KIT航空宇宙ニュース2026WK03

地球の中間圏から外気圏にまで広がる電離圏に存在するプラズマの性質を利用し、電子ビームを用いて小型デブリを除去する「電子ビームアブレーション推進法」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2026WK03

海外のニュース

1.  FAA、PW1100Gに耐空性改善命令 ANAも採用、エンジン火災リスク

FAA(米国連邦航空局)は、エアバスA320neoファミリー向けエンジン米プラット&ホイットニー(PW)製「PW1100G-JM」に対し、新たな耐空性改善命令(AD)を発行した。ファンブレード破損に伴う燃料漏れから、エンジン火災に至るリスクを低減するのが目的で、2月17日に発効する。PW1100Gは、2023年にも不具合が発覚。世界的に点検作業による欠航などが生じた。この際、日本の航空会社では、ANAホールディングス傘下の全日本空輸が運航する便に影響が出た。今回の「AD 2025-26-04」は、PW1122G-JM、PW1124G-JM、PW1124G1-JM、PW1127G-JM、PW1127G1-JM、PW1127G1A-JM、PW1127G1B-JM、PW1127GA-JM、PW1129G-JM、PW1130G-JM、PW1133G-JM、PW1133GA-JM、PW1428G-JM、PW1428GA-JM、PW1428GH-JM、PW1431G-JM、PW1431GA-JM、PW1431GH-JMの各型。PW1100G-JMは、プラット&ホイットニー(PW)が開発したギアードターボファン(GTF)で、A320neoファミリーで選択できるエンジンの一つ。FAAによると、PW1100Gではファンブレードの破損事例が複数報告されており、このうち3件でエンジンカウル内の火災や、漏えいした燃料によるプール火災が発生した。ファンブレードが折損した際に燃料配管「CP09チューブアセンブリ」から燃料が漏れると、制御不能なエンジン火災や機体損傷につながるおそれがあるとして、是正措置を義務付けた。FAAは、このADの対象となるエンジンが米国登録機に計586基搭載されていると試算。1基あたりの作業コストは、クランプ取り外しが765ドル、TMSクレビスマウント交換が2万6095ドル(うち部品代1万7000ドル)、クランプ再装着が765ドルとしている。日本の航空会社が運航するA320neoとA321neo、A321LRのうち、PW1100Gを選定したのはANAのA320neoとA321neoのみ。ANAホールディングス傘下の全日本空輸は、エアバスA320neoファミリー向けエンジン米プラット&ホイットニー(PW)製「PW1100G-JM」に対し、FAA(米国連邦航空局)が発行した耐空性改善命令(AD)について、1月16日午後の時点で、今回の内容は対策済みで、運航への影響はないと回答した。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:PW1100GMエンジンCP09チューブAssy検査部位】

2.  26年版「安全な航空会社」日系はANAのみ JALランク外に=豪情報サイト

航空会社を評価する情報サイト「エアライン・レーティング」(AirlineRatings.com、豪州)は、2026年版の「最も安全な航空会社」上位25社を発表した。首位はエティハド航空で、中東系として初めてトップを獲得した。日系の大手2社のうち全日本空輸は14位(前年6位)でランクインした一方、日本航空はランク外となった。LCC部門への日本勢のランクインはなかった。エアライン・レーティングは2013年6月にスタート。今回は320社が対象で、安全性と機内設備などを7つ星で評価した。安全な航空会社は総飛行回数や機齢、重大インシデント、政府や監督官庁による監査などを考慮し、選出している。今回は乱気流防止対策も評価対象とした。安全な航空会社の2位はキャセイパシフィック航空、3位はカンタス航空、4位はカタール航空、5位はエミレーツ航空だった。【Aviation wire news】

3.  ボーイング納入大幅増、737MAX回復 受注は7年ぶりエアバス超え=25年実績

ボーイングは現地時間1月13日、2025年の民間機の年間納入機数が、前年比252機(72.4%)増の600機だったと発表した。主力小型機の737 MAXに加え、中型機の787の納入回復が奏功した。納入は2019年から7年連続で競合のエアバスを下回ったものの、受注は7年ぶりにエアバスを上回った。総受注からキャンセルと機種変更を差し引いた「純(ネット)受注」は1075機(前年比698機増)。受注残は475機増の6720機となった。競合のエアバスは納入が793機(前年比27機増)、純受注は889機(同63機増)だった。【Aviation wire news】

