KIT航空宇宙ニュース2025WK31

ドイツにある太陽エネルギー燃料生産施設「DAWN」、ここで製造された太陽エネルギー合成燃料190リットルが世界で初めてSWISS航空で使用され、ハンブルグーチューリッヒ間を飛行
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KIT航空宇宙ニュース2025WK31

海外のニュース

1. ボーイング、2044年までに新人材237万人=パイロット・技術者20年予測

ボーイングは、2044年までの20年間で新たに必要となる民間航空人材数の20年予測「パイロットと技術者予測(PTO)」を発表した。パイロットと客室乗務員(CA)、技術者の3職種合計は237万人で、前年予想を据え置いた。職種別でみると、パイロットは66万人(前年予測比2.1%減)、CAは100万人(2.0%増)、技術者は71万人(0.8%減)と予測。長期的な航空需要増に対応するため、240万人近くが新たに必要となるとしている。地域別では、欧州や中央アジアなどの「ユーラシア」と中国、北米が半数以上を占め、需要を引き続きけん引するほか、東南アジアと南アジアは人材需要が急成長すると予測する。ボーイングは、パイロットと技術者の不足への対処について、革新的な訓練とキャリア開発への注力がカギとなるとし、AI(人工知能)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)の各技術の進歩が、訓練の強化・増強につながるとしている。【Aviation wire news】

2. SWISS航空はSynhelion社の太陽エネルギー燃料を使用した先駆者となった

ルフトハンザグループ傘下のスイス・インターナショナル・エアラインズ(SWISS)は、クリーンテクノロジーの新興企業シンヘリオン(Synhelion)社が製造した太陽エネルギー燃料(Sun to Liquid Jet Fuel)を自社の定期便に導入し、これを実施する世界初の航空会社となった。シンヘリオン社は、ドイツにある自社の生産施設「DAWN」から最初の190リットルの合成燃料をドイツ北部の製油所に輸送し、そこで認証済みのJet-A-1航空燃料に加工した。その後、スイスインターナショナルエアラインズの運航インフラに供給されたと、両社は木曜日に発表した。最初の納入量は、ハンブルク-チューリッヒ間の飛行に必要な燃料の約7%に相当する。今回の納入は象徴的なものではあるが、シンヘリオン社の技術が実用化され、次のステップへの準備が整っていることを裏付けるものだと両社は述べている。両社は、2027年からの太陽エネルギー燃料の商業市場参入を見込んでいる。継続的な生産と十分な生産能力を確保するために必要な設備は現在開発中で、両社は、EU再生可能エネルギー指令の要件を満たすため、生産プロセスと燃料の持続可能性認証取得にも取り組んでいる。【SWISS航空発表】

【シンヘリオン社提供:ドイツにある太陽エネルギー燃料生産施設「DAWN」】

日本のニュース

1. JAL、CA・地上係員志望者向けスクール 東京・大阪でレギュラー講座10月から

日本航空は7月31日、現役の客室乗務員(CA)などが講師を務める「JALエアラインスクール」のレギュラー講座を開講すると発表した。10月から東京と大阪の2会場でスタートする。レギュラー講座は、大学などに通いながら受講可能なダブルスクール形式で、5月期、10月期、1月期の年3回開講。客室乗務員コースとグランドスタッフコースを用意し、基礎から応用の内容を3カ月かけて学ぶ。対象は18歳以上で客室乗務員やグランドスタッフを目指している人。2コースとも航空業界の現状やJALの取り組みなどを学ぶほか、自己分析や面接個別指導などの就職活動に必要なスキルを習得できるとしている。講座はいずれも10月から12月までの期間中に週1日で、定員は各日程20人となる。客室乗務員コースは東京会場が毎週月曜と火曜、木曜、土曜、大阪会場が木曜。グランドスタッフコースは東京で水曜に開催する。開催時間は午後6時から午後8時30分まで。料金は客室乗務員・グランドスタッフコースともに東京会場が34万6500円、客室乗務員コースの大阪会場は29万1500円。東京会場のみ研修施設などの見学や体験などができる。申し込みは同スクールのウェブサイトで受け付けており、定員になり次第終了する。また、8月31日までに申し込みの場合、人数限定で10%割り引く。このほか、JAL施設での実際の講座を見学・体験できる無料のオープンキャンパスも開催。東京会場のみで、8月13日午後1時30分から午後3時30分まで。客室乗務員やグランドスタッフなどの講師による個別相談会も、随時設ける。【Aviation wire news】

