KIT航空宇宙ニュース2022WK07

Eve社が描く近未来の東京におけるエアータクシー運用
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK07

海外のニュース

1. シンガポール・エアショー開幕

「シンガポール・エアショー2022」が2022年2月15日(火)、ウン・エンヘン国防大臣とS・イスワラン運輸大臣・貿易関係担当大臣が出席し、開幕した。4日間の日程で、チャンギ国際空港に隣接するチャンギ・エキシビション・センターの会場には、39カ国・地域から13,000人超の参加者、600社近くが参加予定。コロナ禍からの回復への願いが込められた初日のエアショーも披露された。なお、「シンガポール・エアショー」は隔年の展示会・エアショーで、前回はコロナ禍前の2020年2月に開催。これ以降に世界の航空業界は大きく影響を受けており、シンガポールへの入国は、ワクチン接種者を対象に「ワクチン・トラベルレーン(VTL)」を設け、ビジネス旅客を受け入れている。今回のエアショーで主催者は、アジアの航空産業の回復に向けた第1歩に位置付けたい考え。【Flightglobal News】

【Fly Team提供:シンガポール・エアショーで飛行展示されたA350-1000】

2.NTSBがJobby AviationのeVTOL機プロトタイプの墜落事故を調査

国家運輸安全委員会(NTSB)は、水曜日にカリフォルニア州ジョロンで行われたジョビーアビエーションの実験用航空機の墜落事故を調査している。規制当局への報告によると、この事件は、カリフォルニアにあるジョビーの試験基地での飛行試験中に遠隔操縦されていたプロトタイプで起きた。航空機の初期のテスト段階では、連邦航空局は安全上の理由から航空機の無人飛行を要求することがよくある。事故による負傷者はなく、無人地帯で試験が行われたと同社は報じた。「実験的な飛行試験プログラムは、航空機の性能の限界を決定するために意図的に設計されており、残念ながら事故が発生する可能性がある」と述べている。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:試験飛行中のJobby Aviation社eVTOL機】

3.Eve、Skyportsが日本のeVTOLの運用コンセプトを探る

エンブラエルの都市航空モビリティユニットであるEveは、Skyportト協力し、日本で優れた航空モビリティを実現するための運用アイデアを開発する。シンガポール・エアショーで紹介されたこのコラボレーションでは、電気垂直離着陸(eVTOL)インフラストラクチャ・サプライヤであるEveとSkyportsが、日本航空や商社の兼松等の日本企業と協力して進める。運用のアイデアは、航空局(JCAB)に認められる、「日本で[高度な空中移動]運用を可能にするために、空域の設計、運用、インフラストラクチャ、及び様々なメリットについての共通の認識と先見性を提示する」ことを目標としている。【Flightglobal News】

【Eve提供:日本でのeVTOL機運用の想像図】

4.AirAsiaが少なくとも100機のVertical Aerospace社のeVTOL機 VX4をリースする

エアアジア航空グループはシンガポールで開催中のエアショーで、少なくとも100台のバーティカルエアロスペース社 VX4を、航空機リース会社アボロンからリースする拘束力のない契約に署名した後、東南アジアでの低コストの航空ライドシェアリングサービスの計画を発表した。エアアジアの親会社であるキャピタルA (CAPI.KL)の最高経営責任者であるトニーフェルナンデス氏は、マレーシアとシンガポールの規制当局はインドネシア、タイ、フィリピンよりもはるかに迅速に運航を承認する可能性があり、2025年までにフライトを開始できると述べた。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:シンガポール市街地上空を飛ぶエアアジアのVertical Aerospace社のeVTOL機想像図】

