KIT航空宇宙ニュース2024WK46
海外のニュース
1. ATR、STOL型ATR42-600S開発中止 トキエア導入意向の短距離離着陸機
ターボプロップ(プロペラ)機を製造する仏ATR製は現地時間11月13日(日本時間14日)、ATR42-600型機の改良型で、短い滑走路で離着陸できるSTOL(短距離離着陸)型「ATR42-600S」の開発を中止すると発表した。サプライチェーンのひっ迫が続いていることや市場調査の結果、現行商品に注力することにしたという。ATR42-600Sは、800-1000メートルの短い滑走路で離着陸できるATR42-600のSTOL型。座席数1クラス30-50席の市場がターゲットで、日本でも離島路線を持つ航空会社などに売り込んでおり、トキエアが導入を計画していた。同社によると「開発中止の一報は入ったが、ATRからの詳しい説明はまだだ」という。800メートル級の滑走路を離着陸する場合、既存のATR42-600では乗客数を約半分の22人に抑えなければならないが、ATR42-600Sであれば、定員48人を乗せて運航できる計画だった。トキエアは滑走路長が890メートルの佐渡空港への就航実現に向けて、ATR42-600Sの導入を表明していたが、計画見直しが不可欠となった。ATRによると、市場動向や技術革新の進捗、将来の需要予測などを踏まえ、当初の予測と比べて、ATR42-600Sの対象市場が縮小することが明らかになった。航空需要の成長が見込まれる東南アジアの場合、滑走路の延長や代替空港の建設で、STOL機を必要とする対象空港の数が大幅に減少しており、この傾向は他の主要な対象市場にも当てはまるとしている。一方、ATRの現行ラインナップの需要は見込めるとして、メーカー標準座席数が1クラス48席のATR42-600、同72席のATR72-600、ペイロード最大9.2トンの貨物型ATR72-600Fの現行3機種に注力する。【Aviation wire news】
【ATR提供:開発中止が決まったATR42-600S】
2. エアバスがアジア太平洋地域の航空機市場予測、今後20年で1.95万機の新造機需要
仏エアバスは、アジア太平洋地域の航空機市場で今後20年間に19,500機の新造航空機が必要になるという予測を示した。世界全体の需要の46%にあたり、世界全体では2043年までに約42,430機の新造機が必要になる見通し。ブルネイで開催されているアジア太平洋航空協会(AAPA)の年次総会で、同社のアナンド・スタンレー アジア太平洋地域プレジデントが現地時間11月13日に発表したもの。同氏は、アジア太平洋地域の継続的な成長と、世界の航空市場における重要性を強調したという。同氏はまた、「世界で最も急速に成長している航空市場のひとつであるアジア太平洋地域は、今後20年間で大きな成長が見込まれる。旅客と貨物輸送の両方の需要が高まる中、エアバスは最も効率的で持続可能な最先端の航空機を提供し、航空業界の脱炭素化の取り組みや、航空会社の長期的な目標達成に寄与する」とコメントしている。【マイナビニュース】
【エアバス提供:アジア太平洋地域の航空機市場で今後20年間に19,500機の新造機需要を見込む。世界全体では2043年までに約42,430機の新造機が必要になる見通し】
3. Maeveが M80開発作業にMHI RJを採用
MHI RJアビエーショングループは、2032年までに就航が見込まれる80人乗りのハイブリッド電気航空機、Maeve(メイブ・エアロスペース)社のM80の開発に協力する予定だ。三菱重工業の一部門で、旧ボンバルディアCRJリージョナルジェットラインを所有するMHIRJは、M80プログラムにエンジニアリングおよびアドバイザリーサービスを提供する。メイブ社は、M80の航続距離は1,200海里(2,220キロメートル)で、従来のリージョナルジェット機に比べて燃料消費量と排出量が40%少ないと主張している。