KIT航空宇宙ニュース2023WK47

JACが衛星を活用した新着陸方式「LPV」の運用を開始。悪天候時の離島就航率向上を目指す。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK47

海外のニュース

1.最大の737MAX「737-10」認証飛行試験始まる FAAが許可

ボーイングは現地時間11月22日(日本時間23日)、FAA(米国連邦航空局)から737-10(737 MAX 10)の認証飛行試験の開始を許可されたと発表した。小型機737 MAXのうち胴体長が最長の機体で、製造国が安全性を認める「型式証明」(TC)の年内取得を目指す。737-10は、737の発展型である737 MAXファミリーの中で胴体長がもっとも長い「最大の737 MAX」で、最大座席数は1クラス230席。日本の航空会社では、スカイマークが737-10を発注済み。737-10がローンチしたのは、6年前の2017年に開かれた第52回パリ航空ショー。昨年のファンボローで100機発注したデルタ航空(DAL/DL)は、737-10のTC取得が遅れた際は737 MAXの他機種へ移行できるなどの項目が契約に盛り込まれた。今年6月のパリ航空ショーでは、エア・インディア(AIC/AI)が737 MAXを190機発注したが、737-10の“指名買い”は見られなかったため、年内のTC取得が世界の航空会社にとって関心事と言えそうだ。胴体長は、737-7が35.56メートル、737-8が39.52メートル、737-9が42.16メートル、737-10は43.8メートルで、もっとも短い737-7と比べて737-10は8メートル以上長い。737-10は、コックピット内の警告システム「EICAS(Engine Indicating and Crew Alerting System:エンジン計器・乗員警告システム)」を巡り、737-8などほかの737 MAXとは別のコックピットとして扱われ、パイロットのライセンスを共通化できなくなる可能性があることから、認証取得が遅れている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:試験飛行を開始した737MAX-10型機】

2.ボーイング系オーロラ、混合翼の高速VTOL機を設計へ 27年までに初飛行

ボーイング傘下のオーロラ・フライト・サイエンスは、米国防総省・国防高等研究計画局(DARPA)と米特殊作戦司令部の共同プロジェクト「SPRINT(Speed and Runway Independent Technologies)X-Plane」の実証フェーズ1に選定された。音速に近い巡航速度と垂直離着陸(VTOL)を両立する混合翼を採用した技術実証機の設計を始める。2027年ごろまでの初飛行を計画している。オーロラは、高揚力・低抗力のファン・イン・ウイング(FIW)実証機を設計。エンジンが組み込まれ、適度な掃引力を持つ混合翼の胴体と、機械式駆動装置を介してエンジンに連結された組み込み揚力ファンで構成される垂直飛行設計を統合したもので、巡航速度450ノット(時速約833キロ)以上と垂直離着陸の両立を目指す。開発はオーロラとボーイングの合同チームが担当。2007年に初飛行したボーイングの全翼機X-48や、オーロラが手掛ける無人航空機(UAS)など、ジェット機による垂直揚力と、前進飛行時に翼に格納される3つの電動ルーバー式揚力ファンを組み合わせた過去の飛行プログラムを基に開発するという。オーロラによると、SPRINT X-Planeの実証機は、3年6カ月以内の初飛行を目指すという。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ボーイング系オーロラ社が開発するFan In Wing(FIW)機の想像図】

3.Electra社のハイブリッド電動ハイブリッド航空機「Gold Finch」の試作機が初飛行

米国のハイブリッド電動航空機開発会社Electra(エレクトラ)の短距離離着陸「EL-2 Gold Finch」試作機が初めて離陸した。 11月11日のバージニア州マナサス地域空港でのこのスタートアップの最初の飛行は短時間で全電動で行われたが、11月19日の23分の2回目の飛行では航空機のハイブリッド推進システムが作動し、高度3,200フィートに達し、26海里を飛行したとエレクトラ氏は語った。 11月20日。どちらの飛行もリードテストパイロットのコディ・アリー氏が操縦した。最初の飛行では、比較的低速で揚力を可能にする航空機の「ブローリフト」設計が実証された。同社によれば、パイロット2名と乗客9名を乗せた最終的な量産航空機は、最短45メートル(150フィート)の滑走路で離陸し、時速322キロ(時速200マイル)に達することができるという。この航空機は80kmから800kmの間の移動をターゲットにしており、この範囲は「今日の旅行のほとんどは自動車で行われている」と同社は述べている。【Flightglobal News】

