KIT航空宇宙ニュース2024WK30

世界最大級の航空機の国際見本市「ファンボロー国際航空ショー」が7月22日、英南部ハンプシャー州のファンボロー空港で5日間の日程で開幕した。
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1.ボーイング、737と787年内に増産へ=ポープ社長

ボーイングのステファニー・ポープ民間航空機部門社長兼CEO(最高経営責任者)は現地時間7月21日午後、ファンボロー航空ショー開幕前にロンドン市内で会見し、品質問題が起きている737 MAXと787の生産レートを年内に戻すことを明らかにした。737 MAXを中心とした737型機の生産レートを年内に月産38機に、787も5機にそれぞれ戻す。ポープ氏は今年3月にCOO(最高執行責任者)から昇格。就任以来、従業員から3万件以上の意見が寄せられ、これらを基に安全性と品質向上、予測可能な納入、文化の3つを優先課題として位置づけたという。【Aviation wire news】

2.ボーイング、2043年までに新造機需要4.4万機 長期予測トレンドに回復

ボーイングは現地時間7月20日、民間航空機の2043年までの新造機需要が4万3975機と見込まれるとの20年予測「民間航空機市場予測(CMO)」を、22日に開幕するファンボロー航空ショーに先立ち発表した。前回予想から1380機(3.2%)引き上げた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大きく落ち込んだ航空需要だが、航空輸送量はボーイングが20年前に予測した長期的なトレンドに戻っているとし、今後20年間の航空旅客輸送量は2023年との比較で年平均4.7%増加していくという。世界の民間航空機の保有機数は年3.2%の成長と予測。航空会社が引き続き機材稼働率を高めることから、航空輸送量の伸び率と比べると緩やかな成長が予測される。地域ごとの旅客輸送量は、南アジアが7.4%増加し、東南アジア(7.2%)、アフリカ(6.4%)と続く。納入機数はユーラシア大陸が最も多い全体の22%で、北米(20%)と中国(20%)が僅差で続くと予測している。単通路(シングルアイル、ナローボディー)機は、2043年までに3万3380機(前年予測比3.0%増)の新造機引き渡しを見込む。2043年の保有機材数の71%を占め、短中距離路線で多用途に運航される。双通路(ツインアイル、ワイドボディー)機は、8065機(同8.4%増)の新造機引き渡しを見込む。世界で2倍以上になり、中東では機材の44%を占めることになる。また、リージョナルジェットは1525機(同15.7%減)、貨物機は1005機(同8.6%増)を見込む。【Aviation wire news】

3.スペースX「ファルコン9」ロケット、打ち上げ失敗

米宇宙企業スペースXは2024年7月12日、主力ロケット「ファルコン9」の打ち上げに失敗した。ファルコン9の失敗は2016年以来、8年ぶりで、この間に334回の連続成功を続けていた。原因は調査中で、打ち上げ再開のめどは立っておらず、場合によっては影響が広く波及する可能性もある。当初、ロケットは順調に飛行し、第1段は計画どおり燃焼を終えて分離され、太平洋上の「もちろんいまも君を愛している」号に着陸した。その間も、ロケットの第2段は軌道に向かって飛行を続けていたが、次第に第2段エンジン「マーリン1D バキューム」に貼られている断熱シート(MLI)が膨らみ始め、大量の霜が付着し、さらに推進薬の液体酸素が漏れ始めた。第2段に霜が付着したり、MLIが膨張したりすることは、これまでの打ち上げでもよく見られた現象だが、今回はその量が多く、なにより液体酸素の漏れは明らかに異常だった。それにもかかわらず、第2段エンジンの1回目の燃焼は計画どおり完了し、傾斜角53.2度の高度約135×280km、軌道傾斜角53.2度の軌道に到達した。今回のミッションでは、このあと第2段エンジンの2回目の燃焼を行い、最終的に高度約300kmの円軌道に入り、衛星を分離することになっていた。しかし、同社のイーロン・マスクCEOによると、第2段の2回目の燃焼を開始しようとしたところ、「エンジンが急速な予定外の分解(rapid unscheduled disassembly)を起こした」という。もっとも、第2段機体は生き残り、搭載していた衛星を分離することはできた。しかし、近地点高度(地球に最も近い点)が135kmと非常に低く、これは予定していた近地点高度の半分以下だった。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:7月12日の「ファルコン9」ロケットの打上げ】