7月、このオランダの新興企業は、M80のハイブリッド電気推進システムの設計でプラット・アンド・ホイットニー・カナダと協力すると発表した。M80 は、 Maeve が提案した Echelon 01 および Maeve 01 と呼ばれる以前の全電気式コンセプトの進化版です。これらはより少ない人数を乗せることができ、バッテリー駆動の分散推進システムを搭載していた。MHIRJはZeroAviaと協力し、開発業者の水素燃料電池パワートレインをCRJシリーズの航空機に後付けする可能性に関する技術調査も実施している。【Flighglobal news】
【Maeve社提供:ハイブリッド電気航空機「M80」想像図】
4. エレクトラ社、NASAと提携し、低排出ガス技術を200席の航空機に拡大する研究を実施
NASAは、今後数十年以内に旅客輸送を開始できる可能性のある、新世代の全電気式商用航空機の開発を支援している。同宇宙機関は火曜日、未来志向の新世代航空機の中核技術と設計コンセプトの開発を、離着陸に必要な滑走路がわずか150フィートの9人乗りの「超短距離」設計の製造業者であるエレクトラ社に委託した。この契約は、NASAの環境持続可能性のための先進航空機コンセプト(AACES)2050プログラムを支援するために締結された。このプログラムは、商業航空の脱炭素化における米国のリーダーシップを主張することを目的としている。近年、航空は世界の炭素排出量の約2.4%を占めている。同社は、ボーイングの子会社オーロラ・フライト・サイエンシズの建築家ジョン・ラングフォード氏によって2020年に設立された。しかし、エレクトラ社はすでに、独自のブローアップリフト推進システムを使用して超短距離離陸を実現するEL-2ゴールドフィンチ実証機の数回の 試験 飛行を完了している。この設計は、気流を翼の上を大きなフラップとエルロンに導き、下向きに流して揚力を増幅する。エレクトラ社によれば、これにより航空機は住宅街を走る車と同じくらいの速度で離陸できるという。同社はこれまでに、主力の9人乗りモデルについて、航空会社52社から2,000機以上の受注を獲得しているほか、米軍からも数件の契約を獲得している。同社は、この航空機が10年末までに乗客と貨物の輸送を開始すると予想している。【Flightglobal news】
【エレクトラ社提供:独自の技術を使用した脱炭素化商用航空機のコンセプト】
5. 中国、低コスト輸送ミッション向けスペースシャトル「ハオロン」の設計を発表
中国は火曜日、ハオロン宇宙貨物シャトルの設計を公開した。環球時報が宇宙船メーカーから得た情報によると、これは低コストの宇宙ステーション貨物輸送ミッション向けに独自に開発した再利用可能な商用有翼宇宙船です。中国有人宇宙機関の林希強報道官は火曜日、神舟19号有人宇宙飛行ミッションの記者会見で、中国の低コスト貨物宇宙船と有人月面探査車の開発計画の選定進捗状況を発表した。国営中国航空工業集団(AVIC)傘下の成都航空機設計研究院が開発した昊龍宇宙貨物シャトルは選定プロジェクトの一つで、エンジニアリング飛行検証段階の契約を獲得した。このタイプの宇宙船は運搬ロケットで打ち上げられ、宇宙ステーションにドッキングできる。宇宙ステーションから分離後、軌道離脱ブレーキング、再突入飛行を行い、空港の滑走路に水平着陸することができる。環球時報がAVICから入手した情報によると、点検と整備を終えれば、将来のミッションで再利用できる。メーカーによると、大きな翼幅、高い揚抗比、再利用可能な機体技術を特徴とするHaolong(ハオロン)は、有翼の再利用可能な商用宇宙船であり、宇宙ステーションへの貨物輸送コストをさらに削減できるという。【Global Times】
【AVIC提供:ハオロン宇宙貨物シャトル想像図】
日本のニュース
1. 北大とJAL、赤潮を定期便から観測 世界初
