KIT航空宇宙ニュース2024WK52

日本航空(JAL)の客室乗務員によるミュージックベル隊「JALベルスター」は、12月24日、羽田空港国際線ターミナル4階の「江戸舞台」で演奏会を開催した。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK52

2024年最後のKIT航空宇宙ニュースです。本年もご愛読頂きありがとうございました。来年3月で私は、久留米工業大学を退官いたしますが、4月以降もボランティアで、このニュースを毎週寄稿いたしますので、引き続きご愛読の程、宜しくお願い致します。皆さん良いお年をお迎えください。

交通機械工学科 小林

海外のニュース

1. アゼルバイジャン航空機が墜落 バクー発グロズヌイ行きJ2-8243便

現地時間12月25日、アゼルバイジャン共和国の首都バクーからチェチェン共和国の首都グロズヌイへ向かっていたアゼルバイジャン航空のJ2-8243便(エンブラエル190(E190)型機)が、カザフスタン共和国のアクタウ市近郊に墜落した。同社によると乗客62人と乗員5人の計67人が搭乗しており、カザフスタン当局によると32人が救助されたという。ロシア軍の防空システムによる誤射が原因とみられている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:墜落したアゼルバイジャン航空機の残骸】

2. 米国の空飛ぶタクシーの新興企業が認証と製造の取り組みを強化

米国の大手エアタクシー会社3社は今週、新しいクラスの電気航空機の認証、製造、商品化の計画を前進させた。この取り組みを先導したのはジョビー・アビエーションで、同社は12月20日、連邦航空局による電動垂直離着陸機(eVTOL)の認証取得の最終段階に入ったと発表した。サンタクルーズに拠点を置く新興企業ジョビーは、最近の型式検査認可(TIA)試験ではFAAのパイロットが「ジョビーのシミュレーターを使用してヒューマン・ファクターと安全性を評価した」と述べた。シミュレーターにはFAA準拠のフライトデッキ装備品が組み込まれているとジョビー氏は言う。この新興企業は2025年にTIA(Type Inspection Authorization)飛行試験を目標としており、現在カリフォルニア州マリーナの施設でFAA準拠の最初の航空機を組み立てている。「すでに進行中の部品、航空機構造、システムの『認定のための』テストを継続するとともに、現在製造中のFAA準拠の最初の航空機で2025年にTIA飛行テストを開始することを目指しています」と最高経営責任者のジョーベン・ベバートは語る。ジョビー社は今週初め、同社機の尾部構造の静荷重試験を完了し、同社機の主要航空構造としては初となる、FAAの承認を受けたと発表した。「これは、高速、低騒音、ゼロエミッションの乗客サービス向けに設計された、ジョビーの電動エアタクシーの開発における大きな前進です」と同社は述べている。エアタクシー分野では、サンタクララを拠点とするアーチャー・アビエーションがジョージア州コビントンに大規模な製造施設を完成させ、自動車メーカーのステランティスとの提携を通じてミッドナイト・エアタクシーの生産を年間数百台に増やす計画だ。また今週、バーモント州に拠点を置くベータ・テクノロジーズは、ニュージーランド航空救急サービスから、この新興企業のアリアeVTOL機2機と、さらに10機のオプションを前金付きで受注した。ニュージーランド航空救急サービスは、2028年からこの航空機を患者搬送業務に使用することを計画している。【Flightglobal news 】

【Joby Aviation提供:Jobyが開発中のeVTOL機】

日本のニュース

1. JAL、システム障害で26日は遅延71便と欠航4便 

日本航空は12月26日、朝方発生したシステム障害の影響で、遅延便が国内線と国際線合わせて71便、欠航が4便発生したと発表した。システムは午後1時20分に復旧している。JALによると、システム障害は26日午前7時24分に発生。社内外のネットワークを繋ぐルーターに対し、大量のデータを社外から送りつけられたことが要因だった。午前8時56分に、障害の原因となっていたルーターを一時的に遮断。その後システムが順次復旧した。顧客データの流出やウイルス被害は起きていないという。【Aviation wire news】

