KIT航空宇宙ニュース2022WK27

JALECが初めて技術スタッフを募集。エントリーシート締め切りは7月20日
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK27

海外のニュース

1. 月へ向け一歩前進 – NASAの巨大ロケット「SLS」、打ち上げリハーサルを完了
米国航空宇宙局(NASA)とボーイングは2022年6月24日、有人月探査を目指して開発中のロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の、打ち上げリハーサルを完了したと発表した。これにより、初の試験飛行に向け一歩前進。打ち上げは今年8月以降に予定されている。SLSは、NASAとボーイングが開発している新型の巨大ロケットである。全長は約111.3m、直径は8.4mで、22階建てのビルに相当する大きさをもち、地球低軌道に約100t、月へ向けては約30tもの打ち上げ能力を誇る。この打ち上げ能力を生かして、アポロ計画以来、約半世紀ぶりとなる有人月探査計画「アルテミス」の実現や、月周回有人拠点「ゲートウェイ(Getaway)」の建設、そして2030年代に予定されている有人火星探査の実現を目指している。開発は2011年から始まり、当初は2018年ごろに無人での試験飛行を行う予定だったが、予算や技術的な問題、災害による開発拠点の損傷、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などでスケジュールは遅れ続けている。だが、ようやく機体が完成し、「ウェット・ドレス・リハーサル」に臨むことになった。このリハーサルは、地上から飛び立たないこと以外は実際と同じ手順で行う打ち上げ準備試験のことで、ロケットや宇宙船、打ち上げ施設はすべて実際の打ち上げと同じ状態に置かれ、作動される。まさに打ち上げに向けた最後の関門となる。NASAとボーイングは当初、今年4月にリハーサルに臨んだが、トラブルにより中止。修理のため、いったんロケット組立棟に戻されることになり、仕切り直しての再挑戦となった。【マイナビニュース】

【NASA提供:射点に立つ巨大ロケット「SLS」】

日本のニュース

1. JALエンジニアリング、スタッフ職採用開始 新卒・経験者、23年4月入社
日本航空が100%出資する整備会社JALエンジニアリング(JALEC)は、機体整備以外の間接業務を担う「スタッフ職」の採用を開始した。2023年4月入社で、新卒・経験者ともに採用する。JALECが新卒のスタッフ職を採用するのは初めて。採用人数は新卒・経験者とも若干名となる。応募資格は、新卒が短大か専門学校、大学、大学院を2020年4月から2022年3月までに卒業・修了か、2022年4月から2023年3月までに卒業・修了見込みの人で、経験者は高卒以上で2020年3月までに卒業している人。会社が指定するエントリーシートなどを郵送して応募する。締め切りは7月20必着。書類選考後、1次と2次試験を面接で行う。1次試験は8月上旬、2次試験は8月中旬を予定し、どちらも羽田が選考会場となる。また新卒者を対象に、応募前の企業説明会も開く。7月14日午後1時から午後2時までオンラインで開催し、前日までにメールで申し込む。JALECの新卒採用はこれまで、整備士のみを対象としてきた。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:JALECの整備士の訓練風景】

2.大学生対象「空飛ぶクルマ」トークイベント 神戸で7/9開催、JAL・ANAから専門家も
兵庫県や兼松など5者で創設した「HYOGO空飛ぶクルマ研究室」(HAAM)は、大学生を対象としたトークイベントを7月9日に神戸・三宮で開く。「空飛ぶクルマ」と呼ばれるeVTOL(電動垂直離着陸機)の現状を、日本航空やANAホールディングスなどから専門家を招き解説する。「大学生と考える空飛ぶクルマ産業の未来」と題したトークイベントで、国内で空飛ぶクルマの機体製造を進めているSkyDrive(スカイドライブ)の佐藤剛裕COO(最高執行責任者)と、JALエアモビリティ創造部の佐々木康人マネージャー、ANAHDエアモビリティ事業化プロジェクトの保理江裕己ディレクター、経済産業省 産業機械課 次世代空モビリティ政策室で空飛ぶクルマとドローンを担当する山本真生係長の4人が登壇。近年目まぐるしく開発が進む空飛ぶクルマの現状や魅力を伝える。日時は7月9日午後3時から4時まで。阪急神戸三宮駅ビルに直結する「アンカー神戸」で開催し、現地参加のほかオンラインでの生中継や見逃し配信でも参加できる。兵庫県と兼松、中央復建コンサルタンツ(大阪市)、パソナグループ(2168)、BUZZPORT(神戸市)の5者は、eVTOLの活用に向けた連携協定を今年4月に締結。創設したHAAMは連携第1弾プロジェクトで、空飛ぶクルマを利用者視点からとらえるシンクタンクを目指し、研究室に関わった学生を空飛ぶクルマ産業の担い手として兵庫県から輩出することを目標に掲げている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:7月9日に神戸で実施された大学生向け「空飛ぶクルマ」トークイベント】

