KIT航空宇宙ニュース

本田技術研究所は6月17日、自社開発した再使用型ロケットの実験機による離着陸実験に初めて成功した。到達高度は271.4メートル。
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KIT航空宇宙ニュース2025WK25

海外のニュース

1. ハネウェル、NEWBORN燃料電池プロジェクト実現に向け開発を加速

ハネウェルが主導する1MW級の燃料電池パワートレインの開発プロジェクトは、今年後半に個別の燃料電池スタックの最初の大規模な地上テストに向けて準備を進めている。「NEWBORN」と呼ばれる4400万ユーロ(5050万ドル)規模のプロジェクトは、EUのクリーン航空部門の資金も一部受けており、チェコ共和国ブルノにあるハネウェルの欧州主要拠点から指揮されている。2023年1月から活動を開始し、予備設計レビューと重要な設計レビューが完了し、コンソーシアムのメンバーは同社のブルノ施設にサブシステムの納入を開始したと、ハネウェルテクノロジーソリューションズEMEAの副社長兼ゼネラルマネージャーであるミハル・ザヴィセク氏は述べている。プロジェクトの仕様書には、目標は「航空機グレードの燃料電池を安全にできるだけ早く市場に投入すること」であり、それに応じて「28の主要な実現技術」に取り組んでいると記されている。これらは「成熟し最適化」され、2030年までに燃料電池駆動のCS-23カテゴリーの軽飛行機、2035年までにより大型の地域型飛行機の就航をサポートする予定であると同社は述べている。ハネウェルは、2025年にブルノで300kWの燃料電池スタックをテストする予定であり、プロジェクトが終了する2026年6月までに、極低温水素貯蔵タンク、燃料電池、熱管理、制御システムを含む1MWのパワートレインの地上テストを実施する予定である。【Flightglobal news】

【Honeywell提供:チェコ共和国ブルノにあるハネウェルの1MW級燃料電池開発拠点】

2. 米国と4カ国がエアタクシー認証の「ロードマップ」を発表

ショーン・ダフィー米国運輸長官はパリエアショーの2日目に、連邦航空局が4カ国の規制当局と提携し、電動空飛ぶタクシーの型式証明に向けた共同「ロードマップ」を作成していることを明らかにした。米国の運輸長官ダフィー氏は、米国の航空管制(ATC)を近代化する大胆な計画を推進するとも約束した。ダフィー氏はこの計画のために310億ドルの資金を要求している。ダフィー氏が6月17日に明らかにしたエアタクシーの認証ロードマップは、米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国(いずれも国家航空当局ネットワークのメンバー)からのものだ。この文書では、これらのパートナーが協力して、より広範な都市航空モビリティ(AAM)分野における電動エアタクシーやその他の航空機の認証に関する基準とプロセスを確立すると概ね述べられている。拘束力のある要件は含まれていないが、米国とそのパートナーがこの分野を支援することに関心を持っていることを示唆しており、エアタクシー分野にとって大きな後押しとなる可能性がある。「先進航空機型式認証のためのロードマップ」と呼ばれるこの文書では、5つの規制当局が協力して安全性を確保し、認証プロセスを合理化し、機関間の要件を調和させ、「パフォーマンスベース」の要件を確立し、「複数当局による検証」を可能にする目的でデータを共有するとしている。規制当局は2027年7月までに業務を完了することを目指している。文書では、規制当局がAAM航空機の型式認証に「這って、歩いて、走る」アプローチを取るとしているが、最初の型式認証がいつ発行されるかについては述べていない。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:パリエアショーで会見するショーン・ダフィー米国運輸長官】