2. A350、海保機衝突で電源喪失 CFRP機初の全損、消火救助も課題=羽田事故

国の運輸安全委員会(JTSB)は、羽田空港で今年1月2日に起きた海上保安庁機と日本航空機の衝突事故に関する12月25日公表の経過報告(中間報告)で、両機の衝突は、エアバスがA350-900型機の設計で想定していた基準を大きく超えるものだった可能性があると指摘した。コックピットや客室に大規模な損傷はなかったものの、客室のインターホンやEVAC CMD(脱出指示装置)などの機器類が衝突後に電源喪失で使えなくなり、電気系統をはじめとした重大なトラブルが発生。状況により人的被害が拡大した可能性があった。事故は今年1月2日午後5時47分ごろ、前日に発生した能登半島地震の被災地向け救援物資を新潟空港へ運ぶ海保機MA722(ボンバルディアDHC-8-Q300型機)と、JALの札幌発羽田行きJL516便(A350-900型機)がC滑走路で衝突し炎上。海保機は乗員6人のうち機長を除く5人が亡くなった。JL516便は乗客367人(幼児8人含む)と乗員12人(パイロット3人、客室乗務員9人)の計379人が搭乗していたが、全員が3カ所の出口から緊急脱出し、脱出時に1人が重傷、4人が軽傷を負った。経過報告によると、両機が衝突時にA350のコックピットや客室に大規模な損傷はなかったものの、床下の電気室が破壊され、電気系統と操縦系統、ブレーキ系統などに重大な損傷が生じた。衝突で発生した機体の火災が、客室内に延焼するまでの時間は約10分だった。この影響で、衝突後も客室内の非常灯は点灯したものの、機体前方と後方の客室乗務員同士の連絡や機内放送(PA)に客室のインターホンが使用できなかった。機長もコックピットからPAができず、EVAC CMDも作動しなかった。経過報告では、機体が停止後、電源系統が機能しなくなった可能性を指摘している。また、衝突後に機体が停止するまで、A350の左右の主翼に1基ずつ、計2基あるエンジン(ロールス・ロイス製Trent XWB)は回転し続け、機体停止後に左エンジン(第1エンジン)は停止したが、右エンジン(第2エンジン)は衝突直後の損傷で機体の通信ネットワークから断絶された状態になり、回転を続けた。右エンジンが作動し続けていたことから、客室乗務員は左右に片側4カ所ずつ計8カ所あるドアのうち、右側は最前方「R1」ドアのみ使用。左側は最前方「L1」と最後方「L4」の2カ所を使い、脱出スライドを展開して乗客を避難させた。JL516便のFDR(フライトレコーダー、飛行記録装置)は、海保機との衝突から約1.9秒後に記録を停止。衝突の0.8秒後にFDRへ電力を供給する電気系統「115V AC EMER BUS1」の出力が失われたと記録されており、FDRは電源の喪失または配線の損傷により作動を停止したと推定している。一方、CVR(コックピットボイスレコーダー、操縦室音声記録装置)は、FDRが停止後も作動し続けていたが、機体が滑走路外で停止して5秒後に記録を停止した。滑走路からの逸脱や停止時の衝撃により、CVRに電力を供給する「28V DC EMER BUS2」の電源が失われたか、EPDC(電力配電センター)または周辺配線が損傷したことによる可能性が考えられるとしている。今回の衝突事故は、A350が初めて全損・全焼した事故であるとともに、CFRP(炭素繊維複合材)で胴体が作られた機体としても初の全損全焼事故となった。経過報告によると、火災で焼失した機体構造の大半は、CFRP製の構造部材だった。A350は機体主構造の材料重量でみると約53%が複合材で、胴体や主翼、尾翼などの主構造がCFRP製、コックピットはアルミニウム合金で作られている。また、消火活動にあたった空港消防の職員や東京消防庁の消防士は、CFRPが燃えていることや留意点を知らず、粉塵防護の装備をせずに活動していた。JTSBでも、航空事故調査官に対し、CFRPを使用した機体の火災現場で発生する粉塵の危険性について教育は行われていたものの、当初は十分な防護対策がとられておらず、翌日から調査に加わったフランス当局からの指摘を受け、対策を講じた。JTSBの経過報告は、法律で定められた1年以内の調査終了が困難なためで、「社会的関心が強い事故」(武田展雄JTSB委員長)として、経過報告としては異例の資料を含めて200ページ近い報告書になった。一方、「事故防止や被害の軽減に寄与することが目的で、事故の責任を問うものではない」と、調査の趣旨を強調。今後は衝突後のJAL機の損傷状況、JAL機から非常脱出時に重大な人的被害が出なかったことも含む脱出状況、消化や救難の状況などの分析を進める。最終的な調査報告書の公表時期は確定していないが、機体の安全性などに関するもので、必要性が高いものは最終報告よりも前の段階で、機体メーカーなどに提言する可能性もある。【Aviation wire news】

【ロイター提供:羽田空港着陸時海保機と衝突して炎上するJAL機】

3. ANA、12年連続で5つ星 英SKYTRAX調査

全日本空輸を中核とするANAグループは12月24日、英国を本拠地とする航空業界調査・格付け会社SKYTRAX(スカイトラックス)による航空会社の格付け「ワールド・エアライン・スター・レイティング」で、最高評価の5つ星(5スター)を獲得したと発表した。2013年から12年連続での5つ星となった。5つ星評価を獲得しているのは世界10社のみで、日本勢はANAと日本航空の大手2社。ANAによると、機内や空港で提供するサービスが一貫して高品質であることなどが評価されたという。【Aviation wire news】

4. 東京の下町でロケットを作る、将来宇宙輸送システムが東京大田区の拠点を公開

将来宇宙輸送システム(ISC)は12月24日、メディア向けイベント「ISC Press Day」を開催。同社が小型ロケットによる離着陸試験「ASCA hopper」の開発拠点「大田ベース」を公開した。大田ベースは、その名の通り東京における町工場の集積地である大田区に構えられている。ロケット製造にも活用される技術を有する職人たちが活躍する企業も多数あり、小説・テレビドラマでも話題になった「下町ロケット」の町工場「佃製作所」の舞台でも知られるこの地を選んだのは、本社(東京の日本橋)に近い都内でロケット開発が可能な場所を探した結果であり、もともと大田区に拠点を構えるという前提であったわけではないという。開設されたのは2023年の11月ごろ。同社の社員は約80名ほど、そのうちの10~20名ほどの開発するコンポーネントを担当する人員が逐次、大田ベースに詰めて、それぞれの担当コンポーネントの組み立てや検品、状態確認などを行っているという。【マイナビニュース】

【ISC提供:「大田ベース」の外観(隣接する山富電機に土地と建屋を借りる形で活動している)】