【Electra社提供:Electra社が開発中の電動ハイブリッド航空機「Gold Finch」の初飛行】

4.インド、宇宙船の緊急脱出システムの試験に成功 – 有人宇宙飛行に向け一歩

インド宇宙研究機関(ISRO)は2023年10月21日、有人宇宙船「ガガニャーン」の緊急脱出システムの試験に成功した。打ち上げ時に問題が置きたという想定で、飛行中のロケットから宇宙船を切り離し、無事に帰還できるかどうかが試験された。インドは数年以内に有人宇宙飛行を行う計画で、今回の成功により実現に一歩近づいた。ガガニャーンはインド宇宙研究機関(ISRO)が進めている有人宇宙飛行計画で、実現すれば、ソ連(ロシア)、米国、中国に続き4か国目となる。ガガニャーン(Gaganyaan)という名前は、サンスクリット語で「空」を意味する「ガガン(Gagan)」と、「乗り物」を意味する「ヤーン(Yaan)」をつなげた造語で、「空の乗り物」といった意味をもつ。有人宇宙計画の計画名であると同時に、宇宙船の名前でもある。宇宙船は、宇宙飛行士が乗る「クルー・モジュール(カプセル)」と、太陽電池やバッテリー、スラスターなどが収まる「サービス・モジュール」からなる。最大3人の宇宙飛行士を乗せ、高度400kmの地球低軌道に最大3日間滞在できるとされる。打ち上げには、インドの最新、最大のロケット「LVM3」を、有人飛行用に改良したロケットを使う。今回行われた「TV-D1(Test Vehicle Demonstration 1)」ミッションは、ガガニャーンの打ち上げ時に問題が起きたという想定で、飛行中のロケットから緊急脱出システムを使って宇宙船を切り離し、安全に地球に帰還できるかどうかを試験することを目的としていた。TV-D1は日本時間10月21日13時30分(インド標準時同日10時00分)、インド南部のシュリーハリコータ島にあるサティシュ・ダワン宇宙センターから打ち上げられた。そして高度11.2km、マッハ1.2で飛行中に、CESが起動し、HEMの固体ロケットに点火し、ロケットから宇宙船が切り離された。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:打ち上げロケットから切り離された後、回収された「TV-D1」無人カプセル】

日本のニュース

1.ヤマトのA321P2F貨物機、北九州も訓練開始 関空経由の三角運航

ヤマトホールディングスが保有するエアバスA321ceo P2F貨物機が11月23日、当初予定していた北九州空港への訓練飛行を初めて実施した。成田から北九州経由で関西空港に向かい、成田へ戻る三角運航で、23日は計画通り同じルートを2回運航する。日本航空グループのLCC、スプリング・ジャパン(旧春秋航空日本)のパイロットが乗務する。11月のプルービングフライトは、成田から北九州経由で関空へ向かい、成田に戻る三角運航で、1回3区間で1日あたり2回、計6区間を飛行。フライト時に貨物コンテナなどは搭載せず、必要に応じて機体のバランスを取る「おもり」を載せるという。A321P2Fは、中古のA321ceo旅客機を貨物専用機に改修したもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載できる。ヤマトHDは3機のA321P2Fを導入予定で、残り2機も初号機と同じシンガポールで改修作業が進められている。ヤマトによると、737-800を改修した貨物機と比べ、A321P2Fは約20%多く貨物を搭載でき、客室から転用した上部貨物室にはAAYコンテナを14台、改修前からある床下貨物室にはAKH(LD3-45)コンテナを10台搭載できる。就航は2024年4月11日を予定。トラックドライバーの時間外労働の上限規制など、輸送力減少が懸念される中、首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完し、全3機で1日21便を計画している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ヤマトホールディングスのA321PTF貨物機】

