KIT航空宇宙ニュース2025WK08
海外のニュース
1. トロントDL4819便事故、カナダ運輸安全委がフライト・ボイスレコーダー分析開始
カナダのトロント・ピアソン国際空港で、現地時間2月17日に起きたデルタ航空傘下のエンデバー航空が運航するミネアポリス発トロント行きDL4819便(旧ボンバルディアCRJ900型機)の着陸時の事故について、カナダのTSB(カナダ運輸安全委員会)は21日、FDR(フライトレコーダー、飛行記録装置)とCVR(コックピットボイスレコーダー、操縦室音声記録装置)の分析を始めたと発表した。TSBによると、事故機は着陸時、機体が滑走路に激しく接地し、最初の衝撃後、機体の一部が損傷して外れ、主翼の片方と尾部が胴体から吹き飛び、火災が発生した。機体は滑走路の右側外にわずかに逸れ、逆さまの状態で進行方向とは逆向きに停止した。乗客76人と乗員4人の計80人は逆さまになった機体から脱出し、一部の人たちは病院に搬送され治療を受けた。(また、デルタ航空は乗員に関する誤った情報や誤解を招く投稿がSNS上にあるとして、会社として公式な情報を同社のウェブサイト「DELTA NEWS HUB」などで発信。誤情報の拡散に対する対策を講じている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:逆さまになって停止したエンデバー航空の事故機(CRJ-900型機)】
2.10時間超飛べるA321XLR、PWエンジン機が型式証明取得 今年後半就航へ
エアバスは現地時間2月21日、単通路機では世界最長となる最大11時間飛行できるA321XLRのプラット&ホイットニー(PW)製エンジン「PW1100G-JM」搭載機が、EASA(欧州航空安全庁)から型式証明を取得したと発表した。A321XLRはこれまでCFMインターナショナル製「LEAP-1A」エンジン搭載機が2024年7月に型式証明を取得しており、PWエンジン仕様の機体も今回正式に認可を受けた。A321XLRはA321neoの航続距離を延長した超長距離型で、2019年6月にローンチ。XLR(Xtra Long Range)は「超長距離」を意味し、燃料タンクを増設することで、単通路機では世界最長となる航続距離4700海里(約8704キロ)を実現し、最大11時間の飛行が可能となる。PWエンジンを搭載したA321XLRは、今年後半にも商業運航が始まる見込み。PWによると、PW1100Gをはじめとする「ギヤード・ターボファン(GTF)」エンジンは単通路機向けエンジンとして最も燃費効率が高く、従来のエンジンと比較して運航コストの削減に貢献するという。現在、世界13社が217機のA321XLR向けGTFエンジンを選定しており、ハンガリーのウィズエアーが最初の運航会社となる予定。また、次世代型「GTF Advantage」エンジンは、より高い離陸推力を提供し、さらに優れた運用経済性を実現するとしている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:EASAの型式証明を取得したPW1100G-JMエンジン付きA321XLR型機】
3.ホンダジェット新型エシュロン、試験機製造開始 米大陸横断できるライト機
本田技研工業の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は現地時間2月20日、開発を進める新型の小型ビジネスジェット機「HondaJet Echelon(ホンダジェット・エシュロン)」の試験機の製造を開始したと発表した。従来機の「HondaJet」よりも1つ上の「ライトジェット機」クラスに参入し、同クラスとしては初めて米大陸の横断が可能となる。2026年に初飛行を計画し、FAA(米国連邦航空局)からの型式証明(TC)取得は2028年ごろを目指す。TC取得への試験機で、2月に主翼の組み立てを開始した。HACIは本社のある米ノースカロライナ州グリーンズボロに、エシュロン専用の生産ライン開設を進めており、2024年末には、各工程で使用する主要設備の搬入を完了している。1月には、システム統合検証施設(Advanced Systems Integrated Test Facility)内のフライトシミュレーターを使い、飛行制御システムなどの検証を始めた。新型機エシュロンは、航続距離2625海里(約4862キロ)、巡航速度450ノット(時速約833キロ)。最大11人の乗客乗員が搭乗でき、従来機同様パイロット1人でも運航できる。燃費は通常のライトジェット機より20%、最大離陸重量が2万ポンド以上、3万5000ポンド以下の双発エンジンを搭載する「中型ジェット機」より40%以上向上させる。エンジンは米ウィリアムズ・インターナショナル製「FJ44-4C」を、アビオニクスはガーミン製G3000を搭載する。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:米ノースカロライナ州グリーンズボロ工場でHonda Jet新型機「エシュロン」試験機の主翼の製造を開始】
