KIT航空宇宙ニュース2024WK16

IHIが考えている水素燃料電池を使った将来の40席のリージョナル航空機に動力を供給できる4MWクラスの燃料電池推進システムの概念図(紫色部分が水素燃料電池で橙色部分が水素燃料タンク)
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK16

海外のニュース

1.Eve Air Mobilityが韓国のKAIをeVTOLパイロンのサプライヤーに指名

イブ・エア・モビリティ (「イブ」) は、電動垂直離着陸機のパイロンのサプライヤーとして韓国航空宇宙産業株式会社 (KAI) を指名した。パイロンは、航空機の電力ユニットと8つのリフトプロペラをサポートする機体の重要なコンポーネントです。 「KAIは、エンブラエルのEジェットE2モデルを含むさまざまな航空機に多数の航空構造部品を供給しており、品質、技術、業績において優れた評判を持っています。」とEveのCEO、ヨハン・ボルダイス氏は述べています。「試作から生産までコンポーネントを供給するために私たちと協力してくれる、強力かつ多様なサプライヤーのリストにKAIが加わることを嬉しく思います。」 とモ述べた。過去30年間にわたり、KAIはエンブラエル社の E-Jet E2 モデルを含む世界の航空機メーカーに主要な航空構造部品を供給してきた。この契約は、KAIの先進エア・モビリティ(AAM)市場への正式参入を意味する。昨年、KAIのCEO Goo Young Kangは、2050年ビジョン宣言を通じて、宇宙と将来のエアモビリティを同社の将来の中核事業に指定した。 KAIは最近、急速に成長するAAM市場で今後の市場シェアを拡大​​することを目標に、生産インフラへの多額の投資を発表した。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:Eve Air Mobilityが開発しているeVTOL機「EVE」】

日本のニュース

1.中部空港、小学生の社会見学再開 787展示施設活用でキャリア教育

中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社(CJIAC)は4月19日、小学生らを対象とした社会見学の受け入れを再開すると発表した。再開後は、ボーイング787型機を展示する空港内の複合商業施設「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」を活用し、新たなスタイルへ刷新。キャリア教育も盛り込み、航空や空港に興味・関心を持ってもらう機会を提供する。社会見学は、787-8の飛行試験初号機「ZA001」を展示する1階の教育施設「Flight Park(フライトパーク)」で再開する。CJIACの社員が空港と飛行機について30分間講話し、終了後は各校で自由見学できる。対象となるのは小学校3年生から6年生の児童と、特別支援学校・学級の児童・生徒。5月と6月、9-11月、2月の平日105日間を、学校行事に限り受け付ける。定員は1回100人で、1日200人まで参加できる。中部空港の社会見学は、2005年の開港時から受け入れており、これまでに1939校11万4826人が参加した。2020年1月の新型コロナ感染拡大により受け入れを見合わせており、今回が4年ぶりの再開となる。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:中部空港商業複合施設「Flight of Dreams」に展示中のBoeing 787型機】

2.ボーイング、名古屋に研究開発センター開設 SAFや燃料電池研究、サプライヤー支援も

ボーイングは4月18日、名古屋駅前に日本の研究開発拠点「ボーイング ジャパン リサーチセンター」を開設した。代替航空燃料「SAF(サフ、持続可能な航空燃料)」や、水素燃料電池の航空機への実装、機体の狭小部位を整備する際のロボット活用、炭素繊維複合材などの研究開発を進めるもので、現在27人いるスタッフを50人に増やす。名古屋を中核とする中京圏では、787型機や777型機の主要部品が製造されており、ボーイングは名古屋に研究開発センターを開設すると2022年8月1日に発表。これまでの2年間は、今回オープンしたオフィスの開設準備などのため暫定的な物件を借りていたが、開所式が開かれた18日から本格稼働となった。日本で研究する分野は「航空機の設計や製造に取り入れるための最新デジタルツール」「複合材」「SAF」「水素技術統合プロジェクト」「ロボティックス」の5分野。軽量複合材の生産能力増強や複合材のリサイクル、水素燃料電池の航空機への搭載、機体の狭い場所を整備する際のロボット活用などを研究し、オフィスには3Dプリンターなども設置した。研究開発のほか、これまでは米国本社が行ってきた日本のサプライヤー支援も担う。製造技術のインテグレーションや、工程作り込みの準備、サプライヤーが要因となる製造時のリスク抑制などで、将来的には東南アジアのサプライヤーも名古屋で支援できる体制を目指す。ボーイングの研究開発拠点は米国内に5カ所、海外は日本のほか、欧州、豪州、ブラジル、中国、インド、韓国の7カ所にある。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:日本の研究開発拠点「ボーイング ジャパン リサーチセンター」の開所式】

