見込む。最終組立は今後数カ月で回復する見通しで、今年後半には月産38機、2025-2026年には月産50機への増産も計画する。また現在は月産3機の787は、今年後半に月産5機、2025-2026年には月産10機への増産を計画する。【Aviation Wire News】

2.米次世代ロケット「ヴァルカン」、上段の試験中に爆発 – 初打ち上げは延期

米国のロケット企業、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は2023年4月14日、開発中の新型ロケット「ヴァルカン」の上段の試験中に、異常が起きたと明らかにした。試験中の機体から燃焼の液体水素が漏れ、引火したことで爆発したという。ヴァルカンは米国の次世代ロケットのひとつで、主に軍事衛星や惑星探査機などの打ち上げに使うことを目的としている。初打ち上げは5月4日にも予定されていたが、この事故により6月以降へ延期されることとなった。事故は現地時間3月29日、米国航空宇宙局(NASA)のマーシャル宇宙飛行センターの試験場で発生した。このとき、ヴァルカンの上段(第2段)にあたる「セントールV (Centaur V)」の構造試験機を使った品質試験を実施中で、液体水素を充填したり、高い圧力をかけたりといった作業が行われていた。ULAのトリー・ブルーノ社長はTwitterで、「試験中にハードウェアに異常が発生しました。これは、飛行前に地上で可能な限り、あらゆる条件を想定した徹底的かつ厳密な検証を行っていた中で起きたものです。異常については現在調査中です」と述べた。爆発した機体は、実際の打ち上げに使うハードウェアではないものの、打ち上げ前に事故の原因などを究明する必要があるとしている。これまで、ヴァルカンの初打ち上げは5月4日に予定されていたが、ブルーノ氏によると「6月か7月になるだろう」としている。ヴァルカンの1号機は「Cert-1(first certification)」というミッション名で呼ばれており、米ベンチャーの「アストロボティック(Astrobotic)」が開発する月着陸機「ペレグリン(Peregrine)」のほか、Amazonの宇宙インターネット衛星「プロジェクト・カイパー」の試験機などを搭載して打ち上げることになっている。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:打上げリハーサル中の次世代ロケット「ヴァルカン」のセントレールV】

3.  トヨタとJoby Aviationが提携を深める

日本のトヨタ自動車株式会社は、Joby Aviationに、Jobyが開発中の電動垂直離着陸 (eVTOL) 航空機用の「主要なパワートレインおよび作動コンポーネント」を供給する予定。「トヨタとのパートナーシップは、カリフォルニア州マリーナにあるパイロット生産ラインの設計の支援から、航空機の主要コンポーネントの供給まで、Jobyの成功に不可欠な要素であり続けています」と 4月27日Jobyが述べた。Jobyは、カリフォルニアに本拠を置く航空宇宙企業で、エアタクシーとして構想された小型の垂直離着陸機を製造している。この合意は、「Joby 航空機の製造と組み立てをサポートするためのさまざまなプロジェクト」に関する以前のパートナーシップに基づいていると述べている。また、トヨタはすでにJobyに約4億ドルを投資している。【Flightglobal News】

【Joby Avbiation提供::Jobyが開発中のeVTOL機】

4.  GKN AEROSPACE が航空機用の画期的な水素推進システムの開発をリード

GKN Aerospace は、開発中の液体水素燃料電池推進システムの詳細を明らかにしました。最終的には、少なくとも 96 席の将来のゼロエミッション旅客機に電力を供給する可能性があると述べている。【Flightglobal News】

【GKN Aerospace提供:英国H2GEARプロジェクトの水素推進システム航空機】

日本のニュース

1. ピーチ、国際線再開でCA採用強化 面接は服装自由、9月以降入社100人

ピーチ・アビエーションは4月28日、2023年度入社の客室乗務員の募集を始めた。入社時期は9月以降で、エントリー締切は5月22日正午。今年1月に引き続く募集で、国際線の再開や旅行需要の急回復に伴い採用を強化する。また、6月に予定する面接には、自由な服装での参加を求めている。勤務地は関西空港や成田空港、那覇空港をはじめ、会社が指定する場所。採用人数は100人程度を予定している。雇用形態は当初は有期雇用契約の訓練生としてスタートし、客室乗務員の辞令が発令されると無期雇用契約の正社員に切り替わる。対象は、8月末までに専門学校、高専、短大、4年制大学、大学院を卒業・修了している人か、卒業見込みの人。最終学歴が高卒の場合は、3年以上の就労経験が必要になる。選考はWebエントリーと面接、筆記テスト、身体検査。エントリーはピーチの採用サイトで受け付ける。1次面接と筆記試験は大阪会場が6月3日と4日、東京会場は5日か6日のいずれか1日。2次試験と身体検査は6月24日か25日のいずれか1日で、東京で実施する。面接は「初フライトの日にあなたのテンションをMAXにする服」をテーマとした服装で参加する。服装を自由としたことについて、ピーチは「自分らしい姿でチャレンジしていただくため」と説明している。選考日程や内容、会場などは変更する可能性があり、個別の日程調整は対応できないとしている。【Aviation Wire News】

