KIT航空宇宙ニュース2021WK44

オーストラリアのCyclo Tech社が開発中のレーシングカーのようなeVTOL機
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK44
海外のニュース
1.CycloTech、ローターで空を飛ぶeVTOLの初飛行に成功!
普通、空飛ぶタクシーやドローンなどはプロペラや有翼にて浮上、飛行するのが一般的であるが、ローターで浮上し、飛行することができる斬新な技術をもったベンチャーがオーストラリアに存在する。ローターで空を飛ぶ機体をeVTOL(電動垂直離着陸機)に分類しているが、研究開発会社のCycloTechが開発している機体には、CycloTechや他のサイトではeVTOLとの表記があまり見られない。しかし、電気を動力としており、垂直浮上、着陸する機体である。飛行体というよりは、F1などのレーシングカーをイメージさせるデザインになっている。全体のフォルムがレーシングカーに類似しているという点もあるが、タイヤのようなものが4つ付いている。このタイヤのようなものが、ローター。このローターは、Wings、Hub、Conrodの3つから大きく構成されている。回転するHubは、Conrodと呼ばれるロッドを通じてWings(翼)と繋がっていて、Hubが回転することで、ConrodもWingsも回転する。Hubが回転中にWingsの向きを変えることで、推力を発生させることができる。また、推力の方向を360°自由に変えることができ、上昇、下降、後方へ進むこともできる。このローターは、Voithの「Voith SchneiderPropeller」という船などの動力源の設計に基づいて開発されたという。2021年10月10日、CycloTechは自社で開発したローターを有するeVTOLの初飛行に成功している。この初飛行は、屋内で行われた。【マイナビニュース】

【Cyclo Tech提供:屋内での飛行テストに成功したeVTOLデモ機】

2.ZeroAviaは2024年ロッテルダム-ロンドン間を水素で飛行
ロッテルダムとロンドン間の商用旅客便を、ゼロエミッションの19席のリージョナル航空機を使用し2024年に予定。ロッテルダムハーグ空港は、水素エネルギー推進航空機を開発中のZwroAvia(ゼロアビア)と提携し、この計画の実現を目指す。ZeroAviaによると、この提携には、空港オペレーターのRoyal Schiphol Groupとロッテルダム空港イノベーション財団も含まれ、オランダと英国のゼロエミッション旅客サービスを開始するための「確固たるタイムライン」が確立されるとのこと。同社によれば、この提携のメンバーは航空会社と話し合い、このフライトを運航する航空会社を募集している。提案されたフライトは、ゼロエミッション航空機を使用した最初の国際的な商業運航になる可能性があると付け加えている。ZeroAviaは、ドルニエ228を水素燃料電池による電気駆動を使用するように改造し実証試験を行っている。【Flightglobal News】

【ZeroAvia提供:水素エネルギー推進航空機へ改造中のドルニエ228】

3.英国で25カ所のeVTOL機用空港(バーティポート)建設を計画
世界的な航空宇宙およびテクノロジー企業であるVertical Aerospae社は、スペインの建設会社Ferrovialと協力して、エアタクシーを実現し、英国全土に25のバーティポートを立ち上げる計画を立てている。両者は協力して建設場所を特定し、電気垂直離着陸(eVTOL)航空機の離陸、着陸、および再充電をサポートするために、垂直離着陸機のネットワークを構築する。ヴァージンアトランティック航空が計画するエアタクシー事業開始のために、VA-X4と呼ばれるVertical Aerospace社の4人乗り電動航空機がこれらの空港から運航されることが期待されている。【Flightglobal News】

【Vertical Aerospace提供:飛行するVA-X4想像図】

日本のニュース
1.ANAの22年3月期決算は最終赤字1000億
全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが10月29日に発表した2021年4-9月期(22年3月期第2四半期)連結決算(日本基準)は、純損益が988億300万円の赤字(前年同期は1088億1900万円の赤字)となった。これまでの通期業績予想は純損益が35億円の黒字になると見込んでいたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で旅客需要の回復が遅れていることから、営業損益の黒字転換は第4四半期にずれ込み、通期純損益は1000億円の赤字に下方修正した。売上高が前期(21年3月期)比45.5%増の1兆600億円(従来予想は1兆3800億円)、営業損益は1250億円の赤字(同280億円の黒字)、経常損益は1400億円の赤字(同50億円の黒字)、純損益は1000億円の赤字(同35億円の黒字)を見込む。また、2020年度末でANAグループ全体の従業員は4万6580人おり、うちANA本体など「ANAブランド」は約3万8000人を占める。2025年度末の目標として、ANAブランドは2割超減の約9000人を削減して約2万9000人とする。新規採用を控え、退職者による人員減で9000人削減を目指す。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:22年度4月~9月決算発表するANAHD片野坂社長】

2.エアバス、月面探査スタートアップispaceに投資
エアバス・ベンチャーズは10月26日、民間月面探査事業に取り組む宇宙スタートアップ企業ispace(アイスペース、東京・港区)に投資すると発表した。最初のミッションとして、同社が開発した月面ランダー(着陸船)を、スペースX社のファルコン9により2022年後半に打ち上げを予定している。ispaceは、ロボット月面探査レース「グーグル・ルナ・エックスプライズ(Google Lunar XPRIZE)」で最終選考に残った月面ローバー(探査車)の開発実績を基に、月面ランダー「シリーズ1」による初の月面着陸を目指している。ランダーは日本で設計したもので、現在が欧州で最終組立が進んでおり、米国で打ち上げられる。最初のミッションでは、月面ランダーでJAXA(宇宙航空研究開発機構)やアラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)、日本やカナダの民間企業の物資を運ぶ計画となっている。ispaceは2023年までに2回実施する月面探査ミッションを統括するプログラムを「HAKUTO-R」と名付けており、史上初の民間企業による月面探査となる。ispaceによると、今回のエアバス・ベンチャーズによる投資を含めるとこれまでに総額約218億円(約2億ドル)を調達し、今後の打ち上げなどに充てるという。【Aviation Wire News】

