KIT航空宇宙ニュース2022WK43

KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1.エアバス、A300が初飛行50周年 日本ではTDAなど導入

エアバスは現地時間10月28日、同社初の航空機であるA300型機の初飛行50周年を迎えたと発表した。世界初の双発ワイドボディー機で、開発機のA300B1(MSN1、登録記号F-WUAB)はエアバスの最終組立工場があるトゥールーズ発着で1時間25分飛行した。1960年代、欧州の航空機メーカーの世界シェアは10%程度で、残り90%は米国の3大メーカー(ボーイング・ダグラス・ロッキード)が占めていた。1967年7月にフランスと西ドイツ(当時)、英国の3カ国の政府間で「エアバス共同開発・生産のための航空分野での欧州協力強化」の枠組み合意が成立。270-300席の航空機開発が始まり、A300の由来になった。「エアバス」は1960年代に航空業界で使われていた一定の大きさと航続距離を持つ民間航空機を指す一般的な言葉で、後に社名となった。また、英国政府は1969年4月に、商業的な見通しが立たないとして、プロジェクトから脱退した。日本の航空会社では、東亜国内航空(TDA→日本エアシステム・JAS→日本航空・JAL)と佐川急便グループのギャラクシーエアラインズ(09年清算)が導入した。現在は37社がA300とA310合わせて250機以上を運航。このうち75%が貨物機で、世界で3番目に多く運航されている貨物機だという。60%以上が主要顧客4社によって運航されており、エアバスによると少なくとも2030年まで飛び続けるという。。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:A300-600型機】

2.次世代の宇宙開発の準備を着々と進めるアリアンスペース

ヨーロッパの宇宙ロケット打ち上げ企業である仏アリアンスペースは10月27日、ステファン・イズラエルCEOが来日して同社の事業の最新状況を報告した。イズラエルCEOによる記者会見は2019年に開催された後、新型コロナ問題のため2年間行われておらず、3年ぶりの開催となった。アリアンスペースはヨーロッパの宇宙ロケット打ち上げを担う企業で、アリアングループの子会社となっている。アリアングループはアリアンロケットの製造を担っており。アリアンスペースはロケットの運用と、商業打ち上げの受注を担当する。航空機で言えば航空会社に相当する企業と言える。ヨーロッパ諸国は共同で欧州宇宙機関(ESA)を運営しており、ESAが開発した大型ロケットのアリアン5、小型ロケットのヴェガを用いてヨーロッパの人工衛星打ち上げ能力を提供するのがアリアンスペースの役割だ。発射場は、フランス国立宇宙研究センター(CNES)がフランス領ギアナに設置しているギアナ宇宙センターを利用している。日本では新型ロケットのH3とイプシロンSが開発中だが、アリアンスペースも似た状況にある。アリアン6とヴェガCだ。現在使用中の大型ロケット・アリアン5は1996年に1号機が打ち上げられて以来、改良を続けながら114機が打ち上げられている。1機のロケットで2機の大型静止衛星を打ち上げられるのが特徴で、通信衛星の商業打ち上げ市場を開拓したほか、昨年はNASAと協力してジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を打ち上げるなど、大型科学衛星や探査機の打ち上げにも用いられている。その後継として開発中なのがアリアン6だ。アリアン6は第1段にアリアン5と同じヴァルカン2エンジン、第2段にはアリアン5の改良用に開発されていたヴィンチエンジンを使用するほか、固体ロケットブースターは新型のP120を使用する。アリアン6はブースターを4基使用するA64と、2基使用するA62の2つの構成が可能で、A64はアリアン5と同じく静止衛星2基の同時打ち上げに対応する。A62は従来ソユーズが担っていた、低軌道への打ち上げなどに対応するものだ。当初は2021年の初打ち上げを目指していたが、現在は2023年の第4四半期を目標としている。イズラエルCEOは「開発が遅れている理由はいくつかある。まず初期の設計変更と、新型コロナによる作業の遅れがあった。ヴィンチエンジンは40年ぶりの上段用新型ロケットエンジンで、試験設備の準備に予想外の時間がかかった。新たに建設した発射場の設備はハード、ソフト両面で調整を要している。様々な小さな遅れが重なってはいるが、全体では着々と進捗している。大きな開発計画では、最終局面でこういうことが起きるものだ」と、打ち上げが遅れてはいるが大きな困難は生じていないことを強調した。もうひとつの新型ロケットがヴェガCだ。小型固体ロケットのヴェガの第1段を、アリアン6の固体ブースターと共通のP120に変更して、衛星打ち上げ能力も20%向上している。新型大型ロケットの固体ブースターと、小型ロケットの第1段を共通化してコストダウンを図るのは、日本のH3とイプシロンSの関係と同一の設計思想と言えるだろう。ヴェガCは今年すでに1号機の打ち上げに成功しており、今後ヴェガを置き換える予定だ。【マイナビニュース】