2.成田空港、33社参加の合同説明会 幕張メッセで5/18、中国復便視野に人材確保急務

成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は5月18日に、旅客・貨物ハンドリングや保安検査など、空港内の関連企業33社による合同企業説明会を開催する。2月に続く2回目の説明会で、参加企業は前回から12社増える。年齢・性別・学歴・経験は不問。成田を含む各空港では、需要の回復に伴い人手不足も深刻化しており、人材の確保を急ぐ。会場は前回同様、幕張メッセ(千葉・美浜区)の国際会議場2階コンベンションホール。午前と午後の2部制で、会場ごとに企業ブースを設け、各企業が参加者に説明する。参加企業は貨物やグランドハンドリング、保安検査に加え、機内清掃や警備、バス、メンテナンスなど、空港の運営に携わる各業種の33社が参加する。また、通常は立入できないエリアを含む空港見学会も開催し、実際に働く職場環境を見てもらう。定員は200人で、午前の部終了後にバスで空港へ移動し、ツアーに参加する。このほか午前の部受付時に、一般エリアのみを対象とした空港見学ツアーの参加者も募集。先着40人を予定する。空港見学会は企業説明会の参加者を対象としたもので、見学会のみの参加はできない。21社が参加した初回の前回は2月5日に開催。就職を希望する477人が集まり、このうち内定に至ったのは10人程度だったという。【Aviation Wire News】

3.ANA、3期ぶり最終黒字894億円=23年3月期通期

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは4月27日、2023年3月期通期(日本基準)の連結最終損益が894億7700万円の黒字(22年3月期は1436億2800万円の赤字)になったと発表した。2020年3月期以来、3期ぶりの黒字となった。日本の水際対策緩和でビジネス需要や訪日需要の回復が進み、国際線旅客収入が堅調に推移したことが奏功した。一方、3期連続で無配となった。2023年3月期の売上高は1兆7074億8400万円(22年3月期比67.3%増)、営業損益が1200億3000万円の黒字(22年3月期は1731億2700万円の赤字)、経常損益が1118億1000万円の黒字(1849億3500万円の赤字)となった。今期(24年3月期)の通期連結業績予想は、800億円の純利益を見込む。通期の国内線旅客はコロナ前と比べて平均85%、国際線は同70%まで回復を想定。国内線はANAHD傘下のLCCであるピーチ・アビエーションの旅客数を合算すると平均95%を目指す。【Aviation Wire News】

4.搭乗前のトイレで150kg軽量化 JAL、乗客と「かくれなビリティ」でCO2削減

日本航空は4月26日、ゴールデンウイークの繁忙期前に飛行機を使った移動でサステナビリティ(持続可能性)について知ってもらおうと、羽田空港の第1ターミナルの搭乗口付近で「かくれナビリティ」をキーワードにした動画の放映を始めた。動画では、搭乗時刻に間に合う、搭乗前にトイレに行く、降りる前に窓のシェード(日よけ)を降ろすといった、ひとり一人の小さな心掛けの積み重ねを隠れたサステナビリティ「かくれナビリティ」と名づけ、駐機中や運航中のCO2(二酸化炭素)排出量削減につながることに理解を求めている。定刻通りに出発すると、遅延回復のために運航速度を速める必要がなくなり、搭乗前にトイレで用を足すことで一人あたりの重量が軽くなる。窓の日よけを下げると機内の温度を一定に保てるため、冷暖房の使用を抑えられる。JALのESG推進部企画グループの西岡桃子主任によると、国内線で使用している大型機のエアバスA350-900型機の運航便では、乗客全員が搭乗前にトイレを済ませたと仮定すると、1便あたり150キログラム軽くでき、CO2排出量を112リットル削減できるという。「1便1便としては小さな取り組みですが、塵も積もればかなり大きな削減になります」と話していた。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:「かくれなビリティ」を発表するJAL ESG推進部企画グループの西岡主任】

