KIT航空宇宙ニュース2024WK50

NASAが月面への大型機器輸送をスペースXなどに発注。スペースXが開発するスターシップ月面貨物船と、ブルー・オリジンが開発するブルー・ムーン月面貨物船(日本の月面車も輸送)の想像図
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK50

海外のニュース

1. 大韓航空、アシアナ株取得し子会社化 準備期間後に合併へ

大韓航空は現地時間12月12日、アシアナ航空の株式を取得し子会社化したと発表した。大韓航空はアシアナが新体制へ移行後、2年程度の準備期間ののちに両社の統合を完了する見通し。取得したアシアナの株式は、63.88%に当たる1億3157万8947株。アシアナは2025年1月16日の臨時株主総会で新理事を選任し、新体制へ移行する。両社の統合後は重複路線の時間帯の多様化、新路線就航などのサービス向上を目指すほか、安全運航への投資も進める。また統合後は人員調整せず、統合による業務増加に備える。重複する一部人材は、必要部署への再配置を計画。またマイレージは、両社間の交換率を6月までに韓国公正取引委員会へ報告し、利用客へ公表する見通し。大韓航空を傘下に持つ韓進(ハンジン)グループは、アシアナ航空の買収を2020年11月16日に決議。2021年1月14日に韓国公取委へ企業結合を届け出て、統合へ必要な14カ国・地域での競争法上の審査を開始した。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供】

2.  IATAの2025年予測、航空会社の収入1兆ドル突破 純利益366億ドル、旅客数初の50億人超え

IATA(国際航空運送協会)は現地時間12月10日、2025年の世界の航空会社による業績見通しを発表した。純利益は366億ドル(約5兆5400億円)、純利益率は3.6%と予測した。今年の予想純利益315億ドル、純利益率3.3%から改善する見通し。世界の航空収入は初めて1兆ドルを突破し、旅客数は52億人と初めて50億人台に達し、年間フライトは4000万回へ拡大すると予測。旅客需要は前年比6.7%増、貨物量は5.8%増といずれも力強い伸びが見込まれ、新型コロナ後の「通常の成長パターン」へ戻りつつあると位置づけている。ジュネーブで10日に会見したIATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は「世界経済の約1%に相当する1兆ドル超の収入は航空が戦略的に重要な産業であることを示す」とした上で、「最終的な純利益率は3.6%にすぎず、1人あたり7ドルの薄利だ」と指摘。航空会社はインフラコストや規制、サプライチェーン問題、環境対応への投資など多数の要素を同時に管理しなければならず、依然として収益確保が容易でない実態を浮き彫りにした。2025年の総収入は前年比4.4%増の1兆700万ドルと、初めて1兆ドルの大台を突破すると予想。営業利益は675億ドルで、営業利益率は6.7%となる見込み。【Aviation wire news】

3.  NASA、月面への大型機器輸送をスペースXなどに発注へ – 日本の月面車も輸送

米国航空宇宙局(NASA)は2024年11月19日、国際有人月探査計画「アルテミス」の一環として、スペースXとブルー・オリジンの2社と、大型の貨物を月面へ運ぶ契約をまもなく締結すると発表した。このうちスペースXは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がトヨタなどと開発している有人与圧ローバー「ルナクルーザー」を運び、ブルー・オリジンは居住施設を運ぶという。アルテミス(Artemis)計画は、米国を中心に、欧州や日本、カナダが共同で進めている有人月探査計画で、実現すればアポロ計画以来、約半世紀ぶりに人類が月に降り立つことになる。また、アポロ計画とは異なり、水があるとされる月の南極を探査するほか、継続的に探査を行い、将来の有人火星探査の実現につなげることを目指している。さらに、民間企業が主体的に参画することで、計画のコスト削減や宇宙ビジネスの振興なども図られている。有人月着陸における最大の肝となる月着陸船も、民間企業が開発している。イーロン・マスク氏率いる宇宙企業スペースX(SpaceX)は、開発中の宇宙船「スターシップ(Starship)」の月着陸船バージョン「スターシップHLS」を開発しており、最初の有人月着陸ミッション「アルテミスIII」と、「アルテミスIV」で使用する計画となっている。また、ジェフ・ベゾス氏の宇宙企業ブルー・オリジン(Blue Origin)は、「ブルー・ムーン(Blue Moon)」着陸船を開発しており、「アルテミスV」で使用する予定になっている。こうした中、NASAは2023年に両社に対して、それぞれの月着陸船をベースとした、大型の機器などを輸送できる貨物船の開発を依頼した。輸送能力の要求は、月面に12~15tとされる。【マイナビニュース】