3. P&Wとコリンズ、ハイブリッド電気PW1100Gデモンストレーターの飛行試験を検討

RTX傘下企業の Pratt & Whitney と Collins Aerospace は、最初の地上テスト実証機の製造を準備しながらも、PW1100G エンジンのハイブリッド電気バージョンを飛行テストに持ち込む方法について検討を続けている。両社は、MTUエアロエンジンズが率いるSWITCHコンソーシアムを通じて協力し、ギア付きターボファンの高速および低速スプールに1MWクラスのモータージェネレータを追加して効率を高める取り組みを行ってきた。コリンズ・エアロスペースの電動化担当主席テクニカルフェロー、トッド・スピアリング氏は、デモ機の電気部品はすべて、2026年にPW1100Gにモーターが搭載される前に、今年後半にイリノイ州ロックフォードにあるRTXの先進電力システム研究所「ザ・グリッド」に集められる予定だと語った。SWITCH プロジェクトの第一段階が終了すると、その年の後半にポーランドのヤシオンカにある EME Aero で完全なエンジンテストが実施される予定です。EUのクリーン航空機関の資金援助を受けているSWITCHコンソーシアムには、最近このプロジェクトに高電圧電気配線ハーネスを納入したGKNエアロスペースや、ハイブリッド電気エンジンの統合課題を調査してきた重要なエアバスも参加している。機体製造業者の関与はプロジェクトの重要な部分であり、「推進システムの特定の部品をどこに配置するかを決定する必要がある」とスピアリング氏は語る。エアバスにとっての考慮事項には、機体の熱管理、配線の経路、必要な保護などがあり、基本的には「800Vの電力を翼と胴体を通して安全に動かすにはどうすればよいか」を考えることになると彼は言う。エアバスがA320に代わる次世代の単通路機の選択肢を分析する初期段階にある中、CFMインターナショナル、P&W、ロールスロイスの3大エンジンメーカーはいずれも将来のエンジン技術を準備している。【Flightglobal news】

【P&W提供:PW1100Gハイブリッドエンジン】

日本のニュース

1. 国際航空宇宙展、28年に東京開催

一般社団法人日本航空宇宙工業会(SJAC)は6月18日、日本最大級となる航空宇宙防衛分野の見本市「JA2028(2028年国際航空宇宙展)」を2028年秋に都内で開催すると発表した。開催日程や場所の詳細は、決まり次第発表するという。第15回は2018年11月、前回第16回は2024年10月に、それぞれ東京・お台場の東京ビッグサイトで開かれた。次回の正式名称は「JAPAN INTERNATIONAL AEROSPACE EXHIBITION 2028」となる。国際航空宇宙展は、1966年に埼玉県の航空自衛隊入間基地で開かれた東京航空宇宙ショーが前身。4年ごとに開かれてきたが、2020年の東京オリンピック開催が決まったことから、第15回は2年前倒しで2018年に開催した。第16回は当初2021年に予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による東京大会延期や感染拡大により2021年は中止とし、2024年10月の開催となった。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供】

2. エアージャパン、CA経験不問で募集 総合職は初の通年採用

ANAホールディングス傘下のエアージャパンは、客室乗務員(CA)と総合職の採用を始めた。CAは乗務経験不問で社会人経験があれば応募でき、総合職は同社初の通年採用となる。CAの採用予定数は50人で、今年12月以降の入社。2024年7月末時点で、専門、高専、短大、4年制大学、大学院のいずれかを卒業・修了しており、社会人経験が1年以上ある人が対象で、CAとしての乗務経験は問わない。居住地や視力などの条件があり、英語力はTOEIC 600点以上、GTEC2技能 260点以上、GTEC4技能 520点以上、IELTS 5.5点以上が望ましいとしている。応募は7月8日午前9時59分まで。選考は1次が書類と適性検査、2次が対面のグループ面接、最終は対面の個人面接と健康診断。日程は2次が8月2日から4日、最終は9月6日と7日を予定している。雇用形態は正社員で、訓練期間中は試用期間となる。総合職は若干名の採用予定で、今年10月1日以降の入社。社会人としての就業経験1年以上、英語力はTOEIC 600点または英検2級以上が望ましいとしている。業務内容は、オペレーション(支援業務、整備監理、ラインオペレーション)、DX/IT関連、マーケティング関連、コーポレート(経理・会計、経営戦略・企画、総務・人事)のいずれかで、オペレーション業務は、関連業務経験を3年以上が望ましいとしている。同社初の通年採用で、応募時に希望業務を尋ね、これまでのスキルや経験から配属先を決める。選考は、1次が書類選考と適性検査、2次がオンラインの個人面接、最終は対面の個人面接となる。勤務地は成田空港で、雇用形態は正社員になる。【Aviation wire news】

