KIT航空宇宙ニュース2024WK17

ST Engineering の合弁会社AirX社が開発中の地面効果翼飛行艇「AirFish-8」、2025年内の就航を目指している。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2024WK17

海外のニュース

1.737MAX事故で減産、7四半期連続赤字=ボーイング24年1-3月期

ボーイングが現地時間4月24日に発表した2024年1-3月期(第1四半期)決算は、純損益が3億5500万ドル(約551億7000万円)の赤字(前年同期は4億2500万ドルの赤字)で、民間機部門で損失を計上したことにより7四半期連続の最終赤字となった。アラスカ航空が運航する737 MAX 9で、離陸直後にドアプラグが脱落する事故が今年1月に米ポートランドで起きたことによる納入減少や減産が影響した。売上高は8%減の165億6900万ドル、営業損益は8600万ドルの赤字(同1億4900万ドルの赤字)、年金や退職金給付の経費を除外した中核営業損益は3億8800万ドルの赤字(同4億4000万ドルの赤字)だった。民間航空機部門は、売上高が31%減の46億5300万ドルで、営業損益は11億4300万ドルの赤字(同6億1500万ドルの赤字)。1-3月期の納入機数は前年同期比36%減の83機で、2四半期ぶりに前年同期を下回った。受注残は5600機以上で、金額ベースでは4480億ドル相当となった。737 MAXは、アラスカ航空の737 MAX 9のドアプラグ脱落事故が1月5日に発生。ポートランド発オンタリオ行きAS1282便が離陸直後、後方左側のドアプラグが高度約1万6000フィート(約4876メートル)から脱落した。ボーイングは737の品質を改善する必要があることから、38機の月産レートを現在は減速させている。【Aviation wire news】

2.  巨大宇宙船「スターシップ」がさらに進化! イーロン・マスクが明かしたその姿

米宇宙企業スペースXを率いるイーロン・マスク氏は2024年4月7日、開発中の宇宙船「スターシップ」について講演し、今後の飛行試験や、発展型の開発計画について明らかにした。早ければ5月にも4度目の飛行試験を行うとしたほか、その次の試験では発射台への着陸も目指すという。さらに、打ち上げ能力を高めた新型のスターシップを開発するとも語られた。スターシップ(Starship)は、スペースXが開発中の宇宙輸送システムで、全長121.3m、直径9m、打ち上げ時の質量5000tという、人類史上最大のロケット、宇宙船である。スターシップの機体は、第1段の「スーパー・ヘヴィ(Super Heavy)」ブースターと、第2段の「スターシップ」宇宙船の、大きく2つの段階から構成されている。人間や物資などを地球周回軌道に最大100t運べるほか、月、火星、さらにその先へ運ぶこともできる。また、機体すべてを飛行後に着陸して回収し、再使用することができ、飛行機のように運用することで、劇的な打ち上げコストの低減と打ち上げ頻度の向上を目指している。これによりスペースXは、人工衛星を一度に大量に打ち上げたり、有人月探査を実現したりといった目標のほか、人類の火星移住を実現することも狙っている。現在スペースXは、4度目の飛行試験「IFT-4」に向けた準備を進めており、4月5日には試験で使用するスーパー・ヘヴィの機体「B11」の地上燃焼試験を行っている。スーパー・ヘヴィは、スターシップ宇宙船と分離したあと、発射台に向かって飛行して着陸する。ただ、直接地面に降り立つのではなく、発射台の近くでホバリングし、発射塔に取り付けられた「メカジラ(Mechazilla)」という大きなロボット・アームによって、挟まれるようにして捕獲され、着陸するという仕組みをしている。これにより、スーパー・ヘヴィに着陸脚が不要になり、また着陸時の衝撃に耐えるための頑丈な構造も不要になることから、ロケットの性能向上が見込める。マスク氏は「今年中に、メカジラの腕でブースターを捕まえることができる確率は、おそらく80~90%だろう」と語った。また、スターシップ宇宙船も同じようにメカジラで捕まえられ、着陸することになっている。マスク氏によると、スターシップ宇宙船を発射台に着陸させるには、2回の洋上へのピンポイント着水による実証が必要とし、「実際に発射台への着陸が行えるようになるのは、おそらく来年だろう」と語った。そして、講演における最大の話題が、新しいスターシップについての発表だった。マスク氏が「スターシップ2」として発表した機体は、スーパー・ヘヴィの全長が1.3m伸び、スターシップ宇宙船も3.1mも伸び、全体の全長は121.3mから124.4mへと伸びている。現行のラプター2エンジンは海面上推力が最大230tfだったが、ラプター3では280tfに増加する。マスク氏はまた、「最終的には330tf以上にしたい」とした。さらに、ラプター3には耐熱シールドを兼ねた冷却機能があり、スーパー・ヘヴィの下部にあった耐熱シールドが不要になっている。さらにマスク氏は、「スターシップ3」というさらなる改良型の計画についても明らかにした。スターシップ3は、現行型と比べ、スーパー・ヘヴィの全長は9.2m、スターシップ宇宙船は19.5mも伸び、あわせた全長は150mと、かなり高くなる。さらに、スターシップ宇宙船に装着するラプター3エンジンを9基に増やし(現行型と2では6基)、回収を行う打ち上げでも地球低軌道に200t以上の打ち上げ能力を発揮できるという。そして、スターシップ3の1回あたりの打ち上げコストは、200~300万ドルを目指すとした。現行の「ファルコン9」ロケットは6700万ドルで販売されており、ファルコン9は地球低軌道に22tの打ち上げ能力しかないことを考えれば、200tで200~300万ドルというコストはまさに桁違いの破格さである。【マイナビニュース】

