KIT航空宇宙ニュース2021WK40

Honda Motorsが開発を発表した「ハイブリッドeVTOL機」
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2021WK40
海外のニュース
1.中国の有人宇宙船が地球に帰還、初の宇宙ステーション長期滞在を完遂
神舟十二号は中国が開発した宇宙船で、神舟宇宙船として12機目、有人での飛行は7機目となる。聶海勝宇宙飛行士、劉伯明宇宙飛行士、湯洪波宇宙飛行士の3人が搭乗し、中国が建造中のCSS(China Space Station)へと赴き、建造作業や各種実験、実証などを行うことを目的としていた。神舟十二号は今年6月17日(日本時間、以下同)、長征二号Fロケットに搭載され、甘粛省北西部にある酒泉衛星発射センターから打ち上げられた。軌道投入後、神舟十二号は軌道変更を行い、徐々にCSSへ接近。そして打ち上げから約6時間後、CSSのコア・モジュール「天和」に自動でドッキングした。搭乗していた3人はCSSに入り、90日間にわたって滞在。CSSにとって初の長期滞在ミッションとなり、また中国の宇宙飛行士が1回のミッションで宇宙に滞在した期間の最長記録を更新した。この間、CSS・天和モジュールの試験や、生命維持システムの検証、ロボットアームの試験と操作訓練、宇宙飛行士自身の健康管理、物資と廃棄物の管理など、宇宙ステーションの運用や宇宙生活にとって必要な技術や能力の実証を実施。さらに、船外活動も行い、ツールボックスやカメラの設置など、ステーションの組み立て作業も実施した。そして9月16日9時56分、長期滞在を終えた3人は神舟十二号に乗り込み、CSSから出帆。CSSとの間でランデヴー試験を行ったのち、徐々に離れていった。丸一日単独で飛行したのち、17日13時43分に軌道を離脱。機械モジュールや軌道モジュールを分離したのち、3人の宇宙飛行士が乗った帰還モジュールは大気圏に再突入。高度約10kmでパラシュートを展開、約5.5kmで耐熱シールドを分離しつつ降下。そして14時34分、帰還モジュールは内モンゴル自治区のゴビ砂漠に設けられた着陸ゾーン「東風着陸地点」に無事着陸した。【マイナビニュース】

【Yahooニュース提供:無事着陸後の3人の中国人宇宙飛行士】

2.GEとMagnixがNASAと契約を結び、電気航空機のパワートレインシステムを開発
GE Aviationと電気推進の専門であるMagnix社は、2035年までに技術を使用できるようにすることを目標に、電動航空機推進(EAP)システムの開発を目的としたNASA契約で合計2億5,300万ドルを獲得。この契約は、NASAのElectric Powertrain Flight Demonstration(EPFD)プログラムをサポートしている。このプログラムは、航空業界の二酸化炭素排出量を削減する技術開発を促進するための、NASAによる広範な取り組みの一環です。この作業は5年間にわたって実施され、1MWクラスの電気システム技術の開発が求められる。NASAはこのプロジェクトにより、航空業界が「2035年までに電気推進技術を導入し、短距離航空機およびリージョナル航空機、および単一通路の小型航空機の実現をサポートする」ことを目指している。【Flightglobal News】

【Magnix社提供:グランドキャラバンを改造し電気推進システムを搭載したデモ機】

3.英国政府のFlyZeroプロジェクトが開発航空機コンセプトを発表
商用航空機からの炭素排出を無くすための英国政府支援プロジェクトチームは、FlyZero研究の一環として開発された画期的な新しい航空機コンセプトを発表した。FlyZeroチームは、テクノロジーを融合して試験的航空機を設計することにより、各航空機がペイロード、航続距離、速度、材料、経済性、運用、非CO2排出量などの要件をどのように満たすかを調査する新しいテクノロジーを評価した。本日発表されたコンセプトは、それぞれがゼロカーボン排出技術を組み込んだ革新的な航空機構成を表しており、次世代の航空機を実現する可能性がある。FlyZeroチームが調査している技術には、タンク、極低温システム、水素燃料電池、水素燃焼タービン、バッテリーの電気、熱、流体の管理、およびドライウィング、結合ウィング、ブレンデッドウィングボディなどの空力構造が含まれている。
【Flightglobal News】

