KIT航空宇宙ニュース2025WK47

ボーイング傘下のオーロラ・フライト・サイエンシズが、アクティブ・フロー・コントロール(AFC)に関する飛行試験データを収集するための実験機X-65の形状を公表(X-65航空機のコンピューターレンダリング)
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2025WK47

海外のニュース

1.  UPS MD-11便の事故調査官、エンジンパイロンの亀裂を発見

11月4日に発生したUPSマクドネル・ダグラスMD-11貨物機(MD-11F)の墜落事故において、左エンジンパイロンアセンブリの一部に生じた疲労亀裂が重要な要因であったことが明らかになった。調査官は、左(No.1)エンジンパイロンの後部隔壁前方部と後部マウントラグに亀裂を発見した。これはNTSBの予備調査報告書で明らかになった。報告書によると、マクドネル・ダグラスMD-11F型機は、ケンタッキー州ルイビルにある同社の主要拠点からの離陸中に左エンジンを失い、高度30フィート(約9メートル)以上上昇せずに墜落した。乗組員と地上の乗員を含む全員が死亡した。予備報告書に掲載された劇的な画像には、離陸直後にエンジンとパイロンが分離し、火の玉となって空中に舞い上がる様子が映し出されている。この報告書は、11月4日の墜落事故に関する初の詳細な報告書である。UPS機の墜落状況は、1979年にアメリカン航空グループが運航していたマクドネル・ダグラスDC-10型機が離陸直後に左エンジンが離脱して墜落した事故と「不気味なほど似ている」と、米連邦航空局(FAA )の元事故調査責任者ジェフ・グゼッティ氏は述べた。しかし、構造的な破損が発生した場所は若干異なっていたとグゼッティ氏は述べた。さらに、NTSBはアメリカン航空の墜落事故は不適切な整備による損傷が原因であると断定した。しかし、UPSの調査におけるNTSBの初期調査結果では、老朽化以外の明らかな外的要因による損傷は示唆されていないとグゼッティ氏は述べた。UPS の事故後、FAA は運航者による検査と特定の是正措置が完了するまで、すべての MD-11F 貨物ジェット機の運航を一時的に停止した。その後、UPSは同様のエンジンパイロン設計を持つ他の航空機DC-10型機にもこの指令を拡大した。今回の運航停止は、UPSの保有機の約9%と、ライバルであるフェデックスの保有機の約4%に影響を及ぼす。【Aviation week】

【Aviation week提供:空港のセキュリティ映像の静止画像には、UPS 2976便の左エンジンが分離し、MD-11が回転するにつれて機体上を移動する様子が映っている】

2. 革新的なX-65が形を表す

ボーイング傘下のオーロラ・フライト・サイエンシズは、アクティブ・フロー・コントロール(AFC)に関する飛行試験データを収集する国防高等研究計画局(DARPA)プログラムの一環として、X-65と命名されたXプレーンを製造している。AFCは、フラップやラダーといった従来の操縦機構を空気のジェット噴射に置き換え、機体のピッチ、ロール、ヨーを制御します。AFCは、空気力学の向上、重量の削減、機械構造の複雑さの軽減が期待されている。2025年8月、オーロラとDARPAは、X-65の完成と初飛行に向けた共同投資契約を締結した。革新的な航空機の新型エフェクター制御(CRANE)プログラムは現在、2026年1月の機体完成に向けて進行中。X-65 の胴体は、オーロラ社のウェストバージニア州ブリッジポート工場で形作られている。オーロラ社は既に予備設計および詳細設計審査を完了しており、機体製造において大きな進展を遂げている。胴体、主翼アセンブリ、エンジンディフューザーは、オーロラ社のウェストバージニア州工場で製造されている。推進システムおよびAFCシステム部品は現在社内で製造されており、組立の準備が整っている。X-65は、翼幅30フィート、総重量7,000ポンド(約3,100kg)のアクティブフローコントロール(AFC)の試験・実証用に特別に設計されている。AFCシステムは、全飛行面に埋め込まれた14個のAFCエフェクターに加圧空気を供給します。三角形の主翼設計により、複数の翼スイープ角での試験が可能で、交換可能な外側主翼と交換可能なAFCエフェクターを備えたモジュール式設計により、将来的に追加のAFC設計の試験にも対応可能です。【Aurora Flight Scienceプレスリリース】

【Aurora Flight Science提供:X-65航空機のコンピューターレンダリング】

日本のニュース

1. 緊迫の日中関係、どうなる航空路線 中国系微減、日系は影響なし

緊迫する日中関係を背景とし、中国外務省が日本への渡航自粛を呼びかけたことで、両国を結ぶ航空路線にも大きな影響が出始めている。英国のデータ分析会社「シリウム(Cirium)」によると、日本と中国本土を結ぶ路線は、11月は169路線、12月は172路線となり、両国らの航空22社が運航する。運休や減便などは中国系の航空会社で複数みられるが、日系各社に運休・減便の目立った動きは現在のところ確認できていない。一方、日本航空傘下のLCCで中国本土路線に特化したスプリング・ジャパンは、当初の計画通り中国路線を再開する見通しだ。日中を結ぶ路線を運航する航空22社のうち、日系は全日本空輸とJAL、スプリング・ジャパン、ピーチ・アビエーション、ジェットスター・ジャパンの5社。11月は5社合計で25路線、12月は27路線を計画する。中国系は中国国際航空(エアチャイナ)と中国東方航空、中国南方航空の大手3社に加え、春秋航空など16社が乗り入れ、11月は143路線、12月は144路線運航する。このうち最多は中国東方航空の29路線。春秋航空と中国南方航空の20路線ずつ、中国国際航空の18路線が続く。【Aviation wire news】

2. 10月訪日客、17.6%増389万人 欧米5市場で過去最高

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、2025年10月の訪日客数は前年同月比17.6%増の389万6300人で、10月の過去最高を大幅に更新した。欧米5市場で単月の過去最高を記録したほか、東アジアの連休などが訪日需要の押し上げにつながった。出国した日本人は8.3%増の124万3600人で、6カ月連続で100万人超え。コロナ前の8割近くまでの回復が続いた。【Aviation wire news】

3. 24年度定時性、スターフライヤーが2冠 到着ワーストはANA、出発はジェットスター=国交省情報公開

国土交通省航空局(JCAB)は、全日本空輸や日本航空、LCC 3社など、特定本邦航空運送事業者10社に関する「航空輸送サービスに係る情報公開」の2024年度通期分を公表した。各社の平均定時出発は10社中2社が90%を上回り、1社が80%を下回った。定時到着は90%超えが1社のみで、80%台が6社、70%台が3社だった。10社のうち定時出発率が最も高かったのはスターフライヤー、定時到着率もスターフライヤーとなった。最下位は定時出発がジェットスター・ジャパン、定時到着がANAだった。【Aviation wire news】