3. JAL、CAのインターン募集 学校推薦を初導入

日本航空は6月18日、客室乗務員(CA)のインターンシップを9月から12月に実施すると発表した。航空業界やCAの仕事に対する理解を深めてもらうもので、応募期間は6月18日から8月18日正午まで。今回は客室乗務職では初となる「学校推薦コース」を新設した。対象は専門学校や高専、短大、4年制大学、大学院に在籍している学生で、JALの客室乗務職に興味がある人。5日間のプログラムで、「「企業研究」と「実践編」の構成となる。実践編では、通常では体験できない訓練施設での研修も予定している。全国約60校超の大学と連携して行う学校推薦コースは、推薦を受けた学生が選考審査なく参加できるのが特徴で、企業と教育機関が協力して新しいモデル構築を目指す。応募はJALのインターンシップサイトから。一般応募と学校推薦の2コースから選択できる。今回のイベントは、今後の採用とは関係ないという。【Aviation wire news】

4. JAL、電動ハイブリッド機「MAEVE Jet」開発で独メイブと基本合意 地域路線維持へ現実解模索

日本航空と100%出資する整備会社JALエンジニアリング(JALEC)、独メイブ・エアロスペース(Maeve Aerospace)の3社は現地時間6月17日、地方都市間を結ぶ地域航空向けの電動ハイブリッド航空機「MAEVE Jet」の開発に向け、基本合意書(MoU)をパリ航空ショーで締結した。航空機の完全な電動化には時間がかかることから、従来のガスタービンエンジンとバッテリー駆動の電気モーターを組み合わせて、燃費向上やCO2(二酸化炭素)排出量削減の実現を目指す。MAEVE Jetは、既存のリージョナルジェット機と比べ、燃料消費量を40%削減し、CO2排出量を抑えることを目標に設定。JALグループは、機体設計や運用、カスタマーサポート体制の構築といった分野で、航空会社としての知見を生かし、航空機の耐空性や信頼性を向上させる新たな航空機設計システムの構築に参画していく。後部胴体にオープンロータータイプのエンジンを左右1基ずつ配置するリアエンジン、T字翼タイプの機体で、スピードはマッハ0.75を計画。座席数は1列5席配列を基本として、3クラス76席、2クラス90席、1クラス100席程度になる見通し。航続距離は3クラス76席で2685キロ(1450海里)、1クラス100席で1759キロ(950海里)で、最大離陸重量時の滑走路長は1500メートルを計画している。日本の国内線事業は、コロナ後の生活環境の変化や円安影響を受け、事業環境が急激に悪化している。こうした中、生活路線である離島路線や、大きな需要が見込めないものの、路線として重要性が高い地方都市間路線の維持が課題となっており、現行のリージョナルジェット機よりもコストを抑えつつ、ターボプロップ(プロペラ)機よりは速度が速い機体として、JALグループは電動ハイブリッド航空機の可能性を模索していく。メイブは2021年にオランダで設立。現在はドイツのミュンヘン、デルフト、カナダのモントリオールにオフィスを構えており、メイブのマルティン・ネッセラーCTO(最高技術責任者)は「脱炭素燃料や新たなインフラへの追加投資を必要とせず、早期に影響を生み出せるソリューションを開発する共通のビジョンをJALと持っている」と語り、現実的な技術で省燃費・低運航コストを実現できる機材の実用化を目指す。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:Maeve Aerospaceが構想中のハイブリッド電動リージョナル機模型】

