KIT航空宇宙ニュース2025WK52

今年これが航空宇宙ニュースの最終号です.新年は1月4日から配信します。良いお年をお迎えください。なお、今年も北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が24日にサンタクロースを追跡しました
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2025WK52

海外のニュース

1.  フェデックスは、運航停止の影響の概要を示しながら、2026年春にMD-11Fの運航を再開する予定

米国の高速貨物運航会社フェデックスは、運航停止中のボーイングMD-11貨物機が来年の春に運航を再開することを期待して作業を進めている。MD-11Fの運航者は、11月にルイビルでUPS航空機が巻き込まれた死亡事故が発生した後、同機種の運航を一時停止せざるを得なくなった。フェデックスのジョン・ディートリッヒ最高財務責任者は第2四半期の決算説明会で、同社の現在の見通しは「これらの航空機が第4四半期に運航を再開することを反映している」と述べた。フェデックスの最高経営責任者であるラジ・スブラマニアム氏によると、同社は34機のMD-11Fを所有しており、そのうち25機が運航停止当時は稼働していたという。同氏は、同社は航空機の「安全性を確保する」ためにボーイング社および米連邦航空局(FAA)と「緊密に協力している」と述べた。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:フェデックス社のMD-11型貨物機】

2.  今年もサンタクロースをNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が追跡開始

NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)は12月24日午後8時(日本時間)、毎年恒例の特設サイト「NORAD Tracks Santa」でサンタクロースの追跡を開始しました。現在、同サイトではサンタクロースが今どこにいるかを地図上で確認し、現在のサンタの様子を画像と3Dで見ることができます。サンタ追跡の伝統は1955年、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)の前身であるCONAD(中央防衛航空軍基地)のオペレーションセンターの電話番号が、誤ってクリスマスの広告にサンタクロースの電話番号として掲載されたことが起源です。子供からの電話を受けたオペレーション室の責任者、ハリー・ショップ大佐が部下に指示をして、サンタが北極から南に向かっていないかレーダーをチェックするように指示したことから始まっています。【CNN】

【NORAD提供:サンタクロースの航跡画像】

日本のニュース

1. JALとJR東、生鮮品を海外へスピード輸送 新幹線・空輸で大幅短縮

日本航空とJR東日本の両社は12月24日、新幹線での地上輸送と航空機での空輸を組み合わせ、国内各地の生鮮品などを海外へスピード輸送する新サービスを始めると発表した。両社の長距離高速輸送を活用することで、時間を大幅に短縮できるようになる。2026年1月13日からスタートし、商品化第1弾として、福井の越前ガニなど水産品を台湾へ輸送する。新サービスは「JAL de はこビュン」と命名。JR東日本グループの列車荷物輸送サービス「はこビュン」と、JALグループの国際線航空貨物輸送を組み合わせて提供する。スピード輸送のほか、ワンストップでの輸送・通関手続きにも対応する。出発駅は、新函館北斗・新青森・盛岡・秋田・仙台・新潟・長野・敦賀など、はこビュンサービスを展開する各駅で、羽田と成田を経由しJAL便でアジア各地へ空輸する。輸出先はシンガポールとクアラルンプール、香港、台北(桃園・松山)の各空港で、鮮魚や青果、花きなどの生鮮品や機械部品などを輸送する。同サービスでは時間短縮のほか、トラックドライバーの労働力不足の解消やCO2(二酸化炭素)の排出削減などにもつながる。また両社のネットワークを組み合わせることで、地産品のさらなる輸出拡大も目指す。【Aviation wire news】

2.  羽田衝突事故、疲労管理や視認性など12項目分析 運輸安全委が第2回経過報告

国の運輸安全委員会(JTSB)は12月25日、羽田空港で2024年1月2日に起きた海上保安庁のMA722(ボンバルディアDHC-8-Q300型機)と、日本航空の札幌発羽田行きJL516便(A350-900)の衝突事故について、第2回経過報告を公表した。今回の報告では、第1回経過報告以降の調査で、新たに海保機、JAL機、航空管制の3分野にわたり、計12項目の分析を進めていることを明らかにした。海保機に関しては、5点を追加で分析。機長の疲労や労務管理の状況、事故前30日間に同型機への乗務がなかった事実に加え、副操縦士が管制指示を正しく復唱する一方で、滑走路進入後に実施すべきチェックリストを行っていた点も調査対象とした。また、同庁羽田基地では、離着陸時などに業務に関係ない会話を控える「ステライル・コックピット・ルール」の未導入や、滑走路進入前に最終進入経路上の他機の有無を機内で相互確認していなかった可能性についても検証を進める。JAL機については、3点が分析対象に加わった。夜間の海保機の視認性や、パイロット2人が使用していたヘッドアップディスプレー(HUD)が外部監視に与えた影響を調査している。また、パイロットの認識や判断に影響を及ぼしたその他の要因についても、シミュレーターや実機を使った検証実験の結果を基に分析を深める。被害軽減の観点からは、機体の損傷や火災拡大の状況、非常脱出時の機内環境などを継続して調査している。特に、機内放送システム(PA)が使用不能となった状況下での拡声器の有効性を確認するため、実機による検証実験を実施したほか、火災で発生した煙や臭気の成分分析も行った。【Aviation wire news】

