KIT航空宇宙ニュース2024WK45

富士山の裾野で行われたJoby AviationのeVTOL機の日本での初飛行
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK45

海外のニュース

1. ボーイング、スト終結で生産再開へ 最大労組と38%賃上げ合意

ボーイングと同社最大の労働組合IAM(国際機械技術者協会)は現地時間11月4日、4年間で38%の賃上げなど、会社側が示した新たな労使契約案に合意した。9月13日に始まった16年ぶりのストライキは2カ月弱で終結し、早ければ6日にも生産を再開する見通し。組合は会社側の提案を2回拒絶。今回の賃上げは、前回10月19日に会社が提示した35%から3ポイント上乗せとなり、一時金1万2000ドル(前回は7000ドル提示)などと合わせると、4年契約が満了した時点の平均年収は、交渉前の契約と比べて約4万3700ドル(約664万円)増額の11万9309ドル(約1810万円)となる。また、9月に提示していた次世代機をシアトル近郊のワシントン州ピュージェット・サウンド地域で製造するなどの条件は踏襲された。ボーイングのケリー・オルトバーグ社長兼CEO(最高経営責任者)は4日、従業員に「この数カ月間は私たち全員にとって困難なものだったが、私たちは皆同じチームの一員だ。耳を傾け、共に働くことで、私たちは前進できるだろう」とメッセージを送り、ボーイングの復活に向けて共に歩むことを呼びかけた。【Aviation wire news】

2. P&WCは水素燃焼ターボプロップエンジンの実証を目指す

プラット・アンド・ホイットニー・カナダ(P&WC)は、PW127XTターボプロップ機の燃料としての水素を評価するプロジェクトに着手した。この取り組みは、カナダ政府の援助を受け、業界主導のグループ「持続可能な航空技術イニシアチブ」が管理する、新たに開始された5つのクリーン航空技術開発プロジェクトのうちの1つである。同団体は11月6日、カナダ政府の戦略的イノベーション基金がP&WCの水素燃料プロジェクト「水素先進設計エンジン研究」を含む5つの取り組みに2,800万カナダドル(2,000万米ドル)を拠出したと発表した。「プロジェクトの第 1 フェーズの資金には、水素燃料を使用した燃料ノズルと燃焼器リグのテストが含まれるが、将来のフェーズでは、エンジンの地上テスト全体を対象とします」と P&WC は 11 月 6 日に付け加えた。PW127XTは、定評ある PW100 ターボプロップ機の最新型です。【Flightglobal news】

【ATR社提供: ATRターボプロップ機に搭載されているP&WCのPW127XTエンジン】

3.

日本のニュース

1. サメ肌で燃費改善 JALのリブレット737に「Refresh」ロゴ

塗料関連事業を手掛けるオーウエルは11月8日、日本航空とJAXA(宇宙航空研究開発機構)の3者で実施している航空機のCO2(二酸化炭素)排出量削減に向けた実証実験で、サメ肌の構造を模した「リブレットフィルム」を貼り付けたボーイング737-800型機の国内線仕様機に、ロゴマークを貼り付けたと発表した。実証実験は2022年7月にスタート。2023年11月からはリブレットフィルムの面積を拡大し、胴体下部の左右に片側3カ所ずつ計6カ所、合計約25平方メートルのフィルムを貼り、サメ肌構造による燃費改善効果を検証している。今回貼り付けたロゴマーク「Refresh」は、「RiblEt Flight RESearcH for carbon neutral」から名づけたといい、機体後部の左右窓下部分に貼り付けた。10月24日の羽田発岡山行きJL231便からロゴ入りで運航している。3者は国内線で検証後、よりCO2排出量の削減効果が期待される国際線機材へのリブレットフィルム施工を目指す。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:サメ肌リブレットが貼付されたJAL737胴体】

2. 鹿児島空港、7者合同の採用説明会 25年新卒・アルバイト

鹿児島空港のターミナルを運営する鹿児島空港ビルディングは、航空・空港職員による採用合同説明会を11月30日に開催する。2025年新卒のほか中途入社・パート・アルバイトを対象とした説明会で、同社を含む7者が参加する。説明会には南国交通、鹿児島綜合警備保障、国土交通省大阪航空局、JALUXエアポート、寿福産業、鹿児島エアポートサービス、鹿児島空港ビルディングの各者が参加する。会場は国内線ターミナルビル3階のエアポートホールで午前11時から午後2時まで。参加無料で入退場は自由。予約なしでも参加できる。事前予約した場合は、館内レストランと売店で利用できる1000円分の商品券をプレゼントする。事前予約は11月28日締切。【Aviation wire news】