5.Technam社が世界初のハイブリッド電気デモンストレーター航空機を初飛行

ロールスロイスエレクトリカルのプロジェクトのリードパートナーであるテクナムは、ロールスロイスハイブリッド電気デモンストレーター航空機が初めて空を飛んだことを発表した。世界初の統合並列ハイブリッド推進システムを搭載したP2010H3PSデモンストレーターの初飛行は、2021年12月21日に行われた。H3PS航空機は、改良された4人乗りのTecnamP2010航空機に統合されたパラレルハイブリッド電気駆動列です。H3PSは「ハイパワー、ハイスケーラビリティ航空機、ハイブリッドパワートレイン」の略。H3PS航空機は、同じ全体的なエンジン設置重量、したがってペイロードを維持することを目的とした、航空における統合されたパラレルハイブリッド電気駆動列の最初の飛行デモンストレーションとなった。新しい技術は、航空機の航続距離を維持し、さらには拡大しながら、燃料消費量を削減するのに役立つ。このプロジェクトでは、小型航空機にも拡張可能な、より小型のパワークラス向けの高度なテクノロジーを導入している。Rolls-Royceは、パラレルハイブリッド電気推進システムの電気部分を担当し、モーターと発電機である30kWの電気機械、電気制御装置、および完全なバッテリーシステムを開発した。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:デモ飛行するTecnamP2020を改造したハイブリッド電動航空機】

日本のニュース

1. ジェイエア、CAと総合職の新卒採用23年度再開 パイロット訓練生も採用

日本航空グループのジェイエアは2月18日、2023年度入社の客室乗務員、自社養成パイロット訓練生、地上職(総合職)の新卒採用を実施すると発表した。CAと総合職の新卒採用は2020年以来3年ぶりとなる。ジェイエアは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、2021年度と22年度の新卒者採用を原則として見送り、パイロット訓練生と障がい者は採用を続けてきた。経験者採用も検討中で、いずれも詳細は3月1日にジェイエアの「採用ホームページ」に掲載を予定している。ジェイエアは伊丹空港を拠点に地方路線を担うJALグループの航空会社。JALと沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空も2023年度の新卒採用を再開する。日本航空本体も2月18日、中断していた客室乗務員や業務企画職の新卒採用を2023年度入社から再開すると発表した。2022年度の経験者採用も実施する。客室乗務員の採用は2020年以来3年ぶり、企画職は2021年以来2年ぶりとなる。グループ会社でも一部の会社や職種を除いて採用を再開する。【Aviation Wire News】

2.ANA、GE「フューエル・インサイト」採用 飛行データで燃費とCO2削減

米GEデジタルは現地時間2月17日、全日本空輸が同社のソフトウェア「フューエル・インサイト」を稼働させたと発表した。運航中の航空機から飛行データを収集・分析するもので、燃費改善やCO2(二酸化炭素)排出量削減につなげる。フューエル・インサイトは、GEデジタルが提供する航空ソフトウェアの一つで、独自アルゴリズムで燃料消費率をモニタリングしつつ、得られたデータに基づいて燃費改善につなげる。ANAはフューエル・インサイトを活用する第1弾として、地上走行時の片側エンジン停止、着陸後の逆噴射抑制、早期加速上昇の3分野で燃料節減を進め、2050年度までの航空機の運航で発生するCO2実質ゼロ実現を目指す。【Aviation Wire News】

【GE Digital提供:「フューエル・インサイト」燃料消費モニター】

3.JALとKDDIら、ドローンで隅田川飛び医薬品配送 聖路加病院まで3つの橋通過

日本航空とKDDI、医薬品卸のメディセオ、聖路加国際病院(東京・中央区)の4者は2月16日、隅田川に架かる永代橋など3つの大きな橋の上空をドローンで通過する医薬品配送の実証実験を報道関係者に公開した。政府は2022年度に「レベル4」と呼ばれるドローンの有人地帯での目視外飛行の実現を目指しており、今回の実験はこれを見据えたもの。ドローンはACSL(6232)製ACSL-PF2を使用し、隅田川大橋そばのメディセオ新東京ビル(江東区佐賀)から佃大橋付近の聖路加病院まで、隅田川上空約2キロを永代橋、中央大橋、佃大橋の上空を、約20キロの速さで約10分間飛行して向かった。今回の実験は、ドローンの飛行を人が監視する「補助者あり目視外」の飛行方法「レベル2」で実施。26人の補助者が橋などに配置され、橋を渡る人がいる場合はドローンを上空でホバリングさせて待機し、安全確認後に橋の上空を飛行した。8日から10日にかけて実施し、15日と16日を予備日とした。実験では国が定める「ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン」に基づき、配送中の温度変化や固定状況を検証し、1機のドローンで1日当たり何回配送できるかや、発注から納品までの所要時間などを調べた。9日の場合、7.5往復飛行し、8日からの3日間で10往復以上飛んだ。将来的には補助者なしでも安全性を確保できるようにし、レベル4実現を目指す。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:隅田川上で行なわれた、ドローンによる医薬品輸送実証実験】

