KIT航空宇宙ニュース2022WWK10

日本の宇宙ベンチャー企業が開発した小型全天候型地球観測衛星SAR
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK10

海外のニュース

1. FlyZeroが、ゼロエミッション航空機の3つのコンセプトの詳細を発表

英国のクリーン航空研究機関であるFlyZeroは、1年間の作業プログラムの過程で開発した3つのコンセプトの航空機の詳細を発表した。リージョナル、ナローボディ、中型機のセグメントに対応するため、3つのコンセプトは水素を燃料として使用するが、ミッションに応じて異なる推進技術を採用している。コンセプト航空機の概念的な性能と形状は、既存機と同等でほぼ同じですが、いずれの場合も、水素の貯蔵要件により、胴体の直径が著しく増加している。

リージョナル航空機市場を対象としたFlyZeroのFZR-1E 75席のコンセプトは、非与圧ゾーンのキャビン後部フロアの下に配置された燃料電池を動力源とする6つの電気推進装置(各翼に3つ)を備えている。FlyZeroの参照航空機であるATR72-600と比較すると、FZR-1Eはわずかに長く、翼幅が大きく、地域のターボプロップエンジンの27.2mと27.1mに対して、それぞれ28.8mと31mとなっている。しかし、水素貯蔵の為、胴体の直径は2.8mから3.5mに著しく増加している。また、地上滑走中や離陸時に排気中の水が滑走路に放出され、滑走路の摩擦に影響を与える可能性があるため、貯水システムが必要となる。巡航速度は325kt(601km / h)に固定され、航続距離は800nm(1,480km)で、ATR72-600のそれぞれの数値である266ktと448nmを上回っている。

【FlyZero提供:リージョナル航空機コンセプト】

FlyZeroのFZN-1Eナローボディは、プロジェクトの参照航空機、エアバスA320neoに比較して印象的です。FlyZeroは、従来のアンダーウィングエンジン構成の代わりに、後部に取り付けられた水素燃焼ターボファンを選択した。これらは、2つの極低温燃料タンクと胴体後部の残りの燃料システムの近くに配置されており、水素燃料ラインの長さを最小限に抑えている。これらの設計の選択には、重心の課題に対処するために、T尾翼と機首に取り付けられたカナードが必要となる。また、胴体はA320neoよりも10m以上長く、最大1m広く、断面が可変で、後方に向かって幅が広くなっている。さらに、提案されている39.3mの翼幅は、航空機を現在のナローボディの限界を超えており、折り畳み翼を追加する必要がある。FlyZeroは、構造の最適化を可能にするドライウィングを提案している。航続距離は、A320neoの性能に合わせ、450ktの巡航速度で2,400nmとなっている。

【FlyZero提供:ナローボディ機コンセプト】

中型機では、FlyZeroはボーイング767-200ERに対してFZM-1Gコンセプトを採用し、最大5,750nmの旅行で279人の乗客を飛ばすことができる航空機となっている。FlyZeroは、長距離運用用の航空機を設計する場合、「水素貯蔵の場所が航空機アーキテクチャの重要な推進力である」と指摘している。しかし、これらの考慮事項は、燃料タンクが、エンジンやタイヤなどのさまざまな発生源からの破片が当たる可能性のある領域から離れていることが必要であり複雑です。また、尻もち事故、バードストライク、胴体着陸による影響も考慮する必要があり、一般的な耐衝撃性に加えて、トリムと安定性の懸念もある。これらの要件により、アンダーウィングエンジンが採用され、重量とバランスが妥当な範囲内にとどまるように、ウィングの前の非加圧ゾーンに「デルタ」タンクが追加された。水素貯蔵の重量と体積効率を最大化するため、広い胴体が選択された。ただし、直径6mの場合、FyZeroは、参照航空機A350または777Xの直径に近いと述べている。ドライウィングで、52mの翼幅は767のものより約5m大きいが、研究によると、現在の空港のゲート制限を超えず、折り畳み翼は不要とされている。ナローボディと同様に、FlyZeroは、燃料消費量のペナルティが灯油燃料航空機よりも重要でないため、比較的狭いファン直径を提案している。同様に、水素の質量が小さいということは、ナローボディ機と中型機の両方が、燃料消費量を大幅に増やすことなく、通常の復路飛行に十分な燃料を運ぶことができるとしている。これにより、目的地の空港で燃料を補給する必要がなくなり、インフラストラクチャの制約が緩和され、就航時により多くのルートを開くことができる可能性がある。