2.ANA系avatarin、遠隔操作ロボットで空港の生産性向上 国交省が採択

ANAホールディングスが出資するavatarin(アバターイン、東京・中央区)は11月22日、国土交通省が公募する「中小企業イノベーション創出推進事業」の空港分野に採択されたと発表した。アバター(遠隔操作ロボット)を活用し、空港の人手不足の解消を目指すもので、空港業務や人材のシェア、職場環境の最適化などを検証する。事業期間は2027年度末までで、ANAHD傘下の全日本空輸と共同で進める。交付金の上限は5億2100万円。空港でアバターロボットを活用した遠隔操作による案内サービスや、ロボット導入により産休や育休、介護などで現場では働きにくい人が、在宅で空港の業務に携われるかなどを検証していく。また、一人で複数台のアバターロボットを動かすなど、人手不足の解消や生産性向上につながる活用方法を、空港を通じて検証する。avatarinは、中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社とともに、11月から自社のアバターロボット「newme(ニューミー)」を使った空港内での案内業務の実証実験を行っている。【Aviation wire news】

【Aviation wire提供:中部国際空港で実証実験中のアバター「newme(ニューミー)」

3.JAC、衛星使う新着陸方式「LPV」悪天候時の離島就航率向上も

日本航空グループの日本エアコミューター(JAC)は、衛星を活用して空港の滑走路へ進入する新方式「LPV」の運用を11月10日から始めた。従来よりも低い高度まで降下して着陸可否を判断できるため、悪天候による視界不良時に就航率の向上や安全運航につながるという。LPV(Localizer Performance with Vertical guidance)進入方式は、衛星を使うもので、JACの就航空港のうち福岡、種子島、屋久島の3空港が今回の対象。GPS(全地球測位システム)信号に加え、GPS信号の誤差や異常を地上で監視し、誤差補正情報や異常情報を衛星から航空機へ送信するシステム「SBAS(エスバス:衛星航法補強システム)」から送られる位置補正データを活用し、航空機が着陸時に進入方向と降下角度のガイダンスを受けながら滑走路へ進入する。このため、離島などILS(計器着陸装置)の整備が難しい空港でも悪天候時の就航率向上が期待できるという。3空港はいずれも滑走路が現在1本で、ILSは福岡がRWY16/34ともにあり、種子島はRWY31側のみあり、屋久島はなしとなっている。JACによると、屋久島のRWY32運用では、これまで視界不良時は対地高度1066フィート(約325メートル)までしか進入できなかったが、LPVでは338フィート(約103メートル)まで進入できるようになり、従来より低い高度で着陸の可否を判断できる。2025年以降はSBASの配信サービスを提供する準天頂衛星「みちびき」の運用機数が増えることで、「LPV200」と呼ばれる200フィートまで進入できるモードの実用化が見込まれており、ILSの「CAT I(カテゴリーI)」相当の運用が可能になるという。JACとHACは、いずれも仏ATR製ターボプロップ機を導入しており、JACはATR42-600型機(1クラス48席)が9機とATR72-600(同70席)が2機の計11機、HACはATR42-600(同48席)を4機運航している。両社とも、衛星の打ち上げ状況などに合わせて、対象空港の拡大も検討していく。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:衛星を利用する新着陸方式「LPV」の概要】

4.  ANAとJAL、グラハン業務資格を相互承認へ 地方10空港、垣根越え協力深化

全日本空輸と日本航空は11月24日、航空機運航のグランドハンドリング(グラハン、地上支援)の業務資格について、相互承認への検討を開始したと発表した。両社の委託先が同一事業者の地方10空港が対象で、2024年4月から相互承認を開始する見通し。人手不足が課題となっているグラハンを相互で承認し合うことで、個社の垣根を越え協力を深める。対象業務は機体の地上移動や、貨物・手荷物の搭降載・搬送などのランプハンドリング作業。対象となるのは両社の委託先が同一事業者の利尻、根室中標津、函館、秋田、仙台、新潟、岡山、徳島、高知、鹿児島の地方10空港で、各空港のランプハンドリングを相互承認する。これにより、ANAとJALで1年ずつ計2年かかっていた作業資格の取得期間を1年に短縮することができるようになる。ランプハンドリングの作業資格は航空会社ごとに定められており、現在は同じ作業内容でも個社ごとの資格取得が必要だ。作業資格をANAとJALが相互承認することで、どちらか一方の訓練後に資格を取得し、両社の作業に従事できるようになる。また両社便を取り扱う事業者は、訓練日数の大幅な削減につながる。国土交通省は今年6月に「空港業務の持続的発展に向けたビジョン」を公表。地方空港でグラハン事業者の効率的な人員体制の構築を進めており、ANAとJALの相互承認もその一環となる。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:航空機グランドハンドリング業務でJAL/ANAが協力】