【ispace提供:月面探査機「ランダー」と「ローバー」想像図】

3. ANA系avatarin、遠隔ロボで”瞬間移動”サービス試用版 沖縄美ら海水族館など追加
ANAホールディングスが出資するavatarin(アバターイン)は、遠隔操作ロボットを使った瞬間移動サービス「avatarin(アバターイン)」のベータ版の提供を開始した。avatarinは、遠隔地の行きたい場所に設置された遠隔操作ロボット「newme(ニューミー)」を自宅などからインターネット経由で接続し、自分がその場にいるかのように移動したり、現地の人と会話などができる。10月21日に提供を開始したベータ版は正式サービス開始前の試用版で、利用者に気づいた点などを報告してもらい、サービス改善につなげる。“移動先”の施設も従来の箱根ガラスの森美術館など4施設に、石屋製菓が運営する白い恋人パーク(札幌市)と、一般財団法人沖縄美ら島財団が管理運営する沖縄美ら海水族館(国頭郡)の2施設が加わった。白い恋人パークは、北海道土産のお菓子「白い恋人」の製造工程を見学できる施設。美ら海水族館では、約60種およそ6300匹が泳ぐ巨大水槽「黒潮の海」で魚たちを観察できる。いずれも体験時間は30分となる。ANAHDは航空事業に次ぐノンエア(非航空)事業の柱の一つとして、アバター事業を2018年4月にスタート。newmeは2019年10月にお披露目され、アバターを事業化するavatarin社は2020年4月に設立された。今年7月には、性能を向上させた新型newmeがお披露目された。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:アバターインによる瞬間移動サービスで沖縄美ら海水族館へ移動】

4.「みちびき初号機後継機」打ち上げ成功
三菱重工は2021年10月26日、準天頂衛星「みちびき初号機後継機」を搭載したH-IIAロケット44号機の打ち上げに成功した。同衛星は2010年に打ち上げられた「みちびき初号機」の後継機で、新技術により耐久性の向上や長寿命化、サービスの安定化を図るとともに、将来の日本独自の衛星測位システム構築に向けた大きな一歩となった。みちびき初号機後継機を搭載したH-IIAロケット44号機は、日本時間10月26日11時19分37秒、鹿児島県にある種子島宇宙センターの大型ロケット発射場から離昇した。ロケットは固体ロケット・ブースター(SRB-A)や衛星フェアリング、第1段機体や第2段機体を分離しながら順調に飛行し、離昇から28分6秒後にみちびき初号機後継機を分離。打ち上げは成功した。「みちびき」は2010年9月11日、試験機となる初号機(1号機)が打ち上げられ、測位に必要な機能の技術実証を行った。その成果を踏まえ、量産機の開発、製造が始まり、2017年6月1日に2号機が準天頂軌道へ、2017年8月11日に3号機が静止軌道へ、そして2017年10月10日に4号機が準天頂軌道へそれぞれ打ち上げられた。この準天頂軌道に3機、静止軌道に1機の計4機体制をもって、準天頂衛星システムは完成となり、試験期間を経て、2018年11月1日から正式にサービスが開始された。今回打ち上げられた「みちびき初号機後継機」は、打ち上げから11年が経過し、老朽化が進んだ初号機の後継機である。製造は三菱電機が担当。打ち上げ時の質量は4000kgで、設計寿命は15年以上が見込まれている。基本的な役割などは初号機と同じだが、2号機以降の開発成果などが取り入れられ、性能・信頼性向上、長寿命化が図られている。準天頂軌道は、静止軌道に対して軌道面を40~50度傾けた楕円軌道で、静止軌道と同様に地球の自転と同期して約24時間で1周する。ただし傾いていること、楕円であることから、打ち上げられた経度付近を中心に、空に8の字を描くように回ることができ、「みちびき」の場合は日本の真上に長く滞在できるという特徴をもつ。【マイナビニュース】

【JAXA提供:準天頂衛星の軌道の模式図】

5.風速18m/sにも耐える純国産レスキュードローン、ミライトが発売
ミライト・ホールディングスは、10月27日~29日にかけて千葉県・幕張メッセにて開催されている「第12回 Japan IT Week 秋」にて、東光鉄工が3年の歳月をかけて開発した純国産レスキュードローン「TSV-RQ1」の紹介を行っている。TSV-RQ1は、IP55の防水性能に加え、丸みを帯びたボディ形状とすることで風速18m/sの耐風性能を有することで、風雨の中でも災害発生の危険性を確認するための飛行などを可能としたドローン。航空機などでも活用されているウイングレッドをローターに採用することなどにより、高い飛行性能を実現しているほか、ローターを支持するアームは折り畳み式とすることで、可搬性も高めている。その耐環境性の高さは、自衛隊の令和3年度の富士総合火力演習へ参加し、演習風景の録画などにも利用された実績などからもうかがい知ることができる。最高速度は時速60kmで、ペイロードに何も積んでいない状態で35分程度の飛行が可能(ペイロードに積んだ状態だと20分程度の飛行が見込まれている)であり、土砂災害や水害が発生する危険性のあるポイントまで即座に飛んでいき、現場の状況を確認して戻ってくる、といった運用が可能だという。【マイナビニュース】

【Biglobeニュース提供:レスキュードローン「TSV-RQ1」】