3.三菱地所、下地島空港にビジネスジェットターミナル 4/21本格開業

三菱地所は4月16日、下地島空港にビジネスジェットターミナルが完成し、21日に本格開業させると発表した。空港の旅客ターミナルと同じく下地島エアポートマネジメント(SAMCO)が運営する。ビジネスジェットターミナルには、専用のCIQ(税関・出入国管理・検疫)施設を設置。車両動線などは空港の滞在を最小限にするストレスフリーなものにした。仮眠スペースやパントリーなど、運航・機内サービスの支援設備も整備し、ビジネスジェットの利用者と運航事業者の双方を意識した設計にした。3月21日に竣工し、4月8日に竣工式が行われた。下地島空港は1979年7月5日に開港。地方管理空港で、滑走路は3000メートル×60メートル(RWY17/35)が1本、スポット(駐機場)は大型機用が5つ、中型機用が1つ。島全体が空港用地となっており、国内唯一の民間ジェット機の訓練空港として利用されてきたが、日本航空が2011年度まで、ANAが2013年度までで撤退している。旅客ターミナルは2019年3月30日に開業。同時にジェットスター・ジャパンが約24年ぶりとなる定期便として、成田線を就航させた。今年3月31日開始の夏ダイヤでは、国内線はスカイマークが羽田線と神戸線、那覇線を運航しており、7-8月は福岡線も運航する。ジェットスターは4月27日から成田線を再開する。国際線は、大韓航空系LCCのジンエアーがソウル(仁川)線を現地時間5月29日から週5往復で新設する。【Aviation wire news】

【三菱地所提供:下地島空港ビジネスジェットターミナルビル】

4.「旅行に行っただけでは難しい」JAL移住CA新任「アンバサダー」が始動 地域活性化へ

日本航空は4月15日、客室乗務員が出身地など全国各地に移住し、地域の魅力を発信する「ふるさとアンバサダー」のオリエンテーションを開き、1日付で着任した10人が出席した。ふるさとアンバサダーは社内公募で、2020年8月にスタート。地域活性化に関わりたい客室乗務員が出身地やゆかりのある地域に移住し、新たな特産品の開発や魅力発信、地域の課題開発に取り組んできた。2022年9月からは、海外基地に所属する客室乗務員のうちタイと台湾の計2人が「JALふるさとアンバサダーGLOBAL」として東京を拠点に活動している。これまでに27人の客室乗務員がアンバサダーを経験。今年度は20人が活動し、うち10人が1日付で新たに着任した。今回の新任は、宮城、新潟、愛知、愛媛、香川、福岡、熊本、宮崎、奄美大島の9カ所で、福岡のみ2人で残り8カ所は1人ずつとなる。任期は1年間だが、本人や地元の希望などで延長となるケースも出ている。このほかに活動中のアンバサダーが、北海道に3人、大阪に2人、愛知に1人(新任と合わせて2人)、青森と京都、大分に1人ずつおり、東京に「GLOBAL」要員としてタイと台湾から1人ずつ着任し、活動している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:4月に着任した10人のJALふるさとアンバサダー】

5.スターフライヤー、エアラインスクール6月開講 CA・地上係員目指す人へ短期集中

スターフライヤーは4月15日、航空業界を目指す人向けの短期集中型エアラインスクールを開講すると発表した。現役社員が講師を務め、専門学校や大学、大学院などに在学中の人に加え、社会人も受講できる。初回は6月に2日間設け、年度内は8月と2025年1月にも予定する。6月15日の1日目は「エアラインコース」で、客室乗務員(CA)や地上係員を目指す人向けにキャリアパスや働き方を説明。面接対策の自己プレゼンテーション講座や座談会を通じて、航空業界の理解を深めてもらう。翌16日の2日目は「客室乗務員コース」で、CAを目指す人向けの講座で、緊急脱出訓練や機内サービスの体験を通じ、CAに求められるスキルを学ぶ。会場はいずれも北九州空港にある同社の本社地区で、両日とも午前10時に開始する。終了は1日目のエアラインコースが午後6時10分、2日目の客室乗務員コースが午後5時10分。エアラインコースは定員30人で参加費(税込み)が3万円、客室乗務員コースは定員20人で参加費が5万円、2日間とも参加の場合は7万円となる。専用のウェブページで受け付ける。交通費・宿泊費は自己負担。昼食はオリジナルの弁当を提供する。【Aviation wire news】

