KIT航空宇宙ニュース2025WK07
海外のニュース
1. エンブラエル、E190F貨物機がEASA型式証明取得 米国・ブラジルに続き欧州も認証
エンブラエルは現地時間2月10日、リージョナルジェットのエンブラエル190(E190)を旅客機から貨物機へ改修したE190F「Eフレイター(E-Freighter)」が、EASA(欧州航空安全庁)の型式証明を取得したと発表した。E190Fは2024年にFAA(米国連邦航空局)とANAC(ブラジル民間航空庁)から認証を取得しており、今回のEASA認証により、欧州を含むグローバル市場での運航が可能になった。E190Fの開発は、エンブラエルが2022年5月に発表した旅客機から貨物機への改修プログラム「E-Freighter」の一環として進められた。2024年4月に初飛行し、7月のファンボロー航空ショーで初公開された。eコマースの拡大により、迅速な貨物輸送と地方市場向けの小型貨物機の需要が高まる中、E190Fは従来の貨物機と比較してコスト効率に優れたモデルとして投入される。E190Fは航空貨物輸送のうち、ハブ(拠点)空港を介さずに直接目的地へ配送する分散型輸送ネットワーク(ポイント・トゥ・ポイント)にも対応している。 従来のハブ・アンド・スポーク型物流と比べ、配送時間の短縮や貨物輸送の柔軟性向上が期待される。eコマースの需要が高まる中、地方都市への即日配送など、より迅速なロジスティクスが求められる市場に適している。【Aviation wire news】

【エンブラエル提供:EASAから型式証明を取得したE190F】
2. 米Vast、商業宇宙ステーションの試験開始。’26年5月打ち上げへ
商業宇宙ステーションの建造をめざす米国企業「ヴァースト・スペース」は、「ヘイヴン1」ステーションの主要構造物の認定試験を始めたと現地時間2月6日に発表した。すでに実機の製造も始まっており、早ければ2026年5月にも打ち上げ、宇宙飛行士や宇宙旅行者の滞在ミッションを行うとしている。ヴァースト・スペース(Vast Space)は2021年に設立された企業で、カリフォルニア州に拠点を置く。「すべての人に宇宙旅行の未来を確実にする」というモットーの下、世界初の商業宇宙ステーションの開発に取り組んでいる。同社が開発中のヘイヴン1(Haven-1)ステーションの大きさは直径4.4m、全長10.1m。最大4人が滞在でき、無補給でも最大40日間滞在し続けられる。外の観察や写真撮影のための大きなドーム状の窓や、機内Wi-Fiによる常時インターネット接続機能、ストレッチしたり休憩したりできるスペースなどを備えている。また、機体を回転させることで、月の重力(地球の6分の1)と同程度の人工重力を作り出せるとしている。ヘイヴン1の大きさや質量は、スペースXが運用している大型ロケット「ファルコン9」で打ち上げられる仕様となっている。さらに、同社の「クルー・ドラゴン」宇宙船とのドッキング・ポートも備え、スペースXとの協力で打ち上げや運用を行うことを前提としたつくりとなっている。【マイナビニュース】

【Vast Space提供:試験中の宇宙ステーション「ヘイヴン1」の主要構造物】
3. ATR、技術の「現実検証」後、Evo の発売を延期
ATRは、50%の株式を保有するエアバスに倣い、技術の成熟度の問題を理由に、構想中の次世代低排出ガス航空機の就航目標を延期した。ATRは、2022年にハイブリッド電気式のEvo派生型を発表した際、クリーン・シート・エンジンを搭載した同モデルの2030年の就航を目指していた。しかし、その日付は現在では2035年頃にずれ込んでいると、エンジニアリング担当上級副社長のダニエル・クシェ氏は2月12日に語った。レオナルドとともにATRの合弁パートナーであるエアバスは、2月初めに、ZEROeプロジェクトによる水素燃料航空機の計画が、技術準備の遅れにより5年から10年遅れていることを明らかにしていた。ATRはサプライヤーと共同で、燃料消費量を20~30%削減することを目標に、主に推進システムに関連するEvoに導入できる技術について数多くの研究を行ってきた。「我々は2024年にエンジン製造会社の同僚やパートナーと現実を検証したが、新しいエンジンを導入することは時間枠や性能の面でおそらく現実的ではないことがわかった」とクシェ氏は言う。一連の情報提供依頼を通じてATRが関与した複数のエンジンサプライヤー(既存のプラット・アンド・ホイットニー・カナダだけでなく)は、「少なくとも10年経たないうちに[クリーン・シート・エンジン]を考えるのは現実的ではない」と述べた。【Flightglobal news 】