【NASA提供:スペースXが開発するスターシップ月面貨物船と、ブルー・オリジンが開発するブルー・ムーン月面貨物船の想像図】

4.  GEエアロスペース、NASAの飛行試験で飛行機雲の科学的解明が加速

GE エアロスペースと NASA は最近、新しいテスト方法とテクノロジーを使用して、航空業界の飛行機雲に関する理解を深めるための飛行テストで提携した。飛行機雲は氷の粒子でできた雲で、飛行機が冷たく湿った空気の中を飛行するときに発生する。飛行機雲が長く続くと、気候温暖化に影響を与えると推定されている。飛行試験は、飛行機雲の科学をより深く理解し、CO2以外の排出量を削減できる新しい技術の開発を可能にするための業界の研究活動をサポートする。飛行機雲光学的厚み実験 (CODEX) の飛行は、11月にバージニア州から実施された。NASA ラングレー研究センターの G-III 航空機が GE エアロスペースのフライングテストベッドを上空で追跡し、光検出および測距 (LiDAR) 技術を使用して航空機の航跡をスキャンした。これにより、飛行機雲の3次元画像を生成する NASA による LiDAR の活用が進み、飛行機雲の形成方法と時間経過に伴う挙動をより正確に把握できるようになる。【Flightglobal news】

【GEエアロスペース提供:飛行機雲の科学的解明を目指すGEエアロスペースとNASAラングレー研究センターのチーム】

5.  オープンローターコンセプトがEUのクリーン・アビエーション・プロジェクトの飛行試験資金対象に

サフランとCFMインターナショナルは、オープンローターエンジンの飛行実証に資金を提供することを提案しているクリーン・アビエーションの第2フェーズの第1ラウンドから恩恵を受けることになりそうだ。次回の提案募集は2025年2月に開始される予定で、EU機関から総額3億8000万ユーロ(4億ドル)が割り当てられる予定だが、これは産業界からの資金提供額を上回る額となる。第3回目の公募 (フェーズ 1 は以前の2回の公募で構成されていた) のトピックには、「ダクトなしエンジン アーキテクチャの飛行試験デモンストレーション」が含まれる。サフラン・エアクラフト・エンジンズが率いるコンソーシアムは、クリーン・アビエーションの第一フェーズで1億ユーロを獲得し、OFELIA(航空の環境影響の低減のためのオープンファン)と呼ばれるプロジェクトに資金を提供した。来年12月31日まで開催されるOFELIAは、CFM RISEデモンストレータープログラムを通じて開発されているオープンファンアーキテクチャを「[技術成熟度レベル] TRL5で実証することを目指している」。これにより、「大規模なオープンファンエンジン地上テストキャンペーン」が実施され、クリーン・アビエーションの第2フェーズに向けて「飛行可能な推進システムの定義を提供し、飛行中のデモンストレーションを準備する」ことになる。【Flightglobal news 】。

【エアバス提供:エアバスはA380でRISEコンセプトの飛行試験を行うことに合意している】

日本のニュース

1. 福岡空港国内線北乗降場1月新設 駐車場の有料予約サービスも

福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は、国内線旅客ターミナル北側に「国内線北乗降場」を2025年1月15日に新設するとともに、国内線立体駐車場の有料予約サービスを始める。国内線ターミナル北側は現在、降車場のみで乗車場がなかった。このため、国内線立体駐車場1 階に10台が利用できる国内線北乗降場を新設。南北両側で乗降できるようにする。料金は入場から10分までは無料で、10分超から20分までが500円、20分経過すると10分ごとに250円を加算する。精算は出口での現金精算のみ。国内線立体駐車場の予約サービスは1月15日に開始し、翌16日以降の予約を受け付ける。駐車場に予約専用入口を設け、事前予約した車両が確実でスムーズに利用できるようにするという。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:福岡空港旅客ターミナル北側に新設される乗降場】