【アリアン・スペース社提供:アリアン・スペース社の新型ロケット】

3.Saudiaは100機のLiliumジェットを購入しeVTOLネットワークを立ち上げる

Saudiaは、電動垂直離着陸(eVTOL)機開発会社Liliumから100機の航空機を購入する計画で、持続可能な航空モビリティにコミットする最初の中東の航空会社であると主張している。サウジアラビアの国営航空会社であるSaudiaは、eVTOL ネットワークを確立することを目的としたドイツの新興企業との覚書を発表しました。ポイントツーポイント接続だけでなく、Saudiaは、ビジネスクラスの乗客のためにハブ空港への「シームレスなフィーダー接続」を提供すると述べている。サウディアの最高経営責任者であるキャプテン・イブラヒム・コッシーは、この取引を国の航空産業にとって「非常に重要な事業」であり、持続可能な観光を促進するものであると説明している。世界中の航空会社が、今までに数千機のeVTOL航空機を6社以上の開発者に発注する意向を表明している。Liliumは4人乗りの設計で483機の契約を結んでおり、オーストリアのGlobe Airは12機の契約を結んだ最新の潜在顧客です。しかし、最初のeVTOL航空機の認証は、ほぼ確実に少なくとも3年は遅れており、規制当局は認証に向け努力しているが、これらのプラットフォームが商用空域で運用されるための規則については難しい問題が残っている。9月、Liliumの新しい最高経営責任者であるKlaus Roewe氏は、同社は2025年に欧州認証を取得できると確信していると述べたが、飛行試験プロセスで予期しない問題が発見される可能性があることを認めた。【Flightglobal News】

【Saudia提供:Lilium社が開発中のVTOL機「Lilium」】

日本のニュース

1.MROジャパン、海外からも整備受託

那覇空港にある整備会社MRO Japan(MROジャパン)は10月28日、台湾新興のスターラックス航空から整備業務の受託を同日付で開始したと発表した。MRO Japanが海外の航空会社から整備を受託するのは初めて。スターラックス航空は2020年1月23日に就航。エバー航空で会長を務めたチャン・クォウェイ氏が2018年5月に設立したフルサービス航空会社(FSC)で、エアバスA321neoとA330-900(A330neo)を保有している。10月28日にはA350-900を初受領するほか、台北(桃園)-那覇線を1日1往復で開設した。ANAホールディングスなどが出資するMROジャパンは2019年1月から那覇で事業を開始し、前身の全日空整備時代から使用してきた伊丹空港の格納庫から全面移転した。全日本空輸グループの機体を中心に日常の整備やCチェックのほか、同社が得意とする塗装作業などを手掛けている。【Aviation Wire News】

2.成田空港、9月旅客145万人 100万人超え5カ月連続、国際線日本人は6倍超

成田国際空港会社(NAA)の2022年9月運用状況速報値によると、国際線と国内線を合わせた総旅客数は前年同月比3.10倍の145万6710人で、5カ月連続で100万人を突破した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)前の2019年同月と比較すると61%減だったものの、1年6カ月連続で前年を上回り、回復傾向が続く。旅客数は国際線が5.13倍(19年同月比72%減)の84万3943人で、このうち日本人は7.21倍(79%減)の29万2864人、外国人が4.11倍(83%減)の22万6455人、通過客が4.72倍(15%増)の32万4624人となった。また、国内線の旅客数は2.00倍(7%減)の61万2767人となった。国際線旅客は、9月7日から入国時の水際対策緩和により日本発着の渡航需要が増加。特に日本人旅客のビジネス渡航が増加したことから1年7カ月連続で前年を上回った。国内線旅客は1年7カ月連続で前年超えとなった。【Aviation Wire News】

3.JALとNTTドコモ、相互非開示の人流データで定時出発向上へ 羽田ら3空港で実証実験

日本航空とジャルカード、NTTドコモの3社は、各社が保有する暗号化したデータを活用し、利用客の搭乗前の移動状況を把握する実証実験を11月1日から始める。羽田などの国内3空港を対象とし、人流データから定時出発率の向上を図る施策を検討・実施する。実証実験は2023年3月末まで。羽田と福岡、長崎の国内3空港を対象とし、搭乗前日と搭乗当日の出発60分前、40分前、20分前時点の利用客の移動状況をデータ化。午前便・午後便別などの人流データを基に、定時出発率の向上につながる施策の検討を進める。活用するデータは、JALの国内線搭乗便予約データと、位置情報や顧客の属性などドコモの携帯電話ネットワーク運用データで、相互にデータが開示されない状態で統計情報を作成できる「秘匿クロス統計技術」を活用。データを相互で復元できない状態に加工し、個人を識別できない状態で用いる。3社によると、各社のデータを相互に開示しない状態で、企業間で統計情報を作成し活用する取り組みは国内初だという。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:羽田空港で人流データで定時出発率向上に向け実証実験実施】