【Space X提供:発射塔の「メカジラ」でスーパー・ヘヴィを捕まえる様子】

3.VoltAeroがCassio 330 ハイブリッド電気パワートレインの認証テストを開始

フランスの航空機開発会社ボルトアエロは、5人乗りのカシオ330に搭載されるパラレルハイブリッド電気パワートレインの認証試験を開始した。地上テストベンチに設置されたパワートレインには、Safran Electrical & Power ENGINEUS 100 電気モーターと川崎の 4 気筒高性能熱エンジンが統合されている。VoltAeroによれば、この構成により、電気モーターから180kW、川崎エンジンから150kWの合計330kWの電力が供給されるという。テスト活動はフランス南西部のバイヨンヌにあるアキラ・テクノロジーズに属する施設で実施されており、同社はカシオ計画に伝送システムを提供している。カシオSは2020年10月以来230回以上の飛行を実施し、累計では170時間以上を飛行した。カシオ 330 の認証は 2025 年後半を目標としている。初飛行は年末に予定されている。【Flightglobal news】

【VoltAero提供:サフラン電気モーターと川崎エンジンを組合わせたハイブリッド・パワートレイン】

4.EviationはコンセプトデザインレビューをクリアするためAlliceをCommuter機として設計変更

電動航空機の開発メーカーであるEviationは、顧客からのフィードバックに基づいて、Allice全電動コミューター航空機の設計を根本的に再構築し、9人乗りの概念設計レビューを完了したことを明らかにした。ワシントン州アーリントンに本拠を置く同社は、再設計により航空機の製造可能性、認証の見通し、性能が向上すると述べた。Alliceの特徴的な先細りの楕円形の胴体はなくなり、一定の断面デザインに置き換えられている。翼にはプロトタイプの上後方にSweptした先端翼ではなく、大きなウィングレットが付いており、電気モーターを保持するパイロンは以前より胴体の高い位置にあるように見える。機体形状の変更により、アリスの部品点数と製造コストが削減され、「同時に航空機の将来のバリエーションも可能になる」と述べている。【Flightglobal news】