2.  JAL機長飲酒問題、自主検査を手順通りせず出社 オフィスでアルコール検知

パイロットのステイ先での飲酒を、10月に解禁した矢先に起きた日本航空の機長2人による飲酒トラブル。現地時間12月1日に、豪メルボルンの出発が3時間以上遅れた成田行きJL774便(ボーイング787-8型機)は、機長Aと機長B、副操縦士のパイロット3人1組で乗務していたが、管理職である機長が2人とも飲酒問題に関わっていた。機長Aは体調不良で空港への出社が1時間遅れ、機長Bは本来ホテルを出る前に実施する自主検査を出社後に行っていた。JALによると、機長2人はメルボルンへ11月30日早朝に到着後、昼に飲酒。1泊して翌12月1日に乗務するシフトだった。2人はスパークリングワインを1杯ずつ飲んだ後、ワインをボトルで3本注文してシェアしたが、3本をどの程度飲んだかなどの詳細は調査が続いている。また、機長Aは体調不良で宿泊先のホテルを出発するのが1時間遅れたが、メルボルン空港のオフィスへ出社後のアルコール検査(本検査)では、アルコールは検出されなかった。一方、機長Bは本来ホテルを出る前に実施すべきアルコールの自主検査を行わず、オフィスへ出社後、ほかの社員が立ち会う形で実施した際にアルコールが検出されたため、未検出となってから本検査でアルコールゼロを確認し、JL774便に機長Aらと乗務した。自主検査でアルコールが検出された際、誤検知を疑っていたが、帰国後の12月3日から実施している聞き取り調査で、2人の機長は乗務前日の飲酒を認めた。JALの社内規定では、乗務前のアルコール検査で、アルコールゼロを示す「1リットルあたり0.00mg」を確認後、パイロットを乗務させている。検査に加え、開始12時間前に体内に残るアルコール量を、純アルコール換算で40グラム相当の「4ドリンク」以下に自己制限するよう求めているが、2人はこれを上回っていた可能性がある。JALによると、2人の詳しい飲酒状況などは調査中で、処分などは今後決めるという。今回の飲酒問題発生により、JALは12月11日からステイ先でのパイロットの飲酒禁止を再開している。【Aviation wire news】

3.  北九州空港、深夜早朝便でホテル無料 1/14-2/28

北九州空港利用促進連絡会は、深夜早朝便利用でホテル代が無料になる「早朝深夜便 前泊・後泊無料キャンペーン」を2025年1月14日から2月28日まで実施する。北九州空港を午前7時以前に出発、または午後10時50分以降に到着する便の乗客が対象。東横イン北九州空港またはアリストンイン苅田北九州空港、ベッセルホテル苅田北九州空港のいずれかに前泊か後泊した場合、宿泊代が無料になる。先着1000室に達した段階で終了。予約は各ホテルへの電話予約のみで、チェックイン時にeチケットの控えや搭乗券など、搭乗便を確認できるものが必要となる。【Aviation wire news】

4.  国交省、国内17社の混雑空港乗り入れ許可 福岡は最多16社

国土交通省航空局(JCAB)は、全日本空輸や日本航空など国内航空会社17社が提出した混雑空港への運航許可申請について、12月10日付で許可した。混雑空港への乗り入れは5年ごとに申請が必要で、今回の許可による運航開始日は2025年2月1日となり、17社はこれまで通り運航を継続する。空港別でみると、17社中16社が許可された福岡が最多で、羽田が10社で続いた。関空は8社、伊丹は7社、成田は6社となった。【Aviation wire news】

5. 国際線の賠償限度額、18%引き上げ モントリオール条約改正

国土交通省航空局(JCAB)は12月9日、国際線で起きた事故に対する航空会社など「航空運送人」の責任や損害賠償の範囲などを定めたモントリオール条約の改正を受け、旅客が死亡した時などの新たな賠償限度額を公表した。物価変動などを考慮し、現行と比べて約18%の引き上げとなる。改正後の限度額は、旅客の死亡または傷害の場合、現行の12万8821SDR(約2589万円)から17.9%の引き上げとなる15万1880SDR(約3053万円)。延着を含む手荷物の損害賠償は現行の1288SDR(約26万円)から17.9%引き上げの1519SDR(約31万円)、貨物は現行の22SDR(約4422円)から18.2%引き上げて26SDR(約5226円)、旅客の延着は現行の5346SDR(約107万円)から17.9%引き上げの6303SDR(約127万円)となる。【Aviation wire news】

6. JAL、グラハン貨物2車種を国内初電動化 CO2排出ゼロ、空港の脱炭素化加速

日本航空は12月9日、空港内のグランドハンドリング(グラハン、地上支援)業務に使用する電動の特殊車両を導入すると発表した。貨物の搭載に使用するハイリフトローダー(HL)とベルトローダー(BL)の2車種で、羽田空港で17日から本格運用する。両車種とも国内の航空会社では初めて電動化し、二酸化炭素(CO2)の排出量ゼロなど、空港の脱炭素化を加速させる。HLは貨物室に貨物を搭載する車両で、電動のものは独TREPEL社製を導入する。BLは空港内で飛行機の貨物室に手荷物を搭載する際に使う車両で、電動のものはスペインのEINSA社製を導入する。いずれもフル充電で1-2日の作業が可能だという。両車種を電動化することでCO2の排出量ゼロに加え、静音性も向上。作業員の労働環境改善や、空港周辺の騒音・環境問題の軽減にもつながる。JALグループは、貨物コンテナなどを牽引する車両「トーイングトラクター」を2022年度に電動化済み。JALは中期経営計画でCO2削減を掲げており、2050年に実質ゼロを目指す。取り組みの一環として、空港の制限区域内で使用する特殊車両の電動化などに取り組む。【Aviation wire news】


【Yahooニュース提供:JALが電動化した貨物搭載用ハイリフトローダー(HL)】