KIT航空宇宙ニュース2025WK50
海外のニュース
1. 777X、26年後半に型式証明取得へ 新型機NMAは「時期尚早」=ボーイング幹部
ボーイング民間航空機部門マーケティング担当バイスプレジデント(副社長)のダレン・ハルスト氏は12月11日、開発が進む777Xなどの進捗を明らかにした。現在は製造国が安全性を認める「型式証明」(TC)の取得を目指し開発が進んでおり、2026年後半にTCを取得する見通し。同様にTC取得を目指す737 MAXファミリー2機種も2026年の就航を目指し、開発を進めている。また新型コロナ前に計画していた新型機「NMA(New Middlesize Airplane)」は、早期の開発着手に否定的な見解を示した。777の後継機となる開発中の次世代大型機777Xは、メーカー標準座席数が2クラス384席の777-8と、426席の777-9、777-8をベースとする大型貨物機777-8Fの3機種で構成し、777-9から開発が進められている。現在、FAA(米国連邦航空局)からのTC取得が遅れており、777-9の納入開始がさらに遅れ、2027年になる見通しだ。【Aviation wire news】

【Boeing提供:試験飛行中のBoeing777X-9型機】
2. 世界の航空会社、26年純利益は過去最高410億ドル 利益率3.9%
IATA(国際航空運送協会)は現地時間12月9日、2026年の世界の航空会社による業績見通しをジュネーブで発表した。純利益は410億ドル(約6兆4000億円)、純利益率は3.9%と予測した。純利益は2025年見通しの395億ドルから増加するものの、純利益率は3.9%と横ばいで、IATAは収益性が安定して推移するとみている。業界全体の収入は1兆530億ドルと、2025年見込みの1兆80億ドルから4.5%増加する見通しとなった。旅客数は52億人と前年比4.4%増加し、貨物量は7160万トンと2.4%増を予測する。有償旅客を運んだ距離を示すRPK(有償旅客キロ)ベースで4.9%の伸びを見込み、年間のロードファクター(座席利用率)は83.8%と過去最高水準を更新するとした。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:ジュネーブで開かれたIATA総会で発言するIATAウォルシュ事務総長】
3. サーブのイノベーション部門が「ソフトウェア定義胴体」を搭載したルビー機の2026年飛行試験計画の詳細を発表
サーブ社の社内イノベーションスタートアップ企業「ザ・レインフォレスト」は、同社が「世界初のソフトウェア定義航空機胴体」と呼ぶものを採用した無人プラットフォームを来年飛行させる予定だ。「胴体は全長5メートル(16フィート4インチ)以上、26個の独自の3Dプリント部品で構成されており、これまでに動力飛行を経験した中で最大の積層造形金属構造の1つになります」とスウェーデンの航空機メーカーは述べている。飛行試験は、レインフォレスト社が開発したルビー( GEエアロスペース社製J85エンジン搭載、翼幅6~7mの複合材製翼)を使用して実施される。革新的なコア構造は、ダイバージェント・テクノロジーズ社との提携により設計・製造された。「胴体は構造試験荷重に合格しており、2026年に飛行する予定だ」とサーブ社は述べている。「胴体は特別な工具や治具を使わずに開発・実現され、その代わりに、産業用レーザー粉末融合積層造形法と汎用ロボット組立を組み合わせたダイバージェントのソフトウェア定義製造資産を活用した」と同社は述べている。「積層造形により、耐荷重構造はリブやストリンガーのように直線や直角をたどる必要はなく、むしろ有機的に最適な荷重経路をたどることができます」と、ザ・レインフォレストの代表アクセル・バース氏は語る。また、人工知能も活用したこのような設計最適化により、「機体の部品数を少なくとも100分の1に削減でき、従来のリベット留めの機械部品を有機的な織り合わせ構造に置き換えることができる」とサーブは述べている。

【サーブ社提供:26個の3D プリンター部品で作られた胴体構造を持つ無人機「ルビー」】