【Eviation社提供:設計変更された全電動航空機「Allice」】

5.ST Engineeringの合弁会社AirXがチャンギ沖で地面効果翼型航空機の試験を実施

水上をかすめるホバークラフトのような飛行艇、AirFishのテストは、2024 年の第 3 四半期から月に 2 回、チャンギ沖の海域で行われる予定。シンガポール海事港湾局(MPA)とST Engineering AirXは4月9日に試験を発表し、チャンギ沖で試験を行う地域を特定すると発表した。ST Engineering AirX は、テクノロジーおよびエンジニアリンググループの ST Engineering とシンガポールを拠点とする新興企業 Peluca との合弁会社で、地面効果翼型航空機 AirFish を開発している。この飛行艇は、地面効果の原理に基づいて水面上を滑走する水上艇です。地面効果は、航空機が地面に近いときの翼の揚力特性を改善する。これは、翼の下の空気が地面に近づくと圧縮され、クッション効果が生じるためです。これは、アホウドリなどの体の大きな鳥が飛行中にエネルギーを節約する方法です。この飛行艇は貨物輸送用に再構成でき、最大1,000kgの貨物を運ぶことができる。2025年内での就航を目指している。【Flightglobal news】

【ST Engineering 提供:地面効果翼で飛行する開発中の「AirFish-8」】

日本のニュース

1.JALとトヨタ、FIA世界耐久選手権参戦チームのパートナー契約

日本航空は4月24日、トヨタ自動車が展開するモータースポーツ活動「TOYOTA GAZOO Racing(TGR)」の2024 FIA世界耐久選手権(WEC)参戦チームとパートナー契約を締結したと発表した。WECは、プロトタイプカーとGTカーが混走して争われる耐久レースシリーズの最高峰。今年はル・マン(仏)、富士(日)など8カ国で全8戦が開催される。JALはFIA世界ラリー選手権(WRC)に出場するTGRのラリーチーム(WRT)と2020年1月にパートナー契約を締結しており、今回WECチームとの契約が加わった。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:昨年フジスピードウェイでのWEC耐久レースで走行するトヨタ車】

2.MROジャパン、エアバス旅客機を貨物機へ 改修事業へ独EFWと基本合意

那覇空港を拠点とする整備会社MRO Japan(MROジャパン)は4月22日、エアバスの旅客機を貨物機に改修する「P2F(Passenger-to-Freighter)」について、改修事業の中核を担う独エルベ・フルクツォイヴェルケ(EFW)社と基本合意書(MoU)を締結と発表した。今回の基本合意によりMROジャパンはエアバスの旅客機を貨物機に改修する日本で初めての事業者となる。改修するのはA320型機とA321の2機種。大型貨物ドアの取り付けや床面の補強などにより、旅客機を貨物専用機へ改修する。A320を改修する「A320P2F」は、1機あたり21トンの貨物を搭載できる。A321を改修する「A321P2F」の貨物搭載量は28トンとなる。EFWはエアバスとSTエンジニアリング(シンガポール)の合弁会社で、ヤマトホールディングスが4月11日から運用しているA321P2Fの改修作業も手掛けた。ヤマトのA321P2Fは日本航空グループが運航・整備し、整備やランプハンドリングなどはJALが、運航などはグループLCCのスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本)が担っている。MROジャパンは、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが全額出資して2015年6月に設立し、2019年1月の那覇での事業開始前に実施した増資後は株主が8社となった。格納庫は沖縄県が建設したもので、県は航空機整備事業を中心とした航空関連産業の集積を目指しており、MROジャパンは前身の全日空整備時代から使用してきた伊丹空港の格納庫から那覇へ全面移転した。ANAグループの機体を中心に日常の整備やCチェック(重整備)のほか、同社が得意とする塗装作業などを手掛けている。国内各社のほか、2022年には台湾新興のスターラックス航空(星宇航空)から整備業務の受託も開始。VIP向けチャーターサービス会社コムラックス(本社・スイス)から整備委託先に認定され、同社が保有するエアバス製ビジネスジェット機「エアバス・コーポレート・ジェット(ACJ)」のACJ318型機のCチェックも受託した。このほか、リース機返却事業でスターフライヤーと確認書を締結。これまでは海外で進められていた返却前に必要なMRO(整備・修理・分解点検)作業を、EASA(欧州航空安全庁)がMROジャパンを整備事業場として認定したことで、国内での返却前整備が可能となった。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:那覇空港に隣接したMROジャパンの整備格納庫】