5.スカイマーク、既卒CA募集 8月入社30人

スカイマークは4月26日、客室乗務員の既卒採用を実施すると発表した。5月8日から募集を開始する。入社時期は今年8月1日。採用予定数は30人程度。国内外の専門学校、短大、大学、大学院を今年3月までに卒業・修了している人が対象で、入社時点で卒業・修了後3年未満の人が応募できる。就労経験の有無は問わない。8月1日に入社できることが条件で、勤務地は羽田空港のほか、会社が指定する場所となる。4月28日に学生向け就職情報サイトに詳細を掲載予定で、エントリー開始は5月8日午後3時。ウェブサイトでエントリーし、書類選考、適性検査、面接選考などを予定している。受け付けは5月22日午後3時まで。【Aviation Wire News】

6.三菱航空機が社名変更 MSJ資産管理株式会社、サイトは閉鎖

三菱重工業傘下でジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を開発していた三菱航空機は4月25日、社名を「MSJ資産管理株式会社」へ変更したと発表した。英語表記は「MSJ Asset Management Company」。住所などに変更はないという。また、25日でウェブサイトを閉鎖した。三菱重工は2月7日にスペースジェットの開発中止を正式発表。スペースジェットを確定発注していた日本航空が「導入予定航空機」に関する補償金として80億円を受領すると28日に発表し、4月24日にはローンチカスタマーである全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが三菱航空機との契約を解除したと発表した。【Aviation Wire News】

7.  JAXAがISS日本実験棟「きぼう」を利用した宇宙でのCM撮影の公募を開始!

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月25日、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の船内などを利用したCM(コマーシャルメッセージ)の撮影案件を募集することを発表した。JAXAは、将来の地球低軌道における事業の活発化に向け、民間企業による取り組みを支援するさまざまな施策に取り組んでいるという。今回の取り組みは、ISSの「きぼう」日本実験棟を利用した新しい事業の価値創造や、さらなる地球低軌道の利用拡大を目的として、「きぼう」の新しい利用機会を提供することにより民間企業の参入促進を図る試行的なものとなる。「きぼう」でのCM撮影では船内空間での撮影が可能で、船内で広告対象商品などの打ち上げ品を浮遊させた状態で撮影することが可能だという。また、打ち上げ品の撮影が無く地球や宇宙空間の映像をCMに使う場合は、きぼうの船外ハイビジョンカメラ(HDTV-EF2)を用いた撮影も可能だ。募集の締め切りは2023年7月31日の正午(日本時間)で、応募多数の場合には、締め切り日より早期に打ち切る場合もあるとする。また同募集は「きぼう有償利用制度(非定形サービス)」を活用したもので、撮影実施に際した諸条件は、募集要項に加えてきぼう有償利用制度の枠組みの中での実施となる。【マイナビニュース】

【JAXA提供:ISS日本実験棟「きぼう」を利用したCM撮影案件の募集】

8.  ispace初の月面着陸ミッションは失敗、ランダーの降下中に何が起きた?

ispaceは4月26日、同日未明より開始したランダーの月面着陸運用について、経緯を報告した。それによると、着陸シーケンスはほぼ計画通りに進み、あとは接地するだけ、という最終段階まで行ったものの、高度データに誤差があり、高度がマイナスになっても降下が継続。そこで燃料が尽きてしまい、月面に落下して通信が途絶えた模様だ。同社の「HAKUTO-R」ミッション1ランダーは、この日0時40分くらいより着陸シーケンスを開始。主推進系による減速やRCSによる姿勢制御などは正常に実行され、姿勢を垂直に維持したまま月面に近づく最終降下フェーズまでは、まさに完璧な運用だった。ランダーは徐々に高度を下げ、着陸の直前には、予定通り400Nスラスタをオフにしたことを確認。200Nスラスタのみで降下を続け、減速も十分に行い、いよいよ着陸という瞬間を迎えたが、異常が起きたのはこのときだった。予定通りであれば、すぐに地表との接触が確認できるはずなのに、そのシグナルは一向に届かない。高度データはゼロを過ぎ、本来ならあり得ないマイナスの数値になってしまったものの、その状態になっても、ランダーは降下を続けていたという。ランダーは、着陸が確認できるまで、数m/s以下のゆっくりした速度を維持したまま降下を続ける設計になっていた。しかし、速度を抑えたホバリングのような状態は、燃料の消費が激しい。しばらくは降下を続けていたものの、最後は燃料が尽きてしまい、その後に自由落下したようなデータが得られているという。ランダーは地表に激突した衝撃により破損し、通信が途絶えたと考えられる。ある程度の速度なら着陸脚で衝撃を吸収できる設計にはなっていたものの、それを上回る速度で落下した可能性が高い。同社が設定した10段階のマイルストーンは、8段階(サクセス8)までの達成、という最終結果になった。【マイナビニュース】

【西日本新聞提供:月面着陸船「ランダー」の月面着陸までの流れ】