4. ボーイングが支援するEvio社がハイブリッド電気地域航空機を発売
ボーイングが支援する新興企業Evio社は、計画中のハイブリッド電気地域型航空機、エヴィオ810を発表した。エヴィオ810は、同社が2030年代初頭の市場投入を目指している白紙設計の航空機である。2019年に設立され、米国とカナダで事業を展開するEvio社は、これまでに450機のEvio 810型機の予約注文を獲得したと主張している。同社によると、2つの「大手」航空会社(具体的な名称は伏せられている)が2023年に条件付き購入契約を締結し、合計250機のEvio 810型機と、さらに200機のオプション購入を取得したという。 ボーイングは76席の旅客機に加え、貨物機および防衛用途向けにEvio 810を提供する予定です。ボーイングはこのプログラムに非公開の資金と技術支援を提供しているが、ターボプロップエンジンメーカーのプラット・アンド・ホイットニー・カナダはEvioと共同で、同機のハイブリッド電気推進システムの開発に取り組んでいる。「当社は、PT6Eエンジンの実証済みの性能と比類のない信頼性、そして推進技術の革新とシステム統合における数十年にわたる経験を活用し、航空機の燃料効率とミッションの多様性の新たな可能性を切り開きます」と、プラット・アンド・ホイットニー・カナダのセールスおよびマーケティング担当副社長、スコット・マックエルヴァイン氏はEvioとの提携について述べた。Evio社はEvio810の目標航続距離やその他の仕様をまだ明らかにしていないが、短距離飛行における完全電動運航に最適化されると述べている。デジタルレンダリングでは、T字型の尾翼を持つ4発ターボプロップ機が描かれている。【Aviation International News】

【Evio社提供:開発中の電動ハイブリッド航空機Evio 810型機(想像図)】
5. BEAによると、エールフランスのA350の速度超過事故は鳥衝突による損傷が原因
リヨン—フランス民間航空安全調査分析局(BEA)の調査官らは、エールフランスが運航するエアバスA350型機で鳥衝突事故が発生した後、レドームのメンテナンスが不十分だったことが、レドームが崩壊し、着陸まで操縦士に非常に大きな負担がかかったことによるものと考えられると述べている。2023年5月28日の事故では、乗務員は効果的なチームワークと、一部の先進システムに関する知識が不十分であったにもかかわらず、高い安全マージンを維持できたと、フランス航空事故調査局の最終報告書は強調している。このインシデントは気象レーダーの故障から始まった。大阪からパリに向けて離陸して数分後、A350-900の乗務員は気象レーダーの完全喪失に対応する手順を適用する必要に迫られました。エールフランスの運航センターから航路上に雷雲が発生しているとの報告を受け、乗務員は大阪への引き返すことを決定した。降下開始時、パイロットはドスンという音と、それに続く大きな空力騒音を聞いた。エンジン回転数の変動、飛行指示器に表示される高度の差、そして対気速度計の故障を目の当たりにし、彼らは「非常事態」と宣言した。パイロットは、機体がレドーム(機体先端部先端部、気象レーダーを内蔵)の一部、あるいはプローブを失ったのではないかと考え、その後、指示対気速度の不安定さに気づいた。その時点では、ピトー管プローブが取り付けられている機首部の空力形状の変化が対気速度測定に支障をきたしていた。乗組員は信頼性の低い対気速度測定手順を適用し、メーデーを宣言した。着陸はその後何事もなく完了し、レドームはかなり損傷した状態で発見された。紫外線検査の結果、レドームの左上に鳥の衝突による有機残留物が検出された。レドームの該当部分は取り外され、残留物のDNA分析のためパリ自然史博物館に送られました。その結果、ハヤブサのものと判明した。「この衝突により内板の剥離が起こり、それが放射状および後方に広がり、レドームが完全に崩壊した可能性が非常に高い」とBEAは述べている。崩壊前にも、レドームはレーダーアンテナの動きを妨げていた。このバードストライクは、A350を運航していた別の乗務員が事故発生の1か月前に報告していたものの一つだったと考えられる。事故発生前の数回の飛行において、気象レーダーに不具合が発生していた。エールフランスの整備センターは、レドーム内面の目視検査を要請した。しかし、整備士は外面の目視検査と、前日に交換されたレーダーアンテナの試験のみを実施した。BEAは、エアバスの文書が、このケースではレドーム内部の検査が必要であったことを裏付けていると指摘している。【Aviation Week】