4.バーティカル社、最新型VX4プロトタイプの初の係留飛行を実施

新たな航空機の発表から1週間余り後、Vertical Aerospace社は最新のVX4プロトタイプ(G-EVTA)の初飛行を実施した。7月25日の午後遅く、イングランド南西部のコッツウォルズ空港にあるメーカーの試験施設で行われた有人飛行では、垂直離着陸機(eVTOL)が低空ホバリングを行い、操縦性やシステム性能をテストした。最初の係留飛行の後、英国民間航空局の許可を得て、VX4 の飛行範囲は段階的に拡大される予定。ホバリング飛行の後には、従来の翼による離着陸が続き、最終的にこれら 2つの飛行段階間の移行が行われます。これは、あらゆる eVTOLにとって最も重要な飛行フェーズです。バーティカル社の以前の試作機は、昨年8月の飛行試験中にプロペラブレードが破損する事故が発生し、廃棄された。第2世代のプロペラや自社製バッテリーパックなど、前モデルから大幅に改良されたVX4の最新モデルには、2025年第1四半期末までに2番目の同一プロトタイプが加わる予定だ。Verticalは、2026年後半にVX4の認証とサービス開始を目指している。【Flightglobal news】

【Vertical Aerospace提供:英国コッツウェル空港で行われたVX4プロトタイプ係留飛行】

5. 世界最大級の英ファンボロー国際航空ショー開幕 英、次世代戦闘機の実物大模型お披露目

世界最大級の航空機の国際見本市「ファンボロー国際航空ショー」が22日、英南部ハンプシャー州のファンボロー空港で5日間の日程で開幕した。世界の航空機製造大手や民間航空会社の幹部、軍高官らが集まり商談を展開。英BAEシステムズは、英空軍向けに開発中の次世代戦闘機「テンペスト」の実物大模型を初公開すると発表した。一方、英紙タイムズなどによると、日英伊による戦闘機共同開発計画について英政府内部で「予算の節約」を理由に廃止論が浮上しているとされ、ショーに訪れる当事国の関係者の間でも論議を呼びそうだ。新型コロナウイルス禍の収束で航空各社が相次ぎ旅客機を新規発注し、ボーイングやエアバスなどのメーカーが部品不足などで大量の受注残を抱えている問題の打開策も関係各社の間で話し合われる見通しだ。【産経新聞】

【JETRO提供:今年のファンボローエアショー会場の様子】

日本のニュース

1. 関空拠点の新会社JCAS、ATR72導入へ 25年受領、富山・米子2路線

仏ATRは現地時間7月25日、地域航空会社の設立を目指す日本の「ジェイキャスエアウェイズ」(JCAS、東京・千代田区)とシンガポールを拠点とする航空機リース会社Avation PLCの2社が、ATR72-600型機のリース契約に関する意向表明書が締結されたと、ロンドン近郊で開催中のファンボロー航空ショーで発表した。JCASは2025年末に機体を受領する見通し。今回の合意により、JCASはATRのターボプロップ機による運航を開始することになり、初の路線として、関西-富山線、米子線の2路線の開設を予定している。【Aviation wire news】