【FlyZero提供:発表されたゼロエミッション航空機の各種コンセプト】

日本のニュース
1. トキエア、ATR72-600を2機リース契約 22年就航へ 
新潟空港を拠点に就航を目指す低コスト地域航空会社「TOKI AIR(トキエア)」は、2機の仏ATR製ターボプロップ機ATR72-600型機のリース契約を、アイルランドの航空機リース会社ノルディック・アビエーション・コントラクターと9月29日付で締結した。就航は2022年を予定している。座席数は1クラス72席で、MSN(製造番号)は1565と1620。国土交通省の登録記号(機番)は初号機がJA01QQ、2号機がJA02QQを予約申請している。QQはトキエアのシンボルであるトキの顔をモチーフにしたという。リース期間は2022年春先を予定している納入日から10年間となる。ATRはエアバスと伊アレニア・アエルマッキの共同事業体として、1981年に設立されたリージョナル機メーカー。日本市場では、天草エアラインがATR機を初導入し、2016年2月20日にATR42-600(1クラス48席)を就航させた。その後、日本エアコミューターがATR42-600(同48席)とATR72-600(同70席)を導入。2020年4月には、JALグループで札幌の丘珠空港を拠点とする北海道エアシステムが、ATR42-600(同48席)を就航させている。【Aviation Wire News】

【ATR社提供:ATR72-600】

2.ANA英調査で”世界一清潔な航空会社”
全日本空輸は9月29日、英国を本拠地とする航空業界調査・格付け会社SKYTRAX(スカイトラックス)社が行う航空会社の格付け「World Airline Awards」で、機内が世界でもっとも衛生・清潔な航空会社を選出する「World’s Best Airline Cabin Cleanliness」を受賞したと発表した。2018年に続き3度目で、このほかに空港サービスなどの部門賞を獲得し、4部門で1位になった。残り3部門の受賞は、空港サービス全般を評価する「World’s Best Airport Services」が2019年に続いて8度目、空港の地上係員や客室乗務員のサービス品質を地域ごとに評価する「Best Airline Staff in Asia」は2018年に続き6度目で、ファーストクラスラウンジの品質を地域ごとに評価する「Best First Class Lounge in Asia」は今回初受賞となった。World Airline Awardsは、オンラインのアンケートなどを基に決定される。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire 提供:ANA機内を清掃するグランドスタッフ】

3.Honda Motors㈱が航空宇宙事業領域に参入
Hondaは、すべての人に「生活の可能性が拡がる喜び」を提供する2030年ビジョンの実現に向け、自身の持つコア技術を生かした新領域におけるチャレンジとして、現在取り組んでいる以下の3つの技術開発の方向性を発信した。
① eVTOL機開発
Hondaは、独創的なHonda Jetで実現した空の移動をさらに身近なものとするため、さまざまなコア技術を生かして、eVTOL(electrical Vertical Take Off and Landing:電動垂直離着陸機)の開発に取り組んでいる。オール電化によるeVTOLには、バッテリー容量による航続距離の課題があり、その現実的な稼働範囲は都市内移動に留まっている。これに対しHondaは、より航続距離が長く使い勝手の良い都市間移動を実現するため、電動化技術を生かしたガスタービンとのハイブリッドによるHonda eVTOLの開発に取り組み、市場拡大が見込まれる都市間移動の実現を目指す。また、Honda eVTOLには、電動化技術のほかにも、燃焼や空力、制御技術といった、これまでHondaがさまざまな領域で培った技術が生かされる。

【Honda Motors提供:コア技術を生かしたHonda eVTOL機のコンセプト】
②「アバターロボット」(分身ロボ)
Hondaはこれまで、人の可能性を拡げ、人生を自由で豊かにするため、ASIMOをはじめとするロボティクス研究に継続的に取り組んできた。次世代に向けては、時間や空間の制約に縛られず、バーチャルに自己能力を拡張するHondaアバターロボットの実用化に向けた開発を進めている。人の分身となるアバターロボットの最大のメリットは、リモートでありながら、あたかもその場にいるようにモノを扱えるなど、自身がその場にいなくても作業や体験ができることです。そうしたアバターロボット実現の核となるのが、Hondaが強みとするロボティクス技術による多指ハンドと独自のAIサポート遠隔操縦機能です。多指ハンドを通じて人のために作られた道具を使いこなし、AIのサポートにより、複雑な作業をより直感的な操作で早く正確に行えることを目指している。これまでのロボティクス研究を通じて長年の課題であった、小さなものをつまむなどの繊細さと、固い蓋を開けるなどの力強さを「人並みに」両立できる手を多指ハンドとして実現した。また、多指ハンドが一連の動作の中で物をスムーズに把持したり、細やかな力の制御で道具を操ったりできるようにHonda独自のAIサポート遠隔操縦機能の進化にも取り組んでいる。

【Honda Motors提供:Hondaが開発した「多指ハンドロボット」】
③ 宇宙領域への挑戦
燃料電池や高圧水電解技術を生かした、月面での循環型再生エネルギーシステムの構築や多指ハンドやAIサポート遠隔操縦機能、高応答トルク制御技術などの月面遠隔操作ロボットへの応用、若手技術者の発案による、燃焼・流体・制御・誘導技術などの応用による「再使用型の小型ロケット」の研究開発を行っている。【Honda Motorsニュース】

【JAXA/Honda提供:月面での循環型再生エネルギーシステムの活用 イメージ図】

【Honda Motors提供:コア技術を応用した再使用型の小型ロケット】