3.SAFの技術動向学べるオンライン講習会 7/15から全5回
一般社団法人 航空イノベーション推進協議会(AIDA)は、代替燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」の技術動向を学べる講習会を7月15日に開講する。全5回の講習会で、二酸化炭素(CO2)削減への取り組みを総合的・俯瞰的に理解できる講習をオンラインで提供する。連続講習会「サステナブル航空燃料SAF」は、IHIや三菱重工業などから専門家を招き、SAFの現状などを解説する。講習は1コマ90分で、ビデオ会議システム「WebEx」を通じ、7月15日から8月8日までの期間中に内容の異なる講習を5回提供する。申し込みは7月8日午後5時まで、先着順で受け付ける。受講料は5回総額5000円。講習後には修了証を送る。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:AIDA連続講習会「サステナブル航空燃料」のお知らせ】

4.三菱航空機、3期連続最終赤字 債務超過5647億円に拡大
国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発を凍結している三菱航空機が7月1日に公表した第15期決算公告によると、2022年3月期通期の純損益は87億円の赤字(前期21年3月期は912億円の赤字)と3期連続で最終赤字となった。また、負債が資産を上回る債務超過も3期連続となり、今年3月31日時点の債務超過の額は5647億円と、前年の5559億円から拡大した。親会社の三菱重工業は、2020年10月にスペースジェットの開発凍結を表明している。米ワシントン州にあるスペースジェットの飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」は今年3月末で閉鎖。米国で試験を行っていた4機の飛行試験機のうち、3号機の日本国籍機としての登録は3月で抹消され、機体は解体された。三菱重工の泉澤清次社長は、同社の2022年3月期通期連結決算を発表した5月12日に、立ち止まった後、計画通りに進めている。お話できるような進展があるわけではない。引き続き適正な規模で検討していく」と述べ、6度延期されている納期への言及はなかった。【Aviation Wire News】

5.京大と鹿島建設、月や火星での社会システム構築のための共同研究をスタート
京都大学(京大大学院 総合生存学館 SIC有人宇宙学研究センター)と鹿島建設は7月5日、大きく3つの構想を掲げ、月や火星において、衣食住を可能にし、社会システムを構築するために向けた共同研究に着手することで合意したことを、記者会見で発表した。2020年代末にはアルテミス計画によって、月面に恒久的な有人拠点が建設される計画だ。このように宇宙での人類の生活が現実味を増すにつれ、月面などの低重力環境がより問題視されるようになってきており、医学界を中心に世界的に人工重力が注目されている。そこで今回、京大と鹿島建設は共同で、世界に先駆け、宇宙開発の核心技術(コアテクノロジー)としての人工重力居住施設を中核に据えたコアバイオーム・コンセプトの共同研究を発表することにしたという。今回の共同研究で掲げられた、月・火星での生活に向けた3つの構想は以下の通り。
① 月・火星での生活基盤となる人工重力居住施設「ルナグラス・マーズグラス」
② 宇宙に縮小生態系を移転するためのコンセプト「コアバイオーム」
③ 惑星間を移動する人工重力交通システム「ヘキサトラック」
1つ目の「人工重力居住施設ルナグラス・マーズグラス」だが、これは月面・火星面上での生活基盤となる、低重力に遠心力を加えた合成力で1Gを確保し、地球と同じ重力環境下で生活できるようにする都市だ。アルテミス計画でも2020年代後半には、月面に恒久的な有人活動拠点が建設されており、また近年は民間人が国際宇宙ステーション(ISS)に滞在するなど、徐々に一般人が宇宙に進出する機会が増えてきている。【マイナビニュース】

【共同記者会見発表資料:人工重力居住施設を中心に据え各研究領域を統合した学問体系の構築を目指す】