KIT航空宇宙ニュース2020WK38
海外のニュース
1.低燃費旅客機「フライングV」、スケールモデルの初飛行に成功
斬新なデザインを採用し、燃費効率が良いとされる旅客機「フライングV」のスケールモデルの初飛行が成功したことがわかった。フライングVは客室と貨物室、燃料タンクが全て翼の部分に収められているという独特なデザイン。専門家によれば、フライングVはその空気力学的な形状から現代の航空機と比較して20%燃料消費を削減できるという。 今回のスケールモデルは重量が 22.5キログラム、全長3メートル。オランダのデルフト工科大学の研究者が製作し、KLMオランダ航空も協力。研究チームはドイツの空軍基地でスケールモデルの飛行試験を行った。リモートで飛行機を操作し、時速80キロの速度で離陸させた。飛行速度や角度、推進力は計画通りだったという。 【CNN】
【CNN提供:実際のフライングVスケールモデル機】
2. ボーイング787は製造時の不具合が発見され検査が必要となる可能性
ボーイング社は、B787に製造時の不具合が相次いで発見され、同型機の納入が遅れる可能性があることを示唆していたが、最近更に同様の不具合が垂直尾翼にも発見された。ボーイング社にとっては、737 MAX の安全性の問題が原因で発生し、COVID-19 パンデミックの影響で悪化した 財政危機を相殺するための現金収入源として787に期待を寄せていただけに、これは大きな問題となる可能性がある。本年2月に明らかになった787の問題は、水平尾翼の製造に関係したもので、特定の部品が、不適切なギャップのシム調整により必要以上の圧力で締め付けが行われていることが判明したものです。この問題では、最大900機の B787に対する検査が必要になる可能性がある。【Flightglobal】
3.Aerion(アエリオン)社が、超音速ビジネスジェット機AS2(8-10 人乗り)の風洞試験を欧州航空宇宙研究所Onera (仏)にて開始
AS2 の設計のモデリングは、アエリオン社の子会社が社内で開発した空力最適化ツールを使用して完了しているが、風洞試験と組み合わせることで、開発サイクルの初期段階でコストのかかるデモ機を作る必要がなく、プログラムを最終段階の検証まで加速させることができる。AS2機の初飛行は 2024年に予定されており、2026年には認証を取得してサービスを開始する予定。3基の GE アビエーション・アフィニティ・エンジンを搭載したAS2の航続距離はマッハ1.4で4,200nm(7,780km)、M0.95 で5,400nm。最初の10年間で300機の製造を計画しており、AS2 は米国フロリダ州のメルボルン・アエリオン・パーク と呼ばれる同社の新しいグローバルキャンパスで組み立てられことになっている。【Flightglobal】
【Flightglobal提供:AS2想像図】
日本のニュース
1.日本の主力ロケットH3 打ち上げが2021年度へ1年延期
日本の新しい主力ロケットH3について第一段エンジン用として新たに開発中のLE-9エンジンにおいて技術的課題が確認されたために、当初2020年度の打上げを目指していた試験機初号機の打上げを2021年度へ、2021年度の打上げを目指していた試験機2号機の打上げを2022年度へと計画を見直すことにした。原因は、1段目のエンジンLE-9の燃焼試験で、燃焼室とターボポンプで不具合が確認されたため。【JAXA】
【朝日新聞デジタル提供:H3打上げ想像図】
2.大分空港が水平型宇宙港へ
大分県は、航空機による人工衛星の打ち上げサービスを提供するVirgin Orbit(ヴァージン・オービット 本社:アメリカ合衆国カリフォルニア州)と、日本における水平型の人工衛星の打上げに関する新たなパートナーシップを結んだ。今後、必要な準備・手続きを進め、最速で2022年の人工衛星打上げを目指す。【大分県】
Cosmic Girl (Boeing 747-400の改修機)による衛星打ち上げの様子
https://virginorbit.com/media-center/
3.IHI、火星探査機用低燃費エンジン23年度目途納入
IHIは火星探査機用の低燃費エンジンを開発。宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが進めるプロジェクト向けに、2023 年度の納入を目指し、政府とJAXAが24年度に打ち上げる火星の衛星探査計画「MMX」の探査機向けに供給する。世界では米エアロジェット・ロケットダインや欧州アリアン・グループなどが衛星向けのエンジンで先行しており、IHIが火星関連プロジェクトでエンジンを提供するのは初めてとなる。火星探査は打ち上げから帰還まで往復約 5年がかかるが、少ない燃料での飛行を可能とした。長距離の飛行を支える技術開発が進めば、各国が取り組む宇宙探査の領域が拡がる。【日本経済新聞】