2.国交省、離陸順序「No.1」8/8再開 管制官とパイロットに「留意事項」

国土交通省航空局(JCAB)は7月24日、管制官からパイロットへの航空機の離陸順序「No.1、No.2」などの情報提供を8月8日から再開すると発表した。今年1月2日に羽田空港で起きた札幌(新千歳)発JL516便(エアバスA350-900型機、登録記号JA13XJ)と海上保安庁機との衝突事故後、緊急対策として全国の空港で情報提供を停止していた。事故後の1月9日に、緊急対策のひとつとして離陸順序の情報提供を当面停止。有識者会議「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」が、6月24日に発表した「中間取りまとめ」で離陸順序に関する情報提供は有益であることなどから、管制官やパイロットに留意事項を周知徹底した上での再開を検討してきた。また、管制交信全般に関する留意事項として、離着陸時や急な悪天時、滑走路変更時など、パイロットが複数のタスクを行っている場面では、指示・許可や情報提供の内容が正しく認識されない可能性があるとし、管制官が簡潔明瞭な交信を心掛けることや、指示・許可に関する復唱の確認「ヒアバック」を確実に実施することを求めている。交信方法にも留意するよう求めており、指示・許可と情報提供の両方を含む長い交信は、誤認や失念が生じる可能性があるとして、複数回に分けた交信など簡潔明瞭な交信を心掛けることとしている。滑走路進入に関する許可や待機の指示は、パイロットに確実に伝える必要があるため、情報提供を付加することは極力避けることや、類似した便名の航空機が同一周波数で交信している場合、聞き間違いが発生しないよう、便名の異なる部分を特に強調するなどの対策を講じる。パイロットが離陸順序の情報提供等を受ける際の留意事項として、「No.1」など離陸順序を示す情報提供があった場合も、滑走路進入には4つの許可または指示のいずれかが必要であるとした。1)離陸許可「Cleared for take-off」、2)滑走路横断指示「Cross runway」、3)滑走路上での待機指示「Line up and wait」、4)滑走路上の地上走行指示「Taxi via runway/Backtrack runway」の4つを挙げた。【Aviation wire news】

3.JAL、エアバス機31機正式発注 A350-900追加と初導入A321neo

エアバスは現地時間7月23日、日本航空(JAL/JL、9201)がA350-900型機を20機とA321neoを11機の計31機を正式発注したと、ロンドン近郊で開かれているファンボロー航空ショーで発表した。今年3月21日にJALが導入を発表したもので、追加発注となるA350-900は2027年度から国際線、JAL初導入のA321neoは2028年から国内線に投入する。JALはA350-900を2019年9月から国内線に投入しているが、国際線は初めて。22日に正式発注したボーイング787-9型機と同様、今後成長が見込まれる北米・アジア・インドを中心とした国際線に投入する。JAL初導入のA321neoは、現在運航している767-300ERを置き換えるもので、2028年から導入を始める。人口減少など国内線全体の市場規模が縮小する中、機材を小型化することで路線網の維持を図る。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ファンボロエアショーでA350-900の追加発注とA321neo導入を発表するJAL中川整備本部長(中央)】

4.ispace、独自設計・製造したミッション2向けマイクロローバーの組み立てを完了

ispaceは7月25日、同社欧州法人であるispace EUROPEが独自に設計および製造を行ったマイクロローバー(小型月面探査車)のフライトモデルの組み立てを完了したことを発表した。同ローバーは、欧州宇宙機関(ESA)とのルクセンブルクの宇宙資源の産業化を積極的に推進し、宇宙資源の探査と活用を目指す宇宙プログラム(LuxIMPULSE)の契約を通じて、ルクセンブルク宇宙機関の共同出資により設計、製造および組立が行われた。この後、日本へ輸送され、2024年冬の打ち上げを予定している「HAKUTO-R」ミッション2ランダーの「RESILIECE」に搭載されることとなる。組み立てられたローバーの名称は「粘り強さ」を意味する「TENACIOUS(テネシアス)」で、ispaceでは独自に設計、製造したispace EUROPEチームのこれまでの弛まぬ努力と、およそ5kgと小型でありながら月面探査という壮大なミッションに挑むため、諦めることなく努力を続ける決意を体現したものだと説明している。【マイナビニュース】

【iSpace提供:ispace EUROPEが設計・製造を行ったマイクロローバー「TENACIOUS(テネシアス)」。右側のグレーの部分がスコップで、その上にHDカメラを搭載】