6.  パナソニックと九工大の超小型人工衛星がISSから放出成功、技術実証を開始

パナソニックホールディングス(パナソニック)、パナソニック オペレーショナルエクセレンス、九州工業大学(九工大)の3者は4月12日、3Uサイズ(10cm×10cm×30cm)の超小型人工衛星「CURTIS」(Compact Utility Research Technology Integration Satellite)を共同開発。同月11日に国際宇宙ステーション(ISS)から無事放出され、その動作実証およびパナソニックグループにて製造販売している部品やコンポーネンツの宇宙空間での約1年間の技術実証を開始したことを共同で発表した。CURTISの開発には、パナソニックグループのエンジニア、九工大 革新的宇宙利用実証ラボラトリーを中心とした九工大の教員・スタッフ・学生が参加した。CURTISは、パナソニックグループの電子機器実装技術と、九工大の超小型衛星開発力を持ち寄って開発された。パナソニックが今回キューブサットを打ち上げた背景には、宇宙ビジネスが世界中で進展していることが挙げられるという。今後、人工衛星や宇宙機器に、今以上にさまざまな電子部品やコンポーネンツが搭載されていくことが想定される中、同社としては、同グループが取り扱う車載や5G通信用途向けの部品を宇宙展開を行っていく上で、宇宙空間での部品の信頼性や地上での評価試験などが十分に検証がなされていない点が課題となっていたとする。そこで今回は、それらの部品が、特別な改良を加えることなく、宇宙空間でもそのまま使えるかどうかを調べることにしたという(デバイスレベルで宇宙空間での利用を想定した信頼性試験や真空環境での動作試験は実施済み)。今回の技術実証の詳細な内容は、主に以下の3点。

  • 組み立て容易な衛星として設計された、超小型人工衛星そのものの動作実証を行う。
  • パナソニックグループにて取り扱う製品群の宇宙空間での技術実証を実施。なお、今回実証する部品群に関しては、地上で利用されている部品やモジュールを利用し、宇宙用途として転用できる可能性が検証される。
  • モバイル端末や小型軽量化が求められる製品群で培われた高密度回路設計技術・実装技術を用いて人工衛星の基本バス部を小型化し、ミッション部の容積を拡大した技術、および放熱性に優れたグラファイト材料技術などにより構成されたサーマルマネジメントユニットを用いた回路形成技術の実証を実施。

パナソニックと九工大は、今回の実証を通じて得られた技術データを活用して、今後の宇宙産業を支えるコンポーネンツとしての提供を目指すとしている。また、小型人工衛星においては、バス衛星として今後の両者の宇宙活動に活かすと同時に、宇宙での技術実証やサービスを行う事業者との協創を通じ、より多くのミッションを行うことが可能な6U(10cmx20cmx30cm)や12U(20cmx20cmx30cm)サイズなど、キューブサットの中では大型衛星への展開を進めていく予定とした。【マイナビニュース】

【パナソニック提供:超小型人工衛星「CURTIS」の外観】

7.IHIが水素燃料電池と航空機電動化のさらなる研究に選ばれる

日本のIHIが開発した水素燃料電池と航空機電動化技術は、日本の新エネルギー・産業開発機構(NEDO)が開始するプロジェクトを通じてさらに洗練されることになる。IHIによると、この2つの取り組みは日本の次世代航空機開発プロジェクトに関連しており、NEDOのグリーンイノベーション基金の対象となるという。水素燃料電池推進システムはIHIエアロスペースによって開発され、次のステップではこれを「4メガワットクラス」のパワートレインにスケールアップするとIHIは述べている。「このゼロエミッションのセットアップは、40 席以上の航空機に電力を供給し、3 時間以上の航続時間を特徴とします。」 IHIが公開した画像には、4つの電気モーターで駆動される航空機の後部にある大型の水素格納容器が示されている。 東京大学は、2024年から2029年まで実施されるこのプロジェクトに技術研究と国際標準化の取り組みを提供する。この作業では、IHI が各コンポーネントの最適なレイアウトと仕様を含むゼロエミッション推進システムの設計を検討する。主な目標は、システムが地上で 3 時間以上動作することを実証することです。NEDOはまた、さらなる探査のためにIHIの電力制御および熱空気管理システムを選択した。これにより、IHIは「世界で最も強力な電動航空機ターボコンプレッサー」を開発することになるという。IHIは「これらのコア技術を活用し、ハイブリッド電気推進システムと機体空調システムを活用した熱・空気管理システムを統合した出力制御システムを構築する」としている。IHIは「従来の航空機よりも低い燃料消費量を実現する機体システムのコンセプトの確立を目指しています。」と述べている。電動化の取り組みは2031年3月まで続く。【Flightglobal news】

【IHI提供:将来の40席のリージョナル航空機に動力を供給できる4MWクラスの燃料電池推進システムの概念図】