2. JAL 25年4-6月期、純利益93.7%増 EBITは破綻前含め過去最高更新

日本航空が7月30日に発表した2025年4-6月期(26年3月期第1四半期)連結決算(IFRS)は、純利益が前年同期比93.7%増の270億8100万円だった。売上収益は2010年1月の経営破綻後の4-6月期としては過去最高を更新し、本業のもうけを示すEBIT(財務・法人所得税前利益)は破綻前も含めて同期として過去最高を記録。純利益は2015年4-6月期の326億1000万円に次ぐ過去2番目となった。2026年3月期の通期連結業績予想は据え置き、純利益は前期(25年3月期)比7.4%増の1150億円を目指す。4-6月期の売上収益は11.1%増の4710億8300万円、EBITは2.1倍の455億600万円と、増収増益となった。事業構造改革やコスト削減に加え、燃油価格の下落や為替が円安から円高に推移したことで増益につながった。【Aviation wire news】

3. ANA 25年4-6月期、売上高過去最高も純利益7.1%減 ボーイング機受領「計画通り」

全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが7月29日に発表した2025年4-6月期(26年3月期第1四半期)連結決算(日本基準)は、純利益が前年同期比7.1%減の229億5300万円だった。通期連結業績予想は据え置き、純利益は1220億円(25年3月期比20.3%減)を見込む。また、納入が遅れているボーイング機は、期中に計画している4機を全機受領できる見通し。4-6月期の売上高は6.2%増の5487億100万円、営業利益は21.2%増の367億8600万円、経常利益は2.5%減の359億1900万円で、売上高は第1四半期として過去最高を更新した。一方、経常益と最終益の減益要因は、前年同期は為替差益などの営業外収益を計上していたことが影響した。【Aviation wire news】

4. 月探査車のタイヤで、ispaceとブリヂストンが協業 最短2029年頃に実用化

ispaceとブリヂストンは、中小型月面探査車向けタイヤの実用化に向けた基本合意書を締結。月探査車の性能向上に向けた活動を共同で進め、最短2029年頃の実用化をめざすと7月31日に発表した。ispaceが研究開発を進める中小型の月探査車のプロトタイプに、ブリヂストンが開発中の、柔らかく変形することで走破性と耐久性を高めた「弾性車輪」を装着。地上での評価検証を通じて、月面での技術実証の実現性や事業性の評価を行う。宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「宇宙戦略基金」の活用なども見据え、両社で日本の宇宙産業の発展に寄与するとしている。【マイナビニュース】

【ブリヂストン提供:月面ローバー用タイヤのコンセプトモデル】

5. ElevationSpace、軌道上拠点に向かう国産有人宇宙機を開発へ

ElevationSpaceは、2030年代の有人宇宙輸送の実現に向けてビジョンを刷新し、“2040’s Vision”「軌道上のヒト・モノをつなぐ交通網を構築する」を7月29日に発表。地球に帰還可能な再突入機から、軌道上拠点への物資・有人輸送や軌道間輸送へと事業領域を拡張し、軌道上交通網の構築に挑戦していく。新しいビジョンは、地球と宇宙を一方通行ではなく双方向につなぎ、地球上の経済と宇宙の経済が循環するエコシステムをつくることを意味している。同社では2040年には、地球・月・火星、そしてその軌道上に多様な拠点が存在し、地球軌道上には微小重力環境を活用した宇宙環境利用の中心地として、研究・産業・居住・観光など多様な都市機能が展開。地球と軌道上を高頻度にヒトとモノが行き交う世界を描いているという。こうした未来を築くための第一歩として同社が位置づけるのが、日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」(2026年後半以降に打ち上げ予定)であり、無人宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」、有人拠点からの高頻度物資回収サービス「ELS-RS」だ。再突入技術を軸に、地球と宇宙の間に双方向の循環を生み出す仕組みを実装するため、軌道上拠点への物資・有人輸送や軌道間輸送へと事業領域を拡張し、軌道上交通網の構築に挑戦するとしている。同社が構想する有人宇宙機は、少人数を軌道上拠点へ柔軟に輸送できる、機動性の高いカプセル型宇宙機で、ELS-R/RSで培った再突入・回収技術をベースとした信頼性の高いカプセル型有人輸送システムを実現し、安全性と再使用性の両立を可能にするとのこと。【マイナビニュース】

【ElevationSpace提供:新たなビジョンのイメージビジュアル】