【Flightglobal提供:鳥衝突により破壊されたエールフランスのA350型機のレドーム】
日本のニュース
1. スターフライヤー、国際線26年秋再開へ 6年半ぶり北九州−台北定期便
スターフライヤーは12月10日、運休が続いている国際線の定期便を2026年度中に再開すると発表した。2路線ある国際線のうち、北九州−台北(桃園)線を同年秋ごろをめどに再開させる。同社の国際線は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により運休しており、約6年半ぶりの再開となる。再開後は週3日間程度、深夜早朝帯での運航を予定する。再開日や便数などは決定後に発表する。もう1路線の中部−台北線は運休を継続する見込み。スターフライヤーは2012年7月12日に、初の国際線定期便として北九州−釜山線を開設したが、経営悪化に伴い2014年3月29日を最後に撤退。その後、2018年10月28日に北九州・中部−台北の2路線を開設し、4年7カ月ぶりに国際線へ再参入した。台北2路線は週7往復(1日1往復)ずつ運航していたが、コロナの流行により2020年3月11日から全便運休が続いている。【Aviation wire news】
2. 日本の国内線「航空会社多すぎない」IATA事務総長、成長鈍化も「重要な市場」
IATA(国際航空運送協会)のウィリー・ウォルシュ事務総長は、日本の国内線市場について、新幹線との競争が厳しい一方で「航空会社が多すぎるとは考えていない」との認識を示した。成長率は主要国の大型国内市場と比べて高くないものの、世界全体の中では依然として重要な市場だと位置づけた。スイスのジュネーブにあるIATA本部で現地時間12月9日に、Aviation Wireの取材に応じたウォルシュ事務総長は「日本に航空会社が多すぎるとは考えていない。それが本質的な問題とは思わない」との考えを示した。日本の国内線が世界市場に占める比率について、2000年ごろは約1.6%だったものが、今年は約1.1%になったと説明。その上で「日本の国内線市場は成長のペースこそインドや中国と比べると成熟しているが、規模の面では依然として大きい。世界市場に占める割合は下がっているが、それでも日本の国内線は重要な市場だ」と市場規模の大きさに言及しつつ、今後の成長率は「かなり緩やかなものになるだろう」と語った。日本の国内線は、新幹線との競争が激しいことで知られる。ウォルシュ事務総長は、新幹線について「ネットワークが非常に優れている」と評価し、航空会社にとって強力な代替手段になっており、「日本特有の要素」だと指摘。一方で、強い競争環境にありながらも、日本の航空各社は国内線ネットワークを維持し、需要に応じて運航を続けているとした。国土交通省航空局(JCAB)は、コロナ後の生活環境の変化や円安影響を受け、国内線の事業環境が急激に悪化していることから、「国内航空のあり方に関する有識者会議」を立ち上げ、5月に初会合を開催。12月5日には3回目の会合が開かれ、公正取引委員会と、空港がある都道府県などで構成する全地航(全国地域航空システム推進協議会)からヒアリングした。現在はピーク時に異なる航空会社が同じ時間帯に運航しているケースが目立つが、ダイヤ調整による等間隔化などが議論されている。一方で、航空各社が収益性や利用者のニーズを長年追求してきた結果が現在の発着時間帯でもあるため、等間隔にすることが利用者の利便性や航空会社の収益改善にはつながらないとの懸念がある。【Aviation wire news】