5. ホンダ、再使用型ロケット実験で初の離着陸成功 到達高度271.4m

本田技研工業の研究開発子会社である本田技術研究所は6月17日、自社開発した再使用型ロケットの実験機による離着陸実験に初めて成功したと発表した。到達高度は271.4メートルで、着地位置は目標から37センチの誤差に抑え、飛行時間は56.6秒だった。再使用型ロケットの事業化は、現時点で決定していない。今回の実験は、17日午後4時15分に実施。ロケットの再使用に必要な上昇・下降時の安定性や着陸機能などの要素技術を確認することが目的で、北海道大樹町の専用実験設備で行われた。ロケットは全長6.3メートル、直径85センチ、重量はドライ900キロ、ウェット1312キロで、ホンダとして初となる高度300メートル級の離着陸実験となった。再使用型ロケット(RLV:Reusable Launch Vehicle)は、従来の使い捨て型ロケット(ELV)とは異なり、同一機体を短時間で繰り返し運用できるのが特徴。垂直に打ち上げた後、高度100キロ程度まで上昇し、垂直姿勢を保って着陸する。ホンダは2021年からロケット研究に取り組んでおり、2024年からエンジン燃焼実験やホバリング実験を重ねてきた。今回は半径1キロの警戒区域を設定し、推力遮断時の落下範囲や、内閣府ガイドラインによる安全距離加算といった安全対策を講じた上で実験した。今後は2029年の準軌道到達能力の実現を目指し、引き続き要素技術の研究を進めていくが、現時点で事業化は決定していない。【Aviation wire news】

【本田技研工業提供:再使用ロケット離着陸実験】

6. スターフライヤー、CA・GS志望者向けエアラインスクール 8月から

スターフライヤーは6月17日、客室乗務員やグランドスタッフ(旅客係員)を目指す人向けのエアラインスクールを開講すると発表した。8月と2026年2-3月に、北九州空港の同社施設で開く。客室乗務員やグランドスタッフを目指す人向けの「エアライン・キャリアスタディ講座」を8月30日と2月28日、客室乗務員の業務に関心がある人向けの「キャビンサービス&セーフティ講座」を8月31日と3月1日にそれぞれ開催し、1日または2日間受講する。エアライン・キャリアスタディ講座は定員30人で、カリキュラムは航空業界やキャリアビジョン、面接に向けたプレゼンテーション、客室乗務員やグランドスタッフの職場探求、座談会。キャビンサービス&セーフティー講座は定員20人で、客室乗務員の職場探求、機内サービス・アナウンス体験、緊急脱出体験、メイクアップ講座、制服試着体験を実施する。受講料は、エアライン・キャリアスタディ講座が3万3000円、キャビンサービス&セーフティ講座が5万5000円で、両日コースは7万7000円。いずれも午前10時から。申し込みは同社が開設している予約サイトで、8月コースは6月17日午後6時から受け付けを始めた。2-3月コースは未定で、決定後に発表する。交通費や宿泊費は自己負担。昼食は同社オリジナルの弁当を用意する。【Aviation wire news】

7. JAL、自律型eVTOLの実証飛行実現へボーイング系Wiskや加賀市と基本合意

日本航空が100%出資する整備会社JALエンジニアリング(JALEC)は現地時間6月16日、ボーイングの完全子会社でeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発する米Wisk Aero(ウィスク・エアロ)、石川県加賀市の3者で、パイロットが搭乗しない「無操縦者航空機」の実用化を視野に入れた実証飛行に関する基本合意書(MoU)を締結したと、同日開幕したパリ航空ショーで発表した。パイロット不足が問題となる中、2030年代以降のeVTOLの運航本格化を見据え、自律飛行で安全に運航できる環境づくりに着手する。eVTOLは、実用化の初期段階ではパイロットが乗務するものの、将来的には操縦者が搭乗しない自律飛行型が主流になるとみられている。パイロット不足への対応や、運航コストを抑えて地方都市にも導入しやすくする狙いがあり、ヘリコプターなど既存の有人航空機や、少量の貨物しか運べないドローンでは実現が難しい、交通の便が悪い地域の移動手段や、災害発生時の物資輸送といった分野への導入が期待されている。今回の協定は、航空機整備に関するJALECの技術的知見、パイロットが搭乗しない自律飛行型eVTOLを開発するWiskの技術、国家戦略特区で先進的な取り組みを進める加賀市の3者の強みを組み合わせ、今後の制度設計に資する実証飛行を推進することが目的。空の移動の自由度拡大や経済性向上を図るとともに、安全性の確保も目指す。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:パリエアショーのWisk展示会場で基本合意書を交わしたJALEC/Wisk/ 加賀市の関係者】