KIT航空宇宙ニュース2021WK20

中国が火星探査機の軟着陸に成功:軟着陸に成功した探査機「祝融」の想像図
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース
1. 中国の無人機、火星に着陸-探査成功なら米国に次ぎ2カ国目
中国の無人探査機が火星に着陸した。着陸後の探査が実現すれば、米国に次ぐ2カ国目となる。着陸船は探査車「祝融」を搭載。祝融は着陸地点付近の地表を探査する。祝融の重量は240キロ、地表での活動可能期間は約92日間。米国は1976年、探査機を火星に着陸させ探査にも成功。71年に火星に着陸した旧ソ連の探査機は、着陸後すぐに通信が途絶えた。中国国家航天局(CNSA)の「天問1号」は昨年7月に打ち上げられ、今年2月に火星の軌道に入っていた。国営中央テレビ(CCTV)によれば、天問1号の着陸船は中国時間15日午前、北半球の「ユートピア平原」に軟着陸した。【Bloomberg News】

【Bloomberg提供:火星に軟着陸した「祝融」の想像図】

2、リリウムは最初の電動航空機に250万ドルの価格をつけた
ドイツの電動航空機メーカーの新興企業であるリリウム(Lilium)は、米国株式市場上場の一部として提出された文書によると、7人乗りの電動e-VTOL機であるリリウムジェットを初期単価250万ドル(約2億6千万円)で販売することを目指していることは分かった。【Flightglobal News】

【Lilium社提供】

日本のニュース
1. 小さな噴煙、AIで自動認識 ウェザーニューズが航空会社向けに新技術開発
ウェザーニューズは、AI(人工知能)を活用し火山の噴火・噴煙を検知する「AI火山灰検知システム」の運用をこのほど開始した。衛星画像を雲の切れ間からの噴煙(火山灰雲)を、AI画像解析技術により即時に検知する世界初のシステムで、航空会社向けに提供する火山灰拡散予測に導入することで、従来は難しかった小規模な噴火検知が可能となる。小規模噴火の噴煙は衛星からみると雲が覆い被さることが多く、噴火が頻発しないことから監視対象外の地域で起きた場合、噴火に気づきにくいことが課題となっている。ウェザーニューズが開発した同システムにより、従来は気付きにくかった小規模な噴火でも正確に検知できるようになり、迅速な火山灰拡散予測が可能となった。航空機にとって、飛行中に火山灰をエンジンが吸い込むと、火山灰がガラス状に溶け、圧縮機の動翼に付着して、動翼が失速し、エンジン停止に至る可能性があり非常に危険。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供】

2.前澤友作氏と平野陽三氏、国際宇宙ステーションへ宇宙旅行 – 今年末打ち上げ
米国の宇宙旅行会社スペース・アドベンチャーズは2021年5月13日、実業家の前澤友作氏と、同氏の関連会社の役員を務める平野陽三氏の2人が、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙旅行に飛び立つと発表した。打ち上げは今年12月8日の予定で、ISSには12日間滞在する。実現すれば、民間人の宇宙旅行者として8、9人目となる。また、日本の民間人が宇宙に行くのは、TBSの社員で日本人初の宇宙飛行士となった秋山豊寛氏以来、31年ぶり。ISSに滞在するのは初となる。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:宇宙飛行訓練中の前沢氏】

3.千葉工大など、金属を含まないクリーンな新型固体燃料でロケットを試射
千葉工業大学(千葉工大)は5月11日、宇宙を汚さないクリーンなロケット推進薬を搭載した新型の小型固体ロケットの打ち上げ実験を3月25日に2機のロケットで実施し、いずれも予定通りの高度に到達したことが確認されたと発表。同成果は、千葉工大、日油、JAXAの3者で進める高性能な小型推進系の研究開発と題した共同研究の一環として実施された。
ロケットの燃料には大別して液体と固体の2種類がある。固体燃料方式は精密な誘導制御こそ不得手とするが、構造が簡単なので信頼性が高く、開発・製作・取り扱いが容易で、同じ大きさの液体燃料ロケットよりも大きな推力を出しやすいというメリットがあるが、推力増強のために主成分として金属を含むことから金属燃料とも呼ばれている。アルミニウムを燃料に、過塩素酸アンモニウムなどの酸化剤、そして燃料も兼ねた粘結剤としてポリブタジエンなどの合成ゴムを混ぜて固めたものなどが用いられている。金属を燃焼させると、金属酸化物などが含まれた排気ガスが大気中に放出されることになり、金属酸化物はスペースデブリとなるという点も問題となる。宇宙空間を汚染してしまうことから、現在ではISO-24113、Space debris mitigation requirementsではこうしたデブリの抑制が求めている。しかし金属を取り除くと、金属燃料の推力は極端に低下してしまうというデメリットが生じてしまうため、クリーンな固体燃料の開発は、難しいと考えられてきた。そこで今回の研究開発では、燃料兼結合材として用いられる高分子材料に、高エネルギー物質である「グリシジルアジドポリマー」(Glycidyl Azide Polymer: GAP)を採用し、従来の推進薬である末端水酸基ポリブタジエンゴム/過塩素酸アンモニウム推進薬(AP)から金属燃料を抜いたものとの性能比較を実施。その結果、GAP推進薬は従来推進薬よりも15%以上の性能向上が示された。【マイナビニュース】

【千葉工大提供】

4.三菱重工業が2021年度にスペースジェットプログラムを再開する可能性を示唆
三菱重工業は、2023年までに航空旅客需要が2019 年レベルに回復するとの見通しを示し2021年度にスペースジェット機のプログラム再開の可能性を再検討すると発表。2023年までの戦略は、継続的な固定費削減、利益減少の阻止、マージンの改善に重点を置き、型式証明書の文書化活動も継続するとしている。しかし、日本のOEMメーカーがスペースジェット計画への数十億ドルの投資を捨てる準備ができておらず、市場のシェアを獲得する機会があることを示すポーズだとも解釈できる。一方で、再起動とは何を意味するのか、三菱はM90 だけを継続するのか、それともより小型のM100 にもコミットするのか明確な答えが出るまでは、この発表の意味するところは曖昧。【AirInsight】