4.中国の新型ロケット「長征八号甲」打ち上げ成功、激化する中国の商業打ち上げ競争
中国国営企業の中国運載火箭技術研究院(CALT)は2025年2月11日、新型ロケット「長征八号甲」の初打ち上げに成功した。従来の「長征八号」を改良して打ち上げ能力を強化したこのロケットは、主に衛星コンステレーションの打ち上げに使用することが想定されている。長征八号甲の登場により、中国国内での商業打ち上げ市場の競争が激化する可能性がある。長征八号甲はCALTが製造、運用するロケットで、2020年に初飛行した「長征八号」の改良型である。第1段と2本のブースターは長征八号と共通で、第1段には液体酸素とケロシンを推進薬とするYF-100エンジンを2基、ブースターにはそれぞれYF-100を1基装備する。一方で、第2段とフェアリングは大幅に改良された。従来の第2段(直径3m)は、新たに開発された直径3.35mの第2段に変更され、推進薬の搭載量が増加した。ロケットエンジンには、性能を向上させたYF-75DAを採用した。さらに、タンク構造を刷新し、電動式バルブなどの新技術を取り入れた。また、直径5.2mの新型フェアリングを採用し、ロケットと衛星をつなぐ部分も設計を見直し、衛星分離リングやアダプター、計器類を統合することで質量が200kg削減され、打ち上げ能力が向上した。【マイナビニュース】

【CALT提供:長征八号甲ロケットの打上げ】
5.リリウム・エアロスペース、資金調達の選択肢が「実現」せず破産申請
リリウム・エアロスペースは、出資者から期限内に資金を確保できなかったため、短期間で倒産に終わった。昨年末に破産したリリウムの子会社2社の資産を取得するために設立された同社は、2月21日に事業の行き詰まりを明らかにし、将来を確保するための「資金調達の選択肢」が「間に合わなかった」ため、リリウム・エアロスペースは本日破産申請を行ったと述べた。「代替案についての協議はまだ続いているが、現時点で再編のチャンスはほとんどなく、したがって事業は停止されるだろう」。この動きは、地域航空移動用途向けの電動垂直離着陸機であるリリウム・ジェットの開発の終焉を意味するものと思われる。欧州と北米の投資家連合の事業体であるリリウム・エアロスペースは、昨年秋にドイツの2社が破産した後、リリウムGmbHとリリウム・eエアクラフトGmbHの事業と資産を引き継ぐはずだった。しかし、リリウム・エアロスペースの資金調達が困難であること(従業員はほぼ2か月間無給である)を考えると、資産購入資金がリリウムGmbHとリリウム・eエアクラフトGmbHの管理者に支払われたかどうかは不明である。【Flightglobal news】

【Lilium提供:eVTOL機Lilium Jet】
6.Eviation社、従業員を解雇し電動飛行機の開発を一時停止
ワシントン州アーリントンに本社を置くEviationエアクラフト社は、従業員の大半を解雇し、2年以上前に最初で唯一の飛行試験を行った電気駆動のアリス航空機の開発を一時停止した。Eviationのアンドレ・スタイン最高経営責任者(CEO)は、「電気による商業地域飛行の実現に役立つ適切な長期的パートナーシップを特定すること」に集中するために一時的な休止が必要だと述べた。スタイン氏の声明はレイオフについては言及していないが、エアカレント紙とシアトルタイムズ紙は匿名の情報源を引用し、エビエーション社がアリス航空機の開発継続のための追加資金を募る中で先週、従業員の大半をレイオフしたと報じた。ピッチブック紙は先月時点でエビエーション社の従業員数は64名だと報じた。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:Eviationが開発中の電動航空機Alice(アリス)】
日本のニュース
1.1月訪日客、過去最高378万人 単月記録を大幅更新
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、2025年1月の訪日客数は前年同月比40.6%増の378万1200人で、単月の過去最高を2カ月連続で更新した。これまでの過去最高は前月の2024年12月に記録した348万9800人で、30万人近く上回り、大幅な記録更新となった。出国した日本人は8.8%増の91万2300人だったものの、コロナ前の6割程度の回復にとどまった。JNTOが重点市場としているのは23カ国・地域で、このうち韓国、台湾、豪州の3市場で単月の過去最高を記録。中国、香港、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インド、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧、中東の17市場で1月の過去最高となった。前年は2月だった中華圏の旧正月休暇・春節が、今年は1月となったことから、旅行需要が高まった。このほか、スキーなどのウィンタースポーツ需要により豪州や米国などを中心に増加したことで、1月の押し上げにつながった。【Aviation wire news】