【FlyZero提供:中型機コンセプト】

FlyZeroは、これらのコンセプトは既存の航空機と同じくらい安全で、現在の規制に沿って設計されていると述べているが、極低温水素の基本的な動作が十分に理解されていない領域があり、この分野ではさらなる研究が必要であり、安全基準に関するグローバルな協力が必要であると述べている。さらに、FlyZeroは、短期的に6つの優先分野の研究を要求している。①液体水素の挙動と材料の適合性、②極低温流体ポンプ、③液体水素貯蔵、④水素燃焼システム、⑤燃料電池および関連する熱管理、⑥極低温水素燃料システムの航空機統合。【Flightglobal News】

2.小型機チャーター会社NetjetsがLiliumと最大150機の購入を契約

ドイツの電気垂直離着陸機(eVTOL)の開発メーカーLilium(リリウム)は、今週初めに開催された2021会計年度のWebキャストで、フラクショナル航空機オペレーターのNetJetsとの購入契約を開示した。覚書には、Liliumが開発中の6人乗りeVTOLモデルのうち最大150台の購入権が含まれている。この契約には、整備など「アフターマーケットサービス」も含まれている。NetJetsは、Liliumとの契約に署名した最新の主要なビジネス航空プレーヤーです。昨年、Luxaviation GroupはLiliumとパートナーシップ契約を結び、型式証明承認の確保やパイロットの管理など、ヨーロッパでのLiliumの7人乗りジェット機の航空会社の運営を担当している。Liliumは、二国間航空安全協定(BASA)を通じて、2024年に米国連邦航空局(FAA)および欧州連合航空安全機関(EASA)からの認証を取得することを予定している。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:NetJetsのビジネスジェット航空機とLilium社が開発しているeVTOL機(右)】

日本のニュース

1.空港の保安検査が義務化 航空法改正、懲役1年以下か罰金50万円以下

3月10日から航空法が改正され、航空機搭乗前の保安検査が義務化された。保安検査を受けずに保安検査場から先へ進んだ場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる場合がある。国交省によると、従来は保安検査の法的位置づけが明確ではなく、乗客の協力を得づらいケースがあったことなどから法整備を進めた。また、保安検査員の離職率が高止まりしており、保安検査に法的根拠を持たせることで、乗客の暴言やクレームを抑える狙いもある。国交省は10日、法改正に合わせて「危害行為防止基本方針」を策定した。また、2019年9月13日から航空機テロ対策の一環として保安検査を強化しており、国交省ではナイフやカッターなど機内持込制限品を保安検査場へ持ち込まないよう、改めて呼びかけている。機内持込制限品を航空機内に持ち込んだ場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が課される場合がある。【Aviation Wire News】

2.福岡空港、大型バス自動運転実験 連絡バス道路でレベル2

福岡空港で大型自動運転バスの実証実験が3月8日から始まった。国内線と国際線両ターミナルを結ぶ連絡バス道路を走行するもので、いすゞ自動車と西鉄、三菱商事の3社が、空港を運営する福岡国際空港会社の協力を得て4月8日まで実施する。今回は福岡空港の国内線・国際線両ターミナル間の連絡バス道路を約1.4キロ走行。いすゞの大型バス「いすゞエルガ 2RG-LV290Q3」(定員79人)を1台使用し、乗客を乗せずに1日8往復運行する。大型自動運転バスの技術評価や改善、安全性や利便性に関する知見を得て実用化につなげていく。自動運転システムは、車両上部に搭載したLiDAR(対象物にレーザー光を照射するセンサー)で検知したスキャンデータを、3Dマップと一致させて自車の位置を推定し、3Dマップに埋めた走行軌道をなぞり自動走行する。LiDARは前後左右に各2台ずつ計8台搭載し、望遠・広角カメラや側方車両を検知するミリ波レーダー、自車位置測定の補正に使うジャイロセンサーやGNSS(衛星測位システム)を搭載している。福岡空港では自動運転技術の導入を目指しており、今回は一部区間が一般道から分離された連絡バス道路を実証実験の場として提供。国内線ターミナル側の東ゲートから国際線側の西ゲートまでを実証区間としている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:LIDARを搭載した自動運転連絡バス】

3.ANA新ブランド「快適性」と「訪日客」が焦点 特集・LCCじゃないAirJapan”いいとこ取り”