【ATR提供:ATR社が構想中のHibrid電動航空機Evo】
4. ブラックホークヘリコプターの高度計は空中衝突前に故障していた可能性がある
国家運輸安全委員会の調査官らは、ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港に着陸しようとしていた米陸軍のブラックホーク・ヘリコプターとアメリカン航空のリージョナルジェット機が1月29日に空中衝突を起こして以来、約2週間ぶりにカメラの前での報告を行った。両機はポトマック川に墜落し、搭乗していた67人全員が死亡した。NTSBのジェニファー・ホメンディ委員長は、ヘリコプターと「CRJ」機の衝突は川から278フィートの高さで起きたと述べた。ヘリコプターは200フィートより高く飛ぶことはなかったはずだ。しかし、ホメンディ氏は、ヘリコプターの高度計がパイロットに適切な高度を示していたかどうかは不明だと述べている。同氏は、調査員らは「データに矛盾する情報を確認している」と述べ、分析を続けている。ホメンディ氏は、航空管制官とブラックホークの乗組員の間の無線通信の一部も、ヘリコプターのパイロットには完全には聞こえなかったと述べている。少なくとも1回の通信、衝突の17秒前に管制官がヘリに「CRJの後ろを通れ」と指示した通信がブラックホークに受信されなかった可能性があるとホメンディ氏は言う。これはヘリの乗組員がすでに無線通信を行っていたため、管制官の指示の一部が中断され「妨害」されたためだとホメンディ氏は述べた。アメリカン航空のリージョナルジェット機の乗組員は衝突の約1、2秒前にヘリコプターを目撃した。ホメンディ氏によると、同機のパイロットは衝突直前に機首を約9度完全に上げたという。同氏によると、ヘリコプターの乗組員は衝突までほぼ同じ方向と速度で飛行を続けたという。ホメンディ氏によると、ヘリコプターの乗組員は暗視ゴーグルを着用していたようだが、これはパイロットの視界を制限している。NTSBはブラックホークのパイロットが事故前に目撃していたであろう光景の完全な視覚シミュレーションを作成する予定だとホメンディ氏は言う。「衝突に至る時点と事故の一連の流れでパイロットが何を見ることができたかを調べる必要がある。」NTSBの完全な調査には少なくとも1年かかると予想されている。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:川から引き上げられたブラック・ホークの残骸】
日本のニュース
1. 国交省、SkyDriveに型式証明の適用基準発行
日本で「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)や、物流ドローンを開発するSkyDrive(スカイドライブ)は2月10日、開発中のeVTOL「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)」について、国土交通省航空局(JCAB)から「型式証明の適用基準」が発行されたと発表した。同機の型式証明(TC)取得に向け、どのような耐空性や環境基準を満たす必要があるかを明確にしたもの。適用基準は、型式証明を取得する審査の前提となる技術要件を定めたもの。eVTOLのような新しいカテゴリーの機体では、従来の航空機と異なる技術が多く、汎用的な基準が存在しない。このため、型式証明を申請する前に、当局と開発メーカーが協議し、機体ごとに適用基準を策定する必要がある。SkyDrive社は、同社のeVTOLに適用する基準を「耐空性審査要領第II部(第61改正)」をベースに構築することでJCABと2022年3月に合意。バッテリーセルの監視機能や電動推進システムの安全対策といった、電動機を備えた機体特有の要件が含まれている。適用基準の発行により、SkyDrive社はJCABと合意したスケジュールに基づき、型式証明取得に向けた地上試験や飛行試験を本格化させる。また、日本での型式証明取得後、FAA(米国連邦航空局)からの認証取得も進めるという。【Aviation wire news】