4.  インテリジェントエナジーは最新の燃料電池システムで新たな高みを目指す

インテリジェント・エナジー社は、英国が資金提供する取り組みの下で開発中の、より軽量で低抵抗の水素燃料電池システムの設計を今年後半に完了する予定だ。同社の長年培ってきた相変化冷却技術を基に構築された 300kW システムの開発は、HEIGHTS と呼ばれるプロジェクトのもと、英国航空宇宙技術研究所 (ATI) の支援を受けている。昨年5月に開始された1,700万ポンド(2,280万ドル)規模のプロジェクトは、現在、設計完了というマイルストーンに向けて進んでいると、同社の航空部門IE Flightの事業開発責任者、ジョナサン・ダグラス=スミス氏は語る。同氏はさらに、2026年第3四半期には達成される予定だと付け加えた。【Flightglobal News】

【インテリジェント・エナジー提供:300kWシステムはeVTOLやその他の軽飛行機の用途に適している】

5.  FAAが無鉛航空ガソリン移行計画を発表

FAA(連邦航空局)は今週初め、待望の計画案を発表した。この計画案は、今後数年間で米国の一般航空機が100オクタン価の低鉛航空ガソリンから無鉛航空ガソリン代替燃料へとどのように移行していくかを概説している。パブリックコメント募集のために公開されたこの文書は、 FAAが「安全かつ秩序ある」移行と表現する、現在も広く使用されている唯一の有鉛輸送燃料からの移行のための全国的な枠組みを提供することを目的としている。計画草案では、FAAが表明した目標は引き続き2030年末までに全国で有鉛航空ガソリンの使用を廃止することだが、アラスカ州については、その特有の運用上および物流上の課題を理由に2032年末までの廃止が認められている。FAA は、この文書が最終規則ではないことを明確にしており、燃料の入手可能性、価格、インフラの準備状況など、移行を形作る多くの要因が FAA の直接管理の範囲外にあることを認めている。この計画は4段階の枠組みを採用している。この枠組みは燃料承認から始まり、100LLからの全国的な移行で終了する。FAAは、このアプローチを意図的に段階的に実施し、ピストン燃料機の多様性と航空ガソリンの生産・供給システムの複雑さを考慮していると説明している。計画案では、FAAが航空機の代替燃料として単一の燃料を選択する意図はないことを明確にしています。FAAは、入手性、コスト、互換性、運航者の受け入れ状況に基づき、最終的に100LLに代わる無鉛航空ガソリンの選択肢は市場が決定すると述べている。FAAは計画の中で、複数の承認燃料が存在することで運用上の課題が生じることを認めています。例えば、異なる無鉛航空ガソリンの選択肢が相互運用性に欠けたり、安全に混合できない場合、混乱や誤給油の可能性などが挙げられます。FAAはこうしたリスクに対処するため、相互混合試験を実施する可能性があり、燃料開発者にも同様の試験を実施するよう奨励している。【Flightglobal news】

日本のニュース

1. 羽田空港、運航支援19社が合同説明会 2/7予約不要

羽田空港のグランドハンドリング(グラハン)会社など19社が参加する合同企業説明会が、2月7日に開催される。グラハンのほか保安検査や手荷物取扱会社など、運航を支える地上支援業務の各社が集う。参加費は無料。参加するのは、グラハンがANAエアポートサービス、ジャパン・エアポート・グランドハンドリング、羽田タートルサービス、CKTS、エージーピー、羽田空港サービスグループ、スイスポートジャパンの7社、航空保安検査がジェイ・エス・エス、KSP・EAST、サンエス警備保障、一般財団法人航空保安協会、にしけいの5社、航空機燃料がENEOSスカイサービスと三愛オブリの2社。ランプハンドリング(コウノイケ・エアポートサービス)と機内食製造(コスモ企業)、旅客ハンドリング(JALスカイ)、空港旅客サービス(Kスカイ)、航空貨物取扱事業(サンコー・エア・セルテック)は1社ずつとなる。会場は羽田空港第1ターミナル6階ギャラクシーホール。午前10時から午後4時までで、受付開始は午前9時45分から。予約は不要だが、参加後にアンケートへの回答が必要となる。【Aviation wire news】