4.宇宙空間における木材利用の可能性

京都大学と住友林業が、世界初となる木造人工衛星の開発を進めている。「宇宙における樹木育成・木材利用に関する基礎的研究」に共同であたる研究契約を締結し、「宇宙木材プロジェクト(通称: Ligno Stella Project)」※を始動し、2023年に木造人工衛星(LignoSat)を打ち上げ、そこから2024年3月31日まで宇宙環境下での木材物性評価や樹木育成研究を行うことを目指している。国際宇宙ステーション(ISS)がある地上約400kmは地球低軌道(LEO)と呼ばれ、高真空(10-11気圧)なだけでなく、銀河宇宙線(GCR)、太陽エネルギー粒子(SEP)、真空紫外線(VUV)や原子状酸素(AO)などの材料を劣化させるさまざまな要因が存在する。そんな厳しい極限環境下のなかで、LEOでの木造人工衛星が物理的に実現可能なのかを検討するため、実際に宇宙空間に木材を暴露して、宇宙線や原子状酸素の影響を確認するという。実験では、数種類の木材サンプルをISSの日本実験棟「きぼう」にて、日本実験棟の船外暴露プラットフォーム上で暴露試験を行う。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:ISS日本実験棟「きぼう」で宇宙環境暴露試験される木材試験片】

5.  ispaceの月面着陸は2022年末に実施へ、運用のシミュレーション訓練も公開

ispaceは、同社が進めている月面探査計画「HAKUTO-R」について、最新の開発状況を明らかにした。世界初の民間による月面着陸を目指す「ミッション1」は、これまで2022年の打ち上げ予定としてきたが、「2022年末頃」と時期をより明確化。運用の訓練も開始しており、いよいよ打ち上げへ向け、最終段階へと入ってきた。ミッション1ランダーのフライトモデルは、2021年6月より、ドイツ・ランポルツハウゼンのアリアングループ施設にて、組み立て作業を開始。現在、組み立て・統合の最終工程にあり、今後、多層断熱材(MLI)、ソーラーパネル、展開機構などを取り付け、春頃に最後の環境試験を実施する予定だ。環境試験が無事に完了すれば、ランダーはいよいよ、射場がある米国に輸送される。打ち上げはSpaceXのファルコン9ロケットを使用。今回のランダーは、燃料を節約できる軌道で月に向かうため、到着には数カ月かかり、年末の打ち上げであれば、月面への着陸は年明けの2023年になる可能性が高そうだ。【マイナビニュース】

【ispace提供:月面に降り立った「HAKUTO-R」想像図】

6.ANA、「空飛ぶクルマ」実現へ。米Jobyと共同検討

ANAホールディングスと、Joby Aviationは、電動エアモビリティ「eVTOL」による日本での新たな運航事業を共同検討する覚書を締結した。地上交通における連携等を想定し、トヨタ自動車も参加する。Joby AviationのeVTOLは、電動モーターで複数の回転翼を回転させ、垂直離着陸できる小型航空機で「空飛ぶクルマ」とも言われる。開発中のeVTOLは、電動で低騒音かつ排気ガスがゼロであると同時に、最大航行距離約150マイル(270km)超、最高速度200mph(約320km/h)で航行可能な5人乗り仕様。都市圏での新たな移動体験を実現するために設計されているという。パートナーシップにより、ANAHDとJoby Aviationの2社は、国内大都市圏を中心とした移動サービスの実現に向けて事業性調査、旅客輸送サービス実現に向けた運航/パイロット訓練、航空交通管理、離着陸ポート等地上インフラ整備、新制度・法規への対応などを共同で検討していく。また、地上交通との連携では、トヨタ自動車も参加し検討を実施する。なお、3社は、経済産業省と国土交通省が空飛ぶクルマ実現に向けて設立した「空の移動革命に向けた官民協議会」のメンバーでもあり、同協議会が推進するプロジェクトの議論にも共同で参加する。【Flighglobal News】

【Flightglobal提供:Jobby AviationのeVTOL機】