KIT航空宇宙ニュース2025WK03
海外のニュース
1. ボーイング、スト影響で納入大幅減 737MAXは4割程度に=24年10-12月期
ボーイングの2024年10-12月期(第4四半期)実績は、民間機引き渡しが前年同期比100機(63.7%)減の57機だった。ストライキによる生産停止が影響し、2四半期ぶりに前年同期を下回り、前年同期の4割弱にとどまった。一方、受注は354機(58.2%)減の254機となった。競合のエアバスは10-12月期に123機(前年同期112機)を引き渡し、99機(同807機)を受注した。引き渡しを機種別で見ると、引き渡しは737が36機(前年同期は110機)、767が3機(15機)、777が3機(9機)、787は15機(23機)だった。受注は737が183機(前年同期は421機)、767が23機(15機)、777が8機(94機)、787が40機(78機)だった。【Aviation wire news】
2.チェジュ航空の務安事故、衝突4分前から記録なし フライトレコーダー解析
韓国の国土交通部(日本の国土交通省に相当)は現地時間1月11日、南西部の務安(ムアン)国際空港で昨年(24年)12月29日に起きたチェジュ航空のバンコク発務安行き7C2216便(ボーイング737-800型)事故で、CVR(コックピットボイスレコーダー、操縦室音声記録装置)とFDR(フライトレコーダー、飛行記録装置)には、空港のローカライザーに衝突する4分前からデータが記録されていなかったと発表した。事故機のCVRは、抽出したデータを韓国で音声データに変換。FDRは損傷状況から韓国国内での解析は不可能と判断し、米国でNTSB(米国家運輸安全委員会)の協力を受けて解析した。国土交通部によると、CVRの音声データは事故の4分前から記録が残っておらず、FDRも4分前からデータが保存されていなかったという。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:事故機のフライトレコーダー】
3.FAA、製造上の「エスケープメント:基準逸脱」により787のシートトラック検査を命じる
連邦航空局は、製造上のミスによりボーイング787の座席トラックのハードウェアに欠陥がある可能性があるため、航空会社に検査を命じる予定だ。同庁は1月16日に発表した規則案の中で品質に関する懸念を明らかにし、この問題について「複数のサプライヤーから基準逸脱の通知」を受けたと述べた。提案された規則では、これらの報告書は「シートトラックの接合金具が不適切なチタン合金材料で製造された可能性がある」ことを示していると述べられている。この命令が確定すれば、-8、-9、-10型を含む米国登録の787型機37機が影響を受けることになる。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:787を組み立てているサウスカロライナ州ノースチャールストン工場】
4.FAAは737NGと757に対しADを提案
米国の航空規制当局は、ボーイング737NGと757の頭上ビデオモニターがハードランディング中に外れたことを受けて、航空会社にモニターの交換を義務付ける予定。【Flightglobal news】

【Boeing提供:737-800型機のOverhead Video Monitor】
5. FAA の eVTOL ダウンウォッシュ調査でハリケーン並みの強風を記録
2024年12月下旬に発表された連邦航空局(FAA)の調査では、垂直離着陸場でeVTOLによって発生するダウンウォッシュとアウトウォッシュ(DWOW)のリスクが強調されており、テストされた3つの試作機すべてが離着陸センターから82フィートの地点でハリケーン級の強風を発生したことが明らかになった。複数のeVTOLのOEMが自社の航空機の認証に向けて前進するにつれ、最終的な運用環境の検討も進んでおり、特に提案されている「垂直離着陸場」の離着陸場の設計と開発に重点が置かれている。ただし、eVTOL航空機は従来の回転翼航空機とは形状と機能が異なるため、安全に運用できるように追加の準備を行う必要がある。ダウンウォッシュとアウトウォッシュ(FAA の定義では「離着陸時に[eVTOL]航空機のローター/プロペラから発生する気流」)の影響と潜在的な緩和策に関する現在の研究は限られていることを踏まえ、FAA の新しい研究では、このまだほとんど理解されていない領域に光を当てることを目指している。この種の最初の実験では、6,500ポンド未満の量産前eVTOL航空機 3 機(2 機は遠隔操縦)の航空機の動きが研究され、特注の超音波計測器で空気の乱れが記録された。テストは昼間のVMC条件で実施された。瞬間最高速度は離着陸センターから41フィートの地点で約100mphで、3機とも82フィートでハリケーン並みの風速を記録した。(時速64~73マイルは「猛烈な嵐」、時速74マイルを超えるとハリケーン並みの強さと分類される)。さらに、DWOWの最高速度は一般的に離着陸センターに近いところで記録されたもので、離れたセンサーで危険な閾値を下回る速度にはならない。そのため、「eVTOL 航空機の調査では、垂直離着陸場の安全エリアを簡単に超える可能性のある高速 DWOWフローフィールドが生成された」とこの調査は結論付けており、「DWOW の速度が 34.5 mph を超える場合や場所を問わず」ダウンウォッシュ注意エリア (DCA) を運用する必要があることを推奨している。この数値は、緩和措置を必要としない最高数値であり、FAA エンジニアリング ブリーフ105 「垂直離着陸場の設計」に記載されている。DCAの要件は、ほとんどの新しい垂直離着陸場にすでに要求されているFAAの調査と一致しており、「垂直離着陸場の設計機能または運用手順のいずれかを通じてDWOWを軽減する必要がある」と述べています。また、これはFAAの従来の回転翼ローターウォッシュ分析ハンドブックに基づいており、「ローターウォッシュによる衝突速度が地上で30~40ノット(34.5~46mph)を超えないように分離距離を維持すれば、ローターウォッシュ関連の事故のほとんどを回避できる」ことを示している。都市部での大量かつハイテンポな eVTOL 運用は、ヘリポートでの従来のヘリコプターよりも DWOW が傍観者に影響を及ぼす可能性がさらに高いことを考えるとDWOW によって引き起こされる潜在的な危険性を完全に理解し、軽減する必要性は特に重要であり、さらなる研究が求められている。【Aerospace Global News】