2. 1km先のスペースデブリを除去可能に? 大阪公大が独自技術の有効性を検証

大阪公立大学(大阪公大)は1月13日、独自に提案している小型スペースデブリ除去技術「電子ビームアブレーション推進法」で用いる電子ビームが、高度およそ60~1000kmにある電離圏中のプラズマから受ける影響をコンピュータシミュレーションで解析した結果、真空中のように拡散することなく細いビームを維持したまま約1km伝送できることが示されたこと、またそれ以上の距離になると「二流体不安定」による分裂現象が確認されたことを発表した。同成果は、大阪公大大学院 工学研究科の西尾圭太大学院生(研究当時)、同・森浩一教授の研究チームによるもの。詳細は、熱物理学と熱エネルギーの伝達・貯蔵を扱う学術誌「Journal of Thermophysics and Heat Transfer」に掲載された。近年、ロケットの打ち上げ回数の増加や、衛星同士の衝突、軍事目的の衛星破壊テストなどにより、スペースデブリが急速に増加している。このままのペースで増え続けると、地球はデブリに囲まれ、ロケットの打ち上げが不可能となる「ケスラー・シンドローム」の発生が懸念される状況となっている。こうした全地球的な課題に対し、多様な方法でデブリを除去するための技術開発が進められている。例えば、運用が終了した衛星などの大型デブリに対しては、専用の人工衛星が接近してロボットアームで捕獲する方式などが検討されている。一方、膨大な数が存在する10cm以下の小型デブリについては回収が困難なため、レーザーを用いる手法が世界中で研究されている。森教授らは、地球の中間圏から外気圏にまで広がる電離圏に存在するプラズマの性質を利用し、電子ビームを用いて小型デブリを除去する「電子ビームアブレーション推進法」を研究している。衛星が長距離から電子ビームを照射し、小型デブリを減速させて大気圏へ落下・焼却させるというものだ。この方法は、高効率かつコンパクトなシステムで実現できる可能性があり、低コストでデブリ除去を持続できる点を最大の特徴とする。しかし、課題もある。電子は負の電荷を持つため互いに反発し、電子ビームは真空中の伝搬では距離に応じて横に広がってしまう点だ。また、電子ビームが電離圏のプラズマからどのような影響を受けるのかについても、これまで十分に検討できていなかったとする。そこで研究チームは今回、電子ビームがプラズマからどのような影響を受けるのかを明らかにするため、コンピュータシミュレーションを実施したという。電離圏は、太陽からの紫外線やX線などによって大気中の分子や原子が電離し、電子やイオンが多く存在する領域だ。電波を反射・吸収する性質を持ち、長距離無線通信や宇宙天気にも大きな影響を与えることが知られている。今回のシミュレーションの結果、電離圏中では周囲を満たすプラズマの効果により、電子ビームは真空中のようには拡散せず、逆に細い形状を維持したまま遠方まで伝搬することが判明した。しかし、電子ビームが光速に近い速度で約1km以上進むと、異なる性質を持つ2つの流体が接触する界面で生じる「二流体不安定」現象によって、ビームがバラバラに分裂してしまうことも突き止められたとする。今回の研究により、電子ビームを伝送できる距離が明らかにされた。数値とし伝送距離を把握できたことは、電子ビームアブレーション推進法の設計における重要な指針を与える成果とする。また同時に、今回の成果は電離圏のプラズマの性質を活用する宇宙工学の発展に大きな一歩を記したとしている。【マイナビニュース】

【大阪公立大学提供:電子ビームアブレーション推進法によるスペースデブリ除去の概念図】