3.JAL、ラウンジで世界初の紙製歯ブラシ 羽田・成田

エステック(埼玉・和光市)は、日本航空の羽田・成田両空港のラウンジに紙製歯ブラシの提供を始めた。同社によると世界初の紙製歯ブラシで、プラスチック製の使い捨て歯ブラシによる環境負荷の解決につなげたいという。紙製歯ブラシは3回程度使用できるもので、ホテルやゴルフ場などの使い捨てプラスチック歯ブラシの代替品を念頭に開発。100%紙製の柄は国産の紙を使用しているという。JALは、中期経営計画で2025年度までに機内や空港のラウンジで、新規石油由来の使い捨てプラスチックを全廃する目標を掲げており、これまでに紙製品の機内食容器などを導入済み。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:JALの羽田・成田のラウンジで採用された紙製歯ブラシ】

4.海自哨戒ヘリ2機、夜間訓練で墜落か 1人死亡、7人行方不明

4月20日午後10時38分ごろ、海上自衛隊の哨戒ヘリコプターSH-60Kが2機、夜間対潜戦の訓練中に伊豆諸島鳥島東の洋上で消息を絶った。木原稔防衛大臣は21日未明、いずれも墜落したと考えられると発表した。2機に搭乗していた隊員計8人のうち、1人の死亡が確認され、7人が行方不明となっている。海自の艦艇8艦と航空機5機で捜索にあたっており、海上保安庁の巡視船2隻も加わっている。洋上で機体の一部とみられるものが確認された。SH-60Kには1機に4人、2機合わせて8人が搭乗。第22航空群の大村航空基地(長崎)と小松島航空基地(徳島)に所属する2機が、潜水艦を探知する訓練を行っていた。木原防衛相は「海上自衛隊だけの訓練」と説明した。海自によると、海自の潜水艦と艦艇、航空機による対潜戦の訓練で、付近に他国などの船舶などはなく「他国の関与はないと考えるのが適当だと思う」(酒井良・海上幕僚長)との見解を示している。SH-60Kは、1997年から2005年にかけて開発され、部隊使用承認を2005年3月に取得。後継機となる能力向上型SH-60Lの開発は2023年12月に完了し、今年度から順次置き換えを進める。【Aviation wire news】

【産経新聞提供:今回の海自ヘリの事故のポイント解説】

5.新明和工業、自律型無人探査機を運搬・投入・揚収する無人飛行艇の開発へ

国の研究開発構想「無人機技術を用いた効率的かつ機動的な自律型無人探査機 (AUV)による海洋観測・調査システムの構築」に基づき、本プログラムの研究推進法人である国立研究開発法人科学技術振興機構が公募した研究提案に対して、国立研究開発法人海洋研究開発機構が研究代表機関となり、いであ株式会社、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所と当社が研究分担者として共同で応募したものだ。2023年7月に採択された後、研究課題のつくり込みを行い、このたび正式契約に至った。新明和工業は、自動投入・揚収に対応するAUVを調査海域まで運搬・投入・揚収する輸送システムの一環として無人飛行艇の開発を担う。これまで複数の機体を試作・開発し、「US-2型救難飛行艇」の設計・製造で培った技術や、近年、自社研究開発において種々の無人航空機の設計・製造から試験飛行を行ってきたノウハウを活用することで、本輸送システムの実現を目指すという。【Flightglobal news】

【新明和工業提供:開発する自律型無人飛行艇の想像図】