3. 国管理4空港、不発弾の磁気探査 福岡・那覇・仙台・松山

国土交通省航空局(JCAB)は、宮崎空港で不発弾が爆発したことを受け、福岡空港などこれまでに不発弾が発見されている4つの国管理空港で磁気探査を順次実施する。対象となる国管理空港は、仙台、松山、福岡、那覇の4空港。10月2日に宮崎空港の誘導路ショルダー(路肩)で不発弾が爆発し、16日から調査を始めている。今後は4空港での探査に向けて調整を進めていく。地方管理空港などについても、国交省の対応について情報提供し、航空局に相談窓口を設けて各空港管理者の相談に応じる。【Aviation wire news】

4. JAL、電動キックボードで“ラストワンマイル”解決へ Limeと協業

日本航空は11月6日、電動キックボードなど「電動マイクロモビリティ」サービスを提供する米Limeと協業すると発表した。都市部での移動手段の供給不足や、地方で課題となっている公共交通機関が行き届かない「ラストワンマイル」の解決を目指す。JALのマイレージサービス「JALマイレージバンク(JMB)」会員には、Limeの利用100円ごとに1マイルを付与。利用にはLimeのアプリが必要で、JMB会員情報を連携して利用する。電動マイクロモビリティのシェアリングサービスでマイルがたまるのは、国内航空会社としては初の取り組みだという。このほかJALのネットワークを活用し、各地でLimeポート設置をサポートする。まずは11月7日から那覇市内に40ポートを設置し、180台を配備。今後は国内での拡大を目指す。自治体・企業・観光地向けには、Limeとして初となる日本での車両レンタルサービス事業を展開する。観光地での回遊性向上など、各地でのニーズに合わせた車両レンタルサービスで、JALは各地での展開をサポートする。また現在は努力義務のヘルメット着用を促すなど、利用者への啓発活動も進めていく。【Aviation wire news】

【Lime社提供:協業を発表したJALイノベーション本部長の鈴木隆夫執行役員(左)とLimeカントリー・マネージャー兼アジア太平洋地域統括管理者のテリー・サイ氏】

5. 成田空港、大学生対象の見学会 就職先の選択肢に

成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は11月5日、千葉県内の大学生を対象とした空港見学会を16日に開催すると発表した。業務別の空港見学や座談会を通じ、業界への理解深化と就職先の選択肢としてもらうことを狙う。見学会は、保安検査や貨物ハンドリングなど「一般コース」と、航空機整備や給油施設など、理系学生向けの「技術系コース」の2コースで、大型バスに分乗して各見学場所を移動し、業務を見学する。両コースとも共通で、グランドハンドリング(グラハン、地上支援)も見学する。見学後はNAAの本社ビルに戻り、学生と若手スタッフによる座談会を開催する。見学会と座談会は、県内の大学27校の就職担当部署で構成する「千葉県大学就職指導会」が協力。昨年度に続く開催で、2回目となる今回は34社が参加し、19大学の1年生から大学院生まで約130人が参加する。【Aviation wire news】

6. ブルーインパルス、秋晴れにハートやダイヤモンド描く 入間航空祭25万人来場

航空自衛隊入間基地で11月3日、入間航空祭が開かれた。5年ぶりの一般公開で、約25万人が訪れた。世界に1機しかない電子戦訓練機EC-1(78-1021)が初登場したほか、アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行を披露。C-1輸送機の最終号機である31号機のラストフライトで幕を閉じた。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:入間基地航空祭でデモ飛行するブルーインパルス】

7. JAL、純利益498億円 スプリングJ通期黒字化へ=24年4-9月期

日本航空の2024年4-9月期(25年3月期第2四半期)連結決算(IFRS)は、純利益が前年同期比19.1%減の498億7800万円だった。売上収益は2010年1月の経営破綻後では最高を記録した。2025年3月期の通期連結業績予想は据え置き、純利益は前期(24年3月期)比4.7%増の1000億円を目指す。4-9月期の売上収益は9.9%増の9018億1700万円、本業のもうけを示すEBIT(財務・法人所得税前利益)は6.1%減の856億8700万円と増収減益となった。経営破綻後最高を記録した売上収益は、航空・非航空事業とも前年同期を上回った。営業費用は11.9%増の8243億円で、EBITマージンは1.6ポイント低下し9.5%。売上収益のうち、JALを中核とするFSC(フルサービス航空会社)事業が6.7%増の7101億円で、このうち、国際旅客収入が8.3%増の3405億円、国内旅客収入が2.0%増の2804億円、貨物郵便事業が19.2%増の797億円だった。【Aviation wire news】

8. 花巻の高校生が開発に携わった人工衛星「YODAKA」の打ち上げが成功!