北海道大学と日本航空は11月12日、世界初となる定期便の航空機を使った赤潮の観測を2025年夏から始めると発表した。JALグループで札幌の丘珠空港を拠点とする北海道エアシステムの仏ATR製ATR42-600型機の3号機の機外に観測用カメラを搭載し、函館湾などで海洋観測を実施する。北大とJALは、連携協定を2022年6月に締結。撮影した画像データを基に赤潮発生を早期に検知し、水産関係者に情報提供する。赤潮による水産業への被害を未然に防ぐとともに、将来的には森林や海洋の環境モニタリングにも広く活用することを検討している。両者によると、赤潮を早期に検知して被害を防ぐためには、広い範囲を高い頻度で観測する必要があるという。定期便の機体は同じ飛行経路を頻繁に飛ぶため、赤潮の観測に適しているとして、活用が決まった。HACのATR42には、機体後方下部の胴体パネル上に、観測用の「マルチスペクトルカメラ」を3台取り付ける。異なる波長の光を同時に捉え、複数の波長帯の画像を撮影できるカメラで、撮影した画像は北大に転送され、大学院水産科学研究院の笠井亮秀教授が開発した赤潮検出手法を使って可視化する。植物プランクトンが発する蛍光特性の違いを利用し、赤潮を検知するという。海洋観測の対象路線は、丘珠-函館、函館-奥尻、丘珠-利尻の3路線。函館湾と噴火湾、奥尻海峡、利尻水道の海面を観測する予定で、当初は函館湾を観測する。【Aviation wire news】
【JAL提供:ATR42-600型機のダウ対抗部下部に取り付けられた3台のカメラで赤潮観測】
2. ジェイキャス、2億円追加調達 関空拠点に26年春就航計画
地域航空会社の設立を目指す「ジェイキャスエアウェイズ」(JCAS、東京・千代田区)は11月11日、第三者割当増資により2億円を追加調達したと発表した。関西空港を拠点に2026年春の就航を目指す。プレシリーズAラウンドのファイナルクローズとして調達し、山陰中央テレビジョン(松江市)など9社が出資した。JCASは今年9月にも3億円追加調達しており、2023年6月の設立以来、累計で約6億5000万円を調達したという。JCASは関空を拠点に富山と米子の2路線の開設を予定。機材は仏ATR72-600型機で、シンガポールを拠点とする航空機リース会社Avation PLCからリース導入する見通しで、2025年末の機体受領を計画している。就航初年度は1機2路線で始め、その後5年間で7機16路線への拡大を目指すという。【Aviation wire news】
3.衝撃波を推力に換えるエンジン積んだJAXA観測ロケット発射実験、正常に飛翔
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月14日、観測ロケット「S-520」34号機(S-520-34)の打上げを鹿児島・内之浦宇宙空間観測所で実施。衝撃波を推力に換える次世代システム「デトネーションエンジン」の飛行実証実験を目的としたもので、ロケットは正常に飛翔し、南東海上に落下したという。今回のロケット打上げの目的は、、次世代の宇宙輸送システムや衛星・探査機の開発に向けた、先進的な推進技術と制御技術の実証実験を行うこと。液体推進剤を用いたデトネーションエンジンシステム(DES2)と、観測ロケット実験データを回収するための回収モジュール(RATS2)の2つの実験機器を積んでいた。デトネーションエンジンシステムとは、液体燃料と酸化剤の混合ガスが爆発的に反応したときに生じる衝撃波(爆ごう波)を、安全かつ効率よく推力に変換するロケットエンジン技術。2021年に実施したS-520 31号機による実験で、宇宙での飛行実証に世界で初めて成功している。今回は液体燃料(エタノール)と酸化剤(液化亜酸化窒素)を用いた旋回型のエンジンシステム(DES2)を開発し、宇宙空間で作動させた。今後、実験装置を回収して取得データの確認・評価を行っていく。【マイナビニュース】
【JAXA提供:デトネーションエンジンの仕組み】
【JAXA提供:宇宙空間で初めて燃焼実験に成功した瞬間】