【FAA提供:Vertiportにおけるダウンウォッシュ注意エリア(黄色斜線エリア)】
日本のニュース
1.JAL、高高度ガス気球で「宇宙遊覧」岩谷技研と協業、今春以降事業化へ
日本航空は1月16日、宇宙関連の技術開発を手掛ける岩谷技研(北海道江別市)との協業を始めると発表した。両社は2024年12月10日に基本合意書を締結済みで、高高度ガス気球を使用した「宇宙遊覧フライト」の事業化を目指す。協業は、岩谷技研が主催する「OPEN UNIVERSE PROJECT」にJALが参画。気球での宇宙遊覧の事業化・普及を目指す日本発の共創プロジェクトで、事業・技術開発で両社が連携する。同プロジェクトにJALの知見などを活用し、体験設計や技術開発、人材育成などの分野を支援するほか、JALグループの整備会社JALエンジニアリング(JALEC)や共創パートナーと協力し、岩谷技研が目指す宇宙遊覧体験の事業化を支えていく。宇宙遊覧フライトは、岩谷技研が開発した高高度ガス気球で、成層圏の高度1万8000メートルから2万5000メートルを飛行し、地球と宇宙空間を船内から遊覧する。気球による商用での「宇宙遊覧フライト」は世界初で、今春以降の実現を目指す。同社によると、訓練や宇宙服が必要なく、気軽な宇宙遊覧体験を提供するという。同プロジェクトは宇宙産業を日本から開拓し、宇宙をすべての人にひらかれたものにしていく「宇宙の民主化」を目指す。JALのほかJTB、アサヒグループジャパンも参画する。【Aviation wire news】

【JAL提供:高度2万816メートルに到達した岩谷技研の高高度ガス気球】
2.24年訪日客、過去最高3686万人 出国日本人は5年ぶり1000万人超え
日本政府観光局(JNTO)が1月15日に発表した訪日外客数2024年推計値によると、訪日客数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前となる2019年比15.6%増の3686万9900人で、過去最高だった2019年を500万人近く上回った。円安を背景とした訪日需要の高まりにより、花見や紅葉などの季節を中心に各市場で過去最高を更新した。出国日本人数は2019年比35.2%減の1300万7300人で、2019年以来5年ぶりに1000万人を上回った。訪日客数の最高記録は、2019年の3188万2049人。JNTOが重点市場としているのは23カ国・地域で、このうち前年を割り込んだ中国とタイ、ロシアの3市場を除く20市場で年間の過去最高を更新した。JNTOは2024年の訪日客数について、桜・紅葉シーズンや夏の学校休暇など、ピークシーズンを中心に各市場が単月での過去最高を更新したことで、年間記録の更新に繋がったと分析。韓国や台湾などの東アジアに加え、東南アジアや欧米豪・中東からの訪日需要が旺盛だったという。【Aviation wire news】
3.JAC、パイロット職業体験会1/25-26開催 鹿児島空港で実機見学や進路相談
日本エアコミューターは、職業体験「エアラインパイロットという進路選択」を拠点の鹿児島空港で1月25日と26日に開催する。パイロットを含む航空業界に興味がある15歳以上35歳未満の人が対象で、参加希望日を選択して申し込む。現役パイロットが、航空管制や気象座学体験などを通じてエアラインパイロットの仕事や必要な知識を説明。JACが運航しているATR機の実機見学、進路相談などを実施し、昼食はパイロットが食べている弁当を提供する。料金は税込1万1000円で、事前にクレジットカードで決済する。会場までの交通費は各自の負担となる。定員は16人で、応募多数の場合は参加資格がある人の中で先着順。スケジュールは両日とも鹿児島空港内に午前10時10分集合、午後4時30分まで。申し込みは電子メールで、参加者の名前とフリガナ・生年月日・住所、連絡先の携帯電話番号とメールアドレス、参加希望日を記載し、 JACパイロット職業体験係(jac-pljobtaiken[アットマーク]jal.com)まで。18歳未満の場合は保護者の同意が必要になる。また、過去に同社の運航乗務員採用選考を受験した人は対象外となる。【Aviation wire news】
4.ispaceの月面ランダー「RESILIENCE」が打ち上げ成功、2回目の挑戦に出発
ispaceは1月15日、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターより、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2の打ち上げを実施した。ispaceの打ち上げは今回が2回目。2022年12月11日に打ち上げた最初のミッションでは、着陸の直前まで順調に進んだものの、高度推定にミスがあり、着陸に失敗していた。今回使用するランダー「RESILIENCE」は前回と同型の機体で、主にソフトウェア面を改良。2回目の挑戦で、初の着陸成功を狙う。RESILIENCEは前回と同じく、SpaceXのFalcon 9ロケットに搭載。なお今回の打ち上げは相乗りになっており、RESILIENCEの上部には、米Firefly Aerospaceの月面ランダー「Blue Ghost」も搭載している。Blue Ghostは今回が初フライトだ。民間開発の月面ランダーが2機、同じロケットに搭載されて打ち上げを行うのは今回が世界で初めて。今後、月面での商業活動が本格化する時代のスタートという意味でも、象徴的な打ち上げと言えるかもしれない。【マイナビニュース】

【Space X提供:フェアリングの内部。最上段にBlue Ghostが乗っており、RESILIENCEはその下のアダプタの中に入っている】