Space BDは11月5日、同社が手掛ける国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」からの超小型衛星放出事業にて、岩手県 花巻北高等学校の生徒が開発に携わった人工衛星「YODAKA」をドラゴン補給船に搭載し、SpaceX「Falcon 9」ロケットによって同日11時29分(日本標準時)に打ち上げられたことを発表した。Space BDは、宇宙をテーマに花巻を盛り上げるために誕生した合同会社のSPACE VALUEとともに、“「×(かける)宇宙」で花巻をUPする”をスローガンに掲げた「花巻スペースプロジェクト UP花巻」を展開している。同プロジェクトは、地元の高校生を巻き込んだ人工衛星開発プログラムと、宇宙を題材として地場産業に新たな価値を創出することを目指す地場産業応援プログラムという2つの取り組みからなり、教育・産業・観光などさまざまな角度から宇宙による“UP”を目指すもの。またプログラムには花巻にゆかりのある若者にも参加してもらうことで、未来の花巻を担うリーダーの育成も視野に入れているとする。【マイナビニュース】

【SpaceBD提供:花巻北高校で行われた打ち上げ応援会の様子】

9. H3ロケット4号機、防衛省の通信衛星「きらめき3号」打上げに成功

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月4日、H3ロケット4号機の打上げに成功した。種子島宇宙センター 大型ロケット発射場から15時48分に離昇した4号機は順調に飛行を続け、防衛省のXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を分離、所定の軌道に投入した。4号機ではきらめき3号を、H3ロケットとしては初となる静止トランスファー軌道へ投入。また衛星分離後には、将来のロングコーストミッションに見据えたデータ取得を行う予定だ。静止軌道へ人工衛星を投入する場合、赤道上空の軌道に直接投入できる射場と比べると、種子島の射場は赤道からやや高い緯度にある関係で、投入軌道が赤道に対して斜めになる(28.5度の軌道傾斜角がつく)ため、打ち上げ能力の観点でやや不利となる。これを緩和するため、H-IIAロケット高度化プロジェクトとして開発した技術では、ロケットが宇宙空間を長時間飛行した後に第2段エンジンを改めて着火し、人工衛星を静止軌道により近い軌道まで運ぶ。こうすることで、人工衛星が搭載している燃料の消費量を抑えるようにするというものだ。H3ロケットでも同技術を適用するために必要なデータ取得を行うが、今回のミッションではきらめき3号の軌道投入までにほぼ燃料を使い切ってしまうことから、第2段エンジンの再着火は行わず、その手前の慣性飛行中のデータを取得するとのこと。地上局との通信距離が長くなるため、4号機の機体にはハイゲインアンテナを追加搭載している。【マイナビニュース】

【JAXA提供:H-IIA(高度化仕様)による静止軌道への人工衛星投入イメージ】

10.  JALと住友がアーチャーのeVTOL機を発注

日本航空と住友商事の合弁会社ソラクルは、アーチャー・アビエーションから最大5億ドル相当の電気航空機を購入することに合意した。ソラクルは、アーチャーのミッドナイト航空機を使用して日本で先進航空モビリティ(AAM)事業を開始する予定であり、交通や地理的障壁により既存の地上交通が制限されている都市で電動エアタクシー飛行を提供することを目標としている。そのために、ソラクル社へ最大100機のミッドナイト航空機を発注する権利を取得し、総額は約5億ドルとなる。これには、航空機の納入前に一定のマイルストーンに基づいた納入前支払いも含まれる。ソラクルは、東京、大阪、名古屋、北海道、瀬戸内、沖縄など、地域住民や国内外からの来訪者にとって魅力的なエリアに多様な飛行ルートを開発し、空の移動を通じて新たな価値を創造する交通ネットワークの構築を目指す。Archerとソラクルは、必要な許可と認証を取得するためにJCABと緊密に協力していく。ArcherとJCABはすでに協議を開始しており、Archerは近い将来、JCABに型式証明の検証を正式に申請する予定です。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:ArchureのeVTOL機「ミッドナイト」】

11. トヨタとジョビー、日本で初のエアタクシー飛行に成功

トヨタ自動車株式会社と、商業旅客サービス向け電動エアタクシーを開発しているJoby Aviation, Inc.は、今週初めに静岡県のトヨタ東富士テクニカルセンターで行われたJoby初の国際展示飛行を完了したことを発表した。富士山が見える中で行われたこの飛行は、ジョビー社の排出ガスゼロの航空機の低騒音性を実証する機会となったとともに、トヨタが自動車製造と技術に関する豊富な専門知識を提供することでジョビー社を支援してきた両社の約7年間の協力関係を祝う機会でもあった。トヨタのエンジニアは現在、カリフォルニアでジョビー社のチームと緊密に連携して作業しており、2023年には両社は、トヨタがジョビー社の航空機の製造に必要な主要なパワートレインと作動部品を供給する長期契約を締結した。展示飛行と歴史的節目を祝うイベントには、トヨタ自動車の豊田章男会長や日本の航空局の代表者など、幅広い関係者が試験施設に集まった。【Joby Aviation Press Release】

【Flightglobal提供:富士裾野を飛行するJoby AviationのeVTOL機】