【北海道新聞提供:運輸安全委員会によるJAL機と海保機の衝突事故に対する新たな検討項目】

3.  ANA、貨物事業会社を再編へ NCAのAOC継続

ANAホールディングスは12月23日、グループ内の貨物事業会社の再編へ検討・準備を始めると発表した。2026年度末までの再編完了を目安とし、今年8月に完全子会社化した日本貨物航空のAOC(航空運送事業許可)の継続を前提とする。再編により意思決定の迅速化とコスト構造を最適化し、収益性の最大化を目指す。ANAHD傘下の貨物事業会社には、グループの貨物事業の中核を担うANAカーゴ(ANA Cargo)と8月1日付で完全子会社化したNCAのほか、国際物流を担う「OCS」、グループ内で使用する物品の輸出入通関を担う「インターナショナル・カーゴ・サービス」がある。ANAカーゴとNCAの2社は冬ダイヤ初日の10月26日から、全日本空輸とNCAが運航する成田−欧米間の貨物便でコードシェア(共同運航)を始めており、両社が運航する大型貨物機での輸送力補完と利便性向上を図っている。【Aviation wire news】

4.  ANA、13年連続で5つ星 英SKYTRAX調査

全日本空輸を中核とするANAグループは12月22日、英国を本拠地とする航空業界調査・格付け会社SKYTRAX(スカイトラックス)による航空会社の格付け「ワールド・エアライン・スター・レイティング」で、最高評価の5つ星(5スター)を獲得したと発表した。2013年から13年連続での5つ星となった。ANAによると、機内や空港で提供するサービスが一貫して高品質であること、機内・ラウンジの清潔さなどが評価されたという。ANAによると、5つ星評価を獲得しているのは世界11社のみで、日本勢はANAと日本航空の大手2社。残り9社はABC順で、アシアナ航空、キャセイパシフィック航空、エバー航空、ガルーダ・インドネシア航空、海南航空、大韓航空、カタール航空、シンガポール航空のほか、台湾のスターラックス航空が獲得した。【Aviation wire new】

5.  経産省、連絡取れないリチウムイオン電池業者36社公表「連絡不通事業者リスト」

モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使った製品の発火・発熱による事故が相次いでいることから、経済産業省は12月19日、同省から電話や電子メールで連絡が取れない事業者36社を「製品安全4法における連絡不通事業者リスト」として公表した。連絡が取れた場合はリストから削除するという。今回公表したリストは、製品安全4法の消費生活用製品安全法、ガス事業法、電気用品安全法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律に関する事業者のうち、19日時点で経産省から3回以上連絡しても回答がない事業者が対象。モバイルバッテリーなどの発火事故は、粗悪品が原因とみられることから、連絡が取れない輸入・販売事業者を公表することで、消費者に注意喚起する。リストはPDFで用意され、経産省のウェブサイト内「製品安全ガイド」の「製品安全4法における連絡不通事業者リストの公表について」にリンクを記載。同省トップページからは「お知らせ」の「2025年12月19日 製品安全4法における連絡不通事業者リストの公表について」をクリックすると、リストのPDFが表示される。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:製品安全4法における連絡不通事業者リスト】

6.  H3ロケット8号機の打上げに失敗、みちびき5号機を軌道投入できず

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、12月22日午前のH3ロケット8号機打上げに失敗したと発表。第2段エンジン第2回燃焼が正常に立ち上がらず早期に停止したため、準天頂衛星システム「みちびき5号機」を予定軌道に投入できなかった。衛星分離の状況については「現在確認中」としている。12月22日10時51分30秒に種子島宇宙センター 大型ロケット発射場から離昇したH3ロケット8号機は、SRB-3と衛星フェアリングの分離、第1段エンジン燃焼停止と第1段・第2段の分離まで正常に進み、順調に飛行を続けていた。しかしみちびき5号機の分離前に、計画より早く第2段エンジンが燃焼停止したと一報があり、JAXAでは状況確認を進めていた。今回の8号機の打上げ計画では、打上げ後24分46秒に第2段エンジンの第2回燃焼を開始し、29分6秒に終了することになっていた。しかし実際には、予測値(解析結果)と異なる作動結果であったことが分かっている。具体的には、第2段エンジンの第1回燃焼開始は、打上げ後の経過時間(フライト結果)と予測値(解析結果)の間に、数値としては小さいものの3秒の時間差ができており、その後の第1回燃焼停止のタイミングでは27秒、それに続く第2回燃焼開始は15秒のズレがあったとのこと。【マイナビニュース】

【JAXA提供:H3ロケット8号機の打上げ結果(速報)】