2.福岡空港、合同説明会3/15開催 13社参加
福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は3月15日に、福岡空港内の事業者と連携した合同企業説明会を開催する。2026年新卒のほか既卒、業界未経験者を含む社会人を対象とした説明会で、FIACをはじめ、グランドハンドリングや保安検査など空港関連13社が参加する。参加無料で事前予約が必要。IACのほか、ANA福岡空港、エスエーエス、コウノイケ・エアポートサービス、JALカーゴサービス九州、JALスカイ九州、スイスポートジャパン、双日ロイヤルインフライトケイタリング、にしけい、西日本シミズ、羽田タートルサービス、福岡給油施設、福岡空港サービスの各社が参加する。場所は国内線旅客ターミナル3階南側の「TSUTAYA BOOKSTORE福岡空港」横イベントスペース。受付開始は午前10時で、午後3時まで開催する。当日は履歴書不要で入退場と服装は自由。【Aviation wire news】
3.国交省、中部空港の代替滑走路整備を許可 27年度供用へ
国土交通省航空局(JCAB)は2月17日、中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社(CJIAC)が申請した代替滑走路事業について、施設変更を同日付で許可したと発表した。第2滑走路の導入につながる事業で、供用開始の予定期日は2027年度末の2028年3月31日となる。中部空港は2005年2月17日開港で、今年で開港20周年を迎えた。滑走路は3500メートル×60メートル(RWY18/36)が1本で、大規模補修を実施する際にも完全24時間運用を維持するため、現在の滑走路とスポット(駐機場)の間にある誘導路を代替滑走路に転用する整備を進める。整備する代替滑走路は、長さ3290メートル、幅45メートルで、滑走路と航空灯火などを整備。現在の滑走路を大規模補修する場合の継続的な空港運用のほか、完全24時間運用を目的とする。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:中部空港の新滑走路予定地(青色部分)】
4.高知に宇宙港を。「スペースポート高知」発足、目標は’29年ロケット打ち上げ
「高知県は太平洋に面した地理的特性を活かせる、スペースポートに最適なロケーション」とし、日本の宇宙輸送発展の一助となるだけでなく、人口減少や少子高齢化といった課題を抱える高知の地域経済を活性化させる新たな産業になるとアピール。2029年の⾼知からの小型ロケット打ち上げを目標に掲げており、それに向けて2025年3月から会員を募り定期的に勉強会を開催。さまざまな角度から高知におけるスペースポートの可能性を検討するとしている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:スペースポートのイメージ(生成AI画像)】
5.ispace月着陸船が月フライバイ成功、民間商業機で世界初
ispaceは、月に向けて飛行中の「RESILIENCE」ランダーが2月15日午前7時43分(日本時間)に月表面から高度約8,400kmの地点を通過し、民間企業による商業用の月着陸船として史上初の「月フライバイ」に成功したと発表。さらに、高度14,439kmから撮影した月の写真を公開した。月フライバイはispaceがめざしている、低エネルギー遷移軌道による深宇宙航行に移行するために重要なマイルストーン。目標通過点に対して数十kmの範囲にランダーを通過させるため、精密な軌道計画と運用が求められるという。前回のミッション1で得た軌道制御の経験と実績により、民間月探査計画のミッション2「SMBC×HAKUTO-R VENTURE MOON」における月フライバイは初挑戦にして成功。これで10段階のマイルストーンのうち、サクセス5まで完了したことになる。今後、RESILIENCE(レジリエンス)ランダーは予定通り低エネルギー遷移軌道を使って深宇宙を航行し、5月初旬には太陽の重力を使って月重力圏に到達、軌道投入を行う予定。【マイナビニュース】

【ispace提供:ispaceのRESILIENCEランダーが高度14,439kmから撮影した月の写真】