【SkyDrive提供:SkyDrive社が開発中のeVTOL機 SD-05】
2. ピーチ機長、乗務前飲酒で虚偽説明 国交省が厳重注意
国土交通省航空局(JCAB)は2月14日、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)に対し、厳重注意を行った。現地時間1月7日のシンガポール発関西行きMM774便(エアバスA321LR)で、機長が同社の運航規程で禁じている勤務開始前12時間以内の飲酒を行い、その後の聴取で会社に虚偽の説明を行っていた。国交省によると、機長は酒気を帯びていなかったものの、乗務前のアルコール検査を失念したことなどを問題視し、3月7日までに再発防止策を文書で提出するよう同社に求めた。MM774便のパイロット2人のうち、規程違反の飲酒をしたのは機長のみ。同社の運航規程では、パイロットは飛行勤務開始前12時間以内の飲酒が禁止されているが、機長は6日午後1時30分から2時にかけて約30分間、シンガポールで500ミリリットルのビール2缶を飲酒。1月13日に社内調査で判明し、翌14日に国交省へ報告した。社内調査で機長は当初、虚偽の飲酒時間を会社に説明。また、機長と副操縦士が乗務前のアルコール検査を実施していなかったことも判明した。加えて、同社のアルコール検査の管理担当者も、システム上に「検査結果を受領していない」との表示が出ていたにもかかわらず、パイロットに確認するなどの適切な対応をしていなかった。国交省は「意図的な違反行為であり、虚偽説明を行った点は悪質」と判断。「アルコール検査体制が適切に機能しておらず、安全管理システムも十分に機能していない」と指摘し、厳重注意に至った。【Aviation wire news】
3. Space BD、韓・INNOSPACEとの小型ロケット販売代理店契約を締結
“宇宙商社”のSpace BDは2月14日、韓国の民間宇宙企業であるINNOSPACEとの業務提携を開始し、同社が開発・製造する小型ロケットの販売代理店契約を締結したことを発表した。日本の宇宙ビジネスを、世界を代表する産業に発展させることを目指す宇宙商社のSpace BDは、2017年の創業以来、宇宙への輸送手段の提供やコクさ宇宙ステーション(ISS)をはじめとする宇宙空間の利活用において、ビジネスプランの検討からエンジニアリング部門による技術的な運用支援までを、ワンストップで提供している。韓国で2017年に設立された民間宇宙企業のINNOSPACEは、小型ロケットの製造、および軌道打ち上げサービスを提供しており、急速に拡大する小型衛星市場において低遅延・低コストかつ信頼性の高い打ち上げサービスを提供するため、ハイブリッドロケット推進システムを採用した小型ロケット(HANBIT)を開発している。なお2023年3月には、ブラジルのアルカンタラ宇宙センターにおいて、推力150kNを有する第1弾ハイブリッドロケットエンジンの飛行性能を検証するテスト機「HANBIT-TLV」の打ち上げに成功。また同社は韓国に加え、ブラジルとフランスにも拠点を持ち、宇宙産業におけるグローバルなビジネス機会を拡大しているとする。そして今回両社は、INNOSPACEが開発・製造する小型ロケットの販売代理店契約を締結。この契約により、Space BDが既存の衛星打ち上げサービスで提供する国内ロケットおよびSpaceXのFalcon 9ロケットの打ち上げ手段に加え、顧客のミッションや衛星の特性に応じてより柔軟な打ち上げオプションの提供が可能になるという。【マイナビニュース】

【Space BD提供:Space BDとINNOSPACEによる販売代理店契約締結の様子】