 ANAホールディングスがこれまで「中距離国際線LCC」としてきた新ブランドが3月8日、都内でお披露目された。2023年度下期の就航を予定している。FSC(フルサービス航空会社)の全日本空輸、LCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーションに続く第3のブランドで、グループのアジア・リゾート路線を担うエアージャパンを「Air Japan」に衣替えするとともに、FSCとLCCの長所を併せ持つLCCではない航空会社に位置づけた。海外では「ハイブリッドキャリア」などとも呼ばれる、運賃はLCC並み、サービスは機内食など従来FSCが提供してきたものを好みで選べるようにするものだ。ANAHDが100%出資するエアージャパンは成田空港に本社を構えており、2023年度下期に就航を予定している新ブランド「AirJapan」も成田を拠点に運航していく。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:ANA第3ブランドAir Japanを発表するAir Japan峯口社長】

4.JAXA宇宙飛行士1563人応募 13年ぶり前回比1.6倍、女性2割

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、13年ぶりとなった日本人宇宙飛行士の募集に対して3月4日正午時点で1563人から応募があったと発表した。前回2008年の963人から約1.6倍となり、女性の割合は7ポイント上昇して20%になった。今回発表した応募者数は、エントリーシートや健康診断などすべての応募手続きが完了している人の人数。これに4月4日正午までに健康診断結果を提出する人を加えた最終的な応募者数は4月5日に発表を予定している。JAXAは2021年11月19日に、日本人宇宙飛行士の募集を13年ぶりに開始。学歴や専門分野を不問とし、月面基地での活躍も視野に多様な人材を募った。

【Yahooニュース提供】

5.JAL、VRとIoTで旅の事前体験「納得感ある旅を」高輪ゲートウェイでJR東と実施

日本航空は、3月14日で開業2周年を迎えるJR東日本の高輪ゲートウェイ駅で開かれたイベント「Playable Week 2022」に、旅行を疑似体験できる「JAL xR Traveler」と日本経済新聞社が開発した「IoTスマートミラー」を出展した。JALはコロナ前から「Try on trips(旅の試着)」をコンセプトに、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった「xR」技術を活用した旅の事前体験システムを手掛けており、今回は青森をテーマに取り上げた。JAL xR Travelerはチェックイン機のような外観の据え置き型端末で、VRゴーグルでVRコンテンツを視聴する3D体験に加え、匂いや音、風などを体験できる。握り手が付いており、今回のコンテンツでは青森県を実際に訪れた客室乗務員に手を引かれながら、青森県立美術館の絵画、ねぶたなど観賞できるようにした。VRコンテンツ開始時には、機内安全ビデオ風の映像が流れ、飛行機で旅先へ向かう演出がなされていた。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:JALとJR東日本が高輪ゲートウェイでVRと IoTで旅の事前体験を披露】

6.「フクロウの夜は続く」と銘打った、日本の宇宙企業Synspectiveの衛星が打上げ成功

日本の宇宙スタートアップ企業「Synspective(シンスペクティブ)」は2022年3月1日、同社にとって2機目となる小型地球観測衛星「StriX-β」の打ち上げに成功した。StriX-βは、コンパクトながら高性能な合成開口レーダー(SAR)を搭載。毎日同じ地点の上空を通過し、昼夜や天候に関係なく地表を観測できることを特徴としている。今後、2020年代後半までに衛星数を30機に増やし、地球全体を高い頻度で観測できるシステムの構築・運用を目指す。SARとは、電波の一種であるマイクロ波を自ら発し、地表で反射して返ってきたその電波を使って地表面を観測する装置のことで、このSARを搭載した衛星を運用しているところに同社の強みがある。多くの地球観測衛星は、光学センサーと呼ばれるデジカメのような装置で地表を撮影している。しかし、夜間や雲で覆われている領域は撮影できない。一方、SAR衛星はマイクロ波の反射を使うため、日中・夜間によらず観測することができる。またマイクロ波は波長が長く、雲を透過するため、雲の下にある地表も観測できるという特長もある。さらに、地盤の沈下、隆起などといった地表面の変化は、光学センサーでは目に見えるほど大規模な変化でない限り捉えることが難しいが、SARを使えばミリ単位で検出することができるという、SARならではの使い方もある。ただ、従来のSAR衛星は大きく、重くなりがちで、質量が数百kg~1t以上もあった。その分開発コストが高くなり、また打ち上げに大きなロケットを使わなければならないため、打ち上げコストも高くなっていた。そんな中、内閣府主導による革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」での開発成果を先鞭とし、東京工業大学や宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)などの産学官の連携により、世界初、独自の技術を開発。SARの超コンパクト化、徹底的な軽量化が実現した。その事業化のため、Synspectiveが設立された。これにより、従来の大きなSAR衛星と同等の性能をもちながら、質量は100kg以下と従来の約10分の1に、そしてコストは5億円と従来の約20分の1という数字を達成している。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:マイクロ波を使い天候に左